お姉ちゃんは女王様

ましゅまろ

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第8話:旅の終わり、そして続く夜

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楽しかった温泉旅行は、あっという間に終わりを迎えた。
 旅館を後にする時、僕は少し寂しいような、でもどこかホッとするような複雑な気持ちになっていた。

 (……ずっとお姉ちゃんと二人きりだったし……)

 家族旅行のはずなのに、結局お姉ちゃんと一緒に過ごした時間ばかりが胸に残っていた。



 帰り道の車の中。
 お父さんが運転し、母さんは助手席でうとうとしていた。

 後部座席では、お姉ちゃんが僕の肩にそっと頭を預けてきていた。

 「……ヒロ」

 「……なに」

 「お姉ちゃん、眠い」

 「……寝ればいいじゃん」

 「寝るけど、ヒロの肩借りるの」

 そう言って、さらに頭を押しつけてくる。
 髪から微かに石鹸の香りがして、胸がドキドキした。

 「……お姉ちゃん、重い」

 「失礼ね。お姉ちゃんだって可憐なのよ」

 「可憐が聞いて呆れる……」

 「ふふ、ヒロのくせに生意気」

 言葉ではそう言いながらも、お姉ちゃんは目を細めて優しく微笑んだ。

 (……やっぱり可愛いな)

 小さくそう思ってしまう自分がいた。



 家に戻ると、母さんは疲れたのか「ちょっと昼寝するわね」と言って自分の部屋へ行ってしまった。
 お父さんも旅行帰りの書類整理があるとかで書斎へ。

 「ふふ……また二人きりね」

 「……家でも?」

 「当たり前じゃない」

 お姉ちゃんは僕の手を取ると、そのまま自分の部屋へ引っ張っていった。
 部屋に入った瞬間、背中からそっと抱きつかれた。

 「ねぇヒロ」

 「……なに」

 「もうちょっと一緒にいたい」

 その言い方がいつもの女王様じゃなくて、少しだけ弱く聞こえて、僕の胸がくすぐったくなった。

 「……僕も」

 「ふふ、素直」

 お姉ちゃんは嬉しそうに微笑むと、僕を抱きしめる腕に力を込めた。



 ベッドに並んで座ると、お姉ちゃんは僕の髪を梳きながら静かに言った。

 「ヒロ?」

 「……なに」

 「旅行、楽しかった?」

 「……うん」

 「私と一緒にいられて?」

 「……うん」

 「もっとちゃんと言いなさい」

 「……お姉ちゃんと一緒で、すごく楽しかった」

 そう言った瞬間、お姉ちゃんは少しだけ驚いた顔をした。
 それからすぐに微笑んで、そっと僕の頬に触れた。

 「可愛い」

 「……もう、そればっかり」

 「だって本当だもの」



 お姉ちゃんの指先がそっと僕の顎を持ち上げる。

 「ヒロ……命令して欲しい?」

 「……え?」

 「この間、寝る前に“お姉ちゃんにもっと命令されたい”って小さな声で言ってたでしょ?」

 「……っ!」

 恥ずかしくて顔を覆うと、お姉ちゃんは小さく笑いながら僕の手を外し、さらに顔を近づけてきた。

 「可愛いヒロ。じゃあ命令してあげる」

 耳元にそっと唇を寄せて、熱い息で囁かれる。

 「“僕はお姉ちゃんだけの騎士です”って言いなさい」

 「……っ」

 瞳が潤んでしまうのを感じた。
 でも逃げられなかった。お姉ちゃんの目を見つめながら、小さな声で言った。

 「……僕は、お姉ちゃんだけの騎士です」

 「よくできました」

 お姉ちゃんは満足そうに微笑むと、そっと僕の唇に自分の唇を重ねた。



 そのまま、お姉ちゃんはベッドに僕を押し倒した。

 「ヒロ……もっとお姉ちゃんのものになりなさい」

 「……もう、なってるよ」

 「もっとよ」

 お姉ちゃんは首筋に口づけを落としながら、小さく囁いた。

 「ヒロが他の誰にも目移りしないように……」

 「……しない」

 「もっとちゃんと言って」

 「……お姉ちゃんだけ……他の人なんて、見ない……」

 「……ふふっ、いい子」

 お姉ちゃんはそっと笑って僕の頭を撫でた。
 その指がとても優しくて、胸の奥が甘く痺れる。



 「ねぇヒロ?」

 「……なに」

 「私、ずっとヒロの女王様でいていい?」

 いつもなら当然のように「女王様なんだから」と言うお姉ちゃんが、少し不安そうに聞くその顔が可愛くて、僕は自然と笑ってしまった。

 「……ずっといて」

 「……!」

 お姉ちゃんは一瞬だけ驚いた顔をして、それからとろけるように微笑んだ。
 そしてまた、そっと僕を抱きしめた。

 「ヒロは優しいのね」

 「……優しくないよ」

 「どうして?」

 「お姉ちゃんが他の誰かと話してたら、嫌だなって思うから……」

 お姉ちゃんの瞳が小さく揺れた。
 それから急にぎゅっと抱きしめられて、耳元で囁かれる。

 「ヒロ……可愛すぎる。もう……誰にも渡さない」

 「……うん」

 胸の奥がじんわり熱くなって、気づけば僕もお姉ちゃんの浴衣の背を掴んでいた。



 その夜、眠る前。

 お姉ちゃんは何度も何度も僕の髪に口づけを落とし、そして優しく囁いた。

 「ヒロはずっと、私だけのもの。これからもずっと――わかった?」

 「……うん」

 「よし……いい子」

 ベッドの上で絡み合う指と指。
 その温かさを確かめながら、僕はそっと目を閉じた。

 お姉ちゃんの匂いと温もりに包まれていると、それだけで世界の全部が大丈夫な気がした。
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