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1.蒼き異才、動き出す
帝大入学、13歳の異才
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東京・本郷。まだ戦火が本格化する前の昭和十六年(1941年)――春。
桜が舞う帝国大学構内に、ひときわ異彩を放つ少年の姿があった。
艶のある銀青色の髪、整った中性的な顔立ち。誰もが振り返るような美貌――だが、その瞳は年齢不相応なほど深く、冷静だった。
「…またお前か、蒼月」
帝大・理工学部の教授たちが、半ば呆れ、半ば期待を込めて声をかける。
蒼月レイ――十三歳。東京帝国大学・少年研究員。
彼の名は、すでに軍部や内閣の一部にすら知られていた。
「はい、資料の更新分です。航空燃料効率の件、改善案をまとめました」
滑らかな口調でそう言うと、少年は分厚い書類を手渡した。そこに書かれていたのは、当時の日本が抱えていた最大の弱点――石油の消費量を半減させる画期的な熱変換理論だった。
「……君、本当に十三歳か?」
「はい。戸籍をご覧になりますか?」
返す笑みすら隙がない。
その姿に、教授陣はいつしか「神童」ではなく「未来の兵器」とすら囁き始めていた。
⸻
レイの家庭は、元々政治や軍事と無縁の一般市民だった。父・蒼月謙一は中学教員、母・沙也加は病弱で、自宅で針仕事をしていた。
レイが三歳の頃、父は古本屋で偶然手に入れた『世界戦略論』という書物を読み聞かせたという。子守唄代わりに、それを聞きながら眠る少年は、やがて自分で地図を描き、数字を操り、言語を覚えた。
七歳で英語とドイツ語を独学で読み、八歳でフランス語の詩を暗唱。
十歳の時には、父の中学校で開かれた講義で「日独伊三国同盟の盲点」について論じ、新聞記者に取り上げられる。
「レイ、お前は世界に目を向けろ。国の言う通りではなく、自分の目でね」
父の言葉が、いつも彼の指針だった。
だが、その父は昭和十二年の春、中国・南京に教員派遣された直後、戦地で命を落とす。
理由は、敵弾ではない。伝染病による死。
不衛生な陣地に民間人を送った無策な上層部――それが、レイに現実を突きつけた。
「日本は、戦争に負ける。必ず、破滅する」
その日から彼は変わった。
軍事、経済、外交、医学――全てを学び、全てを統べる力を身につける。
「国を守る」とは、「戦うこと」ではない。「滅びを避ける術」を誰よりも早く知ること。
その覚悟が、十三歳の春、帝大の一室に立つレイを作り上げていた。
⸻
午後五時。日が傾く頃、帝国大学・理工実験室に一本の電話が鳴る。
それは、陸軍省・参謀本部からだった。
「蒼月レイ君に、至急来庁を要請したい。我々の未来を、彼に預けたい」
少年の名が、運命の歯車を回し始める――。
桜が舞う帝国大学構内に、ひときわ異彩を放つ少年の姿があった。
艶のある銀青色の髪、整った中性的な顔立ち。誰もが振り返るような美貌――だが、その瞳は年齢不相応なほど深く、冷静だった。
「…またお前か、蒼月」
帝大・理工学部の教授たちが、半ば呆れ、半ば期待を込めて声をかける。
蒼月レイ――十三歳。東京帝国大学・少年研究員。
彼の名は、すでに軍部や内閣の一部にすら知られていた。
「はい、資料の更新分です。航空燃料効率の件、改善案をまとめました」
滑らかな口調でそう言うと、少年は分厚い書類を手渡した。そこに書かれていたのは、当時の日本が抱えていた最大の弱点――石油の消費量を半減させる画期的な熱変換理論だった。
「……君、本当に十三歳か?」
「はい。戸籍をご覧になりますか?」
返す笑みすら隙がない。
その姿に、教授陣はいつしか「神童」ではなく「未来の兵器」とすら囁き始めていた。
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七歳で英語とドイツ語を独学で読み、八歳でフランス語の詩を暗唱。
十歳の時には、父の中学校で開かれた講義で「日独伊三国同盟の盲点」について論じ、新聞記者に取り上げられる。
「レイ、お前は世界に目を向けろ。国の言う通りではなく、自分の目でね」
父の言葉が、いつも彼の指針だった。
だが、その父は昭和十二年の春、中国・南京に教員派遣された直後、戦地で命を落とす。
理由は、敵弾ではない。伝染病による死。
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「日本は、戦争に負ける。必ず、破滅する」
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軍事、経済、外交、医学――全てを学び、全てを統べる力を身につける。
「国を守る」とは、「戦うこと」ではない。「滅びを避ける術」を誰よりも早く知ること。
その覚悟が、十三歳の春、帝大の一室に立つレイを作り上げていた。
⸻
午後五時。日が傾く頃、帝国大学・理工実験室に一本の電話が鳴る。
それは、陸軍省・参謀本部からだった。
「蒼月レイ君に、至急来庁を要請したい。我々の未来を、彼に預けたい」
少年の名が、運命の歯車を回し始める――。
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