日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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10.新時代の夜明け

檻の記憶

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1942年(昭和17年)7月25日
新京・満州国国務院庁舎 地下第一会議室

分厚い鉄扉の向こう、会議室に集められたのは、かつて“満州建国”を主導した関東軍の一部将校たちだった。彼らはレイの構想に対し、表面上は従っているものの、心中には不満と不信を抱え続けていた。

「我々が作り上げた国を、たかが少年の空論で解体されるわけにはいかん」
「“共栄”などと耳障りのいいことを言っても、連中は裏切る。民族とはそういうものだ」

部屋に漂う重い空気を、スーツ姿の一人の男が断ち切った。
岸本信介の後任として“監督責任”を任された拓務官僚・植田誠吾だった。

「では、レイ閣下に直談判なさいますか?……この部屋の外には、すでに新しい“評議局”の視察団が待っていますが」

誰も答えられなかった。



同日 午後/新京大学 大講堂(臨時議場)

ここは、レイが臨時の“国際政策研究会”を設けた拠点だった。
満州人・朝鮮人・漢民族・モンゴル系の若手学生が一堂に集まるこの場で、レイは“共栄憲章”に基づいた運用指針を議論していた。

「今日のテーマは、“共通教育カリキュラム”の導入です」

黒板には各民族ごとの教育方針と、共通価値教育としての“アジアの近代史”が記されていた。

「あなたは……“自分の国”を信じているのか?」
そう尋ねたのは、抗日運動家の家系を持つ漢民族の学生・劉 天明(リウ・ティエンミン)。

レイは正面から受け止めた。
「僕は日本人だ。そして、同時に“この国に責任を持つ者”でもある。
君たちの不信はわかってる。でも、それでも――君にとっての“未来”に、日本という国が必要だと信じてる」

静寂の中、劉は初めて目を逸らした。



7月26日 夜/新京・政府迎賓館

レイは夜の帳の中、ひとり中庭を歩いていた。
そこに現れたのは、再びレイの補佐を務めることになった外交官・藤堂清嗣だった。

「帰ってきて早々、火中の栗を拾うとは……君らしい」

「でも、拾わなきゃ誰かが火傷するんだよ」

ふたりは縁側に座り、夜空を見上げた。

「この国はね、藤堂さん。かつては“檻”だった。軍と官僚の都合で設計された、仮初めの国。
でも、もう違う。今は、誰かの“ふるさと”になろうとしてるんだ」

藤堂はふと微笑み、言った。

「ならば、かつての檻がどう作られたか――その“記憶”も、君が描きかえるんだな」

レイは頷いた。
「ええ。“過去を封じる”んじゃなくて、“未来の文脈に書き直す”んです」

そして彼は、再び地図の上にペンを走らせた。
その線は、“占領の線”ではなく、“共栄の境界”を示すものであった。
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