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小さな贈り物
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第13章:小さな贈りもの
日曜日の朝、カーテン越しにやさしい光が差し込む。
蒼はキッチンでゆっくりコーヒーを淹れていた。
ソファでは、はるが何やら紙と鉛筆を前に、真剣な顔つきで何かを書いている。
「何してるの?」
「……ひみつ!」
蒼が尋ねても、はるはにやっと笑ってごまかすだけだった。
「ふふーん、おにいちゃんには見せてあげないよーだ」
「えぇ……ちょっと気になるな」
「できたら見せるから、楽しみにしてて」
はるがこんなふうに何かに夢中になる姿を見るのは久しぶりだった。
蒼は「何か企んでるな」と思いながらも、それがどこか微笑ましくて、黙って見守ることにした。
⸻
その日の午後、蒼が出かけている間に、はるは部屋で静かに作業を続けていた。
色鉛筆で塗り絵をしたり、折り紙を折ったり、何度も書き直した手紙を丸めたり――
「よし……これで、いいや」
はるはそっと、完成した小さな箱を抱えてにっこり笑った。
⸻
夕方。蒼が帰宅すると、玄関のドアの前には小さな紙袋が置いてあった。
「……これ、はる?」
「うん! 開けていいよ!」
中をのぞくと、小さな手作りのメッセージカードと、折り紙で作った星や花、そしてチョコレートがひとつ入っていた。
カードには、拙い字でこう書かれていた。
⸻
おにいちゃんへ
いつも いっしょにいてくれてありがとう
おしごと つかれたら、チョコたべてね
はるは いまも、これからも
おにいちゃんの いちばんの みかたです
だいすき
はる より
⸻
蒼はその場にしゃがみこみ、しばらく何も言えなかった。
胸の奥に、ゆっくりと温かいものが広がっていく。
「……はる。すごく嬉しいよ。ありがとう」
「えへへ……ぼく、おにいちゃんに“なにかしてあげたい”って思ったの。
いつも守ってもらってるばっかりだから、今度はぼくが何かしたくて」
蒼はそっと手を伸ばし、はるを抱きしめた。
「もう……十分すぎるよ。こんなに優しくて、あったかい贈り物、初めてだ」
はるの小さな手が、そっと蒼の背中を抱き返す。
言葉では言い尽くせない想いが、ふたりのあいだに確かに存在していた。
日曜日の朝、カーテン越しにやさしい光が差し込む。
蒼はキッチンでゆっくりコーヒーを淹れていた。
ソファでは、はるが何やら紙と鉛筆を前に、真剣な顔つきで何かを書いている。
「何してるの?」
「……ひみつ!」
蒼が尋ねても、はるはにやっと笑ってごまかすだけだった。
「ふふーん、おにいちゃんには見せてあげないよーだ」
「えぇ……ちょっと気になるな」
「できたら見せるから、楽しみにしてて」
はるがこんなふうに何かに夢中になる姿を見るのは久しぶりだった。
蒼は「何か企んでるな」と思いながらも、それがどこか微笑ましくて、黙って見守ることにした。
⸻
その日の午後、蒼が出かけている間に、はるは部屋で静かに作業を続けていた。
色鉛筆で塗り絵をしたり、折り紙を折ったり、何度も書き直した手紙を丸めたり――
「よし……これで、いいや」
はるはそっと、完成した小さな箱を抱えてにっこり笑った。
⸻
夕方。蒼が帰宅すると、玄関のドアの前には小さな紙袋が置いてあった。
「……これ、はる?」
「うん! 開けていいよ!」
中をのぞくと、小さな手作りのメッセージカードと、折り紙で作った星や花、そしてチョコレートがひとつ入っていた。
カードには、拙い字でこう書かれていた。
⸻
おにいちゃんへ
いつも いっしょにいてくれてありがとう
おしごと つかれたら、チョコたべてね
はるは いまも、これからも
おにいちゃんの いちばんの みかたです
だいすき
はる より
⸻
蒼はその場にしゃがみこみ、しばらく何も言えなかった。
胸の奥に、ゆっくりと温かいものが広がっていく。
「……はる。すごく嬉しいよ。ありがとう」
「えへへ……ぼく、おにいちゃんに“なにかしてあげたい”って思ったの。
いつも守ってもらってるばっかりだから、今度はぼくが何かしたくて」
蒼はそっと手を伸ばし、はるを抱きしめた。
「もう……十分すぎるよ。こんなに優しくて、あったかい贈り物、初めてだ」
はるの小さな手が、そっと蒼の背中を抱き返す。
言葉では言い尽くせない想いが、ふたりのあいだに確かに存在していた。
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