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2話 真っ直ぐな言葉
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完全に不覚だった。
まさかあの時、スマートフォンをスられていたなんて。
二度と行くまいと思っていた公園に、再び行く羽目になってしまった。
目の前には、天使の皮を被った狂人が手を振り出迎える。
「あ、待ってましたよ!大原さん!」
昨日は、連日の激務の一時の憩いの場としてたまに利用している公園で、仮眠を取っていた。
寝ている最中、何やらブツブツとうるさく、目を覚ましたらーー
この怪しい少年と出会った。
人のブツを勝手にしゃぶり、そして唐突に告白まで受けるという頭が痛い展開に、心も追いつかない。
せっかくの貴重な休み時間が、とんだ災厄になってしまったのにも関わらず、俺は再びコイツの元にやってきてしまった。
「返せ、窃盗犯」
「そんな怖い顔しないでください~。せっかくの美人が台無しですよっ!」
ニコニコと笑顔で側に寄ってくる少年は、自分のしていることに一切の迷いも感じていないようだ。
「スマホは返してあげます……あ、僕の番号も登録してあげたので、電話してくださいねっ」
即着信拒否してやる、と心で思った。
「⋯⋯。」
さっさと返せ、と無言で手を差し出す。
少年はたじろぎながら、上目遣いでこちらを見てくる。
「あの、怒ってます⋯⋯?」
「怒ってないわけないだろ!いいから早く返せ!」
携帯を取り上げようと掴みかかったが、逆に抱きつかれてしまう。
「てめ⋯⋯」
「あの!僕たち絶対運命だと思います!ヤれば分かります!」
「ハァ?」
ヤれば分かるって何をだ、分かってたまるか。
しがみついている腕をひっぺがし、スーツの皺を整える。
「残念だが、俺には彼女がいる」
「嘘です。昨日スマホの中見ましたけど、そんな感じの人いませんでした⋯⋯それに、」
「お前ほんとに犯罪者だな!?」
一瞬で嘘を見抜かれたが、そんなことよりも目の前の常識外れを睨み付ける。
「お願いします⋯⋯付き合ってくれなくても、せめてセフレになってください。絶対悪くはしませんから!」
口を開けば次から次へと、頭を抱えたくなるような発言が飛び出してくる。
昨日も頭の隅で感じていたが、再びそんな素振りを見せられて、やはり確信した。
こいつ、ビッチだ。と
「仕事ばかりで溜まっているでしょう?僕を使って下さい!」
こんな可愛らしい顔の少年から、不釣り合いな爆弾発言にキリキリと胃が痛む。
そんなことはお構い無しに、目の前のビッチ学生は、キラキラと無駄に大きな瞳をこちらに向ける。
「あのなぁ。お前中学生だろ?そんなことしたら、俺が捕ま⋯⋯」
「失礼な!僕大学生ですよ!もう二十歳です!」
「大⋯⋯はたち?」
こんな小柄な見た目から、大学生やら二十歳など、信じられない言葉が耳に飛び込んでくる。
何よりも、俺とたったの二つしか違わないなんて。
「怒ったので癒してください!」
いつの間にか、スラックスのベルトに手をかけていたそいつの頭を思いっきり引っ叩いた。
「あうっ!痛いですよ、もう!」
大仰しく頬を膨らませ、頭を抑え見上げてくるビッチ学生の涙ぐむ姿を、何故か可愛いと思ってしまった。
(ばっ⋯⋯何考えてんだ、俺は!?)
「……マジでいい加減にしないと、本気で訴えるからな」
ゴホンと咳払いをして、気持ちの軌道修正をする。
疲れているんだ。もう三日も家に帰って寝てないし、どうかしている。と、これ以上は取り返しのつかないことになりそうな感情の揺れを察知し、早くコイツから離れようと思った。
「じゃあせめて一回……一回だけでいいからヤらせて下さい⋯⋯!」
袖を掴んでうるうると、健気に訴え続ける目の前の男に、心が僅かに揺れる。
「ーーッ」
(ハッ!ダメだ。多分コイツはこうやって何度も相手を落としているに違いない⋯⋯)
一瞬傾きかけた理性を必死に抑え我に返る。
「俺の代わりなんていくらでもいるんだろ」
「大原さんが付き合ってくれるなら、その人たちとは縁を切ります!僕、それくらい貴方のことを好きになってしまったんです!」
これまでにないくらいダイレクトにぶつけてくる愛の言葉に、また心が揺らぎそうになる。
「僕、本気ですから!」
「っ、」
真っ直ぐ通る声、連日の徹夜、ままならない思考、眩しい眼差しに、遂に断念してしまった。
「わ、かった……から、考えておく……。今はとりあえずスマホを返せ。まだ仕事があるんだこっちは⋯⋯」
「すいません。家に置いてます」
「はぁあああ!?」
今日と昨日で、どれくらい大きな声を出したことだろう。
仕事以外でこんなに疲れるのは、本当に無駄な労力でしかない。勘弁して欲しい。
「でも大丈夫です!僕、すぐそこのマンションに住んでいるので、今から取りに行きましょう!」
ぐい、と乱暴に手を引かれる。
絶対、何かよからぬことを考えているに違いないが、携帯を取り返す為に、殴りたい気持ちをグッと堪えて、男に身を委ねた。
まさかあの時、スマートフォンをスられていたなんて。
二度と行くまいと思っていた公園に、再び行く羽目になってしまった。
目の前には、天使の皮を被った狂人が手を振り出迎える。
「あ、待ってましたよ!大原さん!」
昨日は、連日の激務の一時の憩いの場としてたまに利用している公園で、仮眠を取っていた。
寝ている最中、何やらブツブツとうるさく、目を覚ましたらーー
この怪しい少年と出会った。
人のブツを勝手にしゃぶり、そして唐突に告白まで受けるという頭が痛い展開に、心も追いつかない。
せっかくの貴重な休み時間が、とんだ災厄になってしまったのにも関わらず、俺は再びコイツの元にやってきてしまった。
「返せ、窃盗犯」
「そんな怖い顔しないでください~。せっかくの美人が台無しですよっ!」
ニコニコと笑顔で側に寄ってくる少年は、自分のしていることに一切の迷いも感じていないようだ。
「スマホは返してあげます……あ、僕の番号も登録してあげたので、電話してくださいねっ」
即着信拒否してやる、と心で思った。
「⋯⋯。」
さっさと返せ、と無言で手を差し出す。
少年はたじろぎながら、上目遣いでこちらを見てくる。
「あの、怒ってます⋯⋯?」
「怒ってないわけないだろ!いいから早く返せ!」
携帯を取り上げようと掴みかかったが、逆に抱きつかれてしまう。
「てめ⋯⋯」
「あの!僕たち絶対運命だと思います!ヤれば分かります!」
「ハァ?」
ヤれば分かるって何をだ、分かってたまるか。
しがみついている腕をひっぺがし、スーツの皺を整える。
「残念だが、俺には彼女がいる」
「嘘です。昨日スマホの中見ましたけど、そんな感じの人いませんでした⋯⋯それに、」
「お前ほんとに犯罪者だな!?」
一瞬で嘘を見抜かれたが、そんなことよりも目の前の常識外れを睨み付ける。
「お願いします⋯⋯付き合ってくれなくても、せめてセフレになってください。絶対悪くはしませんから!」
口を開けば次から次へと、頭を抱えたくなるような発言が飛び出してくる。
昨日も頭の隅で感じていたが、再びそんな素振りを見せられて、やはり確信した。
こいつ、ビッチだ。と
「仕事ばかりで溜まっているでしょう?僕を使って下さい!」
こんな可愛らしい顔の少年から、不釣り合いな爆弾発言にキリキリと胃が痛む。
そんなことはお構い無しに、目の前のビッチ学生は、キラキラと無駄に大きな瞳をこちらに向ける。
「あのなぁ。お前中学生だろ?そんなことしたら、俺が捕ま⋯⋯」
「失礼な!僕大学生ですよ!もう二十歳です!」
「大⋯⋯はたち?」
こんな小柄な見た目から、大学生やら二十歳など、信じられない言葉が耳に飛び込んでくる。
何よりも、俺とたったの二つしか違わないなんて。
「怒ったので癒してください!」
いつの間にか、スラックスのベルトに手をかけていたそいつの頭を思いっきり引っ叩いた。
「あうっ!痛いですよ、もう!」
大仰しく頬を膨らませ、頭を抑え見上げてくるビッチ学生の涙ぐむ姿を、何故か可愛いと思ってしまった。
(ばっ⋯⋯何考えてんだ、俺は!?)
「……マジでいい加減にしないと、本気で訴えるからな」
ゴホンと咳払いをして、気持ちの軌道修正をする。
疲れているんだ。もう三日も家に帰って寝てないし、どうかしている。と、これ以上は取り返しのつかないことになりそうな感情の揺れを察知し、早くコイツから離れようと思った。
「じゃあせめて一回……一回だけでいいからヤらせて下さい⋯⋯!」
袖を掴んでうるうると、健気に訴え続ける目の前の男に、心が僅かに揺れる。
「ーーッ」
(ハッ!ダメだ。多分コイツはこうやって何度も相手を落としているに違いない⋯⋯)
一瞬傾きかけた理性を必死に抑え我に返る。
「俺の代わりなんていくらでもいるんだろ」
「大原さんが付き合ってくれるなら、その人たちとは縁を切ります!僕、それくらい貴方のことを好きになってしまったんです!」
これまでにないくらいダイレクトにぶつけてくる愛の言葉に、また心が揺らぎそうになる。
「僕、本気ですから!」
「っ、」
真っ直ぐ通る声、連日の徹夜、ままならない思考、眩しい眼差しに、遂に断念してしまった。
「わ、かった……から、考えておく……。今はとりあえずスマホを返せ。まだ仕事があるんだこっちは⋯⋯」
「すいません。家に置いてます」
「はぁあああ!?」
今日と昨日で、どれくらい大きな声を出したことだろう。
仕事以外でこんなに疲れるのは、本当に無駄な労力でしかない。勘弁して欲しい。
「でも大丈夫です!僕、すぐそこのマンションに住んでいるので、今から取りに行きましょう!」
ぐい、と乱暴に手を引かれる。
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