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第一部
休んで
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side:秋
ああ、最悪。
ふわふわと良い気持ちで泳いでいたと思ったのに、急に先生に手を掴まれた。現実に引きずり戻されると、あまりの寒さに体が動かなくて先生にされるがままになった。
悔しくて、泣きたくなって「まだおよぐ」とワガママを言っても先生は優しく答えてくれる。そのうち、誰にも言いたくない醜い心までぽろりと言ってしまいそうになって慌てて口をつぐんだ。
先生はなにも聞かなくなって、やっぱり大人だなっておもう。僕はこんなにみじめにグルグルしてるのに、先生は助けてくれようとしてるから。
「ここ座ってな」
ぽんぽんとソファをたたかれ、そこに座る。
先生は僕と違って暑く感じてるかもしれないのに、エアコンはつけない。
有り難いけど、やっぱり申し訳ない。
俯いていると、先生は毛布を抱えて戻ってきた。
「とりあえずくるまってて、眠ければベッド行こうな」
時計を見ると23時を回っていた。前までは規則正しい生活をしていたから日付が変わることなどあまりなかった。
でも最近はこの時間からが自分の勝負の時間になってきている。
「ねむくないです」
寝るのは、怖い。嫌な夢を見るから。出来るだけ限界まで起きて、体力を削りたい。そうしてつく眠りは泥のようで夢なんて見ないから。
今日はもう寝てしまったしごはんも食べた。落ち着いて寝たら嫌な夢を見るのに。
先生は「うーん…」と困ったように笑った。
養護教諭だから、僕の状況なんてわかってるのかな。
ああ、最悪。
ふわふわと良い気持ちで泳いでいたと思ったのに、急に先生に手を掴まれた。現実に引きずり戻されると、あまりの寒さに体が動かなくて先生にされるがままになった。
悔しくて、泣きたくなって「まだおよぐ」とワガママを言っても先生は優しく答えてくれる。そのうち、誰にも言いたくない醜い心までぽろりと言ってしまいそうになって慌てて口をつぐんだ。
先生はなにも聞かなくなって、やっぱり大人だなっておもう。僕はこんなにみじめにグルグルしてるのに、先生は助けてくれようとしてるから。
「ここ座ってな」
ぽんぽんとソファをたたかれ、そこに座る。
先生は僕と違って暑く感じてるかもしれないのに、エアコンはつけない。
有り難いけど、やっぱり申し訳ない。
俯いていると、先生は毛布を抱えて戻ってきた。
「とりあえずくるまってて、眠ければベッド行こうな」
時計を見ると23時を回っていた。前までは規則正しい生活をしていたから日付が変わることなどあまりなかった。
でも最近はこの時間からが自分の勝負の時間になってきている。
「ねむくないです」
寝るのは、怖い。嫌な夢を見るから。出来るだけ限界まで起きて、体力を削りたい。そうしてつく眠りは泥のようで夢なんて見ないから。
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先生は「うーん…」と困ったように笑った。
養護教諭だから、僕の状況なんてわかってるのかな。
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