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出会いは突然に
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彼という存在との出会いは、夕立のようだった。
ある日、僕は何時もより早く目が覚めた。
幾人ものマイク越しの声と、最近流行りのキラキラしたアイドルが踊って歌っていそうな曲、果てには、いとまきまきという童謡までが大音量で鳴り響いている。
そう、今日は隣の県立高校の体育祭の日だ。
「くそっ…うるさいな…」
最悪の目覚めだ、未だ開かない目を擦りつつ僕はテレビをつける。
録画していた今日の星占いを見るのが僕の日課だ。
「今日の星占い12位はたけのこ座のあなた!鳥のさえずりで起きるような理想的な日ではなく、波乱万丈な日になっちゃうかも…??」
普段は独り言を言わない僕だが、今に至ってはとにかく外の音から気を逸らしたい一心で、
「全くその通りだ、なんせスターターピストルの音で目覚めたんだからな。」
と微笑した。
意識は逸らせたが、腹の虫は収まらなかった。
やはりクレームを入れてやらないと気が済まない。
「…1位はきのこ座のあなた!念願叶って素敵なことが起きるでしょう!!」
そんな星占い担当の美人アナウンサーの声は無視してリモコンに手をかける。
僕は支度をして、知事の元を訪れようと家を出た。
数時間後…
カツカツと力を込め県役所の整った床を踏みしめていく、
「田宮さん!!お久しぶりです!!」
「ん?あぁ、久しぶり。」
反射的に声が出た、そこに居たのは顔なじみの県庁職員だった。
丁度いいタイミングだな。
「おい、聞いてくれよ。」
僕は、今朝の悪夢のような目覚めについて愚痴をたっぷりと彼にぶちまけた。とても気分がいい。
一通り話終わったあと、少しの沈黙の後に彼は恐る恐る口を開いた。
「あの…田宮さん、結婚されたんですね!おめでとうございます!」
は?彼は一体何を言っているんだ?
そろそろお昼寝にぴったりの時間だからと寝ぼけているのだろう。
「おい、ふざけているのか。冗談はよしてくれ、気分が悪い。」
廊下に声が鳴り響き周りの目が一斉にこちらを向く、だがそんなことは気にしていられない。
早くこのつまらない冗談をやめさせないといけないからだ。
「冗談じゃありませんよ!!疑うのならこちらを見ていただけますか…?」
彼はもたつきながら、1枚の婚姻届を取り出した。
そこにはまるで当たり前だとでも言うかのように、僕の名前と相手の名前が走り書きで記してあった。
相手の名前を見て、僕は目眩がした。
「相手は一体…もしや、男…か?」
こくりと頷く彼、これは夢なのか…?
失神しそうだが、何とか堪え走り出す。
あぁ、今はエレベーターを待つ時間さえ惜しい!!
この事実を確認しにいかないと今日は目覚めだけでなく、寝付きでさえもが悪くなることは目に見えているのだ。
「これは一体どういうことなんだ!!誰がこんなことをした!?」
長い睫毛を震わせ、大きく目を見開く職員に私は捲し立てた。
「あ…その件ですね。」
その職員に話を聞くと、サングラスに帽子を深く被った男が婚姻届を出しにきたことがわかった。
「なぜ男同士の結婚が認められるんだ!?おかしいだろう!!」
職員は、眉を八の字にし答えた。
「いや…最近同性婚が認められたばかりでして。」
何だってそんなことを認めたのだ…
僕はもう何も話せる気力がなくて、この婚姻は無効であると主張したのだが、
「そんなこと言われましても…届けが出ている以上、婚姻関係は正式であると見なされますので。」
ポ〇モンバトルで負けた時のトレーナーの感覚が痛いほどに身にしみた。
視界がふらつく中、僕は何を思ったのだろう。
蚊の鳴くような声ではあるが、口からはっきりとした言葉が溢れ出した。
「会ってみるか…」
職員の耳にその言葉が届いた時、一瞬目を丸くしたがすぐに要望を承ってくれた。
僕は配偶者の名前を見てつぶやいた。
「餅谷康生…か…」
ある日、僕は何時もより早く目が覚めた。
幾人ものマイク越しの声と、最近流行りのキラキラしたアイドルが踊って歌っていそうな曲、果てには、いとまきまきという童謡までが大音量で鳴り響いている。
そう、今日は隣の県立高校の体育祭の日だ。
「くそっ…うるさいな…」
最悪の目覚めだ、未だ開かない目を擦りつつ僕はテレビをつける。
録画していた今日の星占いを見るのが僕の日課だ。
「今日の星占い12位はたけのこ座のあなた!鳥のさえずりで起きるような理想的な日ではなく、波乱万丈な日になっちゃうかも…??」
普段は独り言を言わない僕だが、今に至ってはとにかく外の音から気を逸らしたい一心で、
「全くその通りだ、なんせスターターピストルの音で目覚めたんだからな。」
と微笑した。
意識は逸らせたが、腹の虫は収まらなかった。
やはりクレームを入れてやらないと気が済まない。
「…1位はきのこ座のあなた!念願叶って素敵なことが起きるでしょう!!」
そんな星占い担当の美人アナウンサーの声は無視してリモコンに手をかける。
僕は支度をして、知事の元を訪れようと家を出た。
数時間後…
カツカツと力を込め県役所の整った床を踏みしめていく、
「田宮さん!!お久しぶりです!!」
「ん?あぁ、久しぶり。」
反射的に声が出た、そこに居たのは顔なじみの県庁職員だった。
丁度いいタイミングだな。
「おい、聞いてくれよ。」
僕は、今朝の悪夢のような目覚めについて愚痴をたっぷりと彼にぶちまけた。とても気分がいい。
一通り話終わったあと、少しの沈黙の後に彼は恐る恐る口を開いた。
「あの…田宮さん、結婚されたんですね!おめでとうございます!」
は?彼は一体何を言っているんだ?
そろそろお昼寝にぴったりの時間だからと寝ぼけているのだろう。
「おい、ふざけているのか。冗談はよしてくれ、気分が悪い。」
廊下に声が鳴り響き周りの目が一斉にこちらを向く、だがそんなことは気にしていられない。
早くこのつまらない冗談をやめさせないといけないからだ。
「冗談じゃありませんよ!!疑うのならこちらを見ていただけますか…?」
彼はもたつきながら、1枚の婚姻届を取り出した。
そこにはまるで当たり前だとでも言うかのように、僕の名前と相手の名前が走り書きで記してあった。
相手の名前を見て、僕は目眩がした。
「相手は一体…もしや、男…か?」
こくりと頷く彼、これは夢なのか…?
失神しそうだが、何とか堪え走り出す。
あぁ、今はエレベーターを待つ時間さえ惜しい!!
この事実を確認しにいかないと今日は目覚めだけでなく、寝付きでさえもが悪くなることは目に見えているのだ。
「これは一体どういうことなんだ!!誰がこんなことをした!?」
長い睫毛を震わせ、大きく目を見開く職員に私は捲し立てた。
「あ…その件ですね。」
その職員に話を聞くと、サングラスに帽子を深く被った男が婚姻届を出しにきたことがわかった。
「なぜ男同士の結婚が認められるんだ!?おかしいだろう!!」
職員は、眉を八の字にし答えた。
「いや…最近同性婚が認められたばかりでして。」
何だってそんなことを認めたのだ…
僕はもう何も話せる気力がなくて、この婚姻は無効であると主張したのだが、
「そんなこと言われましても…届けが出ている以上、婚姻関係は正式であると見なされますので。」
ポ〇モンバトルで負けた時のトレーナーの感覚が痛いほどに身にしみた。
視界がふらつく中、僕は何を思ったのだろう。
蚊の鳴くような声ではあるが、口からはっきりとした言葉が溢れ出した。
「会ってみるか…」
職員の耳にその言葉が届いた時、一瞬目を丸くしたがすぐに要望を承ってくれた。
僕は配偶者の名前を見てつぶやいた。
「餅谷康生…か…」
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