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第5話 愛情
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「久しぶり我が家! ただいまー」
「はい、おかえり」
領都ルインに着いた私たちは、いつまで経っても変わらない風景を視界に収めつつ我が家へ帰った。
「あっ、そうだミーシャ。その予備杖はあなたにあげるわ、予備と言ってもお父さんが作っただけあって性能は良いからね」
「ほんと? ありがとー!」
これで杖の問題は解決と⋯⋯あとは少しの服とお金ぐらいか。
階段を急いで上るミーシャは生き生きとした表情で自室に入った。
「ミーシャー! これから昼食だぞー」
「ごめんちょっと準備!」
「⋯⋯だってよルナエ」
「落ち着きないわね──」
懐かしー⋯⋯部屋が綺麗なまま、掃除しててくれたんだ。多分服はここで⋯⋯あったあった、あと鞄はいらないかな。
「異空間収納便利だわー」
服や部屋に残っていた三千リースの入った革袋を異空間収納に入れ、リビングへ向かった。
「今日の昼食は豪華にしましょう」
「もちろんだ」
「今日なんかの記念日だっけ?」
不思議に思った私は二人に聞いてみた、そしたらお母さんは料理をする手を止めて私の方へ寄ってきたお母さんは、私の目を見て複雑そうな笑顔を見せてくれた。
「どうせ直ぐ旅に出るんでしょ?」
その言葉を前に、私は何も言葉が出なかった。魔法学校に入る前も、入ったあとも、そして卒業した今までずっと気づかなかった⋯⋯いや、気づけなかった。
「なんというか⋯⋯」
感情を悟られないよう不自然ながらも机に手を置いてしまう私。周りの音が耳に入らない、まるで魔法にかけられたような感覚。
私は分かっている、分かっているからこそ、ミーシャの言葉に任せなくても心から嬉しい──
「今更だけど⋯⋯ちょっと寂しい⋯⋯かな」
「ミーシャっ!」
私に似て少し恥ずかしがり屋な女の子。好奇心旺盛で一度決めたことは何があってもやり遂げる、私の自慢の子。
「ミーシャ⋯⋯私も⋯⋯」
私は思わずミーシャを腕の中へ寄せ、ミーシャの全てを感じたい。⋯⋯でもそれは叶えない、欲張りすぎは良くないから。私はこの幸せがあるだけで十分。
「ねえ⋯⋯なんで?」
「──え?」
気づいたら私はお母さんに抱きついてしまっ⋯⋯いや違う、私が抱きつきたかった。少しでもこの寂しさが無くなりそうだったから。
「ありがとう⋯⋯」
「⋯⋯私こそだよ」
私とミーシャはしばらくの間抱擁を交わした。魔法学校で会えなかった三年間を埋めるには程遠い、一瞬の出来事だったけど⋯⋯私にはそれで十分⋯⋯。
それからは二人への愛情がこもったお父さんの料理を食べたり、お父さんとお母さんの頬にキスをせがまれたりと、遠慮がない本当の家族に戻れた気がした──
「もう朝か⋯⋯」
服を着替える時に鳴る、この布が擦れる音も。自室から出て階段を降りる音すらも、私にドキドキをくれる。
「おはようミーシャ」
「おはよう、新たな門出だな」
「お父さん、お母さん、おはよう」
「朝食は食べていく?」
「うん、お願い」
私は緊張した手で椅子に手をかけ座る、すると台所の方からほのかに香る甘くて馴染みのある匂い。
「熱いから気をつけてね」
「ありがとう」
お母さんが台所から運んできてくれたのは、トウモロッコと鶏胸肉のクリームスープと、お母さんが愛情を込めて作ってくれたフワフワのパン。
「知ってる、これ好きなやつだ」
そう言ってミーシャはクリームスープをスプーンで掬《すく》い、心地の良い朝日を感じながら口へと運んだ。
「美味しい⋯⋯けどなんか違う?」
「隠し味よ」
私は直ぐお母さんの顔を見たけど、表情は何も変わったところはなかった。⋯⋯多分これ、食べても大丈夫なやつだ。
「何入れたの?」
「何も入れてないわよ」
「どういうこと?」
意味が分からない返しにミーシャは疑問を抱きながらも、フワフワなパンを一口程度にちぎり、口を上下に動かす。
「もしかして隠し味って⋯⋯愛情⋯⋯?」
「半分正解、半分外れかな」
なにそれ、愛情って言うの結構恥ずかしかったのに⋯⋯。
「ちなみに、外れの方はお父さんのスープには入ってなかったよ」
「⋯⋯もっと分からなくなった」
そのまま答えを見つけられずに朝食を食べ終えたミーシャは、水を一口飲むと玄関に向かった。
「異空間収納に必要なもの入れた? 家の鍵は持った? 旅に必要なお金は? まずは冒険者ギルドに行って冒険者カードを発行してもらうのよ、そしたら依頼をこなしてミーシャでもお金稼げるようになるから」
「ありがとうお母さん、でも大丈夫。忘れ物があったらまた帰ってくるよ」
「それもそうね」
「いつでも帰ってこい、ミーシャ」
「うん、行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
こうしてミーシャはアングレー家から飛び立ち、晴れて旅人となった。
「ひとまず冒険者ギルドに行って、冒険者カードを発行してもらおう」
このカードが無いと不便だし入国税が勿体ないって聞いた、でも月に一度は依頼を達成しないとカードの更新が出来なくて、有効期限が切れて使えなくなるらしいけど──
「そういえばルナエ、ミーシャのスープに入れた隠し味って結局なんだったんだ?」
「一つは愛情、そしてもう一つは魔力」
「っ! ルナエの魔力なんて体に入れたら──」
「大丈夫、ミーシャなら魔力暴走なんて起こさないわ。ちょっとしたお守りみたいなものよ」
「はい、おかえり」
領都ルインに着いた私たちは、いつまで経っても変わらない風景を視界に収めつつ我が家へ帰った。
「あっ、そうだミーシャ。その予備杖はあなたにあげるわ、予備と言ってもお父さんが作っただけあって性能は良いからね」
「ほんと? ありがとー!」
これで杖の問題は解決と⋯⋯あとは少しの服とお金ぐらいか。
階段を急いで上るミーシャは生き生きとした表情で自室に入った。
「ミーシャー! これから昼食だぞー」
「ごめんちょっと準備!」
「⋯⋯だってよルナエ」
「落ち着きないわね──」
懐かしー⋯⋯部屋が綺麗なまま、掃除しててくれたんだ。多分服はここで⋯⋯あったあった、あと鞄はいらないかな。
「異空間収納便利だわー」
服や部屋に残っていた三千リースの入った革袋を異空間収納に入れ、リビングへ向かった。
「今日の昼食は豪華にしましょう」
「もちろんだ」
「今日なんかの記念日だっけ?」
不思議に思った私は二人に聞いてみた、そしたらお母さんは料理をする手を止めて私の方へ寄ってきたお母さんは、私の目を見て複雑そうな笑顔を見せてくれた。
「どうせ直ぐ旅に出るんでしょ?」
その言葉を前に、私は何も言葉が出なかった。魔法学校に入る前も、入ったあとも、そして卒業した今までずっと気づかなかった⋯⋯いや、気づけなかった。
「なんというか⋯⋯」
感情を悟られないよう不自然ながらも机に手を置いてしまう私。周りの音が耳に入らない、まるで魔法にかけられたような感覚。
私は分かっている、分かっているからこそ、ミーシャの言葉に任せなくても心から嬉しい──
「今更だけど⋯⋯ちょっと寂しい⋯⋯かな」
「ミーシャっ!」
私に似て少し恥ずかしがり屋な女の子。好奇心旺盛で一度決めたことは何があってもやり遂げる、私の自慢の子。
「ミーシャ⋯⋯私も⋯⋯」
私は思わずミーシャを腕の中へ寄せ、ミーシャの全てを感じたい。⋯⋯でもそれは叶えない、欲張りすぎは良くないから。私はこの幸せがあるだけで十分。
「ねえ⋯⋯なんで?」
「──え?」
気づいたら私はお母さんに抱きついてしまっ⋯⋯いや違う、私が抱きつきたかった。少しでもこの寂しさが無くなりそうだったから。
「ありがとう⋯⋯」
「⋯⋯私こそだよ」
私とミーシャはしばらくの間抱擁を交わした。魔法学校で会えなかった三年間を埋めるには程遠い、一瞬の出来事だったけど⋯⋯私にはそれで十分⋯⋯。
それからは二人への愛情がこもったお父さんの料理を食べたり、お父さんとお母さんの頬にキスをせがまれたりと、遠慮がない本当の家族に戻れた気がした──
「もう朝か⋯⋯」
服を着替える時に鳴る、この布が擦れる音も。自室から出て階段を降りる音すらも、私にドキドキをくれる。
「おはようミーシャ」
「おはよう、新たな門出だな」
「お父さん、お母さん、おはよう」
「朝食は食べていく?」
「うん、お願い」
私は緊張した手で椅子に手をかけ座る、すると台所の方からほのかに香る甘くて馴染みのある匂い。
「熱いから気をつけてね」
「ありがとう」
お母さんが台所から運んできてくれたのは、トウモロッコと鶏胸肉のクリームスープと、お母さんが愛情を込めて作ってくれたフワフワのパン。
「知ってる、これ好きなやつだ」
そう言ってミーシャはクリームスープをスプーンで掬《すく》い、心地の良い朝日を感じながら口へと運んだ。
「美味しい⋯⋯けどなんか違う?」
「隠し味よ」
私は直ぐお母さんの顔を見たけど、表情は何も変わったところはなかった。⋯⋯多分これ、食べても大丈夫なやつだ。
「何入れたの?」
「何も入れてないわよ」
「どういうこと?」
意味が分からない返しにミーシャは疑問を抱きながらも、フワフワなパンを一口程度にちぎり、口を上下に動かす。
「もしかして隠し味って⋯⋯愛情⋯⋯?」
「半分正解、半分外れかな」
なにそれ、愛情って言うの結構恥ずかしかったのに⋯⋯。
「ちなみに、外れの方はお父さんのスープには入ってなかったよ」
「⋯⋯もっと分からなくなった」
そのまま答えを見つけられずに朝食を食べ終えたミーシャは、水を一口飲むと玄関に向かった。
「異空間収納に必要なもの入れた? 家の鍵は持った? 旅に必要なお金は? まずは冒険者ギルドに行って冒険者カードを発行してもらうのよ、そしたら依頼をこなしてミーシャでもお金稼げるようになるから」
「ありがとうお母さん、でも大丈夫。忘れ物があったらまた帰ってくるよ」
「それもそうね」
「いつでも帰ってこい、ミーシャ」
「うん、行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
こうしてミーシャはアングレー家から飛び立ち、晴れて旅人となった。
「ひとまず冒険者ギルドに行って、冒険者カードを発行してもらおう」
このカードが無いと不便だし入国税が勿体ないって聞いた、でも月に一度は依頼を達成しないとカードの更新が出来なくて、有効期限が切れて使えなくなるらしいけど──
「そういえばルナエ、ミーシャのスープに入れた隠し味って結局なんだったんだ?」
「一つは愛情、そしてもう一つは魔力」
「っ! ルナエの魔力なんて体に入れたら──」
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