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ジェミニ家の人々③
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昼食の準備が整ったとの知らせで食堂に足を運ぶと、まず目に飛び込んできたのは食卓の中央に鎮座する大きな花瓶だった。
庭で摘んだと思われる様々な花が互いを補うように生けられているその様に、ユアの唇も自然と綻んでしまう。
次に目を引いたのは花瓶以上に食卓を彩る数々の料理。どれもとても美味しそうで子供の頃にこんな光景を見せられていたらきっと料理に飛びかかっているに違いない
(そう言えば)
ユアはとあることを思い出し、カイルをジッと見る。こちらの視線に気づいたカイルは「入っているわけないだろう」と呆れて言う。万が一混入されていてもおそらく問題ないだろうけれど、やっぱり気分がいいものではない。
たははと笑い誤魔化すユアへ、メイドの一人が話しかけてきた。
「ユア様、どうぞこちらにお掛けください」
促されるまま引かれた椅子にぎこちなきく腰を落とすと、カイルとミゼルも同じように席へ着く。
3人が着座してから間もなく、琥珀色のスープが目の前に置かれた。
(こんなにも透き通っているスープは初めて……)
灰被りの街にいたときは、たとえ泥が混じっていてもスープが飲めることはまれだった。王宮で出される食事は泥こそ入っていないものの、カチコチのパンと冷え切ったスープが常だった。
ほんのりと湯気の立つスープをジッと見つめていると、カイルが一口二口とスープをすすりつつユアに視線を向けてくる。
「手をつけないな。なにか苦手なものでも入っているのか?」
問われ、ユアは慌てて首をブンブンと横に振った。
「見たこともないごちそうばかりが並んでいるからついつい見惚れていたの」
否定するとメイドたちから安堵の声が漏れ聞こえてくる。どうやら余計な気を使わせてしまったらしい。
「なら冷める前に食べろ。なにせあれだけ響く──ッ!」
途中で話を止めたカイルが不満そうな顔をミゼルに向ける。
ミゼルはコホンと咳払いすると、ユアに笑いかけた。
「当家の料理人が腕によりをかけて作りました。お口に合うかはわかりませんがどうぞ召し上がってください」
「お気遣いありがとうございます。ではありがたく頂戴いたします」
スープを口の中にそっと流し込む。
直後、今までに感じたことのない芳醇な味わいに全身が震え、いつしかスプーンを握る手が口とお皿の間を絶え間なく往復していく。
一心不乱に食べるユアを見て、ミゼルは満足そうに微笑んだ。
「聖女様のお口にあったようで何よりです」
気づけばスープの皿をあっという間に空にしていた。
(卑しい女だと思われちゃったかも)
スプーンを置いたユアは気恥ずかしさを誤魔化すように言う。
「最初にも言いましたが私はもう聖女じゃありません。その名でお呼びいただくのはどうぞご勘弁ください」
しかし、ミゼルは全く意に介した様子もなく、
「聖女様、是非こちらもお試しください。私が研究に研究を重ねて作り上げたジェミニ家自慢の一品です」
背後に控えているメイドたちが慌てて引き留める間もなかった。新しいジェミニ家の当主自らが空いているグラスへ、爽やかな柑橘系の香りがする液体を並々と注いでくる。
もちろん上級貴族に飲み物を注いでもらう機会なんてあるわけもなく、恐縮に恐縮を重ねたユアがカイルに助けを求める視線を向けたが、カイルは諦めろとばかりに小さく肩を竦ませてた。
その後も緊張が消えることはなかったが、それでも食事は和やかな雰囲気で進んでいった。
☆彡
☆彡
☆彡
「──なぜレガード王は禁忌を犯してまで異界人を呼び寄せたのでしょう。少し考えれば自分の首を絞めかねないとわかるはずなのに」
デザートが配られたタイミングで、口をナフキンで拭ったミゼルが思い出したように疑問を口にした。
カイルはグラスに注がれた水を一気に飲み干し、ふうと小さな息をつく。
「リーンフィル王国が事実上滅んだことでブリュンガルデ王国は名実ともに北の覇者となった。だが世界の覇者となるためにはまだまだ力が足りない」
「世界の覇者⁉ 北を支配しただけでは飽き足らずそんな大それたことをレガード王は考えているのですか⁉」
「そう俺は見ている」
「なんと愚かな……それでは再現なく玩具を欲しがる子供と一緒ではないですか」
「確かに愚かだと俺も思う。だが覇気そのものを否定するつもりはない。ジェミニ家が武に拠って立つことを考えればなおさらだ」
「しかし覇気だけで世界を統一できるほど甘くはありません。……そうか、それで異界人召喚というわけか」
「そういうことだ」
「しかしこれでは前王の時代と大差ないではありませんか。異界人のことを考えればよりたちが悪い。カイル兄さんが不名誉を負ってまで前王を討ち取った意味がなくなってしまう」
血と争いを何よりも好み〝狂王〟とまで呼ばれた兄のゼダンとは違い、弟のレガード王はあくまでも智に生きる者だった。
だからこそ国をあるべき正道に戻したいと強く願ったレガード王の熱き思いにカイルは柄にもなく応え、結果キングスレイヤーという不名誉な冠を戴くことになってしまった。
「それでも今のところはまだましさ」
カイルは自分に言い聞かせるように呟く。
ミゼルは目の前のデザートに視線を落とし、
「結局戦争がなければレガード王が異界人召喚なんて馬鹿な真似をすることもなかったのかもしれません。そういう意味ではきっかけを作ったリーンフィルが滅びたのは自業自得です」
「……違うな」
「違うとは?」
「レガード王は異界人召喚を確実なものとするためにリーンフィルを嵌めたんだ」
「「えっ‼」」
ユアとミゼルが同時に声を上げる。
口に出せば今まで胸の中で渦巻いていた疑念がストンと腑に落ちた。
ブリュンガルデ王国が治める村の一つをリーンフィル王国の兵士が襲ったことが戦争の発端とされている。その根拠となっているのは村人全員の死体とリーンフィル王国の鎧を身に着けた兵士の死体だ。
リーンフィル王国側は一貫して関与を否定する一方、調停のための使者を幾度となく派遣して疑惑の解消に努めたが、レガード王は頑として受け入れなかったとカイルは聞き及んでいる。
身に覚えのない難癖をこれ以上続けるのなら戦うことも辞さないと、リーンフィル王国の国王──ハルバート・レダ・リーンフィル直筆の書状が届けられたことで、レガード王は満を持して宣戦を布告。両軍は互いの国境が接するルク平野で戦端が開かれ、以後二年に渡って戦いが繰り広げられる。
最終的にブリュンガルデ軍がリーンフィル王国の王都ラフォリアを制圧、ハルバートが妻子と共に自決したことで勝利を得たのは周知の事実だ。
「カイル兄さんはあの襲撃事件が自作自演だと、そう言いたいのですか?」
「そう考えれば全ての辻褄が合うとミゼルは思わないか?」
「それはそうかもしれませんが……しかしそんなことを本当に……」
言葉を詰まらせるミゼル。その後に続くだろう言葉を引き継いだのは顔を真っ青にしたユアだった。
「本当のことならそんなのって酷すぎるよ」
ユアの言葉にカイルはあえて反応を示さなかった。
戦争に無辜の民が犠牲になることなど今に始まったことではない。何事においても光と闇の部分が必ずあり、とりわけ国家を維持するためには闇の部分が大きな比重を占めることをカイルはよく知っているからに他ならない。
リーンフィル王国は濡れ衣を着せられたにもかかわらず最後は堂々と受けて立った。一個の武人としては称賛を惜しまないが、それだけに勝たねば意味がない。
敗北すれば何もかもが泥に塗れて最後は朽ちて果てていくのだから。
消沈するユアを見つめていると、突如甲高い音が食堂に響いた。
音のした方向に視線を流せば、ミゼルが砕いたグラスを握りしめながら鬼の形相で宙を睨みつけている。
握られた手の隙間から流れ落ちる雫がテーブルを徐々に赤く染めていった。
(若いな。だがお前はそれでいい)
ユアとメイドたちが慌ててミゼルの下に駆け寄る。
二人の様子を尻目に、カイルは酒が注がれたグラスを一気に煽るのだった。
庭で摘んだと思われる様々な花が互いを補うように生けられているその様に、ユアの唇も自然と綻んでしまう。
次に目を引いたのは花瓶以上に食卓を彩る数々の料理。どれもとても美味しそうで子供の頃にこんな光景を見せられていたらきっと料理に飛びかかっているに違いない
(そう言えば)
ユアはとあることを思い出し、カイルをジッと見る。こちらの視線に気づいたカイルは「入っているわけないだろう」と呆れて言う。万が一混入されていてもおそらく問題ないだろうけれど、やっぱり気分がいいものではない。
たははと笑い誤魔化すユアへ、メイドの一人が話しかけてきた。
「ユア様、どうぞこちらにお掛けください」
促されるまま引かれた椅子にぎこちなきく腰を落とすと、カイルとミゼルも同じように席へ着く。
3人が着座してから間もなく、琥珀色のスープが目の前に置かれた。
(こんなにも透き通っているスープは初めて……)
灰被りの街にいたときは、たとえ泥が混じっていてもスープが飲めることはまれだった。王宮で出される食事は泥こそ入っていないものの、カチコチのパンと冷え切ったスープが常だった。
ほんのりと湯気の立つスープをジッと見つめていると、カイルが一口二口とスープをすすりつつユアに視線を向けてくる。
「手をつけないな。なにか苦手なものでも入っているのか?」
問われ、ユアは慌てて首をブンブンと横に振った。
「見たこともないごちそうばかりが並んでいるからついつい見惚れていたの」
否定するとメイドたちから安堵の声が漏れ聞こえてくる。どうやら余計な気を使わせてしまったらしい。
「なら冷める前に食べろ。なにせあれだけ響く──ッ!」
途中で話を止めたカイルが不満そうな顔をミゼルに向ける。
ミゼルはコホンと咳払いすると、ユアに笑いかけた。
「当家の料理人が腕によりをかけて作りました。お口に合うかはわかりませんがどうぞ召し上がってください」
「お気遣いありがとうございます。ではありがたく頂戴いたします」
スープを口の中にそっと流し込む。
直後、今までに感じたことのない芳醇な味わいに全身が震え、いつしかスプーンを握る手が口とお皿の間を絶え間なく往復していく。
一心不乱に食べるユアを見て、ミゼルは満足そうに微笑んだ。
「聖女様のお口にあったようで何よりです」
気づけばスープの皿をあっという間に空にしていた。
(卑しい女だと思われちゃったかも)
スプーンを置いたユアは気恥ずかしさを誤魔化すように言う。
「最初にも言いましたが私はもう聖女じゃありません。その名でお呼びいただくのはどうぞご勘弁ください」
しかし、ミゼルは全く意に介した様子もなく、
「聖女様、是非こちらもお試しください。私が研究に研究を重ねて作り上げたジェミニ家自慢の一品です」
背後に控えているメイドたちが慌てて引き留める間もなかった。新しいジェミニ家の当主自らが空いているグラスへ、爽やかな柑橘系の香りがする液体を並々と注いでくる。
もちろん上級貴族に飲み物を注いでもらう機会なんてあるわけもなく、恐縮に恐縮を重ねたユアがカイルに助けを求める視線を向けたが、カイルは諦めろとばかりに小さく肩を竦ませてた。
その後も緊張が消えることはなかったが、それでも食事は和やかな雰囲気で進んでいった。
☆彡
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☆彡
「──なぜレガード王は禁忌を犯してまで異界人を呼び寄せたのでしょう。少し考えれば自分の首を絞めかねないとわかるはずなのに」
デザートが配られたタイミングで、口をナフキンで拭ったミゼルが思い出したように疑問を口にした。
カイルはグラスに注がれた水を一気に飲み干し、ふうと小さな息をつく。
「リーンフィル王国が事実上滅んだことでブリュンガルデ王国は名実ともに北の覇者となった。だが世界の覇者となるためにはまだまだ力が足りない」
「世界の覇者⁉ 北を支配しただけでは飽き足らずそんな大それたことをレガード王は考えているのですか⁉」
「そう俺は見ている」
「なんと愚かな……それでは再現なく玩具を欲しがる子供と一緒ではないですか」
「確かに愚かだと俺も思う。だが覇気そのものを否定するつもりはない。ジェミニ家が武に拠って立つことを考えればなおさらだ」
「しかし覇気だけで世界を統一できるほど甘くはありません。……そうか、それで異界人召喚というわけか」
「そういうことだ」
「しかしこれでは前王の時代と大差ないではありませんか。異界人のことを考えればよりたちが悪い。カイル兄さんが不名誉を負ってまで前王を討ち取った意味がなくなってしまう」
血と争いを何よりも好み〝狂王〟とまで呼ばれた兄のゼダンとは違い、弟のレガード王はあくまでも智に生きる者だった。
だからこそ国をあるべき正道に戻したいと強く願ったレガード王の熱き思いにカイルは柄にもなく応え、結果キングスレイヤーという不名誉な冠を戴くことになってしまった。
「それでも今のところはまだましさ」
カイルは自分に言い聞かせるように呟く。
ミゼルは目の前のデザートに視線を落とし、
「結局戦争がなければレガード王が異界人召喚なんて馬鹿な真似をすることもなかったのかもしれません。そういう意味ではきっかけを作ったリーンフィルが滅びたのは自業自得です」
「……違うな」
「違うとは?」
「レガード王は異界人召喚を確実なものとするためにリーンフィルを嵌めたんだ」
「「えっ‼」」
ユアとミゼルが同時に声を上げる。
口に出せば今まで胸の中で渦巻いていた疑念がストンと腑に落ちた。
ブリュンガルデ王国が治める村の一つをリーンフィル王国の兵士が襲ったことが戦争の発端とされている。その根拠となっているのは村人全員の死体とリーンフィル王国の鎧を身に着けた兵士の死体だ。
リーンフィル王国側は一貫して関与を否定する一方、調停のための使者を幾度となく派遣して疑惑の解消に努めたが、レガード王は頑として受け入れなかったとカイルは聞き及んでいる。
身に覚えのない難癖をこれ以上続けるのなら戦うことも辞さないと、リーンフィル王国の国王──ハルバート・レダ・リーンフィル直筆の書状が届けられたことで、レガード王は満を持して宣戦を布告。両軍は互いの国境が接するルク平野で戦端が開かれ、以後二年に渡って戦いが繰り広げられる。
最終的にブリュンガルデ軍がリーンフィル王国の王都ラフォリアを制圧、ハルバートが妻子と共に自決したことで勝利を得たのは周知の事実だ。
「カイル兄さんはあの襲撃事件が自作自演だと、そう言いたいのですか?」
「そう考えれば全ての辻褄が合うとミゼルは思わないか?」
「それはそうかもしれませんが……しかしそんなことを本当に……」
言葉を詰まらせるミゼル。その後に続くだろう言葉を引き継いだのは顔を真っ青にしたユアだった。
「本当のことならそんなのって酷すぎるよ」
ユアの言葉にカイルはあえて反応を示さなかった。
戦争に無辜の民が犠牲になることなど今に始まったことではない。何事においても光と闇の部分が必ずあり、とりわけ国家を維持するためには闇の部分が大きな比重を占めることをカイルはよく知っているからに他ならない。
リーンフィル王国は濡れ衣を着せられたにもかかわらず最後は堂々と受けて立った。一個の武人としては称賛を惜しまないが、それだけに勝たねば意味がない。
敗北すれば何もかもが泥に塗れて最後は朽ちて果てていくのだから。
消沈するユアを見つめていると、突如甲高い音が食堂に響いた。
音のした方向に視線を流せば、ミゼルが砕いたグラスを握りしめながら鬼の形相で宙を睨みつけている。
握られた手の隙間から流れ落ちる雫がテーブルを徐々に赤く染めていった。
(若いな。だがお前はそれでいい)
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