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21 少しぽっちゃり
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村人探しの移動と、畑の整備と種まきが一気に始まる。
夜明け前から日暮れまで、みっちりやることがある。
探索組が出かけた数日後、隣国へ移住したはずのアレンが家に顔を出した。
「元気だったか! みんなどうしてる? ちゃんと食べてるか?」
「子供達も元気だよ。チェルシーは、少しぽっちゃりしてきたよ。」
「暮らしはどうだ? 仕事は? 家はあるのか? 辛くないか?」
「あはははは。トム兄さん、いっぺんに聞かれたら答えられないよ。」
まずは村長に挨拶してからとなだめられ、声を聞きつけ集まってきた村のみんなとぞろぞろと移動した。
村長になったアルバートに移住組の代表三人が驚き、そして亡くなった村人の事を聞き涙する。
向こうでの暮らしは、みんな揃って小さな町に迎え入れて貰って、思ったよりキツくないと笑って話をしてくれた。
商人の見習いとして、振り回される毎日で、忙しくて悲しいなんて考える暇もなかったと三人は話す。
聞いていると、家族もみんな新しい環境で、出来る事をどんどんさせて貰ってたら町の人とも仲良くなってたと。
特にチェルシーが。
ただ、こっちの噂が酷い物ばかりになってきたから、慌てて迎えに来たと三人は話した。
「馬車も借りてきた、一緒に行こう。」
隣村に婿に行って、どちらの村にも顔見知りが多いハンスが、村のみんなを見回し説得し始めた。
アルバートはにこやかに話を聞いている。
アンリやリリー姉さんは「立派になって」だかつぶやいて涙ぐんでいる。
受け入れ先は町だけでなく、近くに老人ばかりの村があるので、是非にと勧められたと。
人手が足りないのと獣が出るので、町人には少し厳しい条件になるけどと、向こうの町長に言われたが、こっちより気温も緩やかで、無茶な徴税をする役人もいない分マシだろうと思って話を持ってきたと。
「全員となると、百人超えます。さすがに多すぎると思う。」
アルバートが難しい顔でハンスに答える。
すると待ってましたとばかりに、ハンスと村の独身組の若者が早口で言い募る。
「大丈夫だよ、村はいくつかあるんだ。別れて住むことになるけど、ここよりいい。」
「それに狩りの経験があった方が助かるって、言われた。」
ついでとばかりにアレンものんびり援護し始めた。
アレンは育ちのせいか、とても敏感に周囲の状況を把握する。そして身内にだけは嘘をつかない。
「うん。ウチの娘達も、町の人達と一緒に狩りに出てるよ。近場だけの決まりだけどね。」
「え″。もしかして親父が渡したあの弓、使ってるの?」
「うん。向こうと材と作りが違うけど、かえって珍しがられて得意そうにしてた。」
「うわぁ、親父が聞いたらはしゃぐぞ……って、これは俺らは決定だな。」
「うん。チェルシーが張り切って待ってるよ……。早く帰って止めなきゃいけないんだよ……。」
「ああ、うん。そうだな……何するかわからないし、止めなきゃな。」
「向こうに行ってから、チェルシーを止める人が減ったせいで大変なんだ……頼むよ兄さん。」
涙目で腕を掴まれ、見上げられる。ぐぅ、アレン。
そんなにきつかったのか、アレを一人でどうにかしようって頑張ったんだな……すまん、押し付けた形になって、本当にすまん。
目頭が熱くなり、頷く事しかできなくなる。
もしサムが嫌がったら、何としてでも俺が説得するから、安心しろ。
「国境を超える方法はあるのかい? そのままでは出してもらえないよ。」
アンリから疑問の声が上がる。
三人は気まずそうに目を逸らす。
どうやら勢いで迎えに来たようだ。
「行商って、言ったらだめ、かな?」
「馬車に乗ってる荷物は、人だけなのに、それは駄目でしょう。」
自信なさげにハンスが提案するのをリリー姉さんが突っ込む。
若者も頭を傾げ、提案。
「こっそり越境?」
「馬車はどうするんだい。空で入って空で出る? その前にお前達は何て言って国境を越えたんだい?」
深いため息をついて、アンリが三人にたずねる。
三人はそれぞれバラバラな答えを言ってきた。
「仕入れ?」
「里帰り?」
「親を迎えに。」
「……それでよく、通して貰えたね。びっくりだよ。」
本当だよ、国境の兵隊、仕事しろよ。いや、今更しなくていいか。
「はぁ……せっかくですから、紹介状を使わせて貰いましょうか。」
「全員まとめては無理だから、何人か分けて出ましょう。護衛も必要ですし、まずは皆の意見をまとめます。」
呆れながらもアルバートがまとめ始める。
その夜は思い思いに人が集まって、話し合いとなった。
種籾の量からして、村に残るのはごくわずか。
馬車での移動が難しいか、どうしても村を離れたくないか、待ち人を待ち続けるか。
それぞれに理由はある。
とにかく、三回に分けて出る事は決まった。
護衛役と村で狩りをする人間と分け、それぞれ行動開始。
送って行った護衛役が戻ってくるまでは、隠れ住むのは継続だ。
国境では町の出身だと言うように注意を受けていた。
あくまでも村の人間は、国内で消息不明で通すらしい。
王都から帰って来た人達も連れて行けるように、人数の調整にアルバートが悩んでいた。
あいつの髪の毛は減ってないが、白髪が増えた。
冬ブドウを探してきて、たんまり食わせてやろう……。
夜明け前から日暮れまで、みっちりやることがある。
探索組が出かけた数日後、隣国へ移住したはずのアレンが家に顔を出した。
「元気だったか! みんなどうしてる? ちゃんと食べてるか?」
「子供達も元気だよ。チェルシーは、少しぽっちゃりしてきたよ。」
「暮らしはどうだ? 仕事は? 家はあるのか? 辛くないか?」
「あはははは。トム兄さん、いっぺんに聞かれたら答えられないよ。」
まずは村長に挨拶してからとなだめられ、声を聞きつけ集まってきた村のみんなとぞろぞろと移動した。
村長になったアルバートに移住組の代表三人が驚き、そして亡くなった村人の事を聞き涙する。
向こうでの暮らしは、みんな揃って小さな町に迎え入れて貰って、思ったよりキツくないと笑って話をしてくれた。
商人の見習いとして、振り回される毎日で、忙しくて悲しいなんて考える暇もなかったと三人は話す。
聞いていると、家族もみんな新しい環境で、出来る事をどんどんさせて貰ってたら町の人とも仲良くなってたと。
特にチェルシーが。
ただ、こっちの噂が酷い物ばかりになってきたから、慌てて迎えに来たと三人は話した。
「馬車も借りてきた、一緒に行こう。」
隣村に婿に行って、どちらの村にも顔見知りが多いハンスが、村のみんなを見回し説得し始めた。
アルバートはにこやかに話を聞いている。
アンリやリリー姉さんは「立派になって」だかつぶやいて涙ぐんでいる。
受け入れ先は町だけでなく、近くに老人ばかりの村があるので、是非にと勧められたと。
人手が足りないのと獣が出るので、町人には少し厳しい条件になるけどと、向こうの町長に言われたが、こっちより気温も緩やかで、無茶な徴税をする役人もいない分マシだろうと思って話を持ってきたと。
「全員となると、百人超えます。さすがに多すぎると思う。」
アルバートが難しい顔でハンスに答える。
すると待ってましたとばかりに、ハンスと村の独身組の若者が早口で言い募る。
「大丈夫だよ、村はいくつかあるんだ。別れて住むことになるけど、ここよりいい。」
「それに狩りの経験があった方が助かるって、言われた。」
ついでとばかりにアレンものんびり援護し始めた。
アレンは育ちのせいか、とても敏感に周囲の状況を把握する。そして身内にだけは嘘をつかない。
「うん。ウチの娘達も、町の人達と一緒に狩りに出てるよ。近場だけの決まりだけどね。」
「え″。もしかして親父が渡したあの弓、使ってるの?」
「うん。向こうと材と作りが違うけど、かえって珍しがられて得意そうにしてた。」
「うわぁ、親父が聞いたらはしゃぐぞ……って、これは俺らは決定だな。」
「うん。チェルシーが張り切って待ってるよ……。早く帰って止めなきゃいけないんだよ……。」
「ああ、うん。そうだな……何するかわからないし、止めなきゃな。」
「向こうに行ってから、チェルシーを止める人が減ったせいで大変なんだ……頼むよ兄さん。」
涙目で腕を掴まれ、見上げられる。ぐぅ、アレン。
そんなにきつかったのか、アレを一人でどうにかしようって頑張ったんだな……すまん、押し付けた形になって、本当にすまん。
目頭が熱くなり、頷く事しかできなくなる。
もしサムが嫌がったら、何としてでも俺が説得するから、安心しろ。
「国境を超える方法はあるのかい? そのままでは出してもらえないよ。」
アンリから疑問の声が上がる。
三人は気まずそうに目を逸らす。
どうやら勢いで迎えに来たようだ。
「行商って、言ったらだめ、かな?」
「馬車に乗ってる荷物は、人だけなのに、それは駄目でしょう。」
自信なさげにハンスが提案するのをリリー姉さんが突っ込む。
若者も頭を傾げ、提案。
「こっそり越境?」
「馬車はどうするんだい。空で入って空で出る? その前にお前達は何て言って国境を越えたんだい?」
深いため息をついて、アンリが三人にたずねる。
三人はそれぞれバラバラな答えを言ってきた。
「仕入れ?」
「里帰り?」
「親を迎えに。」
「……それでよく、通して貰えたね。びっくりだよ。」
本当だよ、国境の兵隊、仕事しろよ。いや、今更しなくていいか。
「はぁ……せっかくですから、紹介状を使わせて貰いましょうか。」
「全員まとめては無理だから、何人か分けて出ましょう。護衛も必要ですし、まずは皆の意見をまとめます。」
呆れながらもアルバートがまとめ始める。
その夜は思い思いに人が集まって、話し合いとなった。
種籾の量からして、村に残るのはごくわずか。
馬車での移動が難しいか、どうしても村を離れたくないか、待ち人を待ち続けるか。
それぞれに理由はある。
とにかく、三回に分けて出る事は決まった。
護衛役と村で狩りをする人間と分け、それぞれ行動開始。
送って行った護衛役が戻ってくるまでは、隠れ住むのは継続だ。
国境では町の出身だと言うように注意を受けていた。
あくまでも村の人間は、国内で消息不明で通すらしい。
王都から帰って来た人達も連れて行けるように、人数の調整にアルバートが悩んでいた。
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