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27 あいつは洗濯が上手い
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約束した覚えはないが、宣言通り気取った装飾の馬車に乗り、若い役人が再び騎士をつれてやってきた。
村で用意したのはもちろん薪だけ。
それでも先週よりは、はるかに量は多い。
遠目で見ても、話通り全員が若い。
派手な服を着たヤツが、カン高い声で何か叫んでいる。
そっと見張り役と交代するため、移動する。
見張り台にいるのは、最近はよく組む事が多い親近感の塊バートだ。
どうやっても見張りに向いてないギルは、隠れ里での作業が多い。
不思議とあいつは洗濯が上手い。
手抜きしながら洗うのがコツだと言ってたが、器用だなと思ってしまう。
バートとは声は出さず、お互いに手の合図だけで言いたい事を伝える。
さて、お坊ちゃん達が帰るまでのんびり待つか。
前回と同じように、役人が町に戻って行くのを見届けて一時間見張る。
今日も戻ってくる様子はないが、やたらと唾をはき散らかしてたな。
行儀の悪いガキ共だ。
馬の手入れも、ちゃんとしてやれよ。相変わらずヨタヨタしてたぞ。
お坊ちゃん達は仕方ないな。
沸き上がる悪態を口に出さない様にしながら考えていると、一時間はあっという間だった。
今日も村長の家で話を聞く。
案の定、人数が足りない事を聞いてきたそうだ。
言い訳として「食いぶちに悩み、三人が自殺して一人が戻ってこない」と。
役人へ新しい墓標を指し示したら、これまた予想通り掘り返し、髪の毛と服だけなので大喜びで追及してきたと。
どこに隠したと騒ぐバカモノ達に、仕方なさそうに祠へと案内。
大型用の罠があるから、気を付けてと言い含め、穴のそばへ案内しても近寄りもしなかったらしい。
全員があっちこっちに吐き戻して、この場所に連れてきた事を怒鳴り始めたそうだ。
「罠を仕掛けたならば、かかった物はきちんと税として差し出せ。誤魔化そうとしても無駄だぞ!」
「この国のすべての物は、お前達の分ではないと心得よ!」
「おぞましい、汚れた場所に連れてくるとは、今すぐ処刑されたいのか!」
「不敬罪で全員処分とするぞ。わかったなら、すべて持ってこい!」
「ここあたりの罠は、肉食の獲物用でございます。もちろん、この罠にかかった分はすべてお渡しいたします。……人喰いで、しかも食われたのは身内だなんて、私らでは恐ろしくて……。」
「なっ! 何と申した?」
「人喰いとは、どういう……。」
「薪を用意するので精一杯で、墓穴が掘れなかったので……。せめてこちらの祠のそばにと、運びましてございます。」
「!!!」
「なんと!」
「っううっぷ。」
「げぇぇぇぇ。」
「罠にかかった獲物は、間違いなく肉も毛皮も牙や皮も、お渡しいたします。胆がとれたなら、それもご用意させて頂きます。必ず、必ずお引き取りください。」
真っ青になった役人と騎士は、今回はこれでいいと慌てて薪だけを持って逃げたと。
馬車に乗りながら、秋の収穫時に九人分まとめて払うように命令はされたそうだ。
あと、人喰いの肉はいらないと言われたと、大笑いになった。
やたらと唾を吐いていたのは、口の中が気持ち悪かったんだろう。
それを知っていたら、声を出さずに見張りができなかったかもしれない。
ははははは、見て見たかったなっ。
その日は役人達のモノマネで盛り上がった。
久しぶりに大笑いして、スッキリした気分で眠ることができた。
さて、これで確実に秋まで猶予がある。
本当に秋の政変がおきて、二人の若者が死んでしまうかもと考えるときつい。
そして、村に残ると言い続ける年寄りたちを思う。
暗い気持ちになるが、今できることをやるしかない。
忙しい日々を過ごしていたら、サムと隣村の若者が戻って来た。
「兄ぃ、無事でよかった!」
「町で離れ村の二つが全滅したって聞いて、驚いたよ。」
「二人とも、歩きできたのか?」
村人が少しずつ集まる。
王都に行って衰弱してた人達も、亡くなった二人以外は回復した。
みんな、移住用の荷馬車が無い事に戸惑っている。
「ああ、馬車は念のため、町に一人残して見て貰ってる。」
「誰もいないって事になってんぞ、ここと向こうの村。」
「あ、うん。確かに向こうの村には、誰もいないんだけどな。」
あの役人、全滅したって事にしたのか。
いよいよ、移住の最終便となった。
隠れ里にいる王都に行ってた人達や、隣村の狩人達の家族。
成人前の子供は一人、あとは大人が十二人と護衛役を四人。
サム達は到着したばかりだが、町へ荷馬車を呼びに戻ってもらう。
その間に、出発の準備を進める。
隠れ里から荷物を村へと運ぶ。
早ければ明日の夜に荷馬車が来るが、すぐに出発するわけにもいかない。
最後の狩りだと、移住予定の狩人達が三日後に戻る予定で出る。
俺らは柵と家の修繕と、出来る限りの木を切り倒しておくことに。
丸太にして村近くまで持ってきておけば、誰かが手が空き次第に続けて作業してくれるだろう。
どちらの畑も見なきゃいけないか。
忙しいな、こりゃ。
気が付くと考える事は、居残り組の事だ。
残るのはウチの村の、爺ちゃん一人と婆ちゃん二人。
隣村は、爺ちゃん二人に婆ちゃん二人、中年のおっさんが二人とお姉さんが一人。
中年三人は、それぞれに家族を王都で亡くしている。
他の土地に行く気力が無いから、ここで世話をして朽ちていくつもりだと言って聞かない。
簡単な罠は仕掛けられるようにはなったが、捕まえられるかは別だ。
上手く捕まえてくれよ。
村で用意したのはもちろん薪だけ。
それでも先週よりは、はるかに量は多い。
遠目で見ても、話通り全員が若い。
派手な服を着たヤツが、カン高い声で何か叫んでいる。
そっと見張り役と交代するため、移動する。
見張り台にいるのは、最近はよく組む事が多い親近感の塊バートだ。
どうやっても見張りに向いてないギルは、隠れ里での作業が多い。
不思議とあいつは洗濯が上手い。
手抜きしながら洗うのがコツだと言ってたが、器用だなと思ってしまう。
バートとは声は出さず、お互いに手の合図だけで言いたい事を伝える。
さて、お坊ちゃん達が帰るまでのんびり待つか。
前回と同じように、役人が町に戻って行くのを見届けて一時間見張る。
今日も戻ってくる様子はないが、やたらと唾をはき散らかしてたな。
行儀の悪いガキ共だ。
馬の手入れも、ちゃんとしてやれよ。相変わらずヨタヨタしてたぞ。
お坊ちゃん達は仕方ないな。
沸き上がる悪態を口に出さない様にしながら考えていると、一時間はあっという間だった。
今日も村長の家で話を聞く。
案の定、人数が足りない事を聞いてきたそうだ。
言い訳として「食いぶちに悩み、三人が自殺して一人が戻ってこない」と。
役人へ新しい墓標を指し示したら、これまた予想通り掘り返し、髪の毛と服だけなので大喜びで追及してきたと。
どこに隠したと騒ぐバカモノ達に、仕方なさそうに祠へと案内。
大型用の罠があるから、気を付けてと言い含め、穴のそばへ案内しても近寄りもしなかったらしい。
全員があっちこっちに吐き戻して、この場所に連れてきた事を怒鳴り始めたそうだ。
「罠を仕掛けたならば、かかった物はきちんと税として差し出せ。誤魔化そうとしても無駄だぞ!」
「この国のすべての物は、お前達の分ではないと心得よ!」
「おぞましい、汚れた場所に連れてくるとは、今すぐ処刑されたいのか!」
「不敬罪で全員処分とするぞ。わかったなら、すべて持ってこい!」
「ここあたりの罠は、肉食の獲物用でございます。もちろん、この罠にかかった分はすべてお渡しいたします。……人喰いで、しかも食われたのは身内だなんて、私らでは恐ろしくて……。」
「なっ! 何と申した?」
「人喰いとは、どういう……。」
「薪を用意するので精一杯で、墓穴が掘れなかったので……。せめてこちらの祠のそばにと、運びましてございます。」
「!!!」
「なんと!」
「っううっぷ。」
「げぇぇぇぇ。」
「罠にかかった獲物は、間違いなく肉も毛皮も牙や皮も、お渡しいたします。胆がとれたなら、それもご用意させて頂きます。必ず、必ずお引き取りください。」
真っ青になった役人と騎士は、今回はこれでいいと慌てて薪だけを持って逃げたと。
馬車に乗りながら、秋の収穫時に九人分まとめて払うように命令はされたそうだ。
あと、人喰いの肉はいらないと言われたと、大笑いになった。
やたらと唾を吐いていたのは、口の中が気持ち悪かったんだろう。
それを知っていたら、声を出さずに見張りができなかったかもしれない。
ははははは、見て見たかったなっ。
その日は役人達のモノマネで盛り上がった。
久しぶりに大笑いして、スッキリした気分で眠ることができた。
さて、これで確実に秋まで猶予がある。
本当に秋の政変がおきて、二人の若者が死んでしまうかもと考えるときつい。
そして、村に残ると言い続ける年寄りたちを思う。
暗い気持ちになるが、今できることをやるしかない。
忙しい日々を過ごしていたら、サムと隣村の若者が戻って来た。
「兄ぃ、無事でよかった!」
「町で離れ村の二つが全滅したって聞いて、驚いたよ。」
「二人とも、歩きできたのか?」
村人が少しずつ集まる。
王都に行って衰弱してた人達も、亡くなった二人以外は回復した。
みんな、移住用の荷馬車が無い事に戸惑っている。
「ああ、馬車は念のため、町に一人残して見て貰ってる。」
「誰もいないって事になってんぞ、ここと向こうの村。」
「あ、うん。確かに向こうの村には、誰もいないんだけどな。」
あの役人、全滅したって事にしたのか。
いよいよ、移住の最終便となった。
隠れ里にいる王都に行ってた人達や、隣村の狩人達の家族。
成人前の子供は一人、あとは大人が十二人と護衛役を四人。
サム達は到着したばかりだが、町へ荷馬車を呼びに戻ってもらう。
その間に、出発の準備を進める。
隠れ里から荷物を村へと運ぶ。
早ければ明日の夜に荷馬車が来るが、すぐに出発するわけにもいかない。
最後の狩りだと、移住予定の狩人達が三日後に戻る予定で出る。
俺らは柵と家の修繕と、出来る限りの木を切り倒しておくことに。
丸太にして村近くまで持ってきておけば、誰かが手が空き次第に続けて作業してくれるだろう。
どちらの畑も見なきゃいけないか。
忙しいな、こりゃ。
気が付くと考える事は、居残り組の事だ。
残るのはウチの村の、爺ちゃん一人と婆ちゃん二人。
隣村は、爺ちゃん二人に婆ちゃん二人、中年のおっさんが二人とお姉さんが一人。
中年三人は、それぞれに家族を王都で亡くしている。
他の土地に行く気力が無いから、ここで世話をして朽ちていくつもりだと言って聞かない。
簡単な罠は仕掛けられるようにはなったが、捕まえられるかは別だ。
上手く捕まえてくれよ。
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