貧乏から貧困、その先。

護茶丸夫

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28 以前のバカモノ

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 無事に最後の移住組を送り出し、密出国する予定の俺を含め六人は毎日忙しい。
 いや、俺達だけじゃないけれども。

「しまったなぁ、俺も移住組と一緒に行けばよかったなぁ。」
「ん? なにかあったのか?」
「あ"-うちの娘が見たいー可愛い盛りの可愛い年頃なのにー。」
「お、おう、そうだな。」
「なんだ、またギルの発作か。」
「最近多いな。まぁ、分からんでもない。ウチの息子も可愛い盛りだからな。」
「むっ。嫁には出さないぞ! ウチの子はずっと手元に置いとくんだぁぁぁ。」
「いやいや、息子の話をしただけで、お前んトコの娘の話じゃない。」

 ギルとバートの子供の将来の話が始まった。
 こうなると長い。
 とても長い。
 そしてどちらも面倒くさい。

 どう締めても止めても絡まれるので、誰も口出ししなくなった。
 俺もギルのトコの娘とティモシーの年が近いので、絡まれやすい。
 いや、ウチの坊主達を婿には出さんぞ。

 収穫時期だ、村人総出で収穫する。
 隠れ里の手入れの行き届かない、荒れた畑の方が出来が良い。不思議。


 そろそろ秋の徴税の為に、あの役人が来る。
 いつ来るかわからない役人に備え、村に残る十人の年寄が夏まで生きられる分の食料を隠し準備する。
 王都に行った若者二人が戻って来ても、春まではもつ。

 納税分として、人数分には少し多い薪と干し肉、穀物。古着数着。
 村には九人しかいないことになっているが、どうなるか。
 家にある食べる分も取り上げるだろうから、面倒だから堂々と村の分と納税分で分けて置く。
 もちろん本当に必要な分は、隠れ里に隠し置く。

 薪用に解体した家屋を使う。
 村がどんどんスッキリしてしまった。
 残った家は、雪の重みで崩れないよう補強は終わった。
 音や切り口で気づかれる恐れのある伐採は、もう出来ない。

 いつ来るかわからないため、町への道をバートと交代で見張りに当たる。
 みな疲れ切っているが、もう少しだ。

 きた。やっときた。
 馬車とそれを囲む影が、はるか遠くに見える。
 音で村に合図を送る。
 念のため村が見える位置に移動し、様子見だ。

 親友も隠れ里に待機している。
 これが終われば、隣国へ行かねば。家族が待っている。
 あとは、王都の政変は始まっているだろうか。

 相変わらず無駄な装飾が付いた馬車だ。
 お似合いだって言っちゃあ、お似合いだな。
 あのくたびれ切った馬で、見た目だけ騎士はどうするのだろう。
 馬から降りると満足に動けない騎士なんて、使い道無いぞ。

 残念な若い役人と若い騎士の向かう村では、九人中二人が身体を壊しているフリ。
 出迎えで動けるのは四人のみ。
 後は家の中しか移動できない風を装う。

 甲高い声で、以前のバカモノと同じだとわかった。
 村長と村人三人で馬車に納税分を積み込む。
 やっぱり村の分も取り上げやがった。

 座り込んでいる人を足蹴にしてまで、家探しする姿に目を閉じる。
 人はここまで残酷になれるのか。
 家の中の塩や古い道具も、根こそぎ持っていく。

 なんだそれ。
 金目の物でもないだろ、それ。
 ふざけんなよ。

 村長が静かに話す声が聞こえる。
「来年には私の死骸がこの家の前か中にあるので、先にお別れをお伝えします」

 その言葉に大笑いで答える、憎たらしいバカモノ達
 今すぐ出て行って殴り倒したい。

「今まで生きられてこれたのだから、王や私達に感謝しろ」
「この国で生まれた事を喜ぶがいい。」
「貴様らが生きてこれたのは、誰のお陰か分かっているのか。」
「わざわざこんな所に来た、俺達の尊い姿を見れただけでも感謝しろ。」
「神に祈るように我らに祈れ。態度が悪い。」
「貴様らなど切る価値などない。勝手に死んでしまえ。」

 馬鹿か。お前達は何も関係ないだろ。
 少なくともお前らがいなけりゃ、もっと平和だっただろうよ。

「土を食べてでも怠けずに納税しろ」
「そこら辺の物でも食ってろ。食わせて貰えるだけでも、ありがたく思えよ。」
「死んでも税は払え。次はきちんと用意しておけよ、虫けらめ。」

 甲高い声で笑い言い捨て、村を出ていく役人と騎士たち。
 はぁ。この国は本当に駄目だ。
 村を離れるのは辛いが、国を出るのは迷わないな。
 村の土地ごと移住できればいいのに。

 国を出る前にあいつらボコボコにしてやりたい。
 そんなヒマは無いんだがな。

 三十分だけ様子を見て、村に戻る。
 少しでも残って暮らす者たちへと、隠れ里からすべて移動させ置いていく。
 あとは、出来る事は。
 ……ないか。

 村長と親友と、隣村の狩人達と。
 最後に王都の様子を見て、国を出ようと話し合った。
 もし政変が成功していれば、そのまま村に戻ればいい。

 そうでなければ、諦めて国を出る事に決めた。
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