貧乏から貧困、その先。

護茶丸夫

文字の大きさ
31 / 33

30 いや、またやるんだ。

しおりを挟む
 門番、と言うか門を守る兵士は、いる。
 さすがに王都では門番はサボれないか。
 無駄にギラギラした鎧を、着ているのが見える。
 すんなり通れない事を少しだけ残念に思いながら、検問の列に並ぶ。
 並んでいる人達は二通りいた。

 小綺麗な装いの者と、俺達の様な着の身着のままな者。
 入れないのは俺達に近い服装の物ばかりだ。
 何か、決まりがあるのか? それとも警戒してるのか?
 別に問題があって、入れないんだろうか?

「アルバート、どういう事だろうな?」
「トム兄、ここからでは先頭の様子はわからないよ。あまりキョロキョロしちゃ駄目だ。」
「門兵に何か見せてるぞ? なんだろう、アレ。」

 通行料が払えそうなら、アルバートだけでも中に入って様子見をして貰おう。

「通行許可証を出せ。なければ今日の通行税はこれだ」

 門兵がニヤつきながら、炭で板に書かれた金額を指す。
 通行料はおっソロしく高かった。
 この金額なら馬が買えるぞ。

「嫌ならとっとと帰んな、貧乏人。それとも、誰かの紹介状と包みは持ってるのか?」
「いえ、もってません。中にいる知人に、仕事を紹介してもらおうと思ってきたんですが、あとから提出では駄目ですか?」
「はっ。外に連絡も取れないような、稼ぎの無いヤツの仲間は必要ないんだよ。ほら帰れ帰れ。」

 追加で嘲笑ってきたが、大して気にもならない。
 二人とも中に入ることをあきらめる。
 溜息しか出ない。

 踵を返し、元来た道を戻る。
 待っている仲間と馬達の所に戻り、門での事を話す。

「前に来た時も通行料はあったが、そんなに高くなかったんだよな。」
「まぁ払ったのは二人だけで、あとは忍び込んだんだよ。」
「チョロかったからの。だが、今は少し厳しいのう。」
「やだ、俺の嫁ぎ先怖いトコだった。」
「婿入りだろ。嫁ぐなよ。」

 俺達を待つ間、爺さんは暇だからと城壁の様子を見てきたらしい。
 以前の忍び込んだ場所には兵士が張り付いていて、別の場所を探したが見つからなかったと。
 何やってんだよ、爺さん。

 夜も一応見てみようとなり、川のそばで一晩休むことにした。
 ゆっくりゆっくりだが、馬の元気が戻ってきた。
 年を取っている方は、これ以上の回復はなさそうだ。
 まぁ、もう無理させるバカから離れたのだから、これから少しくらいはのんびり余生を送ればいい。
 一頭は名前を付けてしまった愛着があり、隣国へ連れて行く気にはなっている。

 爺さん親子が達が戻って来た。
 夜の方が警戒が厳しく、あれなら昼間の方がまだイケルと。
 やだ、ギルの婿入り先恐ろしいトコだった。

 もしかしたら政変は諦めてしまったのかもと、みんなで勝手に結論を出し横になる。
 朝になり、隣国へ向けてとぼとぼと歩く。

 王都が見える丘に着いたとき、黒い煙がいくつも上がっているのが見えた。

 もしや?

 全員無言で頷きあい、再び王都への道を行く。
 隠れながら爺さんが「入りやすい」と言っていた場所へ。
 どんどん近くなる王都の中から、たくさんの怒号や金属音が聞こえてきた。
 一度だけ体験した、いくさの事が頭をよぎる。
 やれるか? いや、またやるんだ。

「ギル、アルバートと馬達を頼む。いざとなったら川沿いに逃げる。先に行って待っててくれ。
「ばっかやろう、俺も行くって。」
「僕も行きます!」
「「お前は待ってろ。」」
「見た目的にお前達二人の組み合わせが無害に見える。川沿いにいるのが見られても、まず疑われにくい。」

とても納得いかないがなと、痛む胸を押さえて言うとギルはあっさり納得してくれた。

「いいけど、二時間して戻らなかったら俺も中に入るよ?」
「わかった、一度戻る。それでいいだろう?」

「決まったなら行くぞ。儂の後についてこい。」

 爺さんの先導で、城壁から身を隠しながら進む。
 あちこちから壁を壊すような、大きな打撃音が聞こえる。

 中から壊せるのか?この壁。

 城壁が低くなっていて、見張りも見当たらない場所があった。
 爺さんと俺、爺さんの息子とバートで組んで登る。
 意外と薄い壁だった。これなら壊せるなぁ。

 王都の中に入り、手分けして若者二人を探す。
 二時間後の待ち合わせはこの場所だ。

 まずは外周を回る。
 人をよけながら走るが、結構広い。
 弓兵扱いで雇われただろうから、高い所と弓が飛んでいればそこを見る。
 人が多すぎて爺さんとはぐれそうだ。

 一時間以上かかって、元の場所に戻る。
 汗だくだが、爺さんの消耗が思ったより早い。
 近くの井戸で、毒の有無を確認してから爺さんに水を飲ませる。

 爺さんの息子のジミーと、親近感バートが戻って来た。
 向こうも見つけられなかったか。

 あちこちで切り合いが始まっていて、武器の無いものは家に帰るか建物の中に入ろうとしている。
 悲鳴が上がり、子供の泣き声に混じって大人のものも混じる。
 その建物も、そこかしこから火の手が上がっていて逃げ込むのも危険だ。

 ああ。控えめに言って大混乱だ。

「はぁ、はぁ、む、向こうに、壁に穴が。外に、出れる。」

 息も切れ切れにジミーが、林側の城壁の方へ指をさす。
 揃って周囲をうかがいながら、外への穴に向かう。

「一度戻る。アルバートが、なにか考えてるかもしれない。聞いてくるよ。」
「お、俺達は残って、はぁ。また探してみる。もう一周してみるさ。」
「ジョンおじさん、こっちでトムを待ちながら探してくれ。」
「はっ、はっ、はっ。」

 息を切らしたままの爺さんを置いて、俺達はそれぞれの方向に走り出す。
 王都の人達が我先にと、壁の外へと逃げ出している。
 紛れて一緒に出ると、目の前の草むらからギルが顔を出していた。

「アルバートから伝言。弓兵役なら指令が近くにいるかも。平服で偉そうに指示してるやつの、近くの建物。あと屋根に上がった方が早いって。夕方までに川沿いに来て。夜に紛れて川を渡る。あとは考えがあるってさ。」
「分かった、中は火事で大騒ぎだ。まだ死人は出てない。井戸水は無事。兵士の違いがわからねえ、てんでバラバラに動いてやがる。」
「広場があれば、そこで探した方が早いかも。間違われない様に手ぶらで走れよっ!」

 苦笑いだけで返事をして、再び中へと戻る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。

黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。 その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。 王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。 だから、泣かない。縋らない。 私は自分から婚約破棄を願い出る。 選ばれなかった人生を終わらせるために。 そして、私自身の人生を始めるために。 短いお話です。 ※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。

処理中です...