異世界でもプログラム

北きつね

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第五章 共和国

第四話 関所

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 馬車は、クォートが御者台に座って、アルバンとエイダが座る。
 実質的には、エイダが御者台から、ユニコーンとバイコーンに指示を出している。

 御者台から、俺に声がかかる。

「旦那様」

「何かあったのか?」

「いえ、ユニコーンとバイコーンに、幻惑のスキルを使用させてよろしいでしょうか?」

「え?いつ、そんなスキルを?」

「先程、確認いたしました」

「ほぉ・・・」

 ユニコーンとバイコーンを見ると、スキルが増えている。
 ヒューマノイドタイプでも戦闘を行うと、スキルが芽生えるのは大きな収穫だな。エイダは特殊な産まれだから、スキルが増えると思っていたけど、ヒューマノイドタイプでもスキルが芽生えるのは、戦力を考えれば有意義なことだ。

「わかった。クォート。ユニコーンとバイコーンを竜馬に見えるようにしろ」

「竜馬ですか?一般的ではないと思いますが?」

「バトルホースくらいだと、餌にならないだろう?竜馬なら、豪商が使っている馬車だと勘違いさせられるだろう?ユニコーンやバイコーンには劣るが、珍しい部類だろう?」

「かしこまりました」

 クォートやシャープたちもスキルが芽生える可能性がある。パスカルも、ダンジョンに残っている者達も、戦闘訓練を行わせたほうが良いかも知れない。最下層まで降りてくる者が居るとは思えないが、無駄にはならないだろう。

「エイダ」

『はい』

「ダンジョンに残っている者たちに、戦闘訓練を行わせてくれ、内容は、パスカルと相談。スキルが芽生えたら同じようにやってみて、同じスキルが芽生えるか、確認して欲しい」

『かしこまりました』

 クォートもシャープも、今の話を聞いているだろう。
 馬車の中に居るシャープを見ると、頷いているので、戦闘訓練を行うのには承諾してくれているのだろう。エイダに指示を出しておけばいいだろう。シャープだけが戦闘訓練を行うとは思えない。クォートも一緒に行うだろう。

「さて、カルラ。報告を聞こう」

「はい。旦那様。生きていた賊たちを、渡して来ました。」

 ”生きていた”は、気になるけど、スルーしておいたほうがいいだろう。

「それで?」

「賊たちが根城にしている場所が、3箇所確認されましたので、3箇所の殲滅を行うように指示を出しました」

「3箇所?捕らえた者たちは、3箇所も言っていなかったな?」

「はい。賊の搬送中に、別の賊に襲われまして、事情を聞いた所・・・」

 拷問でもしたのだろう。そうか、新しく襲ってきた者たちは、カルラとクォートだけだと、殺さないのは難しかったのだな。
 事情を聞いたなんて優しい方法で、隠していた本拠地を話すはずがない。

「そうか、人数は?」

「多くても、50名程度だと予測しています」

「はっきりしないのだな?」

「もうしわけありません。賊も人数を把握していませんでした」

「そうか・・・。ん?それなら、襲撃方法は、どうやって決めていた?」

「それは・・・」

「どうした?」

「リーダーが居たようです」

「”居た”?」

「はい。数日前に、共和国に行って戻ってきていないようです」

「そうか・・・。まぁ一人では何も出来ないだろう」

「はい。サポート役、二人を連れているようですが、3名だけが残っても意味はあまり無いと考えます」

「わかった。それで?クリスは、殲滅を考えているのか?」

「わかりません」

「・・・」

「殲滅するように、進言しました」

「わかった。カルラ。ありがとう」

「捕らえた者は、ライムバッハ領で使うと思われますが、良いのでしょうか?」

「クリスとユリウスが使うと言うのなら、いいと思うぞ?奴隷にでもするのか?」

「奴隷にはするようですが、借金奴隷で、村を作るようです。実験的に、ダンジョンで採取された作物を作るようです」

「そうか、二人ならうまく使うだろう」

 カルラは、承諾するように頷くに止めた。
 今は、俺が直接的な雇い主になるのだが、クリスに恩義を感じているのだろう。王家への忠誠心も高く保たれている。俺が、二人に敵対しないことを確認しているように感じる。
 俺は、二人に探られて痛い腹はない。ダンジョンの話も、魔法プログラムの話もして良いと思っている。教えて欲しいと言われたら(面倒なので)拒否するが、覚えたいのなら、イヴァンタール博士が残した書籍を渡すくらいのことはする。わからない所を、質問してくる位なら答えるが、”全部を教えて欲しい”や”部下を使えるようにして欲しい”なら断るだろう。俺がやるべきことを終えて、暇を持て余していたら考えるかもしれない程度だ。

「旦那様。街道に出ます。馬車の速度を落とします」

 御者台に座っているクォートからの報告だ。
 思った以上に早かった。

「街道に出たら、一度、停めてくれ」

「かしこまりました」

 街道に出たようだ。
 馬車が停まったことを確認して、外に出る。周りを調べるが、追っている者や監視している者は、確認出来ない。

「クォート。速度は、落とし気味で走る必要はない。見られても、”竜馬が牽いている”と思わせる程度なら問題はないだろう」

「かしこまりました」

「頼む。アル!」

「何?兄ちゃん?」

 御者台から、エイダを連れて降りてきた。

「アル。馬車の中に入ってくれ、代わりにカルラが御者台に座ってくれ」

「わかった」「かしこまりました」

「カルラ。索敵を頼む。大丈夫だとは思うが、獣や魔物が居る可能性もある」

「はい。見つけた時には、どういたしましょうか?」

「判断は、カルラに任せる。ユニコーンとバイコーンを使ってもいいし、馬車を停めて対応してもいい」

「かしこまりました。極力、無視する方向で考えます」

「わかった」

 短い打ち合わせをしてから、関所に向かう。
 セク所までは、半日程度で到着できそうだ。夕方には、共和国に出られるだろう。

 馬車は順調に、関所に近づいた。

 関所では、ちょっとした行列が出来ているが、それほど待たなくても通過はできそうだ。

「旦那様」

「どうした?」

 カルラが、御者台に居て何かに気がついたようだ。

「前方で何やら揉めています」

「うーん。無視でいいよ。急いでいるわけじゃないから、逃げ出すような素振りを見せたら、制圧を考えよう」

「かしこまりました」

 それから、行列の進みは”ピタッ”と止まった。
 1時間が経過したけど、進んでいない。

「兄ちゃん。オイラが見てこようか?」

「うーん。アルじゃ話を聞いてもらえないだろう。クォート!」

「はい。進みそうにはありません」

「旦那様」

 カルラが何か気がついたようだ。

「ん?」

「アルバンとクォートに関所まで歩いてもらいましょう」

「?」

「そのときに、シャープがついていけば、食料を運んでいる商人が居たら、食料の購入を持ちかけましょう」

 カルラの意図は、2つだな。
 商品が腐りやすい物だった場合には、ここで、商品を売っても同じことだ。ここで、腐らせるより、(時間的には余裕があるとはいえ)売りさばいて、戻ったほうが効率的だと思わせる。あとは、”今回”のようなことが頻繁に発生しているのか情報が仕入れられる可能性がある。
 食品を運んでいる商人なら、頻繁に関所を超えている可能性がある。
 そして、シャープを連れていけば、口が軽くなる奴らが居るかもしれない。

「そうだな。予算は、カルラに任せるがいいか?」

「はい。クォートとシャープと相談します」

「わかった。クォート。シャープ。食品を中心に買い取ってきてくれ、後方の馬車を見る必要はない。前方の馬車だけでいい」

「「かしこまりました」」

「アル」

「何?」

「アルは、商人に着いている丁稚に話をして、この関所では喧騒や封鎖がよくあるのか聞いてくれ、それから何か、面白い情報はないか、雑談してきてくれ、飴をカルラからもらって、話をしてくれた丁稚に渡せ」

「わかった!話は、面白い話だけ?」

「共和国の話題でもいい」

「わかった!」

 関所の検閲が止まって、2時間近くが経過して、皆が痺れを切らし始めることだろう。
 行動を移すのには丁度良い時間だな。
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