130 / 179
第五章 共和国
第二十九話 処理
しおりを挟むウーレンフートに居たメンバーが、俺の前で跪いている。
見たことがある顔が半分くらいで、残りは知らない(覚えていない)者も居る。前の方に居るのは、よく知るメンバーだ。ニヤニヤしている所を見ると、こいつらの仕込みだと考えるのが妥当だな。
無視するのがいいだろう。
後ろから襲ってきた奴らをしっかりと捕縛している。
「兄ちゃん。遅かった?」
「いや、丁度良かった」
尋問をしているクォートとカルラの方から、悲鳴が聞こえる。
結界を解除したようだ。連れてこられた者たちの顔色が変わっていくのがいい感じだ。
アルトワ町の町長が反抗的な態度を取ったのだろうか?
腕を切り飛ばして居る。そのままくっつけて、また飛ばしている。あれ、拷問としては最低だよな。腕を切り飛ばす時に、血が流れるから、どんどん思考が鈍くなるけど、痛みがあるから、覚醒する。そのうえで、くっ付けられて、また切られる。恐怖しかない。
もう一人の町長?も顔色が青を通り越して、白になっている。
アルバンたちが確保した者たちも、ガクガクと震えている。
恐怖だろう。お前たちは、俺たちを殺そうとした。今更、命乞いをしても遅い。
「大将」
マスター。旦那様。兄ちゃん。今度は、”大将”か・・・。
「ん?」
スラムの顔役だった、ベルメルトまで来たのか?
よく見ると、子供たちも多い。
「大将。ここで、何をやるのか知らないが、俺に、俺たちにも・・・」
ベルメルトが、地面に頭をつける位に下げる。
よく見ると、ベルメルトの両隣の顔も名前は忘れたけど、知っている。スラムに居た者たちだ。立派になって・・・。と、いうのもおかしいけど、ホームで仕事を始めてから、変わったとは聞いていたけど、こんなに変われるのだな。前は、良くても”チンピラ”だったけど、今では”代官”と言っても通ってしまいそうだ。
「そうだな。ベルメルトたちなら、任せられる」
後ろまで、声を上げて喜んでいる。
アルトワ町は、共和国の”町”だ。ここを拠点にするのもいいけど、ダンジョンの周辺を実行支配してもいいのかもしれない。ベルメルトたちが来ているのなら、アルトワ町にこだわる必要がなくなる。
「大将。俺たちに任せてくれ!それで、何をやったらいい?こいつらを殺すのなら・・・」
盗賊の親分にも見える。ベルメルトが凄む。捕えられている者たちが震えるのがわかる。
「いや、こいつらには使い道がある」
「使い道?」
「アル!」
「何?」
「ベルメルトたちを連れて、アルトワ町には立ち寄らないようにしてダンジョンまで移動してくれ」
「うん。いいけど・・・」
「どうした?」
「道が・・・」
「あぁそうか、エイダを連れて行ってくれ、エイダなら、迷わないだろう」
「うん!」
アルバンが、馬車に走るのを見送ってから、ベルメルトが立ち上がった。
「大将。それで、本当に俺たちにやらせたいのは?」
「あぁ簡単に言えば、ダンジョンの実効支配だ」
「ん?実効支配?攻略は終わっているのか?」
「あぁ最下層まで、俺とアルの二人で攻略できた。難易度は、それほどでは無かったが、今は難易度が上がっている」
「ハハハ。わかった。持ってきた物資を使って、実効支配をすればいいのか?」
「そうだ。少しだけ試したいことがある」
「試したいこと?」
「そうだ。ベルメルトたちは、ダンジョンについてどこまで知っている?」
ベルメルトだけではなく、ウーレンフートから来ていた者が首をひねる。
話を聞くと、通り一遍の内容だけが伝わっている。最下層に関しての話や、ウーレンフートにあるようなサーバルームは伝わっていない。当然だけど、噂話でも出ているのかと思ったが、出ていないようだ。
アルトワのダンジョンを攻略して、新しく気が付いたのは、ダンジョンは地上部にも伸ばせることだ。地上に、ダンジョンを作る。内容は、よくわからないが、地上にダンジョンの機能を使った建物が設置できる。
ウーレンフートでは限定的だったので、あまり意味は無かったが、アルトワのダンジョンでは意味が出て来る。
実効支配を行う時に、ホームの設置が楽にできるのだ。この場所で説明をしても、理解ができないだろうし、アルトワ町の者たちに余計な情報を与えるつもりはない。
「わかった。そこで捕まえた者たちは、ダンジョンの攻略を行わせる」
「え?あっ・・・」
ベルメルトは解ったようだが、捕えられている者たちは理解が出来ていない。
正直、この場で殺されても文句が言えない奴らだけど、ここで殺しても、なんのメリットにもならない。ダンジョンの中なら、多少のメリットにもなるし、ドロップアイテムを拾ってきたら、ラッキーくらいには使えるだろう。ベルメルトも、俺のいいたいことが解ったのだろう。少しだけ顔を引き攣らせている。
戻ってきた、アルバンを先頭に、ダンジョンに向かってもらう。
俺は、馬車に戻って、端末を取り出す。
尋問はまだ続いている。野盗の生き残りや、町長たちと一緒にいた生き残りも、ベルメルトに預ける。うまく利用してくれるだろう。
到着まで、一日くらいだろう。
町は無理でも、砦くらいなら構築できそうだ。
ウーレンフートから必要な物を融通すればいい。
宿屋になりそうな建物と、ダンジョンの入口を覆うようにホームの建物を作成する。
砦は、少しだけ形にこだわって、六芒星にしよう。六芒星の三角形の頂点同士を塀で繋いで、水堀を作成する。水は、ダンジョンから供給して、ダンジョンに返すようにすればいい。
入口を作り忘れた。六芒星だと入口が難しい。適当でいいかな。攻められても困らないようにしておけばいい。塀の上には、バリスタを配置しよう。全部で、50門も用意すれば防御は大丈夫かな?
塔も立てておこう。
楽しくなってきた。砦の中には、畑になるような場所を作ろう。あとは、家にしておけばいい。店として使えそうな建物だけを集めた場所と、鍛冶仕事ができるような場所を分けて設置する。1,000人くらいが生活できる場所にすれば十分だな。
街道は、ベルメルトたちが考えればいい。
本当は、アルバンをダンジョン町においていきたいけど・・・。説得は、無理だろう。
カルラとクォートの尋問を聞いていると、共和国が”腐っている”と思える。
よそから来た商隊を襲うのは当然なことだと思っているようだ。他でもやっているから、当然自分たちにも権利があると言い出している。その権利を行使するのは勝手だが、その結果、捕えられているのだから、それでもあれだけ喚き散らせる感覚がわからない。
もしかして、王国のほうが、意識という一点では”まし”とさえ思えてしまう。同じ、選民意識だけど、共和国の選民意識は自らが”選ばれた”存在だと強固に考えている。王国の貴族たちも似たような感覚だとは思うが、”貴族とは”こういう物だという刷り込みがあるだけ”まし”に思えて来る。
選ばれた人間は、何をしても大丈夫だとすり替えている。王国の腐った貴族と同じか、それ以上の意識だ。
まぁいい。
必要な情報は抜き取れたようだ。
「マスター」
「余罪は?」
「・・・」
解らない。ではなくて、多すぎるようだ。
「カルラ。王国で裁けるか?」
「可能ですが、その場合には、旦那様の身分を・・・」
ライムバッハの名前を出せば可能だということだな。
そこまでする意味もない。
「アルトワ町の町長には、俺たちを優遇するのなら、生かしておこう。町に連れて行って、全部の罪を暴露しろ。クォートとシャープ。頼む」
二人が、恭しく頭を下げる。
アルトワ町の町長は、生かしておくことで、使い道がある。
隣町の町長は、生かしておく意味が一切ない。
「カルラ」
「はっ」
カルラも、解っていたのだろう。
アルトワ町の町長の目の前で、隣町の町長の首を切る。血が噴き出してくる。そのまま、前に倒れ込んで、数回、身体を弛緩させてから、動かなくなった。死んだのは、誰の目にも明らかだ。
「カルラ。ウーレンフートから来た者たちと一緒に、この遺体と野盗どもを一緒に隣町に届けろ。移動中に襲ってきた、野盗の集団だと言えばいい。この町長は、野盗として処理する。共和国が、どうするのか見てみよう」
「かしこまりました。町長が指揮をしていたことにしますか?」
「必要ない。一緒に襲ってきたから、倒したと言えばいい」
「わかりました」
さて、俺は、ユニコーンとバイコーンと一緒に隣町に移動だな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる