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第五章 共和国
第五十二話 要塞化
しおりを挟む俺は、カルラとアルバンをアルトワ・ダンジョンの拠点に残して、最下層に移動した。エイダと二人で駆け抜けた。
『マスター』
「ウーレンフートから、ラックを持ってきてくれ」
『了』
エイダに指示を出す。ラックサーバで、アルトワ・ダンジョンと周辺を構築する。
城塞を作るには、組み込んでいるサーバーではパワーが足りない。アルトワ・ダンジョンは、共和国内のダンジョンを管理する必要もある。モニターを行うだけでも、十分なパワーがないと重要な情報を見逃すことがある。
各ダンジョンには、最低限の施設だけを残すようにして、アルトワに向かっている最中に構築したスキルを連動させる。アルトワ・ダンジョン以外のダンジョンは自爆するようにした。コアは、アルトワ・ダンジョンに避難が終わっている。
現在は、遠隔でダンジョンの管理ができるのか確認をしている。
『マスター。フルスペックですか?』
「そんなに珠があるのか?」
『2Uが混ざりますが、ハーフラックが埋まります』
「そこまでは・・・。そうだな。フルスペックで頼む」
『了』
ヒューマノイドタイプが、ラックを持ってきて設置する。
サーバの組み込みは終わっていない。一度、配線を綺麗にやって見せてから、ヒューマノイドタイプたちも練習をしたようだ。今では、十分に綺麗な配線が出来ている。
ネットワークもしっかりと接続された。
”火”が入ると、ファンが回りだす。サーバーの機能を順次移動させていく、まずはアルトワ・ダンジョンだ。
『移行が完了しました』
「解った。旧システムの”火”を落して、ウーレンフートに持っていってくれ、ログは解析に回す」
『了』
ログを吸い上げた媒体をヒューマノイドに渡す。
サーバの”火”が落ちたのを確認して、サーバを移動させる。
モニターは、このまま使う。
6面用のモニターアームがあったので、サイズを揃えたモニターを取り付けている。
「他のダンジョンは、仮想環境で構築」
『了』
「コアに制御を任せないで運営ができるのか確認」
『了』
「移行に問題は?」
『ありません』
「よし、移行を実施。各ダンジョンには制御を残さないように!」
『了。移行完了までの予想時間は、7時間37分』
「終了後、コアの確認と、運用テストを実施。任せて大丈夫か?」
『是』
ダンジョンの移行は、エイダに任せられる。
終了後のテストは、ヒューマノイドたちに任せて問題があればエイダが対応を行う。
ウーレンフートでも実行は出来たが、サブルームの意味もあるので、アルトワ・ダンジョンで構築を行った。
これで、ウーレンフートのダンジョンが誰かに強襲されたとしても、アルトワ・ダンジョンに逃げられる。ウーレンフートのログやシステムは、バックアップを自動的に作成している。アルトワ・ダンジョンから、ウーレンフートのバックアップを取得して保存する。プッシュも考えたが、プル方式での運用にした。
アルトワ・ダンジョンのサーバーを強化した。共和国で攻略したダンジョンを監視する体制が整った。
さて、アルトワ・ダンジョン村を、要塞化しよう。
カルラとアルバンに、連絡を入れる。
ダンジョンの支配領域から出なければ、連絡ができる。
まずは、外壁の拡張だ。
現状でも、今の規模なら大丈夫だ。
攻め込まれた時を考えると、不安な部分が多い。
まずは、スキルへの対応が出来ていない。趣味に走らせてもらう。
五稜郭を真似しよう。今の拠点を守っている壁と堀を囲むように五稜郭の堀を作る。水は、前と同じでいいだろう。ダンジョンを使って循環させる。
城壁は、5メートルクラスでいいだろう。ヒューマノイドを配置したい。ヒューマノイドを外に出すのには抵抗が強い。クォートやシャープくらいまで作り込めばいいのだろうけど、あまり俺が立ち寄らない場所に配置するのは好ましくない。
上に戻って、状況を確認してから、続きは遠隔で調整だな。
「エイダ。遠隔での調整は可能か?」
『是』
エイダも残りは、遠隔で大丈夫なようだ。
他にも調整が必要だとは思うが、ヒューマノイドに指示をだす事ができる。
「そうだ。エイダ。リスプの成長は?」
『制御を、ウーレンフートで負担しています。リソースを成長に割り振られます』
「そうか、他のダンジョン・コアの支配ができるか?」
『是』
「共和国のダンジョン・コアは、リスプの配下にして、成長を優先させてくれ」
『了』
リスプを成長させるだけのリソースを用意しなければならない。
成長が早ければ、支配が進む。支配が進めば、”黒い石”の浸食を把握できる可能性が出て来る。
”黒い石”は存在してはダメな物だと思える。
ウィルスだと仮定して対策を作ってみたが、まだ狙いが解らない。魔物への浸食だけが目的なのか?ダンジョンへの浸食が目的だとしたら?
ダンジョンを支配する意味は大きい。
俺が得ているメリットを考えれば・・・。
俺とは違う方法で支配を試みている者たちが居るのだとしたら、俺の敵だ。ルールを曲げるような攻略を容認することはできない。それは、暗殺で父を母を妹を大切な従者を乳母を失った俺には解る。決められたルール上なら何をやってもいいとは思うが、ルールから逸脱する行為は、ルールを作る側になって初めて成立する事だ。自分たちが、ルールを作っている側だと勘違いをしている連中が使っている”黒い石”は、ダンジョンのルールから外れている。
俺が全面的に正しいとは思わない。
しかし、俺が”気分が悪い”と判断しているから、対処を行う。
「”黒い石”を発見したら、追跡を行うように指示してくれ、リソースを喰らっても構わない。素性が知りたい」
『了』
「リスプにも、パターン学習を頼む。特に、浸食に関しては、確実に覚えさせてくれ、対処はヒューマノイドに覚えさせて、リスプには、アラーム機能と追跡機能の強化だ。十分な成長が行われた時の為に、準備を頼む」
『了』
エイダと話をしながら、城壁に向かった。
城壁と新しく支配領域に設定した場所を見回していると、門から出てきた者が俺を呼んだ。
「大将!」
いい加減に呼び名を変えて欲しいが、前回の話し合いで無理だと悟った。
俺が受け入れればいいだけなのだ。
それに、砦を守っている者たちの責任者なら、”ボス”か”大将”が正しいようにも思えてきた。
「どうした?」
「どうした?急に壁が出来て、どうせ大将の仕業だろうと、皆には説明しておいた」
「説明?」
「ウーレンフートからの行商が来ている」
「物資の搬送か?」
「依頼していた物が揃ったから、アルトワ・ダンジョンの環境が揃う」
「そうか、食料はダンジョンがあるから大丈夫だと思ったのだが?」
「大将。本当に・・・。いや、辞めておこう。食料や水は確保出来ているが、生活をするのに他にも必要な物があるだろう?」
「ん?」
「最初の頃は我慢もできる。安定してくると、食器や家具が必要になる。他にも、武器のメンテナンスも必要だ」
「あぁ・・・。すまん。忘れていた」
「いいさ。もともと、運び込む予定だったからな。次は、職人を連れてきてもらう予定だ」
「そうだな」
「それで・・・。大将?」
「なんだ?」
「この場所は、結局どうする?ウーレンフートの飛び地のように感じているけど、占拠している状況だよな?」
「それは大丈夫だ。共和国の法で、未開発地に村を作ったのなら、占有できる権利が貰える。まぁ税金を払う必要があるけどな・・・」
「どこかに、属するのか?」
「文句を言われたら考えればいい。今の戦力なら、攻め込まれても撃退ができるだろう?」
「撃退していいのか?」
「攻められれば撃退するのは当然だろう?」
「ははは。確かに!」
ベルメルトに要塞化した。アルトワ・ダンジョン村の防御施設を説明した。ベルメルトが心配していたのは、共和国に攻められることも心配していたが、それ以上にダンジョンの氾濫が発生しないかだが、伝えてはいないが、氾濫は制御できているので大丈夫だ。怖いのは、”黒い石”関連だけだ。
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