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第三章 潜入
第三十八話
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/*** リーリア Side ***/
ご主人様から、武器携帯のご許可を頂いた。
そして、人族が多く住む、アンクラムの街に向かっている。ご主人様が、私のスキルを隠蔽してくれて、種族も隠蔽してくれた。偽装じゃないので、種族が見えない状態になっているので、怪しまれる可能性があると言われたが、仲良くなった、ナーシャさんが言うには、人族でも、種族を隠蔽している人は居るので、それほど不自然ではないと言われた。
ただ、アンクラムでは、面倒な事になるかも知れないと言われてしまった。
ご主人様にも同じような事を言われて、そのときには、司祭を操作して、擁護すればいいと教えてもらった。擁護させる時の、”決まりごと”と、いうのが有るらしいので、それをもしっかりとおぼえた。
それに、街の門番をしているような人族は、よほどの正義感の塊みたいな奴で無い限り、”偉い人”と”袖の下”には逆らわない。らしい。袖の下がわからなかったので、教えていただいた。ようするに、レベルの高いスキルカードや、それに変わる物を渡せば、見逃してもらえるという事だ。
そのために、スーン様から、レベル5魔核を50個ほど持たされた。門番がなにかいいそうだったら、護衛のリーダーを操作して、魔核を2~3個渡すように言われた。安全を見るのなら、5個くらい渡せばいいだろうと言われた。
「リーリアちゃん!」
「はい!」
ナーシャさんとは、すごく仲良くなったとおもう。私と模擬戦をしてくれる。最初は、手も足も出なかった。スキルを使えば、勝てるだろうけど、武器だけの模擬戦では、技術の差や経験の差は大きい。カイ兄やウミ姉とは違った経験が必要になる。ナーシャさんの”いい人”は、イサークさんで、イサークさんにも模擬戦でいろいろ教えてもらった。特に、フェイントに対する対策だ。魔物は、上位種でも無い限り、フェイントなんて使ってこない。でも、人族は、どんな弱い人でもフェイントを織り交ぜてくるらしい。
そんなお二人ですが、時々お二人でどこかに行って、居なくなってしまう。似たような匂いになって帰ってくる。その間、ピムさんから斥候の方法や、罠の発見や解除に付いて教えてもらう。ガーラントさんには、模擬戦をお願いしたり、スキルの事や、街での一般的な事を教えてもらっている。
そんな事をしていると、ナーシャさんとイサークさんが戻ってくる。
私は知っています。お二人が何をしているのか・・・。でも、聞いてはダメだと言われました。気が付かない”ふり”をするようにと教えられました。そして、スーン様の眷属たちからは、同じことで、ご主人様のお相手をするようにと強く言われています。
「今日のご飯は?」
「はい。先程倒した、グリーン・ラビットの肉がありますから、それを焼こうかと思っています」
「いいね!手伝うよ」
「ありがとうございます。それでは、奴らに餌もお願いしていいですか?」
「はい。はい」
人族は、2~3日でも食べないと、弱ってしまうようなのです。
ハーフである私も、人族に近いのですが、1ヶ月くらいなら大丈夫なのですが、不思議です。ナーシャさんたちも、2~3日なら平気だけど、それ以上だと、ちょっとつらいとおっしゃっていました。獣人族は、3日に一度程度の食事でも大丈夫だという事ですので忘れそうになってしまいます。
最初は、ナーシャさんたちに合わせていたのですが、操作している人族の意識から、飢餓感が漂ってきて、慌てて、ガーラントさんに聞いたら、そう教えてもらいました。それから、明るくなってからと、暗くなる前に、食事をする事にしました。
なんでも食べると教えられましたが、好みが有るようです。
司祭とか言っている人族は、本当にわがままばかりでしたが、操作して無理やり食べさせてからは、多少おとなしくなりました。
明日には、アンクラムに到着できそうです。
人族から、喜びの感情が出ています。数名、心が壊れている者も居ますが、操作しているだけなら困る事はありません。
ちなみに、ナーシャさんたちは、人族を私が操作している事は知りません。ご主人様から、スキルはできるだけ隠すように言われています。そのために、私のステータスは
名前:リーリア・ファン・デル・ヘイデン
称号:カズト・ツクモの眷属
固有スキル:清掃
固有スキル:治療
固有スキル:雷弾
体力:E
魔力:C+
こんな感じに見えます。
ご主人様は、称号まで隠蔽しようとしましたが、全力で抵抗させてもらいました。ご主人様からは、アンクラムでステータスを確認されそうになったら、称号を隠蔽するように言われて、隠蔽のスキルカードを渡されました。
治療を残したままなのは、司祭が連れている理由を作るためです。
「リーリアちゃん。ご飯にしよう!」
「はい」
お肉の焼き方もだいぶ上手くなってきました。まだまだ、ドリュアスの姉さまたちには敵わないのですが、ナーシャさんたちは美味しいと食べてくれます。それから、ガーラントさんからは、私が清掃スキルを持っていると言った所、少し変わった使い方を教えてくれました。
魔物の皮に、清掃スキルを使用すると、皮が綺麗になるのです。普段は、掃除の仕上げに使うくらいなのですが、こういう使い方も有るのだと笑いながら、教えてくれた。同じように、寝る前などに、身体や着ていた服や下着に清掃をかける事を勧められた。確かに、お風呂には負けますが、十分綺麗になった感じがします。
このために、冒険者は数枚から多い時には、数十枚は、清掃のスキルカードを持ち歩くようにしている。らしいです。
清掃は、離れていても発動するので、皆さんにも清掃スキルを発動しましたら、喜んで頂けました。
汗や排泄物の匂いが気になっていた、人族にもかける事にしました。ナーシャさんたちは驚いていましたが、操作しているのが私なので、清潔にしておきたかったので、丁度良かったです。
食事も終わって、今パンケーキを焼いています。
安価な食材で料理ができるようにと言われて、試行錯誤している物です。素材は、ご主人様のログハウス周り(エント兄さまやドリュアス姉さまが世話をしている)の物ではなく、ダンジョン内で見つけた比較的一般的に食べられている物を使っています。
比較的と言うのは、これ以上、安価な物が見つからなかったということなのです。ナーシャさんたちが言うには、十分高級品だと言われましたが、今使っている物でしたら、ナーシャさんたちも、2~3ヶ月に一度は入手できるくらいの品質だと言われました。
ナーシャさんは、ご主人様からポーチを頂いて、その中に、甘い物を隠しています。他にも、いろいろと女の子に必要な物を入れていると笑って教えてくれました。イサークさんたちも、ご主人様から収納袋を預かっています。こちらは、貸し与えられたのらしいのです。ご主人様としては、報酬とこれからもよろしくという意味で、渡したらしいのだが、イサークさんたちは借り受ける事に決めたようなのです。
スーン様に後で聞いたら、返してきたら、いろいろ言って、そのままもたせるつもりだと言われました。高級品を、簡単に貸す事になんの意味が有るのかと疑問に思っていたのですが、”感謝の気持ちで縛る”と、教えられました。私には、わけがわかりませんが、ご主人様やスーン様がなにか考えておられるのでしょう。
ナーシャさんたちとはここでお別れです。
ただ、ナーシャさんやイサークさんは、ミュルダのご領主に面談したあとで、また、ご主人様の所に戻るとおっしゃっていました。
「リーリアちゃん。これすごく美味しいよ!」
「ありがとうございます。少し多めに作ったので、よかったらお持ちになりますか?」
「え?いいの?ありがとう!」
「ナーシャ!」
「なに?イサーク?」
「リーリアさん。申し訳ない」
「いえ、問題ありません。それに、ナーシャさんやイサークさんたちには、餌を作ってもらっています。私にはわからない事なので助かっています」
「イサーク。リーリアちゃんもいいって言ってくれているのだから、問題ないよ」
「ナーシャ!」
イサークさんやガーラントさん。ピムさんが、遠慮する理由がわからないのです。聞いてみても、”高価な物”や”貴重な物”と言われますが、確かに、ご主人様にしか作る事ができない物は、貴重な物かも知れませんが、素材は、ダンジョンに半日程度入れば、見つけることができる物です。
食事で、貴重な物は確かに有りました。”蜂蜜”などがそれですが、それ以外では、胡椒や砂糖は、量産が可能な物です。酒精が入った飲み物は、作るのに時間がかかるのですが、素材自体は、ダンジョンの低下層で量産可能な物です。
ご主人様の五稜郭内で作られた物は、皆でご主人様に食べてもらおうと、全力で作業した物ですので、イサークさんたちにも、ご主人様のご許可がなければ差し上げていません。
簡単に言えば、収納袋以外は、私たちにとっては、価値が無いものなのです。スキルや魔核も同じです。私みたいなハーフでも、ご主人様が皆さんに提供するようなレベル3以下の魔核では、数百個吸収しても進化しません。価値が無いのです。ご主人様の実験でお使いになる量を確保しておけばよいのです。レベル5の魔核でも、既に吸収しても進化する事ができません。私以外のほとんどの物が同じような状況です。新たに眷属になったり、産まれたばかりの者なら別ですが、それでも、ダンジョンの魔物をそのまま吸収した方が効率が良いのです。
食事を終えて、片付けをしていると、ガーランドさんとピムさんから話しかけられた。
「リーリア殿はこれから、アンクラムに行くのだよな?」
「はい」
「大丈夫だとはおもうが、困った事があったら、鍛冶屋のヤルノという奴を訪ねて、”これ”を見せれば、力を貸してくれるだろう」
ガーラントさんから、木片を渡されました。細工が施されている物だが、持った感じでは、ただの木の様です。
「これは?」
「儂が修行した時のお師匠さんから渡された物で、半分をヤルノが持っている」
「え?貴重なものなのでは?」
「そうだな。だから、貸しておく。ツクモ殿の所に無事に戻ったら返してくれ、儂もミュルダでの用事を終わらせたら、行く予定じゃ」
「え?あっはい。ありがとうございます」
「なぁに。このくらいしかしてやれんからな。それに、返してくれるのだろうからな」
ガーラントさんは、そういいながら、私の肩を叩いて、もともと居た場所に戻って行きました。
「次は僕だね。リーリアちゃんは、アンクラムで情報収集するのだよね?」
「あっはい。そうなります」
「そう、それじゃ”これ”を持っていって」
スキルカードのようですが、レベル6?が3枚のようです。
「これは?」
「”探索”と”索敵”と”目印”のカードだよ。必要ないかも知れなけどね。一応持っていってよ。使い方はわかる?」
「前に、スーン様が使っている所見ていますのでわかります」
「それなら大丈夫だね。アンクラムは、獣人族には辛い場所だけど、リーリアちゃんなら人族だと言い張れるとおもうからね。もし、少しでも怪しまれていると思ったら、逃げ出してね」
「はい。ありがとうございます。ご主人様からも”絶対に無理しないようにしろ”と言われています」
「うんうん。リーリアちゃんが大事なのだろうね」
え?ご主人様が私の事が大事?そんな事・・・だったら
「え?それなら、すごく嬉しいです」
ピムさんも、笑いながら、握手を求めてきました。手を握ってから、軽く言葉を交わすが、何を話したのかわかりません。ご主人様が、私の事を大事に思っている。その事が、頭から離れません。
私たちがご主人様を大事にするのは当たり前。でも、ご主人様が私たちを?
いつの間にか、ピムさんもガーラントさんの所に戻って、なにやら作業をしてらっしゃいます。
明日からの事を相談されているのでしょう。
イサークさんが近づいてきました。
「リーリアさん。ナーシャが申し訳ない」
「いえ、私も楽しいから大丈夫です」
「そうですか。あっそれで、明日からの事ですが」
「はい。明日は、日が昇る前に、出立いたします」
「・・・そうですか・・・。アンクラムが近いですからね」
「そうですね。それに、俺たちは、ミュルダの冒険者ですから、アンクラムに奴らに捕まると、偵察に来たと思われてしまいますからね」
「そうなのですか?それは、申し訳ありません」
「いえ、それこそ、リーリアさんが謝る事ではありません。俺たちが、ツクモ殿に少しでもお返しできればと思って、申し出た事です」
「それでもありがとうございます。私だけでしたら、もっと手間取ったかも知れません」
明日の朝には、1人でアンクラムに行かなければならない。
少しだけ心細い気持ちになりますが、ご主人様のご期待にこたえるためにも、無理しない範囲でがんばりましょう。
ご主人様から、武器携帯のご許可を頂いた。
そして、人族が多く住む、アンクラムの街に向かっている。ご主人様が、私のスキルを隠蔽してくれて、種族も隠蔽してくれた。偽装じゃないので、種族が見えない状態になっているので、怪しまれる可能性があると言われたが、仲良くなった、ナーシャさんが言うには、人族でも、種族を隠蔽している人は居るので、それほど不自然ではないと言われた。
ただ、アンクラムでは、面倒な事になるかも知れないと言われてしまった。
ご主人様にも同じような事を言われて、そのときには、司祭を操作して、擁護すればいいと教えてもらった。擁護させる時の、”決まりごと”と、いうのが有るらしいので、それをもしっかりとおぼえた。
それに、街の門番をしているような人族は、よほどの正義感の塊みたいな奴で無い限り、”偉い人”と”袖の下”には逆らわない。らしい。袖の下がわからなかったので、教えていただいた。ようするに、レベルの高いスキルカードや、それに変わる物を渡せば、見逃してもらえるという事だ。
そのために、スーン様から、レベル5魔核を50個ほど持たされた。門番がなにかいいそうだったら、護衛のリーダーを操作して、魔核を2~3個渡すように言われた。安全を見るのなら、5個くらい渡せばいいだろうと言われた。
「リーリアちゃん!」
「はい!」
ナーシャさんとは、すごく仲良くなったとおもう。私と模擬戦をしてくれる。最初は、手も足も出なかった。スキルを使えば、勝てるだろうけど、武器だけの模擬戦では、技術の差や経験の差は大きい。カイ兄やウミ姉とは違った経験が必要になる。ナーシャさんの”いい人”は、イサークさんで、イサークさんにも模擬戦でいろいろ教えてもらった。特に、フェイントに対する対策だ。魔物は、上位種でも無い限り、フェイントなんて使ってこない。でも、人族は、どんな弱い人でもフェイントを織り交ぜてくるらしい。
そんなお二人ですが、時々お二人でどこかに行って、居なくなってしまう。似たような匂いになって帰ってくる。その間、ピムさんから斥候の方法や、罠の発見や解除に付いて教えてもらう。ガーラントさんには、模擬戦をお願いしたり、スキルの事や、街での一般的な事を教えてもらっている。
そんな事をしていると、ナーシャさんとイサークさんが戻ってくる。
私は知っています。お二人が何をしているのか・・・。でも、聞いてはダメだと言われました。気が付かない”ふり”をするようにと教えられました。そして、スーン様の眷属たちからは、同じことで、ご主人様のお相手をするようにと強く言われています。
「今日のご飯は?」
「はい。先程倒した、グリーン・ラビットの肉がありますから、それを焼こうかと思っています」
「いいね!手伝うよ」
「ありがとうございます。それでは、奴らに餌もお願いしていいですか?」
「はい。はい」
人族は、2~3日でも食べないと、弱ってしまうようなのです。
ハーフである私も、人族に近いのですが、1ヶ月くらいなら大丈夫なのですが、不思議です。ナーシャさんたちも、2~3日なら平気だけど、それ以上だと、ちょっとつらいとおっしゃっていました。獣人族は、3日に一度程度の食事でも大丈夫だという事ですので忘れそうになってしまいます。
最初は、ナーシャさんたちに合わせていたのですが、操作している人族の意識から、飢餓感が漂ってきて、慌てて、ガーラントさんに聞いたら、そう教えてもらいました。それから、明るくなってからと、暗くなる前に、食事をする事にしました。
なんでも食べると教えられましたが、好みが有るようです。
司祭とか言っている人族は、本当にわがままばかりでしたが、操作して無理やり食べさせてからは、多少おとなしくなりました。
明日には、アンクラムに到着できそうです。
人族から、喜びの感情が出ています。数名、心が壊れている者も居ますが、操作しているだけなら困る事はありません。
ちなみに、ナーシャさんたちは、人族を私が操作している事は知りません。ご主人様から、スキルはできるだけ隠すように言われています。そのために、私のステータスは
名前:リーリア・ファン・デル・ヘイデン
称号:カズト・ツクモの眷属
固有スキル:清掃
固有スキル:治療
固有スキル:雷弾
体力:E
魔力:C+
こんな感じに見えます。
ご主人様は、称号まで隠蔽しようとしましたが、全力で抵抗させてもらいました。ご主人様からは、アンクラムでステータスを確認されそうになったら、称号を隠蔽するように言われて、隠蔽のスキルカードを渡されました。
治療を残したままなのは、司祭が連れている理由を作るためです。
「リーリアちゃん。ご飯にしよう!」
「はい」
お肉の焼き方もだいぶ上手くなってきました。まだまだ、ドリュアスの姉さまたちには敵わないのですが、ナーシャさんたちは美味しいと食べてくれます。それから、ガーラントさんからは、私が清掃スキルを持っていると言った所、少し変わった使い方を教えてくれました。
魔物の皮に、清掃スキルを使用すると、皮が綺麗になるのです。普段は、掃除の仕上げに使うくらいなのですが、こういう使い方も有るのだと笑いながら、教えてくれた。同じように、寝る前などに、身体や着ていた服や下着に清掃をかける事を勧められた。確かに、お風呂には負けますが、十分綺麗になった感じがします。
このために、冒険者は数枚から多い時には、数十枚は、清掃のスキルカードを持ち歩くようにしている。らしいです。
清掃は、離れていても発動するので、皆さんにも清掃スキルを発動しましたら、喜んで頂けました。
汗や排泄物の匂いが気になっていた、人族にもかける事にしました。ナーシャさんたちは驚いていましたが、操作しているのが私なので、清潔にしておきたかったので、丁度良かったです。
食事も終わって、今パンケーキを焼いています。
安価な食材で料理ができるようにと言われて、試行錯誤している物です。素材は、ご主人様のログハウス周り(エント兄さまやドリュアス姉さまが世話をしている)の物ではなく、ダンジョン内で見つけた比較的一般的に食べられている物を使っています。
比較的と言うのは、これ以上、安価な物が見つからなかったということなのです。ナーシャさんたちが言うには、十分高級品だと言われましたが、今使っている物でしたら、ナーシャさんたちも、2~3ヶ月に一度は入手できるくらいの品質だと言われました。
ナーシャさんは、ご主人様からポーチを頂いて、その中に、甘い物を隠しています。他にも、いろいろと女の子に必要な物を入れていると笑って教えてくれました。イサークさんたちも、ご主人様から収納袋を預かっています。こちらは、貸し与えられたのらしいのです。ご主人様としては、報酬とこれからもよろしくという意味で、渡したらしいのだが、イサークさんたちは借り受ける事に決めたようなのです。
スーン様に後で聞いたら、返してきたら、いろいろ言って、そのままもたせるつもりだと言われました。高級品を、簡単に貸す事になんの意味が有るのかと疑問に思っていたのですが、”感謝の気持ちで縛る”と、教えられました。私には、わけがわかりませんが、ご主人様やスーン様がなにか考えておられるのでしょう。
ナーシャさんたちとはここでお別れです。
ただ、ナーシャさんやイサークさんは、ミュルダのご領主に面談したあとで、また、ご主人様の所に戻るとおっしゃっていました。
「リーリアちゃん。これすごく美味しいよ!」
「ありがとうございます。少し多めに作ったので、よかったらお持ちになりますか?」
「え?いいの?ありがとう!」
「ナーシャ!」
「なに?イサーク?」
「リーリアさん。申し訳ない」
「いえ、問題ありません。それに、ナーシャさんやイサークさんたちには、餌を作ってもらっています。私にはわからない事なので助かっています」
「イサーク。リーリアちゃんもいいって言ってくれているのだから、問題ないよ」
「ナーシャ!」
イサークさんやガーラントさん。ピムさんが、遠慮する理由がわからないのです。聞いてみても、”高価な物”や”貴重な物”と言われますが、確かに、ご主人様にしか作る事ができない物は、貴重な物かも知れませんが、素材は、ダンジョンに半日程度入れば、見つけることができる物です。
食事で、貴重な物は確かに有りました。”蜂蜜”などがそれですが、それ以外では、胡椒や砂糖は、量産が可能な物です。酒精が入った飲み物は、作るのに時間がかかるのですが、素材自体は、ダンジョンの低下層で量産可能な物です。
ご主人様の五稜郭内で作られた物は、皆でご主人様に食べてもらおうと、全力で作業した物ですので、イサークさんたちにも、ご主人様のご許可がなければ差し上げていません。
簡単に言えば、収納袋以外は、私たちにとっては、価値が無いものなのです。スキルや魔核も同じです。私みたいなハーフでも、ご主人様が皆さんに提供するようなレベル3以下の魔核では、数百個吸収しても進化しません。価値が無いのです。ご主人様の実験でお使いになる量を確保しておけばよいのです。レベル5の魔核でも、既に吸収しても進化する事ができません。私以外のほとんどの物が同じような状況です。新たに眷属になったり、産まれたばかりの者なら別ですが、それでも、ダンジョンの魔物をそのまま吸収した方が効率が良いのです。
食事を終えて、片付けをしていると、ガーランドさんとピムさんから話しかけられた。
「リーリア殿はこれから、アンクラムに行くのだよな?」
「はい」
「大丈夫だとはおもうが、困った事があったら、鍛冶屋のヤルノという奴を訪ねて、”これ”を見せれば、力を貸してくれるだろう」
ガーラントさんから、木片を渡されました。細工が施されている物だが、持った感じでは、ただの木の様です。
「これは?」
「儂が修行した時のお師匠さんから渡された物で、半分をヤルノが持っている」
「え?貴重なものなのでは?」
「そうだな。だから、貸しておく。ツクモ殿の所に無事に戻ったら返してくれ、儂もミュルダでの用事を終わらせたら、行く予定じゃ」
「え?あっはい。ありがとうございます」
「なぁに。このくらいしかしてやれんからな。それに、返してくれるのだろうからな」
ガーラントさんは、そういいながら、私の肩を叩いて、もともと居た場所に戻って行きました。
「次は僕だね。リーリアちゃんは、アンクラムで情報収集するのだよね?」
「あっはい。そうなります」
「そう、それじゃ”これ”を持っていって」
スキルカードのようですが、レベル6?が3枚のようです。
「これは?」
「”探索”と”索敵”と”目印”のカードだよ。必要ないかも知れなけどね。一応持っていってよ。使い方はわかる?」
「前に、スーン様が使っている所見ていますのでわかります」
「それなら大丈夫だね。アンクラムは、獣人族には辛い場所だけど、リーリアちゃんなら人族だと言い張れるとおもうからね。もし、少しでも怪しまれていると思ったら、逃げ出してね」
「はい。ありがとうございます。ご主人様からも”絶対に無理しないようにしろ”と言われています」
「うんうん。リーリアちゃんが大事なのだろうね」
え?ご主人様が私の事が大事?そんな事・・・だったら
「え?それなら、すごく嬉しいです」
ピムさんも、笑いながら、握手を求めてきました。手を握ってから、軽く言葉を交わすが、何を話したのかわかりません。ご主人様が、私の事を大事に思っている。その事が、頭から離れません。
私たちがご主人様を大事にするのは当たり前。でも、ご主人様が私たちを?
いつの間にか、ピムさんもガーラントさんの所に戻って、なにやら作業をしてらっしゃいます。
明日からの事を相談されているのでしょう。
イサークさんが近づいてきました。
「リーリアさん。ナーシャが申し訳ない」
「いえ、私も楽しいから大丈夫です」
「そうですか。あっそれで、明日からの事ですが」
「はい。明日は、日が昇る前に、出立いたします」
「・・・そうですか・・・。アンクラムが近いですからね」
「そうですね。それに、俺たちは、ミュルダの冒険者ですから、アンクラムに奴らに捕まると、偵察に来たと思われてしまいますからね」
「そうなのですか?それは、申し訳ありません」
「いえ、それこそ、リーリアさんが謝る事ではありません。俺たちが、ツクモ殿に少しでもお返しできればと思って、申し出た事です」
「それでもありがとうございます。私だけでしたら、もっと手間取ったかも知れません」
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