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第二十五章 救援
第二百五十八話
しおりを挟むさて、モデストが一緒に行ったし、影も数名付けているから、大丈夫だろう。
俺は、俺で動き始めるか?
「もう少しだけ休んだら移動するぞ?」
「はい。どちらに?」
「草原エルフの里は、ステファナに付けた者たちが、教えてくれるだろうから、俺たちは、モデストたちが取り逃がした者たちを捕らえる」
「わかりました」
「でも、俺やシロの出番はなさそうだな」
カイとウミを見ると、戦闘準備を始めている。シロも、俺の意見に賛成のようだ。準備運動を行っているカイとウミを見て納得している。
「それでも」
「はい。わかっています」
シロもわかっているようだ。
戦闘は、カイとウミにまかせても、後始末は俺たちがしなければならない。捕虜にしなければいいのだが、草原エルフのこれからにも関係してくる。森エルフを”殲滅する”という選択肢もあるが、現実的ではない。
支配できればいいが、話を聞いている限りでは、プライドばかりが高い連中のようだ。生産性も落ち込んでいるから、支配している草原エルフや池エルフたちからの搾取を強めようとしているようだ。
捕虜にした者たちも、食事をあたえて休ませたら、事情を話し始めた。
特に、森エルフたちへの不満は、すでに臨界点に近づいてきているようだ。
「シロはどうする?ここに残ってもいいぞ?」
「もちろん、ついていきます」
シロならついてくると思ったが、武器の手入れもしっかりと行っている。問題はないだろう。やはり、ライを連れてくればよかったな。シロの護衛を考えると、ライが適任だ。カイやウミやエリンは守るよりも攻めに特化しすぎている。不意打ちでも、シロを一撃で沈められるとは思わないが、傷が付く程度の可能性は排除できない。
「わかった。俺の近くにいてくれ」
「わかりました!護衛ですね!」
「そうだな。カイとウミは、自由に動いてくれ、エリンは戻って、皆に連絡してくれるか?」
『かしこまりました』『わかった』
「パパ?一緒に居ちゃダメ?」
「エリンには、皆との連絡を頼みたい。大事な役目で、エリンにしか頼めない」
「うぅぅぅ・・・。わかった」
エリンの頭を撫でると、嬉しそうな表情を見せてくれる。
「ありがとう。ルートには、問題がないと伝えてくれればいい。予定通りに帰ると言えばわかると思う」
「わかった!パパ!ママ!行くね!」
すぐに飛び立って行った。
エリンなら、迷うことはないだろう。シロは、手を振って見送っている。
「カズトさん。捕虜はどうしますか?」
さっきまでの温かみのある声と違って、冷たさを感じる声で、捕虜たちに聞こえるように質問をしてきた。
正直な話、足手まといでしかないし、森エルフの連中が襲ってきたときに、守る気分になるかわからない。
「そうだな。足手まといだからな」
「そうですね。殺しますか?」
「そうだな。別にどっちでもいいけどな」
「カズトさん。連れて行って、肉の壁にしましょう」
「そうだな。まぁここに、つないで放置でもいいけど、コイツラに選ばせるか?」
「殺すのも手間ですし、肉の壁にもなりそうにも無いですし、放置がいいかもしれないですね」
俺とシロのやり取りで、どんどん顔色が悪くなっていく捕虜たち、俺もシロも別に殺す必要性を感じないから、放置でいいと思っている。ステファナたちの安全さえ担保ができるのなら、解放しても構わない。後ろから襲ってきたら、その時にあらためて殺すだけだ。
よし解放しよう。連れて行くのも面倒だし、見張りで人を割くのも割に合わない。どうせ、身代金なんて要求できない。
「放置するか・・・」
「わかりました。カズトさん。彼らを一箇所に集めて、結界をお願いします」
「結界?」
「はい。彼らを中に閉じ込めるようにできませんか?」
「あぁそれなら、結界ではなくて、身長の3倍くらいの穴を掘って、膝くらいまで水を溜めて、中に放置しよう」
シロも賛成してくれた。
カイやウミも、問題はないと思ってくれたようだ。穴を掘るのは、さほど難しくはないので、さっさと実行する。捕虜を穴に落とすのは、カイが実行した。風で落ちる速度を調整してくれたようで、怪我をしている様子は見られない。
その後で、ウミが水を膝ていどまで入れる。カイが実行したほうが早いのだが、ウミが練習で水を溜めたいと行ってきたので、任せることにした。
水が溜まるのを待っていると、モデストの眷属が戻ってきた。
やはり、敵対行動が見られたということだ。問題にはなっていないという報告で締めくくられている。
「カズトさん?」
「うーん。わからないけど、最悪ではないようだ」
「想定の範囲内なのですね」
「あぁ・・・。でも、待つ時間もなさそうだ」
「わかりました」
シロは、穴に落とした捕虜たちから視線を外して、荷物のまとめに入る。食料などの準備は必要ない。シロは、武器を確認して持っているスキルの確認を行う。
「シロ。スキルは足りそうか?」
「大丈夫です。それに、スキルカードは使わないと思います」
「そうだな。カイとウミが居れば大丈夫だろう」
捕虜を放置して、草原エルフの結界の外側を迂回するように移動する。距離と方角から考えて、裏側にたどり着いたと考えていいだろう。
かなり強行軍だったが、モデストの眷属に脱落者は居ない。
「手はず通りに!」
『はっ!旦那様』
モデストの眷属たちは、草原エルフの結界で、弱くなっている部分にほど近い”森”の中に潜む。
結界の綻びが人為的だ。草原エルフが作った結界のはずだ。その一部が弱められているのは、結界を作っている意味から考えてもおかしい。
「カズトさん。来ますか?」
「どうだろう・・・。来ない方がいいのだけど、悪い予感のほうが当たるからな」
30分くらい経過しただろうか、シロと雑談をしていたのだが、里の方で圧倒的な殺気が放たれた。感じが、モデストなので、やはり”悪い予感”があったようだ。こちらに逃げてくるかわからないが、結界が弱められているのにはそれなりの理由があるのだろう。
「シロ!」
「はい。カズトさん」
状況はしっかりと把握できているようだ。
逃げてくる相手に正面から対峙するほど愚かではない。俺とシロは少しだけ離れた場所に隠れる。
5分くらいしてから、結界を突破してきた者たちが見えた。
慌てている様子で、基本中の基本である気配を探る様子も見られない。
里の結界を突破して、落ち着いたのだろう。辺りを見回す。俺とシロが遅れている場所を見ているが、偽装が施されていて、見つけられなかったようで、里から逃げ出した者たちで何かを話している。
全部で5名。男性が3名と女性が2名だ。特徴は無いがエルフだと思える。多分、森エルフなのだろう。もしかしたら、草原エルフの内通者が混じっているかもしれないが、どちらにしても俺たちには関係がない。
”森猫?なぜ、こんなところに?”
”お前達、森猫は排除したのではなかったのか?”
”え・・・。あっはい。ご命令通りに、池の奴らと、全て・・・。はい。間違いありません。我が里に居た・・・”
”それでは、なんで、森猫がいる?お前達が匿っていたのではないのか?”
”そんな、森猫様たちは、里には一柱も存在いたしません。長老衆を騙して・・・”
”それならば、なぜ森猫がいる?お前達が隠していたからではないのか?”
”違います。信じてください”
”☆◇◎様”
”なんだ?”
”たしか、人族の小僧が、森猫を連れているという情報がありました”
”何?本当か?”
”わかりません。我らに従わない、森猫が人族に従うとは思えないので、嘘だと考えました、しかし・・・”
説明ありがとう。
アイツラが、俺の敵だと解ってよかったよ。
ステファナの問題だけなら、俺たちに関わらないのなら無視しても良かった。しかし、明確な敵なら・・・。話が違ってくる。
カイとウミの敵は、俺の、俺たちの敵だ。シロを見ると、同じ気持ちのようだ。
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