スキルイータ

北きつね

文字の大きさ
281 / 323
第二十八章 新婚

第二百八十一話

しおりを挟む

 状況はわかった。俺がしなければならない事も理解した。

 そして、総合的に判断した結果、俺の状況は・・・。やることが無くなって暇になった。

 報告書を読む限りでは、玩具の開発は順調だ。俺の雑な下書きからすでに試作が行われている。今回は、値段が低く押さえられた物からリリースするので、試作段階では、自由区の住人たちに試してもらうことになった。新しい技術ではなく、”おもちゃ”なので”遊べるか?”や”価格帯は?”を調べる必要がある安全性の確認よりも、市場調査がメインになっている。”遊び”だが、真剣になり、ギャンブルに発展するのを妨げる方法も合わせて考えてもらっている。

 カイとウミは、ダンジョンにアタックしている。新種できそこないは、簡単に倒せるようになっておきたいようだ。そのうえで、新種進化体が出てきたときの対処を考えておく必要がある。現状では、俺たちが本気になれば倒せるとは思うが、俺たちも多発的に発生したら対処は不可能だ。幸いなことに、俺たちの大陸は上陸できる場所が限られている。しかし、飛行能力がある新種進化体が発生した場合には、対処が必要になる。

 他の眷属も一度は部屋に来ているが、それぞれの役割に戻っていった。

 俺の側に居るのは、ライだけだ。ライは、俺たちがエルフ大陸に行っている最中に、大陸中を移動して各所に居た魔物を倒している。

 シロは、フラビアとリカルダを連れて、奴隷商のメリエーラの所に行った。エルフの里に関する話をするためだ。そのあと、フラビアとリカルダから相談を持ちかけられたようだ。

 ルートからは・・・。言われたのは、クリスからだけど、長老衆とルートからの要望だが・・・。”休め”と言われても、困ってしまう。

 ライと、ダンジョンに向かってもいいけど、戦闘したい気分ではない。

 エルフ大陸から持って帰ってきた素材を使って何か作るか?

 料理は、ステファナに任せた方が・・・。安心で安全だ。俺が作ってもいいが、シロが気にする。シロに任せるのは・・・。
 俺が作っても・・・。お菓子・・・。ダメだ。止めておこう。お菓子は危険物だと認識したはずだ。それでなくても、甘味は女性を狂わせる。最近では、甘党の男性が増えてきているので、甘味処が増えているという報告もある。

 ロックハンドで、ライが捕えた、ボロボロの新種できそこない
 ギリギリ、生命活動は維持されていたが、虫の息だ。ルートに渡して、研究を頼んでいる。
 本当は、俺が、新種できそこないを研究したいけど、おれだと”違う物”を生み出してしまいそうで、やめておいた。それに、俺が全部を把握する必要はない。と、思い始めた。

 やることがなくて、暇を持て余している。
 岩場の部屋に引きこもって、何をするわけでもなく・・・。暇だ。ネットやマンガや小説が恋しい。暇になると娯楽を求めてしまう。

 ドアがノックされる。
 この部屋に入ってこられる者は、限られている。

「カズトさん」

 別にドアを開ければいいのに、シロは俺が許可を出すまでドアを開けない。
 シロならいきなり入ってきても問題はないのに、必ずノックをしてから、ドアの外側から声をかける。

「居るよ。入ってきて」

 ドアの向こうから、嬉しそうな声で返事が聞こえる。

 声を聞かなくても、ノックの仕方でシロだと解る。

「カズトさん。戻りました」

 シロが最近になってよく着るようになったワンピース姿ではなくて、昔から着ていた、俺以外が見慣れた服装に戻っている。
 誰かと会うのなら、昔からしている恰好の方が、違和感が少ないのだろう。

「用事は終わったのか?」

 シロが用事を終わらせて、戻ってきた。
 用事の内容は聞いていなかったけど、フラビアかリカルダからの要請があったようだ。詳しい話は聞いていないけど、二人からなら、湖の集落か、岩の屋敷の話なのだろう。もしかしたら、神殿区に関係しているかもしれないけど、それなら俺に直接言ってくるだろう。シロを呼び出したのだから、神殿区ではないだろう。

「はい。ギュアンとフリーゼの事で、相談があるとの事でした」

 ギュアンとフリーゼ?

「相談?何か、やりたい事ができたのか?」

 二人に何かあったのか?不満があるのなら、シロが聞く意味はあるが、報告なら呼んでまで話をする意味はない。
 湖の集落に関係する報告書は上がってきている。
 大きな問題はない。湖も落ち着いている。集落は、二人がしっかりと管理しているので、”観光地”のようになっている。二人に渡せる賃金も上げられる状況だ。問題はないと思っている。
 俺が、知らない”何か”があったのか?それとも、報告書を提出したあとに問題が発生したのか?

「いえ、湖の集落跡を管理するのは、彼らが行っていたいことで・・・」

 歯切れが悪い。俺に対する苦情か?それなら、シロが言い難そうな雰囲気を出すのは解るが・・・。
 シロの雰囲気から違うな。ギュアンとフリーゼからなにか”お願い”があったのだろう。

「どうした?何か、俺にして欲しいことがあるのか?」

「いえ・・・。そうですね。ギュアンとフリーゼが、結婚を考えているようでして・・・」

 結婚?
 ルートからの報告書には、ギュアンとフリーゼの話はなかった。ルートが許可を出さなかったのか?

「ん?あの二人は、兄妹だよな?」

 たしか、兄妹だ。もしかして事情があるのか?

「あっ相手は、それぞれに居ます。相手にも、会ってきました」

 シロの言い方が紛らわしかっただけ・・・。か・・・。
 お互いに相手を見つけていたのなら、問題はない。問題は、ないはずだ。俺が何か言ったから、二人は考えてしまって、シロに相談を持ちかけた。話が大きくなってしまったのか?

「それなら・・・。問題はないよな?」

 それぞれに、相手が居るのなら問題はないよな?

「はい。ギュアンとフリーゼの要望というか、本人たちの気持ちで、湖の集落を守っていきたい・・・」

 悪い事は一切ないのに、シロが言い難そうな理由が解らない。

「ん?シロ。何が問題で、俺に何を解決して欲しいのか解らない」

 俺が出した指示を守るために、ギュアンとフリーゼが何かを我慢しているのなら理解はできるのだが、結婚を阻害する理由にはならない。なっていない。二人が何を気にして、シロは何を考えているのか?

「あっ。はい。ギュアンとフリーゼは、結婚後も、湖の集落を守りたいので、カズトさんに、結婚相手も湖の集落で過ごす許可が欲しいそうです」

 あぁ・・・。
 集落に人を増やすことに”許可”が必要だと思ったのだな。
 もしかしたら、他にも、ギュアンとフリーゼのように移動を伴う結婚を考えて、躊躇している者が居るのか?
 他の場所は、別に場所を守護しろとは言っていない(よな?)。

「あぁ・・・。そうか、わかった。許可を出そう。それと、それぞれの家が必要になるのだろう?仕事も、継続するのなら、仕事場と分けた方がいいだろう?」

 せっかくだから、舟屋を増やそう。
 ギュアンとフリーゼで別々に住むようにして、それぞれのパートナーと住めるようにすればいい。仕事場とは別々にしてやれば、お互いにやりやすいだろう。それに、これから集落の人が増えていく可能性を含ませた方がいいかもしれない。

「はい」

 そうだ。俺の曖昧な言い方で、ギュアンとフリーゼの結婚が遅れたのなら、悪いことをしたな。
 詫びの意味も込めて、新しい舟屋は俺が負担しよう。他にも、必要な物があるだろう。今までは、共同で使っていた物も別々にしたほうがいいだろう。新しい物がいいかは解らないから、二人の希望をシロが聞いて対応すればいい。

「許可を出すから、ギュアンとフリーゼに対応させてくれ、必要な資材やスキルカードは、俺が負担する。二人への結婚祝いだ。他にも、新しい生活に必要な物があるだろう?シロに任せるから、二人に贈ってくれ」

「ありがとうございます」

 シロが抱きついてきたので、頭を撫でてやる。

 弟と妹が同時に結婚するような感じなのか?
 嬉しそうにして、部屋から出ていく、ギュアンとフリーゼに報告するのだろう。

 もしかして、他にも結婚を考えている者が居るのか?

 ライに、ルートに質問状を持っていかせた。ルートよりも、長老衆の方がよかったか?
 まぁルートなら大丈夫だろう。文句があるのなら、言ってくるだろう。
しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
 お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。 「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。  転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが  迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...