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第二十九章 鉱山
第三百話
しおりを挟むファビアンと10階層のセーフエリアで別れた。
4人には改めて説明をした。
これからが本当の戦いだと認識させるためだ。4人の顔つきも変わってきた。
ルートガーが居ない事に最初は戸惑っていたが、強くなろうという意識はあったのだろう。
10階層までの戦闘で、戦闘の入り方や終わらせ方が洗練され始めている。
「どうする?」
「ツクモ様。どうするとは?」
「スマン。スマン。10階層のフロアボスは、低階層と中階層を繋いでいるボスで、中階層の階層主と同じ強さだ。俺の見立てでは、お前たちだけで討伐は可能だと思う。しかし、少しでも何かが狂えば、怪我では済まない。それでもやるか?」
俺の言葉で、4人はお互いの顔を見てから、ロッホスが一歩前に出て、皆の意思を俺に伝えるようだ。
言葉にしなくても、4人の目を見れば解る。
しかし、こういうのは言葉にして宣言することが大事だ。
「ロッホス。お前たちだけで、ボスに挑むか?」
「「「「はい」」」ツクモ様。俺たちだけで、ボスに挑みます。誰が傷ついて、死ぬことがあっても、ツクモ様を恨みません」
「わかった。お前たちの覚悟をしっかりと聞いた。覚悟が決まった者たちに、くどい話は無粋だろう。ボスに挑むぞ」
「「「「はい!」」」」
順番待ちの行列は発生していない。
このダンジョンに潜っている連中は、この10階層で引き返す者たちが半分以上だ。
あと、このダンジョンの特性なのか、ボス戦の連戦はできない。
1回でも、ボスを突破した者は、ボスが出現しない。ボスを突破したことがない者が居る場合にだけボスが現れる仕組みになっている。
4人だけと言ったけど、デ・ゼーウから聞いた話では、ボスには6人で戦うことができるようだ。眷属がどうなるのか解らないが、ひとまず俺とカイとウミとライも一緒に入ってみる。
問題は無いようだ。
眷属は、数には入らないようだ。
情報で聞いていた、5人パーティーの時に現れるボスの一つが魔法陣から現れる。
「情報通りだ。コボルドソルジャーとアーチャー。護衛でコボルトが3体。行けるか!」
「「「「はい!」」」」
既に戦闘態勢に入っていた4人がコボルトたちに攻撃を加える。
まずは、レベル2や3のスキルで牽制目的の攻撃を行う。
ダメージを与えるのが目的ではない。コボルトたちを大きく展開させるのが目的だ。
ロッホスが、飛び出して、ソルジャーに肉薄する。
「イェレラ!イェルン!アーチャーを倒せ!」
「「応!」」
「イェドーア!」
「コボルトを足止めする。3体。足止めが限界だ。倒せない」
「解った。イェレラ!」
「アーチャーを倒したら、コボルトを倒す」
「頼む!イェルン!」
「解っている。ソルジャーを手伝う」
「スキルでの援護を頼む」
「解った」
ロッホスが司令塔になって、指示を出す。
4人はいいパーティーになった。
戦闘では、ロッホスが司令塔になり、探索ではイェドーアがリーダーになり、休憩や野営ではイェルンがリーダーだ。そして、全体をまとめるのがイェレラだ。誰かが迷ったら、イェレラが調整を行う。
ルートガーが居たのでは出来なかった成長だろう。
最後のコボルトが4人に、ボコボコにされて消えたのは、戦闘が始まって10分後だ。俺が想定していたよりも、早い結果だ。
ロッホスの采配が正しかったこともあるが、イェルンのスキルを使うセンスがいいのだろう。コボルトの動きを先読みしているかのような戦い方だ。
「よくやった」
「はい。ありがとうございます」
「これなら、まだ暫くは、お前たちに頼めそうだ」
「!!」
4人が嬉しそうにする。
俺が、ファビアンと10階層のセーフエリアで別れたのを見ていたので、自分たちもどこかに置いて行かれると思っているのだろう。
自分たちにもできる事があると思えば、嬉しいだけではなく、認められた気分にもなるのだろう。
「さて、11階層に行くぞ!」
「「「「はい!」」」」
すっかり懐いてくれたようだ。
ルートガーには悪いけど、しっかりと鍛えて、独り立ちできるくらいにはしてみたい。
そうしたら、SAやPAじゃなくて、飛び地の管理も任せられる。
相手も決まっているようなので、一緒に赴任させればいい。
ルートガーは、チアル大陸の中央に居てもらうとして、4人を交代で、いろいろな場所に派遣することも考えられる。
15階層で休憩を取る。
ボスを無傷で倒せたのが自信に繋がったのか、ロッホスの指示は精度を上げている。
10階層までの粗が目立つ戦い方が減って、しっかりと連携が出来ている。
「うーん・・・」
「ツクモ様?何か?」
「お前たちには問題はない」
「それでは?」
「武器や防具が、戦いについていけなくなっている」
「・・・」
「感じているのだろう?」
「はい。しっかりと急所を攻撃できれば、倒せるのですが・・・」
「急所への攻撃は戦いとしては正しいが、牽制が牽制になっていないのが問題だ」
「・・・。はい」
「防具は、後方支援を行っている。イェルンが問題だな」
「私ですか?」
「あぁ後方支援だから、他の者よりは、防御する箇所が少ない」
「はい」
「後方支援が崩れるとパーティーが崩壊する。スキルで自分を強化するのは当然として、そのうえでしっかりとした防具が必要だ」
「・・・」
「さて、俺が持っている中層でも対応できる武器と防具を出す。誰が何を持つのか、イェレラが決めてくれ。俺は口を出さない。スキル”鑑定”が付与してある道具は貸し出すから、上手く使ってくれ」
使っている武器や防具よりも一段か二段上の物を4人の前に揃えて見せる。
思った以上に戦えるようになってきたので、渡しても大丈夫だろう。武器や防具に引っ張られるような無様な戦い方にはならないだろう。
聞いていた話だと、この装備で30階層の階層主の前までは大丈夫だろう。
次に渡すとしたら、30階層の最後セーフエリアだ。
そこまで、4人だけで戦えたら・・・。
今までの戦い方を熟成させて、連携を密にすれば、30階層までは行けそうだ。
そこで、次の武器と防具を渡すか判断する。30階層のセーフエリアで待機させる判断を行う。
30階層のセーフエリアまで、ウミの手助けはあったが、4人だけで戦い続けられた。
同じ様に、武器と防具を渡した。
「ツクモ様」
イェレラが話しかけてきた。
「どうした?」
「30階層のボスですが、僕たちでは、”きつい”と思います。ツクモ様から武器と防具をお借りしましたが・・・」
「俺の見立てでは、ギリギリだと思うが?」
「はい。今までもギリギリの戦いでした。ウミ様が居なければ、崩壊していた場面もありました」
「そうだな。それで?」
「僕たちでは、ツクモ様に付いていけません」
「それが、お前たちの判断なのだな?」
「はい。でも!」
「どうした?何か要望があるのか?」
「今後の為に、ツクモ様とカイ様とウミ様とライ様の戦いを間近で見たいと思います。ダメでしょうか?」
「それは、30階層のボスに一緒に挑みたいという事だな?」
「はい。4人の総意です。そこで、自分たちの身は自分で守ります。僕たちは居ない者として扱ってください」
「ボスが複数だと、お前たちを狙うかもしれないぞ?」
「構いません。その時には、僕たちを囮にしてください」
「わかった」
「ありがとうございます」
大分、成長しているな。
イェレラが俺に向かって深々頭を下げてから、仲間の所に戻る。
今の話をするのだろう。
4人で綺麗に揃って俺に頭を下げてから、4人で何かの相談を始めた。
「カイ!ウミ!ライ!次のボス戦から俺たちが戦う。そのつもりで居るように!」
皆から了承が返ってくる。
もともと、戦う為に来ているのだ。ここから先は、遠慮しなくていい。カイは4人をフォローさせつつバランサーの役目をしてもらう。ウミはアタッカーだ。ダメージディーラーとして頑張ってもらう。攻撃スキルを中心に戦えば大丈夫だろう。
ライは、後方支援だ。カイが攻撃に参加する時に、4人を守ってもらう位置づけだ。
俺は、ウミとカイの補佐を行いつつ、指示を出す。カイやウミと比べると、器用貧乏になりつつあるが、遊撃としては、器用貧乏くらいが丁度いい。シロが居れば、ウミと組ませてのアタッカーができるから、パーティーが安定するのだけど、居ないのだからしょうがない。
さて、久しぶりに戦うことになるけど、大丈夫だろうか?
なんとかなるだろうとは思うが・・・。
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