チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

文字の大きさ
40 / 161
第三章 裏切り

第三十二話 マガラ渓谷

しおりを挟む

 リンとマヤは村長を待つ事にした。
 待たなくても良いと思ったのだが、約束してしまったので、待っている事にした。

「ねぇリン」

「ん?村長なら、多分”敵”だぞ?」

「うん。僕にもそれはわかった・・・。ねぇリン。おじさんなら、居場所を知っているかな?」

 マヤが言いたい事はわかる。
 ニノサとサビニがどこ居るのか・・・。誰が敵の本丸なのか・・・。

「知らないと思う。知っていたら、俺とマヤを狙ったりしないだろう?」

「うーん。そうだね。リン。本当に、僕たちが狙われているの?」

「違うのなら、それでいいけど、狙われていると考えて行動したほうが安全だろう?」

「うん。わかった」

「でも、マヤは普通にしていていいからね」

「え?」

「演技なんてできないだろう?疑っていると思われる位の方がちょうどいいと思うからね」

「わかった」

 村長が狙うとしたら、荷物だろう。魔法の袋マジックポーチに入っていた大事な物はもう預けている。
 中に入っていた物を説明して、もうローザス殿下に預けていると説明しても無駄だろう。

 15分くらい経ったか?

「リン。マヤ。待たせてしまったな」

「いえ、大丈夫です。それで、問題は解決したの?」

「問題?おぉ・・・。ウノテ殿には事情を説明したら、村まで一緒に行ってくれる事になった。それに、もともとの護衛も一緒に行く事になった」

「護衛?」

「あぁ儂がメロナに向かう道中で雇った護衛じゃよ。その者も一緒に行く」

 おじさんは後ろを振り向いて合図をした。あんな奴らさっきまで居なかった?

 二人の男性が頭を下げる。あれが護衛なのだろう。

 どっかで見た顔だけど思い出せない。
 何かが引っかかる。

 一人の男が村長に話しかける。

「それでは、私が先に行きます」

「そうじゃったな。頼む」

 一人が前で、もう一人が後ろから護衛する形になるようだ。
 はじめから決めていた?
 何かがおかしい?

「おじさんの護衛でしょ?僕とマヤは大丈夫だよ?」

 とりあえず牽制の意味もあるが、遠慮して見るが答えはわかりきっている。

「そういうな。また渓谷に落ちたら困る。それに、護衛に聞いたら、ある程度の間隔を開けて渡れば魔物も襲ってこないそうじゃ」

 護衛の二人が村長の話に合わせるように説明をする。
 かなり怪しい感じがするが、たしかに固まって移動している方が魔物からは餌が固まっている様に見えて、襲ってくる可能性が高そうな気もする。

 人と人との間隔を開けておいたほうが襲われた時に対応する時間が取れそうだ。

 先頭を歩く護衛から距離を開けて、俺が先に歩いて、次にマヤが歩く。そして、村長が歩いて、サラナとウーレンが歩いて、最後にもう一人の護衛が歩く事になる。

「わかった。マヤ。荷物は僕が持つから、全部魔法の袋マジックポーチに入れておこう」
「うん!」

 村長の前で、魔法の袋マジックポーチに荷物を詰めていく。
 狙うのならこれだろう?

「リン。その、魔法の袋マジックポーチはどうしたのじゃ?」

「ニノサの知り合いという人が、届けてくれた。僕にしか使えない設定になっていて、マヤにも使えないから、僕が持っている」

 そこまで凝視されると魔法の袋マジックポーチが照れてしまいますよ。なんて軽口が言えないほどに真剣な表情だ。

「その中に、なにかニノサからの・・・。その預かった物はなかったのか?」

 やはり書類か?
 領主繋がりで間違い無いのだろう・・・だが、なにか違和感がある。
 時系列がおかしいのか?違うな・・・。見落としていないか?

 とりあえず疑惑を晴らしておく事にしよう。

「うん。なんなら全部出す?腐った食べ物とかも大量に入っているからおすすめできないよ?」

「なんで、そんな物が・・・?」

「さぁ・・・母さんが食べると思って入れてくれたらしいけど、魔法の袋マジックポーチの中は時間が緩やかに流れるって知らなかったみたいだね。あとは、僕とマヤが使う武器と防具が少しと、金貨が数枚入っていただけだよ?おじさん。何か探しもの?」

「いや、お前とマヤの父親と母親は腕が良かったからな。ただの好奇心じゃよ」

「そう・・・・」

 明らかに前を歩いている護衛や後ろの護衛が聞き耳を立てている。
 全部出してもいいと言った時に反応した。

 こんなにわかりやすい人だったのか?

 パシリカの事も聞いてこない。自分の行動が矛盾している事にも気がついていないようだ。

 仕掛けてくるのなら、渓谷を渡っている最中か?

 関所から渓谷に入っていく、商隊の話し声が聞こえなくなっていく・・・。

 中継地点まで後少しの所に来た時に、マヤが俺のすぐ後ろに寄ってきた。

「どうした?」

「ううん。なんか、嫌な感じがしただけ」

 落ちたときの記憶が有るのだろう。
 護衛も村長も慎重に下っているし、商隊にもおかしな動きはない。

「大丈夫だ。マヤ」

「うん。リンと一緒なら平気!」

 その瞬間、後ろから悲鳴が聞こえた。

「サラナ!」

 ウーレンの悲鳴混じりの声だ。

 サラナが護衛に切られているのが見える。
 なぜ?サラナが?

「サラナ!」「まて、マヤ。動くな!」

「いやぁぁぁぁサラナ!!!」

 後ろにいた護衛がサラナを蹴って渓谷に突き落とした。
 そのままウーレンの首に剣を突き立てて殺している。

 なぜ?!
 俺たちではないのか?

「マ・・・ヤ・・。ごめ・・・ん」

 護衛が、ウーレンの身体から剣を抜いて、サラナと同じ様に渓谷に蹴り落とす。 
 ウーレンの最後の言葉は、”ごめん”だった。なにがどうなっている?
 ウーレンとサラナは何を知っている?

「マヤ!」

 マヤに武器を渡す。受け取って構える。
 俺も武器を取り出す。なんでもいい。身を守る物が必要だ。

「リン。マヤ。すまない。これも村のためじゃ」

「え?」
「マヤァァァァァ!!!!!!」

 村長がいつの間にか後ろに来ていた。

 マヤを渓谷に落としやがった。手を伸ばすが届かない。

「村長ぉぉぉぉ!!!!」
「・・・・」

 村長と対峙するが、こんな男よりも、マヤが気になる。
 早く助けにいかなければ・・・。

「リン。お前達が悪いのじゃ」

「そうか?それで?それが最後の言葉でいいのか!」

 くそぉ!マヤ!無事でいろよ!
 今ゴミを始末したら、すぐに助けに行くからな!

「リン。話を聞け!」

「なんだ、今更命乞いか?卑怯者の臆病者の言葉なぞ・・・。聞きたくない。死ねよ!」

 村長に斬りかかる。狙いは首。
 護衛に剣を弾かれる。弾かれた。弾かれて手がしびれたがそれがどうした!
 魔法の袋マジックポーチからナイフを取り出して、護衛に投げつける。一歩下がったすきに村長の腕を狙う。手応えあり。腕一本は切り落とせなかったが、左手首を切り落とせた。村長のうめき声が渓谷にこだまする。

「そこまでだ・・・」

「え?」

 前を歩いていた護衛が、俺の腹に剣を突き刺して呟いた。

「マ・・・ヤ・・・」

 残されている力で剣を投げる。
 村長には届かなかったが、村長の前にいた護衛の首に刺さったのがわかった。

 残された護衛に中指を立てながら”ざぁまぁみろ!”と怨嗟の声を投げかけた。
 力が入らない。

 俺は死ぬのか・・・?
 護衛の所が、俺を蹴り落とす所がスローモーションのように脳裏に焼き付く。

 絶対に生き残って、マヤと一緒に帰ってくる。

---

 ここは・・・?どこだ?
 白い部屋?違う。あの部屋じゃない!

 やはり、俺は死んだのか?
 おかしい。死んだのなら、アドラの所に行くはずだよな?

 身体は・・・。リン・フリークスのままだな。神崎凛に戻っていない。そういう事は、まだ異世界だよな?

 どうなっている?

”クスクス”

 誰だ!

”大丈夫だよ。僕は、マノーラ。リンを見守る者だよ”

 俺を見守る!?

”そう。観測者アドラステーアも、慈愛神エリフォスも、強欲神パーティアックに出し抜かれるようじゃダメだよね”

 どういう事だ!

”ごめん。ごめん。リンには関係無いことだね。あっ君は死んでいないよ?少し気を失っているだけだから安心して”

 マヤは!マヤはどうなった!

”それは、目が覚めてから自分で確かめて。僕の権能ちからはリンだけ・・・。だから、ごめんね”

 ごめん?ごめんってなんだよ。マヤは!マヤはどうした!
 神ならなんとか言え!

”僕は、そこまでの事はできないよ。リンを見守って導くだけ・・・”
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

処理中です...