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第五章 マヤとミル
第四話 ギルド
しおりを挟む「タシアナ!イリメリは?」
「まだ!フェムと一緒に外に出ている!」
「はぁ?それなら、ルナは?」
「金髪に呼び出された。それよりも、今日の面接はどうするの?」
「そっちは、ギルドマスターに頼んだ!」
「わかった。サリーカ。私も・・・」
「あ?!あぁそうだね。お願い」
ギルドは、認知され、活動を開始した。王都が荒れたタイミングでの開業だった。そのために、認知される速度も早かった。
王都に貴族たちが混乱して、暗殺だけではなく、町中での襲撃が発生する自体になっている。
当初は、王都だけで収まっていた騒動も、近隣の街や町や村に波及している。
騒動が発生する前は、商隊が街から街に移動していた。そして、商隊の中から近隣の町や村に行商に出ていたのだが、商隊を襲う盗賊や魔物が出てくるようになってしまい。街に移動するだけでも大変な状況になってしまっている。
状況がよくなる兆しがなく、日を追うごとに状況は加速度的に悪化している。
治安は、よくなるのには時間も手間も必要だが、悪くなるのは一晩で十分なのだ。
最初は小さな違和感だった。
この時期にパシリカの為に、子供を連れてくる貴族が王都に集まるのは毎年の事だ。そして、農民の子供を中心にパシリカ後に商隊と一緒に故郷に戻る。一部の特殊なジョブに目覚めた者は、貴族や教会や王族に請われて王都に残る。
今年も同じような状況になると思われた。
そして、ジョブに目覚めた貴族の子供たちのお披露目会が行われる。
今年は、貴族の子供に有効なジョブが多い印象があった。特に、宰相派閥の子供に目立つジョブが多い。アゾレムの跡継ぎである。ウォルシャタは戦士の派生ジョブであるウォリアという物理攻撃に特化したジョブに目覚めた。魔物討伐に功績があった戦士と同じジョブで、英雄のジョブなのだ。
宰相派閥は、子どもたちのパーティーで自分たちの派閥の未来が明るくなっていくことを疑っていなかった。
王都の雰囲気が変わったのは、アルフレッド=ローザス・フォン・トリーアを柱とする王家派閥が動いたのが始まりだ。
アゾレムが関わった不正が書かれたメモが、王家派閥の中の皇子派閥に属しているミヤナック家から王家に提出されたのだ。
アゾレムは、事実無根だと言い切り、寄り子と一緒に王都から領地に戻ろうとしたが、王家が許可を出さなかった。
王家の判断は間違っていないが、商隊や民衆からみたら間違った判断だと言える。
貴族が動かなくなり、商隊だけが動いていると、商隊を狙う盗賊や魔物が現れる。そのために、商隊は護衛を普段よりも多めに雇うことになる。
貴族の移動が制限される。そして、暗殺や暴行を恐れる貴族は、本来なら商隊を護衛して近隣の街に向かう者たちを雇い始める。
護衛も、それほどの数が居るわけではない。王都を拠点として活動していた護衛も、駆り出される状態になってしまった。
問題は、貴族だけでは当然のようにおさまらなかった。
王都にする民にも大きな影響が出てしまった。王都を拠点としていた護衛たちは、王都周辺の盗賊を狩って守備隊に突き出して小遣い程度の金銭を得ていた。他にも、食べられる魔物を狩って食料として王都の店に提供していた。
護衛が狩ってくる魔物の供給が止まって、商隊が近隣から買い付けてくる野菜類の提供が止まった。
止まってもすぐに庶民の生活に影響がでるような事は考えられなかった。
しかし、一部の貴族が食料の買い占めを行ったことがきっかけで、値段が高騰した。一気に、10倍から20倍の値段になり庶民には手が出なくなった。貴族や教会の関係者は、食料の提供が止まっても、自分たちだけは困らないように、買い占めを指示して、”原因がわからない”恐怖を紛らわすために享楽を求め、近親者を集めて昼夜問わずにパーティーを行った。
良識のある貴族と一部の信仰心だけは高い教会関係者は、事態を重く受け止めて、貴族による買い占めを禁止するように王家に求めた。王家は、即座に動いたが、事態は王家が発令する”命令”程度で終息できる状態ではなかった。
そんな王都が荒れ始めた時期に、準備を終えた一つの”店”がオープンした。
こんな大変な時期にオープンするのだから、よほどの太いコネがあるのだろうと、民衆は考えた。しかし、その建物は”ギルド”という今までにない”店”だ。
店舗は、職人街と商人街と民衆が多く行き交う一角にある。中間地点にあり、立地としては最高な場所だ。
しかし、店舗には商品が並んでいるわけではない。店舗の裏には宿が隣接されているという話だが、なんの商売をしているのか、外から見ただけではわからない。わからないのは、それだけではなかった。通常の店舗だと、店長が居るのだが、この店舗には”ギルドマスター”と呼ばれる責任者が居て、他は職員と呼ばれている者が数名居るだけだ。
そして、アルフレッド=ローザス・フォン・トリーア皇太子やミヤナック家の跡継ぎであるハーコムレイが保証人に名を連ねている。
庶民が多く行き交う場所に、貴族のトップと言えるような人たちが日に何度も足を運んでいれば、周りから奇異な目で見られるのは当然だ。
「ハーコムレイ様」
「ルナは居るかい?」
「もうしわけありません。ギルドメンバーの個人情報の開示はできません」
「そうか・・・。もうしわけない」
ハーコムレイに連れられてきた、子爵家の跡継ぎや寄り子たちは驚愕の表情を浮かべる。ハーコムレイだと認識した上で、その申し出を断ったのだ。それを、ハーコムレイは当然の様に受諾したのだ。このやり取りは、決められた猿芝居なのだ。
ハーコムレイが納得したことで、下位の貴族は何も言えなくなってしまう。ギルドにとって大事な独立性を保つためには必要なのだ。
「はい。もうしわけありません」
「いや、無理を言った。それで、来たのは、この者たちが、困っているので、相談したいのだが」
「わかりました。どういった内容でしょうか?」
「商隊の護衛だ」
「わかりました。どうぞ、奥の部屋で、”ギルド”の説明と、依頼のご説明を行います」
「あぁそれから、ギルドマスターは居る?」
「はい。ご連絡を頂いて、マスタールームでお待ちしております」
「わかった。案内は必要ない。この者たちを頼む」
「かしこまりました」
受付は3階にあるギルドマスターの部屋につながっている魔道具を起動して、ハーコムレイが来たことを告げた。
受付に居た女性は、同僚に声をかけて、ハーコムレイと一緒に来た貴族を二階に作られている応接室に案内した。そこで、ギルドの成り立ちや役割を簡単に説明して、依頼の詳細を聞き出すのだった。
ハーコムレイが紹介していることで、安心した貴族たちは、ギルドの依頼を出す。ギルドは、最初は創立メンバーだけでやりくりをしていたのだが、すぐに人手が足りなくなる。最初は、ギルドマスターであるナッセ・ブラウンの伝手を使って、卒員した者たちを頼ったが、王都に居る者は少なかった。次に、アッシュ=グローズが奴隷たちを紹介してきた。奴隷に抵抗があったが、犯罪奴隷ではなく口減らしのために売られた子供や寡婦となり税が払えなくなってしまった借金奴隷だったために、ギルドで働いてもらって身分を買い戻す手助けを行うことになった。
同じような理由で、奴隷となってしまった者たちを、買い取ったり、アッシュの店から借り受けたり、人手をカバーした。
こうしてギルドは認知され、貴族だけではなく庶民も依頼を出すようになっていった。
依頼料は安くはないが、ギルドは依頼料が払えない場合には、ギルドに登録してもらって、依頼を受ける事で相殺できるようにした。依頼は、ハーコムレイや貴族たちが簡単な雑用を出していた。
ハーコムレイや貴族たちも善意ではない。単純に、屋敷の周りの掃除を屋敷のメイドや執事にやらせるよりも安く上がる値段で依頼できるからだ。王家からも、職人に頼んでも嫌がられるような仕事を依頼できると喜ばれたのだ。
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