チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

文字の大きさ
84 / 161
第六章 ギルド

第四話 王都の途中

しおりを挟む

 街道に出るまでは、急いだ。アゾレムからの追っ手を警戒したが、追っ手どころか、俺たちの後ろからは誰もついてきていない。まだ、商人が揉めているのだろうか?

「リン?」

 ミルが不思議そうな表情で俺を確認してくる。

「さて、森に向かおう、誰かが来ているだろう」

「うん」

 ミルと二人で、近くの森に向かう。
 さすがに、王都に向かう街道だけあって、整備されている。

 マガラ渓谷を越えてから、1時間くらい走ると、いろいろな街道からの合流地点が見えてくる。この近くに森がある。この辺りで、お供として王都に向かう者がいるはずだ。

『マスター!』『マスター』

 森から出てきたのは、アイルとリデルだ。
 アウレイアやヒューマは目立つだろうし、ブロッホくらいしか居ないと思ったから、無難な選をしてくれた。

「アイルとリデルが一緒に王都に行ってくれるのか?」

 アイルとリデルなら、目立たない。
 他のメンバーでは、見た目で目立ってしまう。アウレイアがギリギリだけど、フェンリルだから種族がバレてしまうと、問題視される可能性がある。

 アイルなら、スコルなので、上位種ではあるが、問題になってもなんとかなりそうだ。実際に、狼を連れている者は存在する。カーバンクルも珍しい種族だけど、ミルと一緒なら大丈夫だろう。っと、いうよりも他の眷属では問題になりやすいだけだ。あと、問題になりそうもないのは、ロルフくらいだけど、ロルフにはマヤと一緒に神殿の拡張をしてもらわないと困る。

『はい。ロルフ様が、来る予定でしたが、ブロッホ殿が反対して・・・』

「そうか、ありがとう。ブロッホとロルフとヒューマが、マヤに付いているのなら安心だな」

 今のマヤは、妖精の姿だ。
 神殿に居れば安全だと思うが、何があるか解らない。ロルフだけでは、敵性の”何か”が現れた時に対応できるとは思えない。ブロッホが居れば、よほどの相手でも大丈夫だろう。そこにヒューマが加われば、大量の上位種が来ない限りは大丈夫だろう。神殿の中まで逃げ込めれば、マヤは安全だ。

「うん。ぼくも、安心。リデル!」

 ミルは、マヤと繋がっている。
 距離が離れてしまっているので、意思のやり取りは難しいようだ。繋がりは感じられるというので、もしかしたら、意思の伝達方法が何かあるのかもしれない。意思の疎通は、他にも方法があるから、無事の確認ができる状況になっているだけで、十分な意味を持つ。

『はい。ミトナル様!』

 リデルとミルは相性がいい。
 ミルの魔法の威力を、リデルが増幅できる。それに、美少女の肩にカーバンクルはすごく似合っている。

『マスター』

「どうした?」

 アイルが、俺の足元に寄ってくる。
 俺の護衛は、アイルのようだ。俺は、ステータスの面では、確かに”強者”と呼ばれるようにはなったが、実践経験が少ない。実際に、ステータスでは勝っているミルにも勝てない。ブロッホやヒューマには、手も足も出ない。ヴェルデやビアンコにはなんとか勝ち越しているが、なんでもありの戦いをしたら、どうなるか解らない。ラトギやジャッロも同じだ。進化した眷属たちの力は、確かに俺のステータスを強化した。それに、新しいスキルを得ている。
 スキルもステータスも、上手く使えていないのが原因だ。ブロッホやヒューマがいうには、”ステータスに頼りすぎている”らしい。ステータスやスキルを使いこなさなければ意味がない。
 今は、威力の強い武器を振り回している状態だ。当たれば、相手に致命的なダメージを与えられるが、当たらなければ意味がない。防御も、身体の硬さに頼っているだけで、弱いところを攻撃されたら、ダメージは避けられない。そして、倒されて、集中攻撃されたら終わりだ。

 ゲームのようなHPがあるわけではない。急所を攻撃されて、防ぎきれなければ、”死”がすぐそばにある。

『はい。森の中に、集落ができております』

「集落?魔物?眷属にできそう?」

『いえ、人族・・・。獣人族です』

「獣人?何族かわかる?」

『犬や狼では、ありません』

「敵対的な雰囲気はある?」

『ありません。何かから逃げているようで、怯えて過ごしています』

「接触は可能か?」

『マスターやミトナル様なら、可能だと思われます』

 うーん。
 獣人族は、奴隷にされやすい。逃げているのは、もしかしたら、奴隷商や、捕えようとしている者たちが居るのかもしれない。
 事情が解らないから、無視してもいいのだけど、何かが引っかかる。

「ミル?」

「ぼくは、リンの判断を尊重するよ。それに、ぼくたちは森を移動するよね?偶然、その集落を見つけてしまうこともあるよね?」

「そうだな」

 ミルの言い方には、笑いそうになってしまったが、偶然ならしょうがない。見つけてしまったのなら、事情を聞くくらいは普通だろう。事情を聞いて、助けられるようなら、助けてもいいだろう。なんなら、神殿に招いてもいい。

 アイルが先導する形で、森の中を進む。
 もちろん、尾行がいないことは確認をしている。

 森の中で一泊を考えていた。
 集落があるのなら、集落で休めたほうが嬉しい。

 魔物もいるようだが、わざわざ倒す必要を感じない。弱いわけではないが、俺たちに襲ってこなければ、無視する。

「リン。いいの?」

「襲ってこなければ、スルーで・・・。意識ある者はいないよね?」

『はい。マスター。範囲内には居ません』

 リデルが探索しているのなら、間違いはないだろう。
 弱い部類の魔物だったリデルは、周りの状況がしっかりと認識できる。アイルは上位種ではないが、捕食側なので、探索はできるが、リデルほどの精度は出せない。

「ありがとう。無駄に討伐する必要はないよ」

「わかった」

 ミルが納得してくれたのか解らないけど、大丈夫だろう。

 アイルを先頭にして、森の中を進む。リデルが、時々、ミルの肩から飛び降りて、採取をしては戻ってくる。どうやら、神殿の近くでは見られない植物のようだ。今、神殿の中に、マヤとロルフが作っている”ダンジョン”に植えるようだ。ダンジョン内農場?を作りたいと言っている。

 かなりの速度で、3時間ほど森の中を進んだら、大きめの岩に作られた洞窟が見えてきた。

 洞窟の周りには、簡易的な柵と畑のような物が作られていた。

『マスター』

 アイルが、集落を見てから、俺を見る。ここが、目的地に違いはない。
 集落には、の気配はあるが、外には出ていないようだ。

 どういうことだ?

「アイル。ありがとう」

 アイルの頭を撫でながら考えてみるが、誰も出てこない理由が考えられない。今まで、監視されている気配は感じなかった。

 でも、判明したこともある。”ここ”では、休めそうにない。宿はないだろう。集落には違いはないが、洞窟の中で生活をしている感じだ。

 生活をしているのは、畑が作られていて、簡易的な柵があることから、生活を営んでいるのだろうという予測は立てられるが、逃げて隠れ住んでいると考えた方がよさそうだ。森の中に、”村”ができていると、想像したが違っていた。

 交渉を行う為の手を打っておこう。

「リデル」

『はい。マスター』

「ブロッホを呼んでくれ」

 ブロッホには、マヤのサポートをしてもらっているが、この集落との交渉の結果、次第では、集落の住人を、神殿に運んでもらう必要があるかもしれない。気配を頼りに数えると、2-30人はいるように思える。半数は、子供なのかもしれない。弱っている気配もある。治療が必要になってくる可能性も考慮しなければならない。そうなると、ブロッホ以外の選択肢は存在しない。

『わかりました』

 リデルが、仲間に連絡をして、そこから、ブロッホに位置や情報が伝わる。
 実際の移動時間は、30分程度だろう。俺とミルが、集落で交渉を始めるくらいの時間はあるだろう。

「ミル。ひとまず、行ってみよう」

「うん」

 ミルと手を繋いで、洞窟に近づく、敵意がないことを示すように、武器に手をかけていない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...