チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

文字の大きさ
85 / 161
第六章 ギルド

第五話 力?

しおりを挟む

 洞窟の中から、こちらを伺っている様子が伝わってくる。

「リン。ぼくが行こうか?」

「どうして?」

「うーん。うまく言えないけど、中から伝わってくる雰囲気が、リンを恐れているように思える」

「俺?人畜無害だぞ?」

「ぼくは知っているから大丈夫だけど、すごい力を感じるよ?」

「え?俺が?」

「うん。気が付いていなかった?」

 俺が驚いていると、リデルがミルの肩で頷いている。
 気が付くわけがない。ミルもマヤも眷属たちも、態度が変わらないし、そうだ!

「ナナも、何も言わなかったぞ?」

 え?なに?ミルが盛大な溜息をついた。

「ゴメン。リン。ぼくが勘違いをしていた。確か、リンのお父さんは、ナナさんの仲間だったのよね?」

「そう聞いている。ニノサ。オヤジがチームのリーダをしていたらしい。母さんも、同じチームだったらしい」

「・・・。そうか・・・。あのね。リン。ナナさんは、多分だけど、ぼくよりも強い。ううん。ナッセよりも強い。もっと言えば、ハーコムレイやアルフレッドの護衛よりも強い」

「はぁ?」

「リン。ぼくは、ナナさんに初めて会った時に、怖かった」

「え?」

「ナッセさんが怖かった」

「ん?」

「リン。ぼくは、ブロッホが、リンの眷属だってわかっても、とても、とても怖かった」

「ミトナル様」

 後ろから、声をかけられて、ミルが振り向く。
 ブロッホが近づいてきているのが解っていた。

「ブロッホ。急に呼び出して悪かったな。アイルもお疲れ様」

「マスター。話は、アイルから聞きました。それから、ミトナル様がおっしゃっていた、マスターのお力ですが、抑える方法を学ばれることをお勧めします」

「ん?」

 洞窟の前で話すようなことではないが、洞窟からもこちらを監視している雰囲気があるから、ここで会話を打ち切って中に入ったり、場所を移動したり、話を聞かれないようにするよりも、聞かせていた方がいいかもしれない。

「マスターのお力は、我たちを大きく上回っております。経験の違いで、まだマスターには負けませんが、単純な力比べでは、マスターには敵いません。奥に居るのは、獣人族だと思いますが、彼らは鋭敏な感覚を持っています。それで、マスターのお力を恐れたのだと思います」

「うーん。ブロッホ。抑えるのは、すぐにできるの?」

「マスターでしたら、結界でお体を覆う事で、お力を隠すことはできます。しかし、王都での活動を考えると・・・」

 ブロッホの存在感が増した。
 ミルを見ると顔色が悪くなる。そうか、これが”力”ということか・・・。

「わかった。”力”を抑え込む必要がありそうだな」

「はい」

 そもそも、”力”ってなんだ?
 体力なのか?魔力なのか?よくわからない。俺が飛躍的に増えたのは、魔力だから、魔力を偽装すればいいのか?

 お!数字も偽装できる。

「ん?ぼく?」

 ミルを凝視してしまった。ミルと同じくらいにしてみればわかるか?

「ブロッホ?」

 ブロッホが、驚いた表情で、俺を見ている。

「マスター?今、何をされたのですか?」

「ん?今?あぁ偽装だ。魔力を1/10ほどにしてみた」

 ブロッホが驚愕している。

「どうした?”力”が抑えられたのか?」

「はい。御身から溢れ出ていた波動が急に少なく・・・。ミトナル様と同等になっております。並みのネームドでは戦おうとは思わない程度にはなっています」

「うーん。もう少しだけ、抑えた方がいいようだな」

「え?」「??」

「あぁミルは大丈夫だけど、俺は”弱者”で通した方が、都合がいいだろう?ブロッホやアイルたちが強いだけで・・・。俺は弱いと思われたほうが、戦いやすい」

「ん。リンは、弱いと思われている。素性を明かした時に、間違いなく、皆が誤解する」

「そうだな。”動物使い”を、テイマーの下位互換だと思っているのだろう。実際には・・・」

 ブロッホを見ると、頷いている。
 テイマーは、相性が必要で、それ以上に、屈服させるだけの力が必要になる。動物使いには、必要がない。相性はあるだろうが、テイマーとの違いは意思の疎通ができる場合には、相手を納得させる事で繋がりを持つことができる。
 そして、大きな違いは、テイマーは、魔物側にメリットが生じない。俺が理解している範疇なので、違う可能性もあるが、聞いた範疇では、”動物使い”とは大きく違っている。
 俺は、眷属からの力をまとめる事ができる。眷属も、進化が発生したり、力が増したり、メリットが生じている。お互いにメリットがある。デメリットは、今のところは解っていない。もしかしたら、俺が死んだら・・・。でも、それなら、初代と言われている”動物使い”の眷属が存在している道理はない。

 デメリットは解らないが、俺の力は眷属を強化する。同時に、眷属のスキルの一部を取り込める。
 スキルは増えているが、一つだけだ。”具現化”だ。どっかの漫画にあった、”念”のようだけど、本質は違う。眷属の能力を再現する力だ。

「ねぇ。リン。ぼくの魔力も隠ぺいできる?」

「・・・。どうだろう。やってみる?」

 俺が、手をだすと、ミルが抱きついてきた。久しぶりに抱きしめるミルの体温が・・・。

「ミル。抱きつかなくても・・・」

「ううん。ほら、ミスがあるとダメだし、キスしたい所だけど、今日はマヤもいないから、我慢する」

 なにが我慢なのか、解らないけど、偽装はできそうだ。

「どうする?」

「リン。数値は大きくは・・・」

「無理だな」

 大きくは変更が”確定”しない。数値としては、変更はできるが、戻ってしまう。

「それなら、ぼくの最初の数値にして」

 最初の数値?白い部屋で見せられた数値か?

>>体力:240
>>魔力:320
>>腕力:180
>>敏捷:190
>>魅力:100

「最初の数値は、白い部屋で見た奴?」

「うん」

「わかった」

 変わった数値を見ると、ミルはかなりのレベルが上がっているのだろう。
 数値を元に戻す。偽装は、元の数値がわかるようになっている。

「ミル。これでどう?」

「ありがとう!」

 ミルが、予想以上に嬉しそうな声を上げる。

「どうしたの?」

「ぼくの、最初の数値を覚えていてくれたのが嬉しい」

「あぁ・・・」

 ミルが喜んだ理由はわかったけど、数値くらいなら覚えている。そんなに、前の話でもないし、難しいことでもないだろう。

「リン?」

「なんでもない。それよりも、ブロッホ。どうだ?これなら、問題はないよな?」

 ミルの数値を偽装した時に、俺の数値もいじってある。ミルと同じか、少しだけ低い数字になるようにした。魅力は、変えていない。カリスマはあったほうが嬉しい。いや、嘘です。魅力の数値はいじれなかった。

 それから、敏捷を極限まで小さい数字にしても、動きが阻害された感じはしなかったので、数字の表示や外に放たれる圧力?だけが変わったのだろうと推測した。

 ブロッホは、俺とミルを見比べて、大きく息を吐き出した。

「はい。問題はなくなりました。それにしても・・・」

「どうした?」

「恐ろしいです」

「ん?どういうこと?」

「マスターとミトナル様の力は、我たちと同等です。我たちは、力の波動を感じ取って、優劣を決めるような愚かなことはしません」

「え?うん?それで?」

「しかし、意識がない魔物は、力の波動だけを頼りに、戦いを挑みます」

「へぇ」

「竜族でも、幼い時や、あまり鍛錬を行わない者は、力の波動がすべてだと考えています」

「そうなの?意外だな」

「はい。愚か・・・。なのです。その者たちが、マスターやミトナル様に遭遇してしまえば・・・」

「まぁ最初は、話を聞くし、襲われても返り討ちにする。それに、簡単に遭遇しないだろう?」

「はい。痛い目に会うくらいなら、我らも歓迎なのですが、マスターとミトナル様と敵対したと知られたら、それにマスターたちの一撃を軽く考えて、受けたら・・・。マスターの波動が弱いことから、初見ではかならず、やられてしまうでしょう」

 ブロッホが言いたい事はわかるが、俺たちが強者だとわかるのも面倒な事だし、弱者だと勘違いされるのも面倒なことに繋がりそうだ。
 王都では、弱者として振舞えばいいから、問題はないと思いたい。

 どっちに転ばせても、面倒なことが来るなら、簡単に解決できる方に転ばせておいた方がいいだろう。

 ブロッホの話から、俺だけではなく、ミルも手加減を覚えた方がいいかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

処理中です...