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第三章 町?街?え?
第五話 登録?
しおりを挟むヤスは、ロブアンの行動に関しては思うことはない。別にどうでも良いと考えてさっさと登録を行う事にした。
「登録したいのだがどうしたらいい?」
受付に居た女性は、ヤスからの問いかけにニコリともしないで、一枚の羊皮紙と球状の物を取り出した。
「はじめから説明しますか?」
「お願いします」
受付の女性は、”面倒”だという感情を隠そうとしない。
「そうですか・・・。ギルドの規則などは、二階に冊子があります。あとでご確認ください」
出された羊皮紙には、ギルドの簡単な説明だけが書かれていた。
ヤスは、観察されているような感覚になっている。事実、受付の女性は、ヤスのことを観察していた。
ギルドの職務上、しょうがないと言える行為だが、受ける方はたまったものではない。
簡単な説明には、3つのギルドの事が書かれている。冒険者ギルドも職人ギルドも基本的な部分は同じなのだ。自己責任が共通の考え方だ。互助会としての意味合いが強い商業ギルドの規約は違うようだが根本部分は同じと考えて大丈夫なようになっている。
ギルドの職員は”日本”でいう公務員ではない。携帯ショップの店員に近いのだ。
各ギルドの本部は、各国の王都にある。バッケスホーフ王国には、冒険者ギルド。アデヴィト帝国には、職人ギルド。フォラント共和国には商業ギルド。それぞれの王都には各ギルドの国内の本部が存在している。
ギルドは国政には関わらない代わりに、独立した権限を持っている。
権限が大きくなれば、権限に伴う責任も重くなる。そのために、各ギルドはギルド員の問題には頭を悩まされている。
そして、小さな街では1つの建物に複数のギルドが同居することは珍しくない。このユーラットのギルドでも、冒険者と職人と商人のギルドが一緒になっている。
職員が、ヤスを見ているのは、自分が属しているギルドにふさわしいか判断しているのだ。優秀なギルド員は欲しいのだが、問題を起こす位ならギルド員として活動してほしくない。
「ギルドの説明はわかりました。複数のギルドに登録する事はできますか?」
「可能ですが、別々の登録です。したがって、手数料が別々に必要です」
ここに来て、貨幣を持っていない事にヤスが思い立った。
『日本円は利用できないので、バッケスホーフの硬貨と交換できます』
ヤスの頭の中に、エミリアの音声が響いた。
”どういう事だ?エミリア?”
『エミリアが答えます。マルスの神殿掌握が終了しました。それに伴い、マスターとの接続が可能になりました』
”どうすればいい?”
『エミリアを手で持つ事で繋がります』
”わかった。このまま指示を出せばいいのか?”
『はい』
ヤスが固まってしまったので、受付は怪訝な顔でヤスを覗き込んでいる。
なにか問題が有ったのではないかと思っているようだ。
「どうかされましたか?」
「いえ、なんでもありません。手数料はいくらですか?」
「合計で、王国銀貨3枚です」
「内訳は?」
「冒険者ギルドが、銅貨5枚。職人ギルドが、大銅貨5枚。商業キルドが、銀貨1枚で預託が銀貨1枚です。3つのギルドへの登録時の手数料が、それぞれ銅貨5枚。魔道具の利用に関わる神殿へのお布施が大銅貨3枚です」
”エミリア。わかったか?”
『マスターの所持金は、5万3千472円です。交換を実行しますと、銀貨5枚と大銅貨3枚と銅貨4枚と鉄貨7枚と賤貨2枚です。実行しますか?』
”5万3千円分だけ頼む。すぐに取り出せるか?”
『マスターの記憶を参照・・・成功。マスターアイテムボックスの設定を進言します』
”どうすればいい?”
『ゴブリンの討伐記録を使って、アイテムボックスの設置が可能です』
”わかった。やってくれ”
『マルス・エミリア・マスターで共通で使えるアイテムボックスの設定・・・成功。マスター。エミリアを使って、硬貨を取り出す事が可能になりました』
”わかった。どうすれば取り出せる?”
『エミリアに、アイテムボックスのアプリが表示されています。そこから、取り出す物をタップすれば取り出せます』
”エミリアを出して問題ないのか?”
『神殿情報を検索・・・成功。問題ありません。アーティファクトで押し通せます』
”わかった”
ヤスがポケットから、エミリアを取り出した。受付は、初めて見るスマホに目が釘付けになっているが、ヤスは気にしてもしょうがないと思って、新しく出てきた”アイテムボックス”のアプリを起動する。
ヤスには見慣れた画面の中に、エミリアが言ったように通貨が表示されている。そこから、銀貨を3回タップして取り出す。
受付に銀貨3枚を渡した。受付は、不思議そうな表情を浮かべたが、渡された銀貨を確認して、受付の下から球状の物を取り出した。
「登録、ありがとうございます。犯罪に関わる称号がある場合には登録できません」
先に教えてくれてもいいだろう?レベルの話だが、ヤスはこの世界はこういう物だと受け入れる事にした。自分の考えを押し付けても軋轢を生むだけだと知っているのだ。
しかし心のなかでは町に入る時に称号を調べているのだし、またここで調べる必要性があるとは思っていなかったようだ。
球状の道具にヤスが手を置くと、一瞬だけ光った。
受付が持っていた板を球が置かれている台座に差し込む。
「え?」
受付が声を上げた。
「なにかありましたか?」
「えぇーと・・・。ヤス様・・・。ゴブリンの討伐記憶がありますが、討伐部位はお持ちですか?」
「討伐部位?」
「はい。ゴブリンですと、右耳を討伐された時に切り取って持ってきてもらえれば、それが討伐証明部位です」
「取ってきていない」
「わかりました。次から、討伐されましたら討伐部位を持ってきていただければ、冒険者ギルドのポイントが加算されます」
「ポイント?」
受付の女性は、冒険者ギルドの人間で、ヤスの見た目が冒険者ではないことや、見た目で戦闘が苦手だと判断していた。喋り方も丁寧(比較対象は、漁師や粗暴な冒険者)なために商人の息子か貴族の子息だと勘違いしていた。
冒険者ギルドとしては、身分証明書代わりに使われる事が多い。そのために、ヤスもその手合いだと考えたのだ。
しかし・・・。
(すごい!)
受付の女性は、ヤスのステータスを見て驚いた。
(知力がHなのはしょうがないけど、平均以上だし、すでに討伐記憶まである。称号が何も無いのは気になるけど・・・)
女性は、久しぶりの大物を逃したくなかった。
辺境の小さな港町。この港町でしか獲れない物はあるが、冒険者ギルドには関係無い。町の近くには魔物が多く住む森が有るが、大物が居るわけではない。そのために、冒険者がわざわざ討伐に来る事がない。
そして、ギルドの収入は買い取った魔物や採取した物を売る事で得ているのだが、もう1つは登録した冒険者やギルド員が稼いでくるポイントによって分配されるのだ。
売上の半分は、決済した支部の運営費に充てられる。残りは、一旦本部に集められて、そこからギルド支部に報奨として分配されるのだ。優秀な者が登録して活動拠点としている支部に運営費が多く支払われる仕組みになっている。そのために、優秀なギルド員を確保するのが、運営費を効率よく確保できるのだ。
「はい。ポイントは、ギルドへの貢献を数値化した物です」
ヤスがいくら知力Hでもその位は想像できる。
「それで、ポイントを貯めるとなにかいい事があるの?」
ポイントは、ギルドの施設を使うのに必要になるのだ。それだけではなく依頼失敗時の保険にも使う事もできると説明された。
ヤスは話を聞いていて、預託金のような物と理解した。ギルドを自らの意思で辞める時に、ポイントが残っていればポイント数で慰労金が出るようだ。
ヤスは一通り説明を聞いて、事情を把握した。
「わかりました。ありがとうございます。それで、貴方のお名前をお聞きしていいですか?」
ヤスが、受付の女性の名前を聞こうとした時に、入り口で大きな物音がした。
「ギルドマスターは居るか!」
ヤスの手続きが終わったと判断して、ロブアンがギルドに怒鳴り込んできたのだ。
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