異世界の物流は俺に任せろ

北きつね

文字の大きさ
15 / 293
第三章 町?街?え?

第五話 登録?

しおりを挟む

 ヤスは、ロブアンの行動に関しては思うことはない。別にどうでも良いと考えてさっさと登録を行う事にした。

「登録したいのだがどうしたらいい?」

 受付に居た女性は、ヤスからの問いかけにニコリともしないで、一枚の羊皮紙と球状の物を取り出した。

「はじめから説明しますか?」

「お願いします」

 受付の女性は、”面倒”だという感情を隠そうとしない。

「そうですか・・・。ギルドの規則などは、二階に冊子があります。あとでご確認ください」

 出された羊皮紙には、ギルドの簡単な説明だけが書かれていた。

 ヤスは、観察されているような感覚になっている。事実、受付の女性は、ヤスのことを観察していた。

 ギルドの職務上、しょうがないと言える行為だが、受ける方ヤスはたまったものではない。
 簡単な説明には、3つのギルドの事が書かれている。冒険者ギルドも職人ギルドも基本的な部分は同じなのだ。自己責任が共通の考え方だ。互助会としての意味合いが強い商業ギルドの規約は違うようだが根本部分は同じと考えて大丈夫なようになっている。

 ギルドの職員は”日本”でいう公務員ではない。携帯ショップの店員に近いのだ。
 各ギルドの本部は、各国の王都にある。バッケスホーフ王国には、冒険者ギルド。アデヴィト帝国には、職人ギルド。フォラント共和国には商業ギルド。それぞれの王都には各ギルドの国内の本部が存在している。
 ギルドは国政には関わらない代わりに、独立した権限を持っている。

 権限が大きくなれば、権限に伴う責任も重くなる。そのために、各ギルドはギルド員の問題には頭を悩まされている。
 そして、小さな街では1つの建物に複数のギルドが同居することは珍しくない。このユーラットのギルドでも、冒険者と職人と商人のギルドが一緒になっている。

 職員が、ヤスを見ているのは、自分が属しているギルドにふさわしいか判断しているのだ。優秀なギルド員は欲しいのだが、問題を起こす位ならギルド員として活動してほしくない。

「ギルドの説明はわかりました。複数のギルドに登録する事はできますか?」

「可能ですが、別々の登録です。したがって、手数料が別々に必要です」

 ここに来て、貨幣を持っていない事にヤスが思い立った。

『日本円は利用できないので、バッケスホーフの硬貨と交換できます』

 ヤスの頭の中に、エミリアの音声が響いた。

”どういう事だ?エミリア?”

『エミリアが答えます。マルスの神殿掌握が終了しました。それに伴い、マスターとの接続が可能になりました』

”どうすればいい?”

『エミリアを手で持つ事で繋がります』

”わかった。このまま指示を出せばいいのか?”

『はい』

 ヤスが固まってしまったので、受付は怪訝な顔でヤスを覗き込んでいる。
 なにか問題が有ったのではないかと思っているようだ。

「どうかされましたか?」

「いえ、なんでもありません。手数料はいくらですか?」

「合計で、王国銀貨3枚です」

「内訳は?」

「冒険者ギルドが、銅貨5枚。職人ギルドが、大銅貨5枚。商業キルドが、銀貨1枚で預託が銀貨1枚です。3つのギルドへの登録時の手数料が、それぞれ銅貨5枚。魔道具の利用に関わる神殿へのお布施が大銅貨3枚です」

”エミリア。わかったか?”

『マスターの所持金は、5万3千472円です。交換を実行しますと、銀貨5枚と大銅貨3枚と銅貨4枚と鉄貨7枚と賤貨2枚です。実行しますか?』

”5万3千円分だけ頼む。すぐに取り出せるか?”

『マスターの記憶を参照・・・成功。マスターアイテムボックスの設定を進言します』

”どうすればいい?”

『ゴブリンの討伐記録を使って、アイテムボックスの設置が可能です』

”わかった。やってくれ”

『マルス・エミリア・マスターで共通で使えるアイテムボックスの設定・・・成功。マスター。エミリアを使って、硬貨を取り出す事が可能になりました』

”わかった。どうすれば取り出せる?”

『エミリアに、アイテムボックスのアプリが表示されています。そこから、取り出す物をタップすれば取り出せます』

”エミリアを出して問題ないのか?”

『神殿情報を検索・・・成功。問題ありません。アーティファクトで押し通せます』

”わかった”

 ヤスがポケットから、エミリアを取り出した。受付は、初めて見るスマホに目が釘付けになっているが、ヤスは気にしてもしょうがないと思って、新しく出てきた”アイテムボックス”のアプリを起動する。
 ヤスには見慣れた画面の中に、エミリアが言ったように通貨が表示されている。そこから、銀貨を3回タップして取り出す。

 受付に銀貨3枚を渡した。受付は、不思議そうな表情を浮かべたが、渡された銀貨を確認して、受付の下から球状の物を取り出した。

「登録、ありがとうございます。犯罪に関わる称号がある場合には登録できません」

 先に教えてくれてもいいだろう?レベルの話だが、ヤスはこの世界はこういう物だと受け入れる事にした。自分の考えを押し付けても軋轢を生むだけだと知っているのだ。
 しかし心のなかでは町に入る時に称号を調べているのだし、またここで調べる必要性があるとは思っていなかったようだ。

 球状の道具にヤスが手を置くと、一瞬だけ光った。
 受付が持っていた板を球が置かれている台座に差し込む。

「え?」

 受付が声を上げた。

「なにかありましたか?」

「えぇーと・・・。ヤス様・・・。ゴブリンの討伐記憶がありますが、討伐部位はお持ちですか?」

「討伐部位?」

「はい。ゴブリンですと、右耳を討伐された時に切り取って持ってきてもらえれば、それが討伐証明部位です」

「取ってきていない」

「わかりました。次から、討伐されましたら討伐部位を持ってきていただければ、冒険者ギルドのポイントが加算されます」

「ポイント?」

 受付の女性は、冒険者ギルドの人間で、ヤスの見た目が冒険者ではないことや、見た目で戦闘が苦手だと判断していた。喋り方も丁寧(比較対象は、漁師や粗暴な冒険者)なために商人の息子か貴族の子息だと勘違いしていた。
 冒険者ギルドとしては、身分証明書代わりに使われる事が多い。そのために、ヤスもその手合いだと考えたのだ。

 しかし・・・。
(すごい!)

 受付の女性は、ヤスのステータスを見て驚いた。

(知力がHなのはしょうがないけど、平均以上だし、すでに討伐記憶まである。称号が何も無いのは気になるけど・・・)

 女性は、久しぶりの大物を逃したくなかった。
 辺境の小さな港町。この港町でしか獲れない物はあるが、冒険者ギルドには関係無い。町の近くには魔物が多く住む森が有るが、大物が居るわけではない。そのために、冒険者がわざわざ討伐に来る事がない。
 そして、ギルドの収入は買い取った魔物や採取した物を売る事で得ているのだが、もう1つは登録した冒険者やギルド員が稼いでくるポイントによって分配されるのだ。
 売上の半分は、決済した支部の運営費に充てられる。残りは、一旦本部に集められて、そこからギルド支部に報奨として分配されるのだ。優秀な者が登録して活動拠点としている支部に運営費が多く支払われる仕組みになっている。そのために、優秀なギルド員を確保するのが、運営費を効率よく確保できるのだ。

「はい。ポイントは、ギルドへの貢献を数値化した物です」

 ヤスがいくら知力Hでもその位は想像できる。

「それで、ポイントを貯めるとなにかいい事があるの?」

 ポイントは、ギルドの施設を使うのに必要になるのだ。それだけではなく依頼失敗時の保険にも使う事もできると説明された。
 ヤスは話を聞いていて、預託金のような物と理解した。ギルドを自らの意思で辞める時に、ポイントが残っていればポイント数で慰労金が出るようだ。

 ヤスは一通り説明を聞いて、事情を把握した。

「わかりました。ありがとうございます。それで、貴方のお名前をお聞きしていいですか?」

 ヤスが、受付の女性の名前を聞こうとした時に、入り口で大きな物音がした。

「ギルドマスターは居るか!」

 ヤスの手続きが終わったと判断して、ロブアンがギルドに怒鳴り込んできたのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

処理中です...