31 / 293
第四章 拠点
第十話 神殿へ
しおりを挟むヤスが、ダーホスからの依頼を承諾して、荷物を積み込んだ。
依頼なので、一旦ギルドに戻って手続きを行う必要がある。
ヤスとダーホスは、二人でギルドに移動して手続きを行なってから、神殿に向かう事になった。
「ヤス!」
裏門から出て、アーティファクトの側に居るはずがなかった、リーゼが居てヤスの方に駆け寄ってきた。
ヤスは驚きながらも、リーゼの突進を停めた。
抱きつかれるのは嬉しいが、アフネスも居るロブアンに知られたら殺されるかもしれない。
「え?なんで?」
ヤスは、疑問を投げかける目線でアフネスを見る。アーティファクトの見張りをしていたはずのアフネスがヤスを見て手招きした。
なにか言っているリーゼを無視して、アフネスのところまで移動した。
「どうして、リーゼが?」
「すまない。うちの馬鹿が・・・」
アフネスが馬鹿と言った時点で、ロブアンがリーゼにアフネスの予定を話してしまったと理解した。
「ロブアンがどうした?」
「ヤスが来ていると、リーゼに言ってしまった」
「それは別にいいけど、なんでリーゼがここに居る?」
「私とダーホスが神殿に行くなら自分も行くと言って聞かない、危険だからと言っても護衛を帰らせた手前・・・」
「あぁわかった。一人増えても大丈夫だ。どうせ、リーゼを置いていっても、一人で来てしまうのだろう?」
「本当にすまない。危険があるなら帰すが?」
「危険は・・・。ない・・・。と、思う。神殿までの道は、アーティファクトで移動する。神殿の中も、最奥部の手前までは移動できるからな」
「そうなのか?!」「ヤス殿。中は、そんなに広いのですか?」
二人が一斉に質問してきた。
「ダーホスも、アフネスも、神殿に行けばわかるだろう?」
「そうだよ。早く行こうよ!」
リーゼは、絶対についていくつもりで居る。ダーホスは、情報は少ない人間で把握したいと考えているのでリーゼは来ないでほしかった。
現状を考えれば、リーゼを置いていくのは無理に近い。
アフネスがダーホスを説得したのだ。神殿に行く事とは別に、前回のアフネスが出した依頼の不始末をどうするのかを話し合った結果、アフネスは1つの条件を出した。”リーゼに任せた仕事の護衛をヤスにする事”だ。アフネスは、神殿のことを含めてギルドが独占しないようにリーゼを楔に使う事にしたのだ。ダーホスとしても打算はある。ヤスのアーティファクトを使えば、リーゼの護衛だけではなく遅れを取り戻せると考えているのだ。数日遅れ程度なら、もともとの契約範疇とする事ができる。
「わかった。問題ない。アフネス。ダーホス。問題ないよな?」
神殿の(仮)持ち主のヤスが言っているのだ。問題にならない。
ヤスは、運転席に乗り込むが、誰も乗り込んでこない。
「ん?」
「ヤス。どうやって乗るの?あの大きな馬車じゃないの?」
「おっと・・・。すまん」
ヤスは、リーゼにドアの開け方を教える。リーゼは、助手席に座る。
アフネスとダーホスは後部座席に座る。
結界を発動するから安全だとは思っているが、皆にシートベルトをしてもらう事にした。
口での説明ではうまくできないようで、ダーホス以外の女性の二人にヤスは自ら身を乗り出してシートベルトをしていった。
下心がまったくなかったわけではない。いやそれどころか、リーゼのまだ青臭いメスの匂いと、アフネスの熟成したメスの匂いを堪能していた。
「よし、シートベルトはできたな」
「ヤス。これ・・・。胸が少し苦しいよ?」
リーゼが少しだけ、本当に少しだけ見栄で胸を強調した。
「だめだ。安全の為にしておけ、それに、苦しくなるような物は持っていないだろう?」
ヤスが何気なく言ったセクハラなセリフの意味は、リーゼには通用しなかったがアフネスとダーホスはすぐにわかったようで苦笑していた。
ヤスはバックミラーで後部座席に座る二人を確認して、横を見て隣に座っているリーゼを確認した。
「窓を開けたかったら・・・。そうそう、そのスイッチを押せば開くからな。結界を張って走るから大丈夫だとは思うけどな」
「けっ・・・。結界?」
「あぁなにかダメなのか?」
「ダーホス。これは、アーティファクトだぞ?」
「そうだった。すまない。それで、ヤス殿。どのくらいで到着できる?」
「うーん。ゆっくり走るからな。2時間もあれば付くと思うぞ?」
「え?2時間?そんなに早く神殿に到着するのですか?」
「あぁ違う!違う!」
「そうですよね。びっくりしましたよ」
「到着するのは、最下層だ。神殿だけなら、30分あれば余裕だな」
「え?」「本当!?」「・・・・」
ダーホスが驚き、リーゼが喜び、アフネスはなにかを考えている。
「ねぇヤス」
「ん?なんだ?まぁいいか、走りながら聞くよ」
「そうね」「わかった」「うん!」
ヤスは、アクセルを踏み込む。
少しだけタイヤを空転させたが問題なくスタートする。ゆっくり行くと言ったが、ヤスの感覚でのゆっくりだ。
山道の上り。それも対向車はなし。崖もないから落ちる心配もない。そして結界を発動しているので、ゲーム感覚で岩壁や木々に当たっても問題ない。
速度は、徐々に上がっていってアベレージで50キロ近い速度が出ている。
「それで、アフネスなにかあるのか?」
運転しながらでも問題はない。
スマートグラスをかけて道がわかっている事もだが、スマートグラスから聞こえてくる音声での指示がコドラの役目を果たしている。ヤスは、右耳にイヤホンを入れてコドラの指示を受けている。左耳だけだが、会話には困らない。
「ヤス。アーティファクトが増えるのかい?」
「あぁ増えた。どういう条件なのかわからないが増える事がわかった」
「そう・・・」
それっきり、アフネスは黙ってしまった。
ダーホスは、さっきから”ひっ”や”はぅぅ”などと情けない声を出している。
この状況を一番楽しんでいるのは、間違いなくヤスの隣で”キャァキャァ”騒いでいるリーゼだ。
怖がっているのではなく、確実に楽しんでいるのだ。カーブを曲がるたびに、路面がすべて流れるがそれを楽しそうに見ている。
「ねぇねぇヤス。僕にも動かせる?」
「無理だ・・・と、思う」
ヤスは、リーゼに無理と言ったのだが、言った後で1つの可能性があることを思い出した。
極小の可能性だが、絶対に無理ではない事には違いない。
アフネスはすっかり黙ってしまっている。ダーホスは、速度に慣れていない上に横に揺らされるのが怖いのだろう。シートベルトに捕まっているだけだ。ただ一人、楽しんでいるリーゼだったがヤスの運転が激しくなるにつれて話しかけるのはダメだと思って黙って前を見ている。
予定よりもだいぶ早い15分で到着した。
アーティファクトが速度を緩めた事で、ダーホスが復帰してきた。
でも、最初に口を開いたのはリーゼだ。
「ヤス!ここが神殿!」
「リーゼは初めてなのか?」
リーゼは、神殿を指差して聞いてきた。
「うん。うん!すごい!広い!奥に建物がある!あそこに行くの!」
「そうだ」
「ヤス殿?え?もう?」
「あぁまだ神殿の前だけどな。広場に着いたぞ?」
「ほ、本当です。こんなに・・・。どのくらいですか?」
「ダーホス。ヤスのアーティファクトに乗ってから、15分ね。私も今驚いている。ねぇヤス。アーティファクトはどこでも走れるの?」
「今と同じ位の速度が出すためには、道が整備されていないとダメだな。街道ではもう少し落とさないと無理だな」
「そう・・・。難しいのね」
神殿の前まで辿り着いている。ヤスが、エミリアを取り出して、駐車スペースに入る為のシャッターを開ける。
「え?」「な?」「ほぉ・・・」
ヤスは3人の反応を無視して駐車スペースに降りていく、そのまま工房を通って地下3階に降りる。
見るものすべてにリーゼが興奮していて、ヤスはその都度簡単に説明をしている。
アフネスが何やら微笑を浮かべているのが気になったが、突っ込んではダメだとヤスはスルーする事にした。
地下3階になると道幅が多少狭くなるが、スマートグラスに道が示されるので迷うこと無く進む事ができている。
0
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる