異世界の物流は俺に任せろ

北きつね

文字の大きさ
97 / 293
第六章 神殿と辺境伯

第十四話 住居?

しおりを挟む

「なんで?」「へ?」「へぇ・・・」

 結界を通り抜けると周りの様子が変わる。
 乗っていた3人は、広場はただの広い場所に見えていた。それが結界を越えると家が立ち並ぶ街並みが目に入った。何か騙された気分になったのだ。

「ヤス!なんで!なんで!」

「はい。はい。簡単に言えば結界には中を見えなくする権能があって外から見えなかっただけだ」

「結界?こんなに大規模な?」

 ディアスは知識として結界のことを知っている。ヤスが言っている神殿を覆うような結界は通常ではありえない。通常は野営などで馬車を守る為に発動する。範囲も数メートルが限界だと言われている。

「ヤス様。少しお聞きしてよろしいですか?」

「ん?いいけど、あんまり難しい事はわからないよ?」

 ディアスはヤスの言葉で教えられないことが沢山あると理解した。

「はい。わかりました。ヤス様。右側に立っている家は?すでに住人の方がいらっしゃるのですか?」

「ん?あぁまだ住んでいないよ。移住してくる人たち用の家として作った。中の作りは甘いから直す必要はあると思うよ?それこそ、ドワーフたちに修繕を頼んでもいいかもしれない」

「え?」

「リーゼの家だけ用意して他の人の家を用意しないのは不公平でしょ?」

「いや・・・。あっそうですね。ありがとうございます」

「うん。リーゼ!窓を開けるから叩かない!」

 ヤスは助手席の窓を開けた。
 びっくりするカスパルとディアスだったが、リーゼが身体を乗り出して外に出ようとするのをとめるのに必死になっていた。

「リーゼの家は少し作りが違うから、ディアスさんとカスパルが住む家を案内するよ」

 ヤスは山道を走っていたような速度ではなく最徐行で走っている。
 神殿の近くに作ったロータリーで車を停める。

 セバスの眷属である5人が魔物を連れて待っていたのだ。

「旦那様。おかえりなさいませ」

「ひっ!」

 反応したのはカスパルだ。魔物が目の前に入れば驚くのは当然だ。

「カスパル。大丈夫だ。魔物だけど、神殿で保護している。可愛いだろう?」

 ヤスの足にじゃれ付いている魔物を不思議そうな顔で3人が見つめる。

「ヤス様。魔物を使役テイムしているのでしょうか?」

「違うと思うよ?神殿に所属はしてもらっているだけだからな。使役とは違うと思う。リーゼとディアスさんだ。ついでにカスパルだ。数日のうちに移住が始まると思う。対応を頼む。移住が始まればセバスも帰ってくるから、セバスの指示に従ってくれ」

 眷属たちは頭を下げる。

 ヤスは魔物たちを見て

「お前達も魔の森に行けない者たちは町の巡回を頼むな」

 魔物たちは一斉に頭を下げる。その姿が可愛くて、リーゼも真似して頭をぴょこんと下げる。

 頭を下げたリーゼだが、ヤスの足にじゃれ付いている魔物に興味津々だ。

「ヤス様。私の事は、ディアスと呼び捨てにしてください。それから、匿っていただきありがとうございます」

「わかった。ディアス。それから、匿っているつもりはないからね」

「え?」

「働いて貰うよ?カスパルもいいな」

「はい!」「もちろんです」

「まずは、家に案内する。リーゼの家はいろいろと説明が面倒だから・・・。先にディアスとカスパルの家を決めよう」

 リーゼもそのほうが良さそうな雰囲気だ。ヤスは問題ないとしてディアナとカスパルから二人の生活能力を聞き取った。

 ディアスもカスパルも家事全般が壊滅的な状況だ。ヤスは少しだけ考えてから近くに控えていたメイドを呼ぶ。

「料理は大丈夫だよな?」

「はい。マスター」

「リーゼ!いつまでも魔物をなでているなよ」

「え?なに?」

「リーゼは、料理は大丈夫だよな?」

「うん。できるよ?」

「わかった」

 ヤスはディアスとカスパルを見る。どうしようか考えているとディアスが一つの提案をしてきた。

「ヤス様。どこか小さな家をお貸しいただきたい。すぐには無理だとは思いますが一人でできるようになりたいです」

 ヤスは少しだけ困った表情をするが実際には困っていない。
 困っている雰囲気を出しながらいたずらとしようと考えているのだ。

「うーん。アフネスに匿うと約束したからな。そうだ!カスパル!」

「はい!」

「お前、何でもすると言ったよな?」

「はい。なんでもします!」

「よし、俺の仕事を手伝え。アーティファクトの操作方法を教えてやる。まずは、ユーラットと居住区を繋げ。移住者の移動や物資の補給を全部担当しろ。そして、ディアスと一緒に住んでディアスを守れ。ディアスには不便をかけるけど、匿われているのを理解して嫌だろうけどカスパルと住んでくれ」

「え?」「はい?」「えぇぇぇぇぇぇ!!僕も操作したい!」

「カスパル。異論はないな!」

「はい!」

「ディアスも問題ないな。それから、生活能力がないカスパルの世話ができるようになってくれ。二人だと心配だから、ディアスができるようになるまでメイドを付ける」

「はい。よろしくお願いします」

「うん。家の場所は、神殿の近くにしよう。道沿いなら警備しやすいからな」

「??」

 ヤスが選んだ家は夫婦が住むのに適した作りにした家だ。
 リーゼの家から一つ離れた場所にある。眷属たちが住む部屋の隣になる。

 ヤスは、カスパルとディアナを先導して歩く。

『マルス。カスパルに運転を教えたいがどうしたらいい?』

『個体名カスパルに運転させる車は?』

『最初は、小型バスだな。慣れてきたら、業務車での運搬を担当させたい。ユーラットから食料や物資を運んだりできたらいいだろう?ユーラットへの素材の運搬もできるようになれば嬉しい』

『了。地域名ユーラットまでならサポートできます。以前に行った方法で問題ないと思われます』

『ツバキと同じ方法か?』

『はい。そのときに、個体名セバス・セバスチャンの眷属にも教えていただきたい』

『いいけど?』

『今後運転を教える時には、マスター以外が教えたほうが良いと判断します』

『わかった』

 ヤスとマルスが念話で打ち合わせをしている間にディアスとカスパルが住む家に到着した。
 すでに先回りしたメイドが家の前で待っていた。

『マルス。鍵はどうなっている?』

『カードで代用できます』

『さっき作ったカードか?』

『はい』

『どうしたらいい?』

『登録者が居ない家の場合には、カードをドアにかざす事で登録できます。最初に登録した者が家の所有者になり追加で住民のカードを登録できます』

『わかった。登録抹消は?』

『持ち主の抹消は、マスターと個体名ツバキと個体名セバス・セバスチャンが行えます』

『わかった』

「ディアス。カスパル。家はこれでいいか?」

「え?」「は?」「いいなぁ!!」

 3人の反応を見てヤスは問題ないと判断した。

「登録だけど、所有者は誰にする?ディアスのほうがいいかな?」

「本当にいいのですか?」

「何が?」

「いえ・・・。こんなに立派な・・・。それに広さも・・・」

「これが平均的な家だからな。二人で住んでもらうし少しくらい広いほうがいいだろ?」

「あ・・・。はい」

「ディアスが所有者でいいよな?」

「・・・」「はい。問題ありません」

 カスパルが問題ないと言っているのだから問題ない。

「ディアス。結界に入る為のカードがあるだろう?あれをドアにかざして」

「はい」

 ディアスがカードを家にかざすと”カチッ”と音がした。カードに、ヤスが適当に振った家の番号が記載された。

 ディアスが開けた扉から家に入る。カスパルのカードを登録した。これで、カスパルも鍵を開けられるようになる。ヤスの譲れないところとして”玄関で靴を脱ぐ”ことは徹底する。

 ヤスが設定した内装の説明を行う。
 玄関から始まって、キッチンとリビング。風呂とトイレの説明だ。特に、キッチンと風呂とトイレはしっかりと説明した。

「こんな感じだけど?」

「・・・」「!!」

 家の設備を説明した結果ディアスとカスパルは無言になってしまった。リーゼだけは純粋に楽しんでいるようだ。

 ヤスはカスパルとディアスを家に残して後のことはメイドに任せた。当面の食料はヤスが確保している物から提供する。

 リーゼとヤスはリーゼの家に移動して同じようにカードを登録してから中に入る。
 広さは違うが設備には違いは無い。

 リーゼが大人しく説明を聞いていた。

「ヤスはどこに住むの?」

「俺は、神殿の中に部屋があるし、いろいろ仕事がある」

「僕はどうしたらいい?」

「どうしたら?そうだな。ギルドでも手伝うか?ドーリスに話を通すぞ?」

「むぅ・・・。もういい!」

 リーゼはドアを閉めて家の中に入ってしまった。

「マスター」

「面倒だろうけど、リーゼの世話を頼むな。ミーシャとかラナが来たら相談しよう」

「わかりました」

 メイドは、ヤスに頭を下げてからリーゼの家に入っていった。リーゼにも2名のメイドをつけた。ディアスとカスパルには3名のメイドをつけた。

「巡回を頼むな。それから、セバスが帰ってきたら一緒に運転を教えるから覚えてくれ」

 5人の眷属が一斉に頭を下げて返事をした。
 やはりヤスから教えてもらうのは嬉しいようだ。頼られて命令されるのも嬉しいのだが、ヤスから教えられる事が嬉しいようなのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

処理中です...