異世界の物流は俺に任せろ

北きつね

文字の大きさ
120 / 293
第七章 王都ヴァイゼ

第九話 交渉と王都へ

しおりを挟む

 ヤスの交渉は難航した。
 理由は簡単だ。ヤスが”金貨”しか提示しなかったからだ。今回は、王都で大量の物資を買うので細かい硬貨よりも金貨で精算しようと思っていたのだ。足りなければ、ギルドから引き出せばいいと考えていた。
 街々での購入も、ギルドに預けている硬貨で購入すればいいと思っていたのだ。

「村長。ヤス殿の条件でよろしいですか?」

「問題はありませんが、ヤス様はよろしいのですか?」

 交渉をさっさと切り上げたいのは、村長もドーリスも同じだった。
 ヤスが拘っているだけなのだ。そこで、ドーリスはヤスから条件を聞いた。

 ヤスが出した条件は、米と大豆を定期的に購入できればいいというものだった。
 村長はヤスに村人を雇わないかと提案してきた。村なら金貨一枚でもあれば1家族が余裕を持って6ヶ月は生活できる。金貨2枚で1年だ。

「問題ない。むしろいいのか?」

「何が問題でもありますか?」

 ヤスに雇われた家族は米と大豆を作る。作られた作物は全部ヤスの物になる。
 問題は不作になってしまったときだが、ヤスは気にしなくてもいいと言ったのだが、村長とドーリスは取り決めをするようだ。簡単に言えば、ヤスに村民を差し出す条件で決まった。奴隷という形だ。そうならないために、”不作にならないようにがんばります”と村長はヤスに握手を求めた

 ヤスは、契約の意味を込めて差し出された村長の手を握り返した。
 ドーリスも安堵の表情を浮かべる。

「村長。ドーリス。金貨1枚じゃ半年だろう?あと、5枚渡すから、3年間の契約で頼む。そうしたら、一年の不作でも翌年に頑張れば取り戻せるだろう?」

「いいのですか?」

 村長が、ヤスに聞き返す。

「俺もその方が嬉しい。それに、米・・・。うるちはこの辺りではこの村でしか栽培していないのだろう?気候が影響しているのか知らないが、それならしっかりと栽培してくれる方が嬉しい」

「わかりました。ありがとうございます」

「そうだ!村長、もし知っていたら教えてほしいのだけど、豆を使った調味料をしらないか、黒に近い茶色の様な液体の調味料や、他にはやはり豆を使ったもので液体じゃなくて茶色や白っぽい調味料だが?」

「液体は知りませんが、もう一つは村で作っています。エルフ豆で作られていた物を真似て作った物です」

「エルフ豆?」

 村長の言葉の中にあったエルフ豆がヤスは気になった。
 ドーリスが簡単に説明してくれた。

「ヤス殿。エルフ豆は、この村で作っている豆の原型だと言われている物で、もう少し粒が大きいのが特徴で、エルフが住まう森で栽培されています」

「へぇ・・・。ロブアンが俺に出した納豆なんかの材料なのだな」

「え?ヤス殿はエルフ豆を食べたのですか?あんな腐った匂いがする物を食べたのですか?」

「納豆ですか?美味しいですよ?あ!うるちが手に入るから!!」

 ヤスが何に興奮し始めたのかわからない二人は顔を見合わせる。
 言葉遣いもおかしなことになっている。

「あ!村長。豆を使った調味料を見せていただきたいのですがありますか?」

「あります。この村では、お湯に溶かして飲んだりしていますが?」

「いえ、調味料だけ見せてください」

「はい・・・。わかりました」

 村長が持ってきたのは、ヤスが異世界に来てから欲しかった物の中でもトップ5に入る物だ。
 ちなみに不動のトップ1は”彼女”だと思っているようだが・・・。業が深い。

 味噌
 ヤスが慣れ親しんだ、甘口味噌ではなかったのだが味噌には違いない。味は調整すればいい。味はこれから開発していけばいい。

 村長は、ヤスがこれほど興奮しているのかわからない。味噌は、薄い野菜汁に味をつけるために使う程度しか使いみちが無いと考えられていた。長期保存ができるので、保存食の意味合いしかない物なのだ。

 ヤスは家庭ごとに味が違うと聞いて、各家庭で作られている味噌を購入した。

 ヤスに取っては有意義な交渉を終えて、王都に向かう移動を再開した。村から出る時には、ヤスは村人から感謝されながら見送られた。

 寒村に塩を運んできただけではなく、村としては価値が低いと思っていた物が戦略級の物資になった。神殿の主が望む物だとわかったのだ。現金収入が乏しい村に現金を落としていったのだ。村長は村の主だった者を集めて話し合いを行った。一つの家が担当するよりも、村でヤスの要望に応えようと話が決まった。個々の負担も減り恩恵も皆が享受できるのだ。

 そんな状況を作ったヤスは欲しかった米と大豆と味噌が手に入って上機嫌でセミトレーラを走らせている。
 ドーリスは何がそんなに嬉しかったのかわからなかった。

『マスター。マルスです。念話でお願いします』

『どうした?』

『マスターがお持ちになっていた本に、”日本酒”や”醤油”や”味噌”などの作成方法が書かれて居ます。再現しますか?』

『本当か?』

『はい。他にも、ウォッカやテキーラなどの酒精を生成する方法も記載されていました。かなりの数の酒精の生産が可能です』

『わかった。あとは、原材料だな』

『はい。必要な材料をエミリアで参照できるようにします。道具に関しては、種族名ドワーフが再現します。鉄鉱石や石英と言った道具に必要な材料は神殿の迷宮区で生成します』

『そうだな。迷宮に潜られるのか?』

『種族名ドワーフやギルドに登録した者が入り始めます』

『わかった。無理はさせるなよ』

『了』

『そうだ。マルス。俺の側に誰かを控えさせることはできるか?』

『可能です』

『誰が適切だと思う?』

『定義が曖昧です。マスターのお望みは?』

『停車時の抑止力と偵察が目的だな。ディアナの索敵でも十分だけど、わかりやすい抑止力が欲しい。アーティファクトだと知ると奪おうとする馬鹿が多い』

『大きさが変えられる者が良いと考えます』

『そうだな』

『マスター命名のフェンリルキャスパリーグガルーダの3種を推薦します』

『魔の森に行っているのではなかったのか?』

『現在魔の森への護衛業務は、彼らの眷属が行っています』

『わかった。3体に連絡を頼む。次からは一緒に行動してもらう。食事はどうなる?』

『彼らは、進化を終えています。神殿に属している状態です。マスターの魔力で十分です。食事は嗜好品です』

『誰を連れて行くのかマルスに任せる。身体の大きさが変えられるのなら、モンキー以外なら大丈夫だろう?』

『はい。問題ありません』

 ヤスはいろいろと突っ込みたい気持ちを抑えながらマルスと会話を続けた。
 その間も、中継になっている村や町への道を指示する。その後の町や村に寄る時には、ヤスはセミトレーラに乗ったままで待っている。領都のギルトから連絡が届いているのか交渉はスムーズに終わった。
 スムーズに行き過ぎて、途中で一泊する予定が最後の町まで到着してしまった。

「どうする?」

 主体性がない聞き方になってしまったが、他に適当な聞き方がなかった。

「最後の町のギルドで、王都に居るハインツ様に連絡しました。驚いていらっしゃいましたが、夜遅くなっても門番に言えばわかるようになっています」

「それなら安心だな。俺は、門の外でアーティファクトの中で寝る。ドーリスは、ハインツ殿と条件やらいろいろと決めてくれ、それから金貨を渡しておくから、物資の購入も頼む」

 道が綺麗になったので、ヤスはアクセルを踏み込む。
 セミトレーラは速度を上げて、王都に向かう。途中で休んでいる商隊を横目にヤスはアクセスを緩めずに走る。

 辺りが暗くなってきて、ドーリスは間に合わなかったかと思ったのだが、ヤスはライトをつけて速度を緩めずに走る。

 ハイビームに照らされて、王都の門が見えてきた。数名の門番が動いているのがわかる。
 ヤスは速度を緩めてからハイビームを解除する。ゆっくりとした速度で王都に近づいていく。

 ヤスが門に到着した時には、綺麗な格好をした男性と護衛と思われる兵士が10名ほど門の外に出ていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...