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第七章 王都ヴァイゼ
第十三話 問題が発覚した。
しおりを挟む『マスター。個体名ドーリスが近づいてきています』
マルスは、居住スペースで寝ているヤスを起こす。
起こすのはそれほど難しくない。
「おはようございます」
ドーリスが運転席にたどり着く頃にはヤスも起きて外に出ていた。
「おはよう。荷物の積み込みか?」
「はい。お願い出来ますか?」
「わかった。コンテナを開けて待っている。この町では何が手に入る?」
「今までと同じです。主に、イモ類です」
「わかった。積み込みの監視は頼む」
「はい。ギルドも人を出してくれるので大丈夫です」
ヤスが監視を気にするのは、2つ前の村で荷物を運び込んでいる時に、荷物にまぎれて数名がコンテナに潜り込もうとしたのだ。
マルスがコンテナに潜んでいる男たちに気がついて、ヤスに伝えた。ドーリスがギルドに文句を言って問題が発覚したのだ。
潜り込もうとした連中は、最後まで依頼主は話さなかったが、どこかの貴族のバカボンに依頼されたのは間違いなさそうだ。何が目的だったのかは、判明している。コンテナに潜り込んで、夜中にヤスがアーティファクトから離れた所でコンテナから出て(馬車の様な物だと思っていたようで中から開けられると考えていた)アーティファクトを盗むつもりで居たようだ。
それだけではなく、依頼主は神殿の正当な持ち主だと主張していて、ヤスが自分から神殿を奪った罪人だと言っていたらしい。だからなのか、ヤスを殺して、ドーリスを脅して神殿まで案内させて神殿を乗っ取ろうと思っていたようだ。色々矛盾した証言だが、捕らえられた者たちの証言なので信じる者は居なかった。
マルスが危惧したのは、人ではない。
コンテナに潜り込んでも、振動で気を失うだけだ。外に出ようと思っても簡単には出られない。密閉度も高いので、長時間中に居ると酸欠状態になってひどければ命を落とす危険性もある。
人は、それほど心配していない。マルスは、人ではなく魔道具が持ち込まれないのかを気にしていた。途中で爆破されたり、毒で汚染されたりしたら損失だけではなく、ヤスの立場がなくなってしまう(可能性を危惧していた)。
「積み終わったら教えてくれ」
「わかりました」
ヤスは、マルスに監視を頼んでバックミラーで積み込みの様子を見守っている。
問題になりそうな行動はなかった。
ヤスから見える部分の積荷がコンテナの中に積み込まれた。
ドーリスが門の所に来ていた誰かに呼ばれたようだ。
「ヤスさん。ギルドマスターが呼んでいるので行ってきます。俺は行かなくて良いのか?」
「問題ないです。ギルドマスターが私に内密な話だと行っています。荷物は積み終わりました」
「わかった。コンテナを閉じて待っている」
「はい。どのくらいかかるのかわかりません。申し訳ありませんが待っていてください」
「大丈夫。結界を発動するから皆に離れるように言ってくれ」
「かしこまりました」
ドーリスと一緒にヤスもコンテナの中身を確認する。しっかりと積み込まれた荷物を見てチェックを行う。目視での確認だが、しっかりと確認を行った。中に人が入り込んでいない事が確認出来た。魔道具が持ち込まれているとエミリアが知らせる仕組みになっている。
二人で調べて問題がなかったので、ヤスは扉を締める。
人足や見物に来ていた者たちには、ドーリスがアーティファクトから離れるようにお願いする。
見物している者たちが距離を取ったので、ヤスはエミリアを操作して結界を発動させる。
エミリアに結界の内側を調べさせた。ヤス以外の生物が居ない状態を確認した。
ヤスがセミトレーラの運転席に戻って結界内をモニタリングし始めた時に、ドーリスはギルドマスターと話を始めていた。
---
ドーリスは、呼び出されたギルドマスターから内密の話がしたいとギルドまで移動するように言われた。
すでにヤスに断りを入れているし、ギルドマスターの深刻な顔を見て、なにか重大な案件が発生していると判断した。それも、ヤスではなく自分だけを呼び出しているので、ギルドに関連した問題であると判断した。
ドーリスを連れたギルドマスターが部屋に案内した。
ギルドマスター自ら案内したので、ドーリスは厄介事である可能性を考えた。
「ドーリス。いや、ドーリス殿」
「今まで通り、ドーリスでお願いします」
「そうか・・・」
「それで何があったのですか?」
「ふぅ・・・。まずはこれを読んでくれ」
ギルドマスターは持っていた羊皮紙をドーリスにわたす。
目を通して、ドーリスの表情が一気にこわばる。怒りに似た感情がそこには加わっている。
「ゼークト様!」
「ドーリス。わかっている。ギルドは、ダーホスとドーリスの宣言を尊重するのは決定事項だ。それに、アフネス殿とデリウス=レッチュ辺境伯の署名もある。ギルドは動かない」
「当然です!神殿の都のギルドマスターとして正式に抗議を入れます」
「・・・。頼む。抗議は待って欲しい」
「なぜですか?完全に言いがかりですよ?」
ドーリスが見た羊皮紙にかかれている内容は、神殿の正当な持ち主はリップル子爵家であるという大前提があり。神殿を攻略したと嘯いた上でアーティファクトを無断で使っているヤスの捕縛に関する依頼書だ。依頼料は、ヤスが持っている総資産の半分となっている。
リップル子爵領のギルドが正式に受諾した依頼書になっている。
依頼の日付はヤスとドーリスが領都に立ち寄った日になっている。
「だから、わかっている。すでに認められている。正式な書類にもなっている」
「ならばなぜ!」
「ドーリスもわかるだろう?」
「わかりません」
「ドーリス!」
「・・・」
「わかるだろう。ギルドが正式に受けてしまっているのだ」
「だったら!」
「そうだ。リップル子爵領のギルドに問い合わせをしたが返事はない」
「・・・」
「ドーリス。教えてくれ、あのアーティファクトは、誰にでも動かせるのか?」
「ヤス様は、無理だと言っています。実際に、私は動かせません」
実際には、ドーリスは動かせるのだが訓練を受けていないので、動かせないと答えた。
エンジンをかけることはできるし、アクセルを踏み込めば動かせるのだがそれだけなのだ。ハンドルの操作やアクセルとブレーキの役割は、カートで理解出来ているのだが、実際にうごかそうと思うとそれだけではない。だから、動かせないと答えたのだ。
「そうか・・・。俺が少し練習して、あのアーティファクトの操作ができると思うか?」
「無理です。多分、動かす前準備も出来ないでしょう」
ゼークトと呼ばれたギルドマスターはドーリスの返答は予測が出来ていた。なので、話を変えてヤスについて質問する。
「神殿の主殿は、温厚か?」
「どうでしょう。懐にいれた人間には優しいでしょう。甘いと言ってもいいかも知れませんが、敵対者には厳しいと思います」
「なぜそう思った?」
「領都での話は聞いていますか?」
「聞いている」
「ヤス様は、領都での事がありながら、サンドラを受け入れました。それだけではなく、ハインツ様や領主様とも良好な関係を築いています。領都からの移民も”ほぼ”無条件で受け入れています」
「そうか・・・」
「はい。しかし、敵対した者たちには厳しいと思います」
「なにかあったのか?」
「神殿に不利益になるような行動をした者たちを捕縛したまでは良いのですが、神殿に連れて行って・・・。出てきた者は1人もいません。本当に、1人も許されていないのです」
ドーリスは勘違いをしていた。
ヤスが厳しいのではなく、ヤスに対して敵対行動を取った者たちを、マルスや眷属が許さなかっただけなのだ。
「・・・」
「ゼークト様?」
「リップル子爵領以外では、この依頼書は破棄させるようにする」
「わかりました。それだけですか?」
「もし、この依頼を受けた奴が襲撃してきて、神殿の主殿が反撃して殺してしまっても問題ないと宣言させよう」
「わかりました。ヤス様に、告げてもいいですよね?」
「ドーリスの判断に任せる」
「ありがとうございます。この件で、ヤス様とギルドの間が崩れても知りませんよ?」
「しょうがない・・・と、言えないのが悲しいな。わかった。王都のギルドを動かす。できれば、それまでに襲ってきた連中はなるべく殺さないで捕縛して欲しい」
「私では判断できません。ヤス様に全部話しをして判断を仰ぎます」
二人の間に沈黙が流れる。
これ以上は譲歩も進展も無いだろうと考えて、ドーリスは依頼書になっている羊皮紙を持って、ギルドマスターの部屋を出た。
依頼書を破り捨てたい気持ちになっていたのだが、ヤスに見せて、サンドラやディアスの意見も聞きたい。何よりも、証拠として取って置かなければならないことは解っていた。解っているのだが・・・。ドーリスもすっかり神殿の人間になってしまっているようだ。
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