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第九章 神殿の価値
第十五話 女子会
しおりを挟むアーデベルトが、リゾート区を2フロアを購入してから、3ヶ月が経過した。
アーデベルトのリゾート区の購入と同時に発表されたのが、アーデベルトが継承権を返上して神殿のリゾート区に住むという事だ。
王国の貴族だけではなく、国民にも驚きをもって迎えられた。
侯爵や公爵の処分が決定したのもあるが、その受け入れ先が、アーデベルトが購入した、神殿のリゾート区なのだ。
侯爵や公爵の一族は、神殿のリゾート区へと監禁されると決まった。監禁といっても、かなりの自由が許されている。リゾート区から出るのは許されないが、訪ねようと思えばアーデベルトに申請を行えばよいのだ。そこで、貴族派閥は神殿のリゾート区に別荘を持ち始めた。子爵以下の者たちは、いくつかの家が共同でフロアを購入した。伯爵以上の者たちは、フロアを買って別荘の建築を始めた。神殿に友好的ではない者たちも含まれていたので、サンドラはヤスに相談した。ヤスは、購入の許可をだして、サンドラに事情を説明したのだ。
ヤスは、神殿の機能は変更しなかった。詳しい説明もしなかった。求められなかったからだ。神殿の主からの使者と言っても平民に教えられるのが我慢出来なかったのだろう。その後、サンドラやアーデベルトが窓口になるしかなかった。
窓口になる報酬として、サンドラが求めたのが、リゾート区の諜報活動の許可だ。ヤスは、二つ返事でOKを出した。情報を閲覧できる権限をサンドラに付与した。それに合わせて、サンドラにタブレットを渡した。リゾート区の内容が閲覧できるようになっている物だ。記憶データから参照して見たり聞いたりできる。それ以外では、神殿の出入り口の記憶や、ポイントの履歴、リゾート区に関する情報のほぼすべてが閲覧できる物だ。
アーデベルトが求めた物は、神殿への移住と工房への入場の許可だった。マルスは、問題はないと許可を出したが、ヤスが条件をだした。神殿への移住は許可されたが、工房に入るのなら、王家からの歳費を断ることが条件になった。アーデベルトは、ヤスの話しを聞いてジークムントに連絡して歳費の停止を求めた。継承権を返上しても王家の者だ。歳費は継続するのが当たり前だと考えていたが、ヤスは停止を条件に上げた。理由の説明はなかった。アーデベルトは、工房に入られる方が優先で理由は別にどうでも良かったのだ。工房での作業工賃と窓口を行う対価がアーデベルトに支払われる。
アーデベルトの新居は、サンドラが借りている家の隣になった。そして、アーデベルトに付いていきたいと言ったメイドたちが到着して、アーデベルトの近くで共同生活を始めた。15人ものメイドが志願してきた。アーデベルトは自分の事は自分でやるし、工房にこもりっぱなしになるのは目に見えていた。アーデベルトの業務である窓口業務だけではなく、サンドラが行う予定だったリゾート区の管理運営の手伝いを行い始めた。急激に、リゾート区が売れたので、書類仕事が追いつかなくなってきていたので、サンドラは大喜びだ。リゾート区は、他の神殿の区画と違って、低く抑えられているが関税を課している。貴族の別荘の建築に関わる費用なので、かなりの関税が手に入った。それらが、メイドたちの給金となった。
工房が完全にオフになる日に、サンドラはアーデベルトを誘って女子会を開こうとしていた。
参加するのは、サンドラとアーデベルトとドーリスとディアスとミーシャとマリーカだ。リーゼも誘おうとしたが、ユーラットに行って不在だった。
神殿に居る女子にアーデベルトを紹介するのが目的だった。
「皆様。アーデベルトです。アデーと呼んでください。ここでは、王国の身分は影響しないと聞きました。私は、工房に籠もる一般人として生きていきます」
「アデー様」「様も止めてください。サンドラ様」
「アデーも、様は止めて下さい」
「わかりました。サンドラ」
にっこりと笑って返答するが、さすがは王家で海千山千の大人たちの間で過ごしてきただけはある。経験が違う。
順番に挨拶をしていく、そして、神殿で何をしているのかを説明する。
「そうなのですね。それじゃ、ヤスさんはディアスの命の恩人なのですね」
「はい。今でも感謝しています」
「え?でも、ディアスは、カスパルさんと住んでいるのですよね?結婚が間近だと聞きましたが?」
「え?あっ・・・。そうです」
ディアスが赤くなりながらも肯定する。
散々からかわれているので今更な感じもするが、改めて結婚と言われると照れてしまうのだ。
「ヤスさんを好きにならなかったのですか?」
「ならなかったと言えば嘘ですが、その・・・。えぇ・・・。と・・・」
「?」
「ディアスには言いにくいわよね」
「サンドラ?」
サンドラがディアスに助け舟を出す。
「ドーリスも同じだと思うけど、ヤスさんは、皆が尊敬していますし、感謝もしています。ヤスさんのためなら、という思いはあります。私も同じです」
皆がうなずくのを、アーデベルトは黙って見ている。
「でも、あの方は、恋愛対象にはならないのです」
「え?あたしは、てっきりサンドラが第一夫人候補だと思っていました。多分、多くの貴族がそう考えていると思います」
「それは解っています。だから、誤解させたままにしているのです。お父様にも、噂を否定しないようにお願いしています」
サンドラの意図は、アーデベルトはすぐに理解出来た。だが、あえて質問した。
「なぜですか?」
「え?アデーも同じ気持ちだと思いますが?」
「え?」
予想とは違う答えに少しだけ嬉しく思った。
アーデベルトは、貴族からの神殿への感傷をおさえるのが目的うだと考えたのだ。サンドラが、第一夫人候補なら、辺境伯よりも家格上であり、ヤスが気にいる女性でなければならない。サンドラは、貴族社会では才女として知られている。才女以上の女性を押し込むのは難しいと思わせるのが目的だと思っていた。
「ここなら、自分が好きな事を好きなだけ出来ます。研究したければ研究すればいい。料理を作りたければ料理を作ればいい。くだらない、晩餐会に呼ばれる事も、おべっかばかり言われるお茶会に行く必要もない。豚や蛇の様な目線を向けてくるバカな貴族の息子たちの相手をしなくていいのです」
「あっ・・・。私は、まだ1ヶ月くらいですが、気持ちが楽に感じるのは、余計な事をしなくていいからなのですね」
「えぇここなら仕事が出来ます!最高だと思いませんか?」
「そうですね。サンドラも、ヤスさんを恋愛対象には見ていないのですね?」
「えぇミーシャは、デイトリッヒが居ますし、ドーリスも隠しては居るようですが・・・」
「え?その話は知りませんでした!サンドラ!詳しく教えて!」
ディアスが食い気味でサンドラの話に食いついた。ミーシャは有名だ。二人で居るところを何度も見られているし、休みに迷宮の安全地帯でデートしているのを見られている。本人たちも隠していない。
「え?あっ。ちが・・・」
ドーリスが自分に矛先が向いて慌ててしまった。
「サンドラ!ドーリスのお相手は?」
「ほら、あの・・・」
「うぅぅぅ。サンドラ。ディアス。私の話は、ほら、今日はアデーの話を聞くのですよね?」
「いえ、私の話というよりも、皆様からお話をお聞きできると伺っております。サンドラ、そうでしたわよね?」
「はい。アデー。アデーの歓迎会を兼ねています。ほら、ドーリス。エアハルトさんとデートしているのを見られているのですよ」
「え?エアハルトさん・・・。確か・・・。ローンロットの責任者さんが同じお名前ですわよね?」
「・・・」
「ドーリス?」
真っ赤になってうつむいてしまっている。もう否定出来ないだろう。
「でも、ドーリスとだと年齢が離れていませんか?」
「それがね・・・」
サンドラの暴露が続いた。
マリーカが修正をいれるので、余計に場は混沌としてきた。
「そうしますと、ヤスさんのお相手は?だれもいらっしゃらないのですか?」
「そうよ。だから、アデーが来た時に、第一夫人の候補が来たと思われたのよ」
復活したドーリスがアーデベルトに、神殿に流れる噂を説明する。
「私は、違いますよ。何度か工房でお会いしまして、お話をさせていただきましたが、あの手の人は間違いなく一緒になると苦労します。貴族のように政略結婚なら問題は無いでしょう。割り切れますから・・・。でも、恋愛はむずかしいでしょう」
皆がアーデベルトの話を肯定する。
ヤスの話で女子会は盛り上がった。他に、共通の話題がないので、自然とヤスの話になるのは当然だが、恋愛対象に出来ないといいつつ。皆がヤスを気にしているのだ。神殿の主だという事実以上に気になる存在なのだろう。
ヤスの話とドーリスの恋愛話で、女子会は夜遅くまで行われた。
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