66 / 96
第三章 復讐の前に
第十話 駒?
しおりを挟むユウキは、新居になる家の前に居た。
鍵はない。電子キーだ。パスワードと生体認証が組み込まれた扉をつけている。
監視カメラも、見つけさせる為のカメラと、隠されているカメラと、スキルで見られない状況になっているカメラを確認している。
玄関に入った。
「そうか、革靴かぁ・・・」
ユウキは、玄関に揃えて置かれていた靴を見ている。
学校には、学校指定の革靴が必要になる。他にも、学校指定とされている物が存在している。
全てとは言わないが、学校の理事の息が掛かった場所からの購入が”推奨”されている。
ユウキが準備したのではない。
ユウキが、学校に通うと聞いて、児童養護施設の先生たちが用意してくれた。金銭的な負担が掛かる為に、購入費用は全てユウキが用意した。
「この安物の靴が、2万とは・・・」
靴を持ち上げて、確認する。
値段は、あらかじめ聞かされている。予備の靴と合わせて二足の購入を行っている。
制服と靴と指定のシャツを購入して、シャツは洗濯を考えて、購入している。ユウキは、バイトで生活をするという建前がある。建前であるのは、すぐに解ってしまうだろうが、建前は必要だと考えている。
学校に通うのに必要になった物は、他にもある。
靴下まで”推奨”の業者が決められていた。
最初は、納得ができないと反発する気持ちも有ったが、最後には見事だと思い始めてしまった。
玄関から、応接室に入って、ポストに入っていた手紙を開封する。
学校から通知された物だ。
鼻薬を嗅がせたのがよかったようだ。自宅を割り出して、”お願いをした”だけのことはある。
学校から、バイク通学の許可証が届いた。
通学で使うバイクを登録して、駐車場代を払うようだ。
まだ、バイクは届いていないが、ナンバーの取得は終わっている。免許は、まだ取得ができていない。入学式前には受けに行って取得予定だ。許可証の提出は、後日でも問題はないようだ。
バイクの置き場所は、教師が使う駐輪場を使うように指示されている。
駐輪場は、4月分から賃料が発生するらしい。
丁寧に、許可書の書類には、振込先を黒塗りして、別の振込先が書かれていた。書類には、申請を許可する教諭の個人の口座が書かれていた。
「(ははは。愚かだな)」
ユウキは、スキルを発動して、黒塗りされていた部分を修正した。
元々の振込先がわかったことで、金額の確認をする。通常の3倍をユウキに振り込ませるつもりのようだ。
「(さて、森田さんよりは・・・)」
ユウキは、書類をスマホで撮影してから、今川に送付した。
『ユウキ!』
「あっ!今川さん。早いですね」
『なんだ、あれは?』
「え?ネタです」
『ネタなのは明かるけど、こっちに来られるか?』
「拠点ですか?」
『そうだ。俺も、20分くらいで拠点に着く』
「そうだ。森田さんは?」
『一緒だ。お前に渡すバイクを運んでいる』
「それは、丁度良かった」
『書類を持ってきてくれ』
「わかりました」
ユウキは、壁のグランドファーザークロックを確認する。
20分は、時間的には微妙だ。
荷物をまとめて、家を出て、ロックをする。
裏には、浜に繋がる道がある。遊歩道と言えばいいのか解らないが、ユウキの家の一部で私有地だ。
遊歩道を含む、500平米がユウキの家の土地になる。
元々は、マンションが建築予定だったが、少しまえの台風で計画が頓挫したのを、ユウキたちが買い取った形だ。
家は、ほぼ新築の4SLDKだが、敷地の殆どが庭になっている。庭が広い。家の裏には、3台の車が停められる場所がある。それとは別に、駐輪場が確保されている。1人で住むには贅沢な広さだ。
浜に繋がる道は、松が視線を遮り、私有地で人が入ってこない。
浜は、購入が出来なかったが、外れの位置にあり、人が来ることはない。富士山が見えないことや、波が立っているために、消波ブロックがある為に、景観もよくない。桟橋がある場所までは、歩いて5分くらいだ。
ユウキは、周りを確認してから、スキルを発動する。
拠点の自分の部屋だ。
部屋に備え付けているボタンを押下する。
これで、ユウキが拠点の執務室に居ると皆が解るようになる。
ドアがノックされる。
「ユウキ!」
ドアのノックとほぼ同時に、ドアが開けられて、人が飛び込んできた。
「マリウスか?珍しいな。ヴィルマは?」
「お!元気だぞ?今川さんと、森田さんが来ている。それよりも!あのバイク!かっこいいな!俺にも」
「そういえば、マリウスたちは、免許の取得はできるのか?」
「できるぞ?国籍取得の申請を出している。馬込さんの話では、近々受理されるらしいから、そうしたら免許の取得もできる」
「欲しがるのは、マリウスだけじゃないだろう?」
「ん?レイヤとリチャードとフェルテとエリクとモデスタは、確実だな。原付?は、ロレッタやサンドラやイスベルが欲しがっていた」
「わかった。わかった。何がいいか決めておいてくれ。まとまったら、ヒナが森田さんに注文できるようにしておく」
「サンクス」
開いたドアを、ノックする音で、誰かが訪問してきたことを感じたユウキがドアを見ると、その森田をヒナが案内してきた。
後ろには、今川が続いていた。
ユウキと今川の話は長くなるので、先に森田が話を切り出す。
「ユウキ」
森田は、電子キーを投げる。
「鍵ですか?」
「あぁ電子キーに変更した。エンジンスターターも付けた。他も、要望通りにした」
「ありがとうございます」
ユウキは、簡単に説明を受けた。
あとは、現物を見ながら説明すると言って、森田は部屋を出て行った。ヒナとマリウスも一緒に森田の後に続いた。
「今川さん。座ってください」
「あぁさっそくだが、送られてきた書類の原本はあるか?」
ユウキは、書類ケースから今川に送った書類を取り出す。
他にも、学校に関連する書類を全部持ってきている。今川に見てもらおうと思ったからだ。
「持ってきています」
「見事に、横領だな」
「だと思います。ここまでだとは思っていませんでした」
「それでどうする?」
「今、訴えるメリットが少ないですよね?」
「メリット?この教師を・・・。あぁそうか、蜥蜴の尻尾なんて欲しくないってことか?」
「はい」
今川は、何を考え始める。
ペンを指の間に挟んで、上下に動かし始める。徐々にペンの動きが早くなり、指の間でダンスをするようにペンが踊り始める。
少しの間。
ユウキは、ペンのダンスを眺めていた。
ペンのダンスが止まった。
「ユウキ。金はあるよな?」
「ありますよ。億に届く程度なら・・・。すぐに動かせます」
「そんなにいらない。駐輪場の料金と、教師への振込を行えるか?」
「いいですよ。処理しているのは、俺じゃないですけど・・・」
「誰だ?」
「馬込さんです。正式には、馬込さんが依頼している弁護士です」
「そうか、わかった。ユウキから話をしておいてくれ」
「わかりました」
「俺は、この書類の真偽と、この教諭に取材を申し込む」
「ははは。わかりました。学校側へのアプローチは?」
「この程度では、意味が無いだろう?ユウキも学校の内部に、駒が欲しいだろう?」
「ありがとうございます」
書類は、コピーを今川に渡して、原本はユウキが管理して、馬込に渡すことに決まった。
その後、狙いを定めた教諭の情報を受け取った今川は、ユウキに一言だけ告げてから立ち上がった。
「やりすぎるなよ」
「相手次第です」
「そうだな」
今川は解っている。
ユウキたちが、人を殺すことに躊躇しないことを・・・。そして、実際に殺したことがあることも解っている。
最初は、怖いと感じていたが、ユウキたちと触れ合って、どこにでもいるとは言い難いが、よくいる”青年”だと感じている。
森田から聞いたバイクの改造も、よくある”最強のバイク”だと思えてしまう。
法律に抵触しなければ、なんでもやるだろう。
それだけではない。ユウキたちは、不思議なスキルと呼ばれている力がある。スキルを使えば、だれにも気が付かれずに、人を殺すことも出来てしまう。今川だけではなく、ユウキたちと付き合いがある者たちは、ユウキたちが無暗に人を殺すという短絡的な行動にでるとは思っていない。だからこそ、スキルは秘匿されるべきだと考えている。
その役目は、自分たち大人だと思っているのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。
アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】
それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。
剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず…
盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず…
攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず…
回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず…
弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず…
そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという…
これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。
剣で攻撃をすれば勇者より強く…
盾を持てばタンクより役に立ち…
攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが…
それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。
Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに…
魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし…
補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に…
怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。
そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが…
テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので…
追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。
そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが…
果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか?
9月21日 HOTランキング2位になりました。
皆様、応援有り難う御座います!
同日、夜21時49分…
HOTランキングで1位になりました!
感無量です、皆様有り難う御座います♪
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる