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第一章-深視点-
(5)気まずい空気
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あの衝撃的なキスを受けてから数日。
輝の仕事が立て込んでおり、顔を合わせることがなかった。
どうやら泊まりの仕事や深夜までの仕事が続いているらしい。
一度帰宅したことに気づいたが、シャワーを浴びて着替えるだけで、声もかけられず出て行ってしまった。
仕事の状況は事務所の人間が1日1回食事を運んでくる時に得られる情報だけ。
ニュースやSNSは開かないように注意されており、携帯もほぽ触らない。
メンバーの仕事を共有するアプリも、なかなか見る気になれない。
皆が忙しく仕事をしてるなか、自分だけ時間を持て余している事実を受け入れるなんて、深はできる気がしなかった。
今日は久々に輝が早く帰ってくることは知っている。夕飯は一緒に食べたいから待つようにという伝言を受けているのだった。
気まずいような待ち遠しいような、深はここ数日輝のことしか考えていないことに嫌でも気付かされるのだ。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
18時を少し過ぎた頃に輝は帰ってきた。
事務所のスタッフとともに帰宅したことで、深は少しだけ安心した。
「深。ちょっと待ってて」
そう言いながら、2人は大きなソファの前にあるガラステーブルに、オシャレな惣菜を並べ始めた。
緑黄色のサラダにバジルがかかったトマトのサラダ、エビピラフにソーセージと生ハムの盛り合わせ、少量ずつ気持ちが明るくなるような彩りだ。
「…美味しそう」
深が思わずそうもらすと、2人は笑った。
「良かったです。深さん、何食べるかいつも聞いてもカップラーメンとかレトルトでいいみたいなこというんですよ。さすがにそれじゃ良くないって、いろいろ渡してるんですけど…」
スタッフが安心したような表情を浮かべる。
深は、そのままスタッフが一緒に食べることを期待したが、食料を補充するとそのまま立ち去ってしまったのだった。
「いいから座れよ」
「あ、うん」
L字型のソファのどこに座るか深は一瞬迷ったが、いつもは輝と並んで座るのが定位置である。
変に避けていると思われるのも気に障り、輝と深は並んで座った。
顔を正面から見ないでよいのはむしろ救いかもしれない。
「なかなか帰れなくて悪かったな」
渡された缶チューハイをひと口のんだところで、輝が申し訳なさそうな顔をして深の方をみた。
いつもの見慣れた輝の表情も、なんだか気まずい。
深は、いつのまにか輝を意識していることに気づいてしまった。
いつものように振る舞おうとすればするほどぎこちなくなる。
「ううん、毎日遅くまでおつかれさま」
なるべく自然な笑顔でそう言って顔を見上げると、輝の表情が変わった。
一何というか獲物を狩るライオンのように。
輝の仕事が立て込んでおり、顔を合わせることがなかった。
どうやら泊まりの仕事や深夜までの仕事が続いているらしい。
一度帰宅したことに気づいたが、シャワーを浴びて着替えるだけで、声もかけられず出て行ってしまった。
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ニュースやSNSは開かないように注意されており、携帯もほぽ触らない。
メンバーの仕事を共有するアプリも、なかなか見る気になれない。
皆が忙しく仕事をしてるなか、自分だけ時間を持て余している事実を受け入れるなんて、深はできる気がしなかった。
今日は久々に輝が早く帰ってくることは知っている。夕飯は一緒に食べたいから待つようにという伝言を受けているのだった。
気まずいような待ち遠しいような、深はここ数日輝のことしか考えていないことに嫌でも気付かされるのだ。
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18時を少し過ぎた頃に輝は帰ってきた。
事務所のスタッフとともに帰宅したことで、深は少しだけ安心した。
「深。ちょっと待ってて」
そう言いながら、2人は大きなソファの前にあるガラステーブルに、オシャレな惣菜を並べ始めた。
緑黄色のサラダにバジルがかかったトマトのサラダ、エビピラフにソーセージと生ハムの盛り合わせ、少量ずつ気持ちが明るくなるような彩りだ。
「…美味しそう」
深が思わずそうもらすと、2人は笑った。
「良かったです。深さん、何食べるかいつも聞いてもカップラーメンとかレトルトでいいみたいなこというんですよ。さすがにそれじゃ良くないって、いろいろ渡してるんですけど…」
スタッフが安心したような表情を浮かべる。
深は、そのままスタッフが一緒に食べることを期待したが、食料を補充するとそのまま立ち去ってしまったのだった。
「いいから座れよ」
「あ、うん」
L字型のソファのどこに座るか深は一瞬迷ったが、いつもは輝と並んで座るのが定位置である。
変に避けていると思われるのも気に障り、輝と深は並んで座った。
顔を正面から見ないでよいのはむしろ救いかもしれない。
「なかなか帰れなくて悪かったな」
渡された缶チューハイをひと口のんだところで、輝が申し訳なさそうな顔をして深の方をみた。
いつもの見慣れた輝の表情も、なんだか気まずい。
深は、いつのまにか輝を意識していることに気づいてしまった。
いつものように振る舞おうとすればするほどぎこちなくなる。
「ううん、毎日遅くまでおつかれさま」
なるべく自然な笑顔でそう言って顔を見上げると、輝の表情が変わった。
一何というか獲物を狩るライオンのように。
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