8 / 16
第一章-深視点-
(8)口説かれるということ
しおりを挟む
ポツリポツリと近況を話す輝に軽く相槌をうつだけの会話は当然のことながら盛り上がらず、19時には食事を終えてしまった。
明日は朝早い、という輝にあらためて時間を聞くと、5時にはマネージャーが迎えにくるのだという。
「風呂入って、もう寝た方がいいよ。今湯を入れるからさ、浸かって。ずーっと忙しかったのがわかったから、少し休みなよ」
深が慌てて声を掛けると、輝は少し拗ねたような顔をした。
「なんだよ、そんな早く寝かそうとして」
「えっ?いや、だって早く寝た方がいいでしょ…」
「じゃあ、深、一緒に寝てくれる?」
「えっ…」
そこで深は先日から感じていた輝への違和感の正体に気づく。
2人は長い付き合いで、お互いにそれぞれ恋愛経験があるのも女の子が好きなのも知っている。
それに裏では、それなりの下ネタなどを言うこともある。
ほぼ合コンみたいな飲み会で、輝が女の子を口説くところも何度も見ている。
一そうだ、今俺は口説かれているんだ。
しかもかなり際どい誘い方で、付き合う前の感じというより、輝が最初に言っていたように自分のほぼ支配下にあるものをベッドに誘うような文句である。
本気なのか嫌がらせなのかわからないが、これから最低でも数ヶ月はお世話になる中で、ずっと女の子ような扱いを受け続けるのは、ごめんだ。
一ここらで形勢逆転に持ち込まないと後がキツい。
深は決心すると、なるべく表情を変えずに輝の目を見つめた。
「一緒には寝ない…けど、輝…俺と一緒に風呂入ろう」
「えっ?えっ?風呂っ!?」
思わず驚いて、ソファから身を乗り出した輝をみて、深はほくそ笑むのだった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
風呂なんて、これまでそれこそ何百回と一緒に入ってきた。
ライブの後や遠征先、テレビ局など。
なのに、そんな当たり前のことに輝は過剰反応を示した。
「深待って!俺が先に入るから、後から入ってきて…」
慌てている輝が可愛くて、深は楽しくなる。
一輝のやつ、この楽しさを味わうために俺を揶揄ってたのかよー。
確かに結構濃厚なキスをしてしまったが、この業界にいると別段珍しいことではないわけではない。
罰ゲームみたいなノリや先輩の命令で、男とキスなんて…何度もしている。
相手が異性であれ男性であれ、深はこういうことのイニシアティブをとるのは楽しいことを知った。
10分たったころに、深はやっと呼ばれた。
中に入ると、輝は湯船に入り上を見上げていた。
1人で入るなら充分な大きさだが、体格の良い輝だとなんとか収まっている感じである。
深は簡単に頭と身体を洗うと、自分も湯船に浸かった。
少し遠慮しても、足はもちろん当たる。絡ませようかと深は思ったが、さすがにそれはやりすぎだと自重する。
その時、天を仰いでいた輝が、深の方に向き直った途端…
「ごめん!俺もうでるわ、じゃあおやすみ」
と言いのこして慌てて出てしまった。
跳ねたお湯を浴びて深は顔を拭いながら、呆気にとられたのだった。
-----第一章(完)
明日は朝早い、という輝にあらためて時間を聞くと、5時にはマネージャーが迎えにくるのだという。
「風呂入って、もう寝た方がいいよ。今湯を入れるからさ、浸かって。ずーっと忙しかったのがわかったから、少し休みなよ」
深が慌てて声を掛けると、輝は少し拗ねたような顔をした。
「なんだよ、そんな早く寝かそうとして」
「えっ?いや、だって早く寝た方がいいでしょ…」
「じゃあ、深、一緒に寝てくれる?」
「えっ…」
そこで深は先日から感じていた輝への違和感の正体に気づく。
2人は長い付き合いで、お互いにそれぞれ恋愛経験があるのも女の子が好きなのも知っている。
それに裏では、それなりの下ネタなどを言うこともある。
ほぼ合コンみたいな飲み会で、輝が女の子を口説くところも何度も見ている。
一そうだ、今俺は口説かれているんだ。
しかもかなり際どい誘い方で、付き合う前の感じというより、輝が最初に言っていたように自分のほぼ支配下にあるものをベッドに誘うような文句である。
本気なのか嫌がらせなのかわからないが、これから最低でも数ヶ月はお世話になる中で、ずっと女の子ような扱いを受け続けるのは、ごめんだ。
一ここらで形勢逆転に持ち込まないと後がキツい。
深は決心すると、なるべく表情を変えずに輝の目を見つめた。
「一緒には寝ない…けど、輝…俺と一緒に風呂入ろう」
「えっ?えっ?風呂っ!?」
思わず驚いて、ソファから身を乗り出した輝をみて、深はほくそ笑むのだった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
風呂なんて、これまでそれこそ何百回と一緒に入ってきた。
ライブの後や遠征先、テレビ局など。
なのに、そんな当たり前のことに輝は過剰反応を示した。
「深待って!俺が先に入るから、後から入ってきて…」
慌てている輝が可愛くて、深は楽しくなる。
一輝のやつ、この楽しさを味わうために俺を揶揄ってたのかよー。
確かに結構濃厚なキスをしてしまったが、この業界にいると別段珍しいことではないわけではない。
罰ゲームみたいなノリや先輩の命令で、男とキスなんて…何度もしている。
相手が異性であれ男性であれ、深はこういうことのイニシアティブをとるのは楽しいことを知った。
10分たったころに、深はやっと呼ばれた。
中に入ると、輝は湯船に入り上を見上げていた。
1人で入るなら充分な大きさだが、体格の良い輝だとなんとか収まっている感じである。
深は簡単に頭と身体を洗うと、自分も湯船に浸かった。
少し遠慮しても、足はもちろん当たる。絡ませようかと深は思ったが、さすがにそれはやりすぎだと自重する。
その時、天を仰いでいた輝が、深の方に向き直った途端…
「ごめん!俺もうでるわ、じゃあおやすみ」
と言いのこして慌てて出てしまった。
跳ねたお湯を浴びて深は顔を拭いながら、呆気にとられたのだった。
-----第一章(完)
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
嘘つき王と影の騎士
篠雨
BL
「俺の役割は、貴方を守ることだ。……例え、貴方自身からも」
国の平穏を一身に背負い、十二年間「聖王」という偶像を演じ続けてきたセシル。
酷使し続けた心身はすでに限界を迎え、その命の灯火は今にも消えようとしていた。
そんな折、現れたのは異世界からの「転移者」。
代わりを見つけた国は、用済みとなったセシルからすべてを剥奪し、最果ての地へと追放する。
死を待つためだけに辿り着いた冬の山。
絶望に沈むセシルの前に現れたのは、かつて冷徹に王を監視し続けていた近衛騎士団長、アルヴィスだった。
守るべき王も、守るべき国も失ったはずの二人が過ごす、狭い小屋での夜。
無価値になり、壊れかけた自分を、なぜこの男は、そんな瞳で見つめるのか。
なぜ、そんなにも強く、抱きしめるのか。
これは、すべてを失った「聖王」が、一人の男の熱に暴かれ、再生していくまでの物語。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる