おちゆく先に

目日

文字の大きさ
60 / 126

59話

しおりを挟む
 深緑の森に入って五日目

 昨日は野営地に到着したのが暗くなってからという事もあり、全員すぐに寝ていた。
 なぜ見張りをしていないのかというと、この野営地は大きな岩の中なのだ。流石に荷馬車を入れることはできないが。岩の中ということは土魔法で入り口をある程度塞いでしまえば魔物の心配は殆どいらなくなるのである。
そして空気穴から朝日が差し込んできた。

 「もう朝か・・・」
 ジグレイドが目を覚ました時には魔法師団の面々はまだ寝ていたので一人で外に出るために音を立てないように壁を少しだけ壊した。
 少しだけ“ガラガラ”と音が鳴ったが誰も起きなかったようだ。なんとも不用心である。

 ジグレイドは外に出て朝のストレッチを行ってから近くの水場に行くことにした。
 「ふー・・・やっぱり水が自由に使えるのはいいな」
 ある程度身体の汚れを落とし終えたジグレイドはそのまま川で魚を取ることにした。テンドレオンの伸縮紐付きの短剣をじっと構えて魚が来るのを待った。・・・そして魚がジグレイドの近くまで泳いできた時に手に持った短剣を魚目掛けて投擲した。
 投擲した短剣は魚の首筋に突き刺さり一瞬で絶命した。その魚を紐で手繰り寄せて次の獲物に狙いを定めることを7回ほど繰り返した。もちろん釣れた?魚も7匹だ。
 人数分の魚を釣り終えたジグレイドは野営地である岩場に戻ることにした。



 岩場に戻るとなにやら騒いでいた。
 「おい、どうした?」
 「あ、ジグレイドさん!大変です!昨日は気づきませんでしたけど、食料が・・・食料がないのです!もう私は動けません!」
 「はぁ・・・お前らここはもう中層に入っているんだ、そんなに騒いでいたら魔物が寄ってくるぞ。それと食料なら捕ってきた。調理するのめんどくさいから任せていいか?」
 「流石ジグレイドさん!私頑張って調理します!」
 「メマ君は相変わらず食い意地が張っているな・・・すまん、ジグレイド君。騒がしくしないように止めたのだが、食料がないことが思いの外危機感を抱かせたようだ」
 「仕方ないですよ、ここから街までは簡単には帰れませんから。そういえばカリーナはどこです?もう中層に入ったのでいろいろ決めたいのですが」
 「団長ならば朝の精神集中をしているはずだ。そろそろ終わるころだとは思うのだが・・・」
 「ならば食事の後にしますよ。あと少ししたら食事の準備も終わるころでしょうし」


 余程お腹が空いていたのか誰も喋ることなく食事を終えた。
 「ふー、食った食った。ジグレイド、ありがとよ。あのままだと餓死してたぜ」
 「餓死とは言いませんけど確かにあのままだとお腹が空いて動けませんでしたよ」
 お礼を言ってくるのを軽く流しカリーナに話し掛ける。
 「カリーナ、もう中層に入っているんだが探索はどんな感じでやるんだ?」
 「魔力だけを広範囲に飛ばすだけ」
 「なるほど、なら中層を適当に回るのか?」
 「この森全てするといつ終わるか分からない」

 食事を終えた一行は再び歩き出しとりあえず川沿いを探索することにした。やはり水場の近くに亜人共が潜んでいる可能性が高いと考えられるためだ。



 全員が黙々と川沿いを歩いている。喋ったとしても声を潜めて喋っている。なぜかというと出発する前にカリーナが任務内容を改めて示したからだ。もちろんそんなことがなくても敵陣の近くである可能性が高い場所だと極力音を出さないようにするのは当たり前なのだが。
 「んー・・・」
 「どうした?」
 歩みを止めたカリーナにジグレイドが尋ねる。
 「今、反応があった気がした」
 「なら近くに敵の拠点があるのか?」
 「いや、たぶんない」
 「え?でも反応があったんだろ?」
 「すぐに消えたから」
 「なるほど、警備兵もしくは食料調達・・・といったところか。もしかしたら近いかもな・・・」

 ジグレイドの勘は半分当たっていた。カリーナの探知に引っかかったのはエルフ族の非戦闘員だった。ドワーフ族特性の気配遮断のマントを使って森の食料を採りに来ていたのであった。なぜすぐに気配が消せたのか、それにはもちろんドワーフ族の技術力が関係していた。探知されると静かに知らせてくれる魔道具をもっていたのである。これらの開発により非戦闘員でも深緑の森で採取活動が行えるようになりある程度なら住民が増えても過ごせるようになったのである。だが肝心の拠点は近くにはないのである。


 川沿いを一日中探し回ったが反応は一回きりであった。
 「どこだ・・・奴らはどこに隠れている」
 今日の野営地は川から少し離れた場所だった。現在は深夜であり、ジグレイドは見張り中だった。
 「どうして?」
 見張りの相方はもちろんカリーナだ。
 「ん?なにがだ?」
 「私たちの任務、ジグは案内と護衛」
 「あー、俺には亜人共に借りがあるんだよ。大きな借りがな。ちゃんと返さないと亜人共も困るだろ?だから亜人共に借りを返しに行くのさ」
 邪悪な表情をしてそう言うジグレイドにカリーナはどう返していいか分からずだんまりになってしまう。
 「大丈夫さ、その時は安全な場所にいてくれよ。俺の攻撃に巻き込まれるからさ。さて、俺は少し周囲を見回ってくるよ」
 「ジグ・・・」
 頭を冷やしにいったのか周囲の警戒に行ったジグレイドを眺めながらカリーナは悲しそうに呟いた。



 あれから5日ほど川沿いを中心に亜人の拠点を探し回ったのだが、見つからなかった。
 「あー・・・見つからねーな。団長ー、この任務見つかるまで探さないといけないんですか?」
 「期間がある」
 「あとどれくらいなんです?」
 「2ヵ月」
 「まじですか・・・」
 まだ期間が沢山あることにファマルは肩を落とし項垂れた。
 「そういえば、アイリーンは今頃カザフ要塞で悠々自適に暮らしているのでしょうか・・・」
 「言うな!虫唾が走る!あんな腰抜けの話なんかするな!余計イライラする!」
 「ギース、仮にも仲間をそういう言い方はよくない。もっとオブラートに包め」
 「そういうフルクトスさんだってあいつには苛ついているんだろ?」
 「確かに多少思うところがないわけではないな、だが本人の前ならいざ知らず陰で言うのは好かんのでな」
 「くっくっく、本人の前ならいいのかよ?ここから帰ったら言ってやるぜ。この腰抜けの売女ってな!楽しみができたぜ」
 この会話は深緑の森に入って12日目の朝の出来事であった。

 それから一行は川沿いではなく川付近の探索を開始したのだが、これもまったく成果はなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

東京ダンジョン物語

さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。 大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。 ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。 絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。 あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。 やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。 スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。 無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

処理中です...