おちゆく先に

目日

文字の大きさ
78 / 126

77話

しおりを挟む
 王城に入り、一般兵士と魔法師団団員はそれぞれ自分の部屋などに行き解散の流れとなっていた。
 オウルーゼル、ローレン、カリーナそしてジグレイドは謁見の間で跪いて国王ウルスマグアの到着を待っていた。謁見の間には4人だけでなく貴族の当主だろうか、ズラッと並んでいた。

 「面を上げよ」
 ウルスマグアが玉座に座りそう声を掛けてきた。

 「此度はご苦労であった。聞いたところによると圧勝だったらしいな。これで少しバルクド帝国も戦争を控えるといいのだがな。して、そこの者はなんだ?」
 「この者は私の弟子にございます。此度の戦争で多大な功績を納めましたので連れてきた所存です」
 「ほう、戦争は魔法師団の放った魔法で終結したと聞いておったのだがな。どこにそんな功績があるのやら」
 嫌味のように言ってきたのは貴族の誰かだった。

 「止めよ!・・・将軍その功績を聞いてもよいか?」
 すぐさま嫌味を言った貴族をウルスマグアが制した。
 「はい、この者は襲ってきた亜人族の隊長を一対一にて打ち倒した者でございます」
 ローレンがそう言うと貴族たちがざわざわしだした。
 「静まれ!・・・将軍それは真か?」
 「私はそう考えております」
 「む?どういう事だ?その亜人族の隊長の死亡は確認したのであろう?」
 「いえ、私はこの者が埋葬したという場所と戦闘した場所に赴いただけでございます」
 ローレンがそう言った瞬間、再びざわざわしだし先程の貴族がまた声を荒げた。

 「それではそやつが虚言を吐いている可能性もあるではないか!戦いすぎて遂に耄碌したか!?」
 「静まれと言ったはずだが?よもや聞こえなかったとは言うまい・・・それで将軍ちゃんと説明してくれるのだろうな」
 すぐに一喝してその貴族を黙らせた。そしてローレンに説明を求めた。
 「はい、まず皆さんご存知の通り今回も亜人族に襲われました・・・

 ・・・確かに確固たる証拠はありませんが、私はこの目で現場を見てこの者が亜人族と激しい戦闘になったということを確信しております。そもそも皆殺しにしてくる亜人族と戦い生きてここにいることが証明ではないでしょうか。それに敵とはいえ墓を暴く行為は誉められたものではありません」
 ローレンは事細かに説明し、なぜ遺体を確認しなかったのか理由を述べた。

 「なるほど・・・確かに一理ある。墓を暴くなど死者への冒涜だからな。だが組合でも討伐証明がなければ報酬が出ないように証明できなければ報酬を出すことはできぬかもしれぬぞ?」

 「陛下、発言宜しいでしょうか?」
 「ぶ、無礼者!平民の分際でなにを言うか!」
 次々と貴族から罵詈雑言が飛んでくる。

 「よい!発言を許そう。申してみよ」
 「ありがとうございます。私は報酬など何も求めてはいません。私は将軍に鍛えてもらえればそれでいいのです。しいて言うならば将軍の弟子入りが報酬でしょうか」
 ジグレイドがそう言うとウルスマグアが唐突に笑いだした。
 「ふはははははは!そうか、報酬はいらんか!将軍よ、なかなか豪快な者を弟子にしたな。ふむ、そうだな…では報酬は家でどうだ?何もなしというのは示しがつかんのでな」
 「家・・・ですか?」
 「家と言っても屋敷ではない。一般市民街にある家だ。そなたが将軍の弟子になるのならばこの王都に住むことになる。その間ずっと宿暮らしというのもなかなか金が掛かるだろう。亜人族を倒したにせよ、退けたにせよこれくらいの報酬は必要だろう。受け取ってくれるな?」
 「はい、ありがとうございます」
 「うむ、それではな」
 ウルスマグアはそう言って謁見の間から出ていった。



 それからジグレイドは城の中をメイドに案内してもらった。なぜカリーナやローレンではないのかというと、二人は会議があるようでメイドにジグレイドの案内を任せて会議室に行ってしまったからである。

 「こちらが家の手配が済むまで滞在していただく部屋になります。案内はここで最後となりますが、他に知りたい場所はございますか?」
 「いえ、大丈夫です。案内ありがとうございます」
 「これが仕事ですので、では私はこの辺で失礼します」
 メイドが立ち去った後ジグレイドは何しようかと椅子に座り悩んだ挙げ句そのまま椅子に座ったまま寝てしまっていた。

 ジグレイドは誰かが部屋に入ってくる気配を感じ取りすぐさま起き上がった。
 「寝ていたようだな、案内はしてもらったよな?もう夕食の時間だ。食堂にいくぞ」
 部屋に入ってきたのはローレンだった。
 ローレンに連れられて食堂に行くと、案内してもらった時は閑散としていた食堂が今は人で溢れていた。

「オススメを二つ頼むよ」
 ローレンが声を掛けたのは食堂のおばちゃんだった。
 「あいよ、今回は将軍の出番は無かったんだって?」
 「耳が早いな、確かに私の出番は無かったな」
 「出番が無いに越したことはないさね。ところでそこの坊やが噂の弟子かい?」
 「そうだ、こいつが私の初めての弟子だな。ほれ、ジグ挨拶せんか!」
 「お世話になります。ジクレイドです」
 「えらく礼儀正しい坊やだね。もしかして貴族様かい?」
 「いえ、俺は平民ですよ」
 「そうかいそうかい、どっちでもいいさね。お腹空いたら食堂にきな、何かしら作ってあげるさね」
 「ありがとうございます」
 会話している間もおばちゃんの手は止まることなく料理を作り続けていて、すぐに料理が出来上がった。
 「ほれ、オススメ二つ出来たよ。持っていきな!」


 食堂の料理はとても美味しかった。
 「ここの料理うまいだろう?さっきのおばちゃんなんだがな、元々有名な料理屋で働いていたのを陛下が直々に声を掛けて雇った料理人でな。あのおばちゃんのおかげでここの料理が格段と美味しくなったのだ。私がおばちゃんと言ったら怒られるから内緒にしといてくれよ。今日はもう仕事がないのでな、ジグも自由にしてくれて構わない。明日から兵士の訓練が始まる。二度目の鐘がなる頃に訓練場に来てくれ」
 「鐘・・・ですか?確か日の出に一度目の鐘が鳴るんでしたよね?二度目はどのくらい後ですか?」
 「そうだな・・・一度目の鐘が鳴ってから食堂で食事を済ませれば丁度良い時間になるはずだ。最初はバタバタするだろうがすぐに慣れるだろう。ではまた明日、寝過ごすなよ」
 そう言ってローレンは立ち去っていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

東京ダンジョン物語

さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。 大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。 ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。 絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。 あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。 やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。 スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。 無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

処理中です...