おちゆく先に

目日

文字の大きさ
79 / 126

78話

しおりを挟む
 翌日、まだ日も出てきていない時間にジグレイドは目が覚めた。
 見慣れない豪華な部屋に少し戸惑うが、
 「・・・そういえば昨日は王城に泊まらせてもらったんだったな」
 と昨日のことを思い出し呟いた。
 「目が覚めたし何しようか・・・とりあえず顔でも洗うか」


 昨日メイドに案内してもらった場所に井戸があったのでそこへ向かい顔を洗った。
 せっかく外にきたのでついでにストレッチを入念に行い軽い運動をする。
 適度な汗をかいたので部屋に戻り着替えを済ませ食堂へと向かった。



 「おや?おはよう。確か将軍の弟子になったジグルド君?だったかしら?」
 食堂にきたジグレイに声を掛けてきたのは昨日のおばちゃんだった。
 「ジグレイドです。おはようございます」
 「あらごめんね。もう年でね、名前覚えるのが難しくなってきてるのよ」
 「まだまだ若いですよ。朝食お願いします」
 「あらやだ、どっかの将軍と違ってお上手なのね。そういえば今日からでしょ?訓練」
 会話を続けながら料理を作っている。なんとも器用なことだ。
 「はい、知り合いに“あれは訓練なんかじゃないぞ!”って言われましたよ。本当ですか?」
 「そうだねー・・・ある意味本当かもしれないわね。訓練後なんてみんなヘトヘトで食事もまともにとれないのよ。もちろん訓練を耐えれる兵士もいるのだけどね」
 「なるほど・・・さすがの将軍も初日から本気で訓練したりしませんよね」
 「なにを言っている。初日から全力でやるに決まっているだろう」
 おばちゃんと会話しててたが油断などしていなかったのにも関わらずジグレイドはローレンの接近に気が付かなかった。

 「ローレンさん・・・背後に忍び寄らないでください」
 「まだまだ気配察知が甘い。私にも朝食を頼む」
 「そろそろ来る頃だろうと思って先に作っておいたよ。ほれ、たんとお食べ!」


 ローレンとジグレイドは出来上がった料理を持ってテーブルへと移動した。
 「今日の予定だが、まず皆にジグの紹介をする。その後に軽い運動を行ってから実力を確かめるために模擬戦だ。公平を期すために装備は支給品だな。それからは実力の近い者同士で訓練だ。皆と切磋琢磨して強くなることが目的だな。何か質問はあるか?」
 「そうですね・・・支給品の装備に短槍はあります?」
 「うん?短槍か・・・なぜだ?」
 「実は俺の武器は短槍なんですよ。見た目は大剣みたいですけどね」
 「ほう、面白いな。確かに大剣と盾でチグハグだと思っていたのだ。短槍か・・・おそらくあると思うが、なければ普通の槍を短くして使うといい。他に質問はあるか?・・・無いようだな。では食事を終えた後に訓練場へと行くとしよう」



 食事を終えてローレンと一緒に訓練場にきたジグレイドは訓練場の大きさに驚いていた。
 昨日メイドに案内してもらったときは外観のみで中には入らなかったため、訓練場がこれほど大きいとは想像していなかった。

 「驚いただろう、この訓練場は軍の隊列などの練習にも使用するから大きく作ってあるのだ。ここなら派手に動いてもある程度は大丈夫だ」
 ローレンとジグレイドが着いたときにはすでに十数名の兵士がストレッチなどをしていた。
 「将軍おはようございます!今日からまたご指導お願いします!」
 「うむ、おはよう」
 そんな会話が十数回行われた。その度になんだこいつといった感じでジグレイドを睨みつけてくる。
 そして二度目の鐘の音が鳴った頃には数百名の兵士が訓練場に集まっていた。
 「よし、全員いるな!軽い走り込みの前にこいつの紹介をしよう。戦争に参加した者は知っていると思うが私の弟子となったジグレイドだ。今日から訓練に参加させることにした。まだまだ未熟な部分が多々あるからな、その都度指摘してやってくれ」
 「ジグレイドです。今日からよろしくお願いします」
 「さて、紹介も終わったことだし・・・走るぞ!」



 軽い走り込みと言っていたがあれは嘘だったのだろうか・・・この訓練場をすでに20周近くしている。
この訓練場は軍の行動訓練にも使用されるため、わざと丘や森などの起伏が作られている。しかも先導しているローレンがわざと走りにくい場所を選んで走るため全員がその道を走らなければならないのだ。

 「よし!走り込みはこのくらいでいいだろう。各自休憩!ストレッチも忘れずにな!」
 ローレンがそう声を張りあげている。まったく疲れていなさそうなのは流石としか言えない。周りを見渡してみても普通にストレッチしている兵士は少数で、ほとんどが地面にへたり込んでいる。

 「着いてこられたようだな。オウルから聞いていたがさすが深緑の森を狩り場にしていただけはあるな。今日は訓練再開初日だからこのくらいだったが、明日から少しずつ距離を延ばすからな」
 「ローレンさん・・・これ軽い運動なんですか?どう見ても激しいと思うんですが・・・」
 少し乱れた息を整えながらジグレイドはそう問いかけた。
 「確かに激しい運動かもしれんが、将来はこのくらい軽くこなせるようにと思ってな。現にベテラン勢は息を切らしていないだろう?」
 改めて周りを見渡してみると、確かにベテランの兵士は若い兵士を介抱したりしていて疲れた様子はまるで見せていなかった。
 「だが思ったよりも体力あるな。まさか初日から普通に着いてこられるとは思っていなかった」
 「体力にはかなり自信があるんですよ」
 そう答えたジグレイドだが、これには訳があった。以前リーリャに掛けてもらった“リジェネレーション”の効果が未だに持続しており、ほぼ無限の体力を持っているのだ。ただ一気に運動すれば回復速度が追い付かずに息切れもするのだが、少し休めばすぐに回復するのである。もちろん“リジェネレーション”も万能ではなく睡眠をとらずに動き続けれるわけではない。
 「それならば安心だな。次の模擬戦も期待しているぞ」

 そして少し休憩した後、模擬戦となった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

東京ダンジョン物語

さきがけ
ファンタジー
10年前、世界中に突如として出現したダンジョン。 大学3年生の平山悠真は、幼馴染の綾瀬美琴と共に、新宿中央公園ダンジョンで探索者として活動していた。 ある日、ダンジョン10階層の隠し部屋で発見した七色に輝く特殊なスキルストーン。 絶体絶命の危機の中で発動したそれは、前代未聞のスキル『無限複製』だった。 あらゆる物を完全に複製できるこの力は、悠真たちの運命を大きく変えていく。 やがて妹の病を治すために孤独な戦いを続ける剣士・朝霧紗夜が仲間に加わり、3人は『無限複製』の真の可能性に気づき始める。 スキルを駆使して想像を超える強化を実現した彼らは、誰も到達できなかった未踏の階層へと挑んでいく。 無限の可能性を秘めた最強スキルを手に、若き探索者たちが紡ぐ現代ダンジョンファンタジー、ここに開幕!

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...