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第一章
12 旅立ち
しおりを挟むイテスの根穴(動物でいう巣穴)で寝泊りさせてもらって、はや1週間が経った。
イテスの弟妹達は予想以上に多く、みんなお喋りで、毎日騒がしくも楽しい日々を過ごさせてもらった。イテスくらいの大人になったアルラモルモの親は寿命で亡くなるようで、イテスの両親はいなかった。アルラモルモの寿命が何年なのか分からないけど、イテスと知り合ったばかりの今はあまり考えたくない。
短い手足にも大分慣れ、このままだと本当に感覚がアルラモルモになって地下世界から出たくなくなってしまう気がしたから、もうそろそろ出て行くことをイテス達に話した。
『そっか、もう行っちまうのか。クロは面倒見が良いから、本音を言うならずっと住んで欲しかったけどな』
イテスがそう言って冗談っぽく笑う。
『そうかな…面倒見が良いんじゃなくて、イテスの兄弟達がこんな色をした僕でも懐いてくれたからお陰だよ。家族が沢山いるって賑やかで楽しいね』
初めは僕の真っ黒な姿に少し怯えてた子達が多かったけど、いつのまにかみんな懐いてくれて、しかも僕の真っ黒な毛色を『カッコいい!』と褒めてくれるようになった。ここのみんなは優しい。裏表なく大らかで明るいのは、地下世界の無害な動物故だからだろうか?
あまりにも居心地が良過ぎて、みんな可愛いし、このままここで一生を過ごすのも悪くないと思える程に。
『そういやクロの方の家族の話は聞いてなかったな。俺らより兄弟が少ないのか?』
普通鼠って一度に沢山生まれるから、賑やかなのが当たり前なのか…。
『うん、イテスに比べると大分少ないね。というか、兄弟は一人しか居ない』
そう答えながら、僕は家族の一人の顔を思い出していた。
『双子の姉がいるんだ』
この世界じゃない所に、と言う言葉を心の内で呟く。
『おお、双子か。それは少ないな。それだったら、クロにしちゃウチは相当賑やかだな』
イテスの言葉に、そうだねと曖昧に微笑んだ。
その後は明日旅立つための準備とか、兄弟達の別れの挨拶とかをしたり、村長さんにご挨拶をしに行った。
夜、根穴でイテスの兄弟達を寝かしつけ、みんなが静かになった頃、考える。
僕の双子の姉……は今頃どうしているだろうか、と。
元気かな。元の世界の人とは、もう二度と僕は会えないのだろうか。僕には一体何が起こったのか。突然僕がいなくなった事に、誰か気付いてくれているのかな。
そんな、不安な気持ちが、思い出すように心の底からいくつもいくつも湧き上がってくる。
このまま帰る方法なんて無かったら…わざわざリスクを背負ってまで、人間の所に行く必要があるのかと。
でも、元いた世界にもう二度と帰れないと考えるのは、まだ早い気もする。ここは、アメリカとか中国とか、そんな場所じゃないことは確実だ。ここは同じ宇宙でもない、次元の違う異世界だ。
だけど、そんなところにいつのまにか来れたんだから、帰る方法だってきっと…ある筈だ。そう信じるしかない。
きっと帰れる。まずは人間の所に行って情報収集だ。
そう心に決めて、静かに目を閉じて眠りについた。
*********
『クロ、じゃあ気をつけてな。またいつでも来いよな』
『『クロ兄ちゃーーーん、またねーーー!!!』』
イテス達に見送られて、僕はまたあの狭い根っこの通路へとテクテク歩いて行く。
モフモフ天国、さらばっ!!
でもまた来る!
進めば進むほど、暗くなり、暫くすると暗視の効果が発揮して、ぼうっと辺りが見やすくなる。
あれ?どこまで進めばいいんだっけ?これ。
上を触ってみると、根が硬い。んー、ここは駄目らしい。
取り敢えず暫く進んだ後、また適当に上を触りつつ、柔らかくて出れそうな根を探す。
『あっ!出れそう』
押したら柔らかく沈む根っこを発見し、そこから来た時のように隙間に手を入れて、身体を捻り込んで行く。
来た時と違って、今度は上に上がるようにしなきゃならないので、そこがちょっと大変だ。
身体を前進高速フリフリして、微振動で少しづつ上へ上へと進み、視界がどんどん緑に、そして明るくなる。
一際輝く裂け目に短い手を精一杯伸ばして掴み、僕はムッッチョンと外へ一気に出た。
ふううう、疲れたーー。
さてさて…人間の所は、確か村長さん曰く『日の出る方向にこの森を抜け、大河を越えたずっと先』だった筈。
えっと、太陽は今あっちの方向で、今朝方だから、取り敢えずそっちの方向に行けば良いかな?
ちなみに地下世界にも、ちゃんと朝晩があった。どういう仕組みか分からないが、太陽の光が地下世界の中心の巨木に集まり、地下世界全体を地上の明るさと遜色無く照らしているらしい。恐らく何かの魔法なんだろう。
あ、なるべく移動しやすいようまた黒猫になっておこう。
*********
「 ●▽⬛️xx◼️○◾︎▲♦︎x」
しばらく進んでいると、聞いたこともない奇怪でいて脳に直接響くような音がすぐ近くで聞こえた。
何かと思って、そちらの方へ向くと…
手足が六本生えている、ブクブクと膨れ上がり全体的にずんぐりむっくりしている、ペール色の体色の何かがいた。
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