『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

14 力の開花

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やはりいくらイメージしても、ターディーベアにはなれなかった。

だってターディーベア…正直見た目が気持ち悪い。
目は無いけど、口はよく見たら下の方に突き出てあったけど、その口の形がまたキモい。ヤツメウナギみたいに丸い口でギザギザの歯が内側に向かって生えている。
んー、なんというか…本当この世の生き物じゃない…どちらかというと深海生物やエイリアンっぽい?それか…微生物の…なんだっけ…。と考えて僕の脳裏に、とある微生物の画像が思い浮かぶ。
––あ、クマムシ…そうそう、クマムシ!!!やっと思い出した、何かに似てると思ったらクマムシだったのか!

やっと思い出せた事にスッキリする。クマムシと思えば、あの異次元的な姿にもちょっと嫌悪感は無くなるかも。

そんなこんな只今僕は、取り敢えずレッドウルフに変化して移動している。
猫の視点で見てた世界と違って、遠くまで見渡せるし、クマムシも…じゃなくてターディーベアも見つけやすい。

「◽︎◾︎◼︎⬛️◾️x◼️x◼︎◀︎⬛️xx▪︎◾︎!!!」

右斜めの方向から、あの独特な鳴き声が聞こえた。声帯も異次元になってるようだ。
続いてずんずんと地が震えるのが伝わると、すぐにブヨブヨに揺れる肉体のターディーベアが姿を現した。

これで4匹目。

猫の時はとてつもなく大きく思えたターディーベアだが、
今は僕よりターディーベアの方がちょっと小さい。

ごめんね、と心の中で呟く。それと同時に右前足を一振りするだけで、レッドウルフの長く鋭い爪がターディーベアの頭をケーキのように いとも容易く引き裂く。

うわ…。

体液が飛び散らない事は幸いだが、芋虫を素手で殺しているような嫌悪感がある。
しかし生き延びる為とはいえ、芋虫でもなんでも多少の罪悪感がある。しょうがない、平和に慣れ親しんできた、ただの学生だもの。日本にいた頃は虫一匹も殺せず…というか触る事も出来ず、よく姉に任せてたことを思い出す。それに比べれば今の僕は大分進歩した方ではなかろうか。

近くにいたターディーベアも、仲間の声を聞きつけたのか続けてやって来る。

紫のオーラがそのターディーベアの頭部を包み込むのが分かった。
げっ!と狼の表情筋が引き攣る。
さっきあの魔力攻撃に殺されかけたから、僕の中でもうトラウマになっている。

『黒神術:創造化』

僕は自分の目の前に向かって伸びる針を想像すると、それに添い黒い霧が自身から出て、想像した通りの巨大な針となって物質化する。ちなみに、黒神術では創造というスキルがあったが、創造化に変わっていた。

ターディーベアは予想通り魔力を頭部に宿らせたまま、真っ直ぐ僕に向かって突進して来た。だが、僕の目の前にある長い針に 頭の頂点から刺し貫かれ、そのまま絶命する。

はぁ…大分この黒神術扱えるようになったかな。

ターディーベアを貫く針を解除して、霧を僕の身体に戻そうとする。

「!」

その時、左側のがガサリと草が擦れる音がした。ついそっちに意識を向けた瞬間、霧化させてた黒針が 目を向けた方に向かって一瞬で伸び、草の向こうの何かを刺した感覚がした。

またやった!?

急ぐけど、焦らず慎重に冷静に黒針を霧化させ、自分の体に霧を吸い込み一体化される。ちなみに霧を自身に吸収するのは、霧の体積が増えるし、黒神術で創造化できる量が多くなるからだ。

草の向こう側を見ると、全身に棘がついたトカゲっぽいのが、首元に穴を開け青い血を流していた。

鑑定すると、もう既に死亡していた。
…ごめんなさい。


この創造化って黒神術、自分の思い通りの形になってくれて便利だけど、自分の反射的な意思や感情にまで反応してしまう。…とても危険だ。
恐らくこのままだと、僕は何気なく生き物を殺してしまう可能性がある。

何とか黒神術をコントロールするため、襲って来るターディーベアとの戦闘にちょくちょく使っている。その度に黒神術の精度は確実に上がっているのだが、僕の些細な意思にも反応して出て来るようになってしまった。そう、この黒い物質が息をするように出やすくなってしまったのだ。

気を引き締めないと、何が起こるか自分でも分からないのが本当怖い。

この辺りは、ターディーベアの生息地なのか、ターディーベアがやたら多く、戦闘は避けて通れなかった。
本当はなるべく生き物を殺したくなかった。けど、さっき殺すのを躊躇ってしまったばかりにターディーに殺されかけた事を考え、生きるために襲って来るターディーベアは全て殺している。

そして、ターディーベアに関してはいつの間にか殺すことに動悸はするけど躊躇いが無くなった。慣れって怖い。

ターディーベアは体力が多いのに、このレッドウルフが圧倒的に強いのか、さっきから一撃で倒せている。消える一歩手前まで追い詰められ、だからこそ生きるために殺そうと思ったが、こうも簡単に倒せてしまうと なんとも言えない気持ちになる。

ターディーベアは近くを通るもの全てが襲って来る訳ではなく、地面に寝ている方がどちらかというと多い。

喧しいターディーベアが寝ているターディーベアを踏み付けて襲いかかってきた時があったが、踏みつけられた方のターディーベアはピクリとも動かず、死んでいるのかと思った。

ちょっと鑑定してみると、【状態異常:乾眠】となっていた。 
【乾眠】
【ターディーベアの特殊スキル:クリプトビオシスの効果によって起こる状態異常。あらゆるダメージを無効化し、仮死状態となる】

やっぱりクマムシみたいなスキル…っていうかまんまな気がする。

そんな寝ているクマムシは、襲ってこないし、殺すこともできないので、放置しているが…いくら物理的ダメージを受けないからって油断し過ぎやしないかい?と思うんだ。

乾眠解除になったら、ダメージ通るんでしょ。もし地中奥深くに埋められたり、溶岩に入れられたり、水中に入れられたりしたら乾眠解除になった時に大変なことになるんじゃないかな…。まぁ、別に良いけど…。

そんなこんなで僕は、クマムシ…また間違えた、ターディーベアをレッドウルフの力技と黒神術で、なぎ倒しながら進んでいった。途中、森の果実や泉で休息、夜には黒神術を使った黒いドーム型の中で睡眠をとった。

ターディーベアを見かけなくなってから暫く進んでいると、目が何処についているか分からない巨大な双頭の首長亀や、凄く大きな黒い蠍を見かけてきた。ここら辺の森は、どの生物も大きいらしい。亀も蠍も巨狼レッドウルフの高さ二倍以上あった。

亀の方は身体の動きが鈍かったから、出会っても逃げることが出来た。
けど、蠍の方は巨体に似合わず動きが俊敏だった。

ということで、今現在 僕は黒い巨大蠍と止む無く戦っている。

さて、鑑定鑑定っと…って!?

「キシキシ…キシャアアアアアアアアッ」

鑑定する間も無く、巨蠍は先端に針の付いた長い尾で刺して来た。僕はそれを間一髪で交わす。

しかし、続いて2つの大きな鋏による追撃は避けることが出来なかった。

「ッギャン」

鋏を突き出すようにした攻撃は、胴体側面に直撃する。この世界に来てからの初めての壮絶な痛みに狼の悲鳴が上がる。

が、無慈悲に蠍は身体とともに巨大な鋏を振り払う。
胴体直撃の痛みにより身体を動かすことも出来なかった僕は、そのまま巨大な鋏で右顔面を横殴りにされ、宙を回転しながら木に打ち付けられた。
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