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第一章
20 僕はドラゴン
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よし、暗黒魔法は一通り試して、何となく使い方が分かった。まぁ、《呪術魔法》も《暗黒魔法 》も、黒曜竜オルシヴィオン固有の特殊スキルだから、また変化してドラゴンじゃなくなったら使えなくなるんだけどね。
もうちゃっちゃとこの永遠かと思えるくらい長い大河を渡ってしまおう!
いくら黒曜竜オルシヴィオンがどんだけ飛び続けても疲れを感じないからと言って、ずーっと何日も何日も飛び続ける訳にはいかない。
何故なら…僕がもう同じ景色ばかりで飽きてきたから。
同じ景色と言ったけど…流石に夜とかになったら景色も変わるだろう、と思った。だけどこの川…どれだけ時間が経てども経てども日が沈まなかった。おかしい。
道理で時間の感覚が分からなくなった訳だよ…朝方に川を飛んで、邪神登場の時に空が一時赤くなったけど、それっきりずーーっと霧で真っ白だったり、ずーーっとずーっと青空だったり(←今ここ)…。
僕の体感では、3日間ぐらい飛んでいる気がするよ…。
恐らくこの大河は白夜に当たる場所なのかもしれない。
まぁ、この世界は地球とは違う訳だから、物理法則を無視したおかしな事が起こっても仕方がないよね。
あー早く渡り切ってしまおう。渡り切ってしまえば、人間の国に行って何かこの世界を知る手がかりが見つかるだろうし。
そうそう…渡り切る方法…。
実は…一瞬で渡り切ってしまう方法、僕分かっちゃったんですよ。
それは…
手に入れた暗黒魔法の《影裂界》のワープ機能を使って????㎞の大河をスキップして飛ぶ事です!
まぁ……初めての試みだから、上手く行くか分かんないです。取り敢えずやってみますか。思い付きで魔法を使うにしろこれ程大雑把なやり方があるかと自分でも思うけど、今まで僕は大雑把なやり方でなんとかやっていけているので今回も何とかなるんじゃないかな…。
やってみなくちゃ分からない。大魔法実験。
という事で『《影裂界》!』
まずは亀裂を発生させて、影裂界を繋ぐ黒いゲートを空中に開けてその中に入ってしまう。
入ったら、亀裂から入った場所より大体1㎞くらい遠くの距離を想像して、外へ繋がるゲートを目の前に開いた。
…あれ、変わらない。もっと遠くか。
ゲートの先には川と空…先程見ていた景色と全く変わらない景色が見えたのでゲートを閉じる。次はもっともっと先の距離、もう一気に100㎞くらい先を想像してゲートを開く。
が、早速開いて僕は落胆した。
…だめだ…殆ど景色が変わらない。結構遠くを開いたつもりだったのに。変わったところといえばちょっと霧が微かに漂ってるなぁというぐらいだ。
それから何度かゲートを開き、開いたゲートより更に遠くへ開くように想像してゲートを開いて閉じて開いて閉じたりするのだが、全然川の岸が見えない。
一体どれだけこの川長いんだよ!?もう川じゃないでしょこれ!!!!!
開いたり閉じたり開いたり閉じたり…あーーー今度は霧が見えて来たなぁ。霧があると岸も何も見えないよぉ。
こうなると段々と不安になってきた。
何がなんとかなるでしょだよ、ちっともうまくいかないよ。
…本当に僕は今いる場所より遠くの場所にゲート開けられているのかな。もう何キロメートルとか考えないで、僕の脳内の適当な尺度で測って想像しているから余計不安だ。だって目印も何もないのに、そんなに正確に測れるわけないし。
もし、本当に僕の何となく思った通りの遠くの距離にゲートがちゃんと発生出来ているのなら…そんなアバウトでも良いのなら…もういっそのこと何キロメートルとか距離を考えないで『この大河から僕が渡ってきた方向の先にある大河の終わりの場所(岸)』って念じながらゲートを開けば良いんじゃないかな…!?僕が進んできた直線上!岸!川の終わりに着け!って感じで。はは。
無理そうだけど、何かしなければ僕はこの大河を一生飛び続ける事になりそうだし。…。…
僕は影裂界の中に入り、『この大河で僕が渡ってきた方向の先にある大河の終わりの場所』って強く念じながら外界へのゲートを繋ぐ想像をしてみた。
…。
……んん?
あれ?と首を傾げる。
影裂開の真っ暗闇の中、目の前に明るいヒビのような線が入ったものの、開くように念じても さっきまでのようにゲートが開かない。
ミシミシいって抵抗している感じは伝わるから、きっと絶対開かない訳では無さそう…。
開けーー!!!!と思いを強くして念じると、徐々に3センチぐらい開いた。
が…それ以上大きく開かない。
開け開け!開けゴマ!ゴマーー!!…あーもう何で開かないのさ。この向こうを開けば念願の川の岸が見えるのに!
こうなったら、と僕は自分の両前足を3センチの亀裂の隙間に入れて、思いっきり力技でこじ開けようとする。
カッテェェェ開かねぇぇぇ!!!
前足を入れたところから、ピキピキと音を立ててヒビは大きくなった。だけど、隙間は3センチの高さを保ったままそれ以上大きくはならない。
あああああああじゃあ奥の手!!影裂界の中にある全ての黒魔力よ!!!黒神術でゲートをこじ開ける僕の糧となれぇぇぇぇぇ!!!!!
真っ暗でなにも見えないが、ゴォォォォオオオオォォォゴゴゴゴゴゴという途轍もなく大きい音と共に振動が伝わった。
その後、空間ごと闇の塊が一斉に亀裂へと大移動し、3センチの亀裂の隙間の中に入ってこじ開けて行く感覚がする。
亀裂の隙間はとんでもない圧縮率の黒魔力によって埋もれてて、普通に見たらどこにあるか分からなくなっているだろう。だけど、影裂界の黒魔力と感覚がリンクしている僕は、黒魔力で3センチの亀裂を両端からガッチリと掴んでいるのを全ての五感で鮮明に捉えている。
後は黒魔力を3センチの亀裂の隙間の中に入っている黒魔力の塊をどんどん大きくして広げて行き、さらに亀裂の端を両側から引っ張るように力を入れる。
僕は前足を引っ込めて黒魔力を体に吸収しながら、黒魔力の力のみで亀裂を裂いていく事に専念する。
川上の景色にずっと眺めなきゃ行けないなんてもう嫌だ。この先に僕の望んでいた景色がきっと、きっとあるに違いない…!
専念すれば専念するほど、影裂界の黒魔力はどんどん集まり、亀裂に掛かる力も大きくなっていく。
ッパキ、ッパキッピキ
亀裂のヒビは広がって行き、ひび割れた所から小さな光か溢れ出てくる。ここまで来たら意地でも開ける他ない。
もっと、もっと僕の元へ集まれ。
【称号:闇の支配者を獲得しました】
まだまだ足りない。ここにある全てを使えるまでもっと。
【特殊スキル:黒神術のレベルが上がりました】
頭の中で何か高い音が響いた気がするが、ゴォォォォという黒魔力暴風の音で掻き消された。
もう少し、もう少しで亀裂が広がって、ゲートが開きそうな気がするんだ。今はまだ7割くらいしか支配出来ていない。ここにある空間の『全て』を僕の物にしたら…きっとゲートは必ず開く。
暗闇に根を張り巡らせるように次々と空間を広げて影裂界の黒魔力を自分の身体の一部として認識していく。
そして…ついに僕はこの影裂界という亜空間を形作っている黒魔力の全てを把握した。
【特殊スキル:黒神術の支配力が上がりました】
【世––––との接続率が上昇】
【特殊スキル:黒神術から暗黒魔法の使用が可能になりました】
え?黒神術で暗黒魔法を使える?
頭の中に無機質で高い声が連続で聞こえたのが今ハッキリと聞こえた。
黒神術で暗黒魔法が使えるようになったと言うことは、つまり種族変化してオルシヴィオンじゃなくなっても暗黒魔法が使えるようになったということかな。この影裂界とか使い道が沢山ありそうだし有難い。
影裂界の全ての黒魔力を掌握した僕は、先程より余裕を持ちつつ亀裂をこじ開ける。
影裂界の亜空間全体が歪み形を変え、亀裂の端に負荷をかけて行く。同時に、想像し得る限り硬くした黒魔力を亀裂の隙間に枝のように入らせて、テコの原理を使ってこじ開けていく。
ッビキッビキビキパキッバキィィッッッ
と鼓膜が破れそうな程の大きく軋む音がして、ゲートが開いた確かな手応えと、目が焼けそうな程眩しい光が差し込んだ。
やった、ついに開いた…!
漸く外に出られると感動と達成感を感じながら、開いたゲートから頭を出すと、
「…**?」
僕の目の前に呆然とした顔で立ち竦む少女がいた。
薄く緑がかった金髪と、ぱっちりと見開く黄緑色の瞳、変わった模様が描かれている民族衣装。漸くこの世界の人に会えたのは喜ぶべきことだけど…これは些かまずい状況かもしれない。
「…**?***…**?」
女の子の目が徐々に見開き、ガクガクと震えながらその場に膝から崩れていく。持っていた籠からパラパラと色とりどりの花が散らばった。
そう、何がまずいかというと…僕の姿が『ドラゴン』だという事だ。
大丈夫、怖がらないで!と言いたいところだけど、女の子の話す言葉が理解出来ない時点で意思疎通は難しそうだ。
それに僕自身ドラゴンの姿で言葉を喋れるか分からない。
そうなると、女の子を怖がらせない為にもこの場から直ぐに立ち去った方が良いだろう。
一瞬で姿を消すには、今ゲートからちょこんと出ている頭を引っ込めてゲートを閉じてしまえば解決なんだけど、せっかく必死な思いで開けたゲートを通らないで閉めるのは忍びない。ということで、一度今いるゲートから出て、新しいゲート先を開いてその場から去る(ワープする)事にした。
ゲートから体全体を出すと、恐怖で固まっていた様子の女の子の顔が絶望に染まり、ついに悲鳴を上げる。
あわわわごめんねごめんねっ怖がらせてしまって本当にごめんなさい!
距離が目と鼻の先になってしまった女の子から即座に離れ、『ここから離れた人がいない森』を目指すゲートを咄嗟に上空に開き、勢いのまま翼を広げ身を翻して飛び込む。この数秒間、僕は身体をくねらせながらカサカサとドラゴンらしからぬ動きでその場から去った。自分でも思ったけど、その姿はドラゴンというより必死に天敵から逃げる蜥蜴そのものだった。
女の子は、僕の突然の逃走に驚いたのか、目を見開いたまま最後まで固まっていた。
***
ゲートをくぐり抜けた先、目の前を見ると、木々が密集した森が広がっていた。
懐かしい森の安心感に、そのまま僕はヘナヘナと降下しながら地面に横たわった。はぁぁ。ヒヤヒヤしたぁ。
女の子のあの様子を見ると、やっぱりドラゴンは人間にとって危険な生き物なのだろう。だけど突然目の前に女の子がいるとは思わなかった。怖がらせてしまったせめてものお詫びとして、女の子が落としてしまった花を黒神術で掬い上げて籠に入れておいたけど、また落としてないと良いなぁ。
慌てて適当に人が居ない森に行くよう設定した訳だけど、人間の国からどこまで遠く離れた森に飛ばされてたのか分からなくなってしまった。
今この瞬間に人が居ないだけの森に飛ばされたのか、人が全く立ち入らない森に飛ばされたのか…。
さっきは森から出て東に唯々真っ直ぐ進んで来たけど、方角が分からなくなってしまった今、人間の国に向かうにはどうすれば良いんだろうと僕は頭を悩ませるのだった。
もうちゃっちゃとこの永遠かと思えるくらい長い大河を渡ってしまおう!
いくら黒曜竜オルシヴィオンがどんだけ飛び続けても疲れを感じないからと言って、ずーっと何日も何日も飛び続ける訳にはいかない。
何故なら…僕がもう同じ景色ばかりで飽きてきたから。
同じ景色と言ったけど…流石に夜とかになったら景色も変わるだろう、と思った。だけどこの川…どれだけ時間が経てども経てども日が沈まなかった。おかしい。
道理で時間の感覚が分からなくなった訳だよ…朝方に川を飛んで、邪神登場の時に空が一時赤くなったけど、それっきりずーーっと霧で真っ白だったり、ずーーっとずーっと青空だったり(←今ここ)…。
僕の体感では、3日間ぐらい飛んでいる気がするよ…。
恐らくこの大河は白夜に当たる場所なのかもしれない。
まぁ、この世界は地球とは違う訳だから、物理法則を無視したおかしな事が起こっても仕方がないよね。
あー早く渡り切ってしまおう。渡り切ってしまえば、人間の国に行って何かこの世界を知る手がかりが見つかるだろうし。
そうそう…渡り切る方法…。
実は…一瞬で渡り切ってしまう方法、僕分かっちゃったんですよ。
それは…
手に入れた暗黒魔法の《影裂界》のワープ機能を使って????㎞の大河をスキップして飛ぶ事です!
まぁ……初めての試みだから、上手く行くか分かんないです。取り敢えずやってみますか。思い付きで魔法を使うにしろこれ程大雑把なやり方があるかと自分でも思うけど、今まで僕は大雑把なやり方でなんとかやっていけているので今回も何とかなるんじゃないかな…。
やってみなくちゃ分からない。大魔法実験。
という事で『《影裂界》!』
まずは亀裂を発生させて、影裂界を繋ぐ黒いゲートを空中に開けてその中に入ってしまう。
入ったら、亀裂から入った場所より大体1㎞くらい遠くの距離を想像して、外へ繋がるゲートを目の前に開いた。
…あれ、変わらない。もっと遠くか。
ゲートの先には川と空…先程見ていた景色と全く変わらない景色が見えたのでゲートを閉じる。次はもっともっと先の距離、もう一気に100㎞くらい先を想像してゲートを開く。
が、早速開いて僕は落胆した。
…だめだ…殆ど景色が変わらない。結構遠くを開いたつもりだったのに。変わったところといえばちょっと霧が微かに漂ってるなぁというぐらいだ。
それから何度かゲートを開き、開いたゲートより更に遠くへ開くように想像してゲートを開いて閉じて開いて閉じたりするのだが、全然川の岸が見えない。
一体どれだけこの川長いんだよ!?もう川じゃないでしょこれ!!!!!
開いたり閉じたり開いたり閉じたり…あーーー今度は霧が見えて来たなぁ。霧があると岸も何も見えないよぉ。
こうなると段々と不安になってきた。
何がなんとかなるでしょだよ、ちっともうまくいかないよ。
…本当に僕は今いる場所より遠くの場所にゲート開けられているのかな。もう何キロメートルとか考えないで、僕の脳内の適当な尺度で測って想像しているから余計不安だ。だって目印も何もないのに、そんなに正確に測れるわけないし。
もし、本当に僕の何となく思った通りの遠くの距離にゲートがちゃんと発生出来ているのなら…そんなアバウトでも良いのなら…もういっそのこと何キロメートルとか距離を考えないで『この大河から僕が渡ってきた方向の先にある大河の終わりの場所(岸)』って念じながらゲートを開けば良いんじゃないかな…!?僕が進んできた直線上!岸!川の終わりに着け!って感じで。はは。
無理そうだけど、何かしなければ僕はこの大河を一生飛び続ける事になりそうだし。…。…
僕は影裂界の中に入り、『この大河で僕が渡ってきた方向の先にある大河の終わりの場所』って強く念じながら外界へのゲートを繋ぐ想像をしてみた。
…。
……んん?
あれ?と首を傾げる。
影裂開の真っ暗闇の中、目の前に明るいヒビのような線が入ったものの、開くように念じても さっきまでのようにゲートが開かない。
ミシミシいって抵抗している感じは伝わるから、きっと絶対開かない訳では無さそう…。
開けーー!!!!と思いを強くして念じると、徐々に3センチぐらい開いた。
が…それ以上大きく開かない。
開け開け!開けゴマ!ゴマーー!!…あーもう何で開かないのさ。この向こうを開けば念願の川の岸が見えるのに!
こうなったら、と僕は自分の両前足を3センチの亀裂の隙間に入れて、思いっきり力技でこじ開けようとする。
カッテェェェ開かねぇぇぇ!!!
前足を入れたところから、ピキピキと音を立ててヒビは大きくなった。だけど、隙間は3センチの高さを保ったままそれ以上大きくはならない。
あああああああじゃあ奥の手!!影裂界の中にある全ての黒魔力よ!!!黒神術でゲートをこじ開ける僕の糧となれぇぇぇぇぇ!!!!!
真っ暗でなにも見えないが、ゴォォォォオオオオォォォゴゴゴゴゴゴという途轍もなく大きい音と共に振動が伝わった。
その後、空間ごと闇の塊が一斉に亀裂へと大移動し、3センチの亀裂の隙間の中に入ってこじ開けて行く感覚がする。
亀裂の隙間はとんでもない圧縮率の黒魔力によって埋もれてて、普通に見たらどこにあるか分からなくなっているだろう。だけど、影裂界の黒魔力と感覚がリンクしている僕は、黒魔力で3センチの亀裂を両端からガッチリと掴んでいるのを全ての五感で鮮明に捉えている。
後は黒魔力を3センチの亀裂の隙間の中に入っている黒魔力の塊をどんどん大きくして広げて行き、さらに亀裂の端を両側から引っ張るように力を入れる。
僕は前足を引っ込めて黒魔力を体に吸収しながら、黒魔力の力のみで亀裂を裂いていく事に専念する。
川上の景色にずっと眺めなきゃ行けないなんてもう嫌だ。この先に僕の望んでいた景色がきっと、きっとあるに違いない…!
専念すれば専念するほど、影裂界の黒魔力はどんどん集まり、亀裂に掛かる力も大きくなっていく。
ッパキ、ッパキッピキ
亀裂のヒビは広がって行き、ひび割れた所から小さな光か溢れ出てくる。ここまで来たら意地でも開ける他ない。
もっと、もっと僕の元へ集まれ。
【称号:闇の支配者を獲得しました】
まだまだ足りない。ここにある全てを使えるまでもっと。
【特殊スキル:黒神術のレベルが上がりました】
頭の中で何か高い音が響いた気がするが、ゴォォォォという黒魔力暴風の音で掻き消された。
もう少し、もう少しで亀裂が広がって、ゲートが開きそうな気がするんだ。今はまだ7割くらいしか支配出来ていない。ここにある空間の『全て』を僕の物にしたら…きっとゲートは必ず開く。
暗闇に根を張り巡らせるように次々と空間を広げて影裂界の黒魔力を自分の身体の一部として認識していく。
そして…ついに僕はこの影裂界という亜空間を形作っている黒魔力の全てを把握した。
【特殊スキル:黒神術の支配力が上がりました】
【世––––との接続率が上昇】
【特殊スキル:黒神術から暗黒魔法の使用が可能になりました】
え?黒神術で暗黒魔法を使える?
頭の中に無機質で高い声が連続で聞こえたのが今ハッキリと聞こえた。
黒神術で暗黒魔法が使えるようになったと言うことは、つまり種族変化してオルシヴィオンじゃなくなっても暗黒魔法が使えるようになったということかな。この影裂界とか使い道が沢山ありそうだし有難い。
影裂界の全ての黒魔力を掌握した僕は、先程より余裕を持ちつつ亀裂をこじ開ける。
影裂界の亜空間全体が歪み形を変え、亀裂の端に負荷をかけて行く。同時に、想像し得る限り硬くした黒魔力を亀裂の隙間に枝のように入らせて、テコの原理を使ってこじ開けていく。
ッビキッビキビキパキッバキィィッッッ
と鼓膜が破れそうな程の大きく軋む音がして、ゲートが開いた確かな手応えと、目が焼けそうな程眩しい光が差し込んだ。
やった、ついに開いた…!
漸く外に出られると感動と達成感を感じながら、開いたゲートから頭を出すと、
「…**?」
僕の目の前に呆然とした顔で立ち竦む少女がいた。
薄く緑がかった金髪と、ぱっちりと見開く黄緑色の瞳、変わった模様が描かれている民族衣装。漸くこの世界の人に会えたのは喜ぶべきことだけど…これは些かまずい状況かもしれない。
「…**?***…**?」
女の子の目が徐々に見開き、ガクガクと震えながらその場に膝から崩れていく。持っていた籠からパラパラと色とりどりの花が散らばった。
そう、何がまずいかというと…僕の姿が『ドラゴン』だという事だ。
大丈夫、怖がらないで!と言いたいところだけど、女の子の話す言葉が理解出来ない時点で意思疎通は難しそうだ。
それに僕自身ドラゴンの姿で言葉を喋れるか分からない。
そうなると、女の子を怖がらせない為にもこの場から直ぐに立ち去った方が良いだろう。
一瞬で姿を消すには、今ゲートからちょこんと出ている頭を引っ込めてゲートを閉じてしまえば解決なんだけど、せっかく必死な思いで開けたゲートを通らないで閉めるのは忍びない。ということで、一度今いるゲートから出て、新しいゲート先を開いてその場から去る(ワープする)事にした。
ゲートから体全体を出すと、恐怖で固まっていた様子の女の子の顔が絶望に染まり、ついに悲鳴を上げる。
あわわわごめんねごめんねっ怖がらせてしまって本当にごめんなさい!
距離が目と鼻の先になってしまった女の子から即座に離れ、『ここから離れた人がいない森』を目指すゲートを咄嗟に上空に開き、勢いのまま翼を広げ身を翻して飛び込む。この数秒間、僕は身体をくねらせながらカサカサとドラゴンらしからぬ動きでその場から去った。自分でも思ったけど、その姿はドラゴンというより必死に天敵から逃げる蜥蜴そのものだった。
女の子は、僕の突然の逃走に驚いたのか、目を見開いたまま最後まで固まっていた。
***
ゲートをくぐり抜けた先、目の前を見ると、木々が密集した森が広がっていた。
懐かしい森の安心感に、そのまま僕はヘナヘナと降下しながら地面に横たわった。はぁぁ。ヒヤヒヤしたぁ。
女の子のあの様子を見ると、やっぱりドラゴンは人間にとって危険な生き物なのだろう。だけど突然目の前に女の子がいるとは思わなかった。怖がらせてしまったせめてものお詫びとして、女の子が落としてしまった花を黒神術で掬い上げて籠に入れておいたけど、また落としてないと良いなぁ。
慌てて適当に人が居ない森に行くよう設定した訳だけど、人間の国からどこまで遠く離れた森に飛ばされてたのか分からなくなってしまった。
今この瞬間に人が居ないだけの森に飛ばされたのか、人が全く立ち入らない森に飛ばされたのか…。
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