『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

19 黒魔法と暗黒魔法②

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影裂界を試しに使うのに長々とかかっちゃったけど、漸くお次は暗黒魔法の『絶破断』を発動。

「『絶破断』!」

発動の力を念じると、また身体の内側からエネルギーが込み上がって来た。でもさっきの影裂界の時のような外の空間に解放されたいエネルギーと違って、なんだか勢いがあって刺々しい。口や角、爪や尻尾などの身体の部分集まりやすいような、そこから解放出来そうな感覚がする。

何となく右前足の爪先にその力を寄せると、爪が紫色に発光して熱くなった。
この現象は、テディべ…いや違う、何だっけ…クマムシ、そうクマムシが魔力を使って攻撃する時と酷似している。
と言うことはこのエネルギーは魔力かな?

反射的に熱くなった爪を冷まそうと思って手を振ろうとして動かしたら、爪が『空中にある何かに刺さっている』ような感覚がした。
何かといっても何もないんだけど、発光している爪をそこに置いているな不思議な感じだ。

手を恐る恐る動かすと、長く鋭利な爪がツーと何かを切り裂く感覚がする。例えて言うなら…ゼリーのような滑り具合のグミのような感触のものを、物凄く切れ味の良過ぎる包丁でツーと切り裂くような感覚…。つまり、切り心地がめっちゃ良い。
何を切っているのかよく分かんないけど、とにかく感触はするんだ!

勢いよく右前足をシュッと横一直線に振るうと、空中の空間が歪んで裂けたように一瞬見え、黒い爪跡の軌道線が刃のように真っ直ぐ音も無く飛んで掻き消えた。

んー、どういうこと?

もう一回勢いよく振るうと、空間を爪で裂いたような爪痕がほんの一瞬光り、鎌のような黒い刃が真っ直ぐ飛んでいく。

…これは、恐らく攻撃用のスキル?
爪先にエネルギー…もとい魔力を集めて引っ掻くようにする事で遠くの敵にも攻撃が出来るようになっているのかも。
ふと思いついた。エネルギーを口に集めて放ったらゴジ●みたいな光線か出るかな?
再度放つためエネルギーを貯める。

『絶破断』

口をぱかっと開けて、身体の内側で限界まで貯めたエネルギーを口から集結させて放つと、

「グオオオオオオオオ––––––––」

思わず出た魔竜の特有の低く大きな声と共に、口から黒い巨大な光線がレーザービームのように放たれた。
余りの勢いに頭が押され、これはマズイと判断して、急いで口を空に向ける。

空間は黒いレーザーを避けるように大きく歪み、遥か下の川が絶破断の風圧により水飛沫を上げ、雲を消しとばしながら黒い光線は空の彼方へと何処までも放たれる。

やがて、黒い光線は細くなって消えた後、シュゥゥゥと音を立て口から黒い煙が上がって終息した。

……。

…いや、何この威力。

何かあった時に、これで攻撃が出来る事は安心だけど…良く考えたら邪竜も全く同じスキルを持っているんだよね…。うわ…あの時逃げといて本当に良かった。
危うくこんな攻撃されて消し炭になるところだった。

それにしてもこんな恐ろしい攻撃力、使いどころによっては僕自身が破壊獣になってしまうから気をつけなきゃ。

最後にいよいよ『幻影』を試そう。
これは…僕が黒神術を操作するように幻影を映し出せば良いのかな?

取り敢えず、『幻影』発動!と思いながら念じてみた。

黒神術とはまた違う身体に纏わり付くような感覚と共に、薄いオーロラのような透き通った虹色の光が身体の周りに発生する。なるほど…この光彩を使って幻を見せるんだ。

試しに、身体が透明になるようにイメージすると、黒竜の身体が虹色に光る膜に包まれて見えなくなった。
凄い、どこから見ても見えない…!
これは出来るかなと僕の体をカラスに見えるようにイメージすると…空間にドラゴンのシルエットをした虹色の光の膜が現れ、次の瞬間にはカラスになった。

わあ、羽根の一つ一つまで完璧に再現されてる…ってめっちゃ大きい…!?間違えた、大きさが魔竜オルシヴィオンののままだったッ。

小さく見せるようにすると、カラスの輪郭や身体が虹色に光ながらぼやけ、普通のカラスの大きさになる。
いちいち変更する時に虹色の膜が光るらしい。
黒神術ではカラスそのものになって動かせるのに対し、今の僕はオルシヴィオンになったままでカラスの体の幻を見せる事が出来るのが大きな違いかな。
自分がカラスになって見慣れてただけあって、カラス姿の再現は完璧だ。

だけど、見え方がちょっとおかしい。

今は自然に見えるようカラスが常に羽ばたくようにイメージしている。一応その動きに合わせてカラスはちゃんと動くものの、タマムシとかコガネムシのような虹色の光沢が絶えずカラスの身体の表面に光って、カラスが本物じゃないのが丸分かりになってしまっている。
少しでも動かしただけで、動かした部分に虹色の膜が現れる。だからといって、カラスの体を動かさないでいると、羽ばたかず飛んでいるので剥製の凧に見えてしまう。この幻影は生き物とか動かす物には向いていないのかも。

今度はカラスじゃなくて小さいリンゴに見えるようにした。

すると、極普通の美味しそうな赤いリンゴが空中を物凄いスピードで飛んで行くという摩訶不思議な見え方になった。少しシュール。

けど静物だと虹色の膜も光らないし、幻影には問題ない。
今度は幻影を僕自身にかけずに、何もない空中にしてみよう。

という事で、崖から飛んで川を渡り出してから今までずっとノンストップで飛行してきた僕だけど、ここにきて漸くホバリングしながらその場で停止する。

ドラゴンの翼は魔力が籠っているのか、そんなにバサバサ慌ただしくしなくても空中で停止出来た。

よし、目の前にリンゴを出してみよう。

そう念じると同時に、僕の体を纏っていたオーロラのような虹色の光彩が目の前に集束し、やがてリンゴの輪郭がボンヤリと現れた後、赤い色の鮮やかな林檎が浮き出るように姿を見せた。

空中に静止するリンゴ…なんだか手品師になった気分。

試しに前足の爪先で林檎を突いてみようとしたら、スカッと林檎から爪先が通過してしまった。
あー、やっぱり幻だから触れないか…久しぶりに食べたかったのになあ。
幻影は、静止している物をカモフラージュする時に使えたり姿や物を消したりする時に使えばいいか。でも今のところ幻影より黒神術の方が便利だなぁ。
幻影を解除して、僕は自分の身体から黒い炎のような黒魔力を放出する。そして、その黒炎の中から黒い小鳥が数十匹姿を現させ、小鳥を小さいドラゴンや魚に変化させた。

黒神術で何かを創造させる時、透明には出来ないし、何故か変化させるの物はみんな殆ど黒色になってしまうけど、黒魔力を自分の手足のように自由に動かせるのはやっぱり便利だな。
大きな黒竜の周りに、小鳥やドラゴン、小魚などの小さな生き物達がそれぞれ楽しそうに生きているように飛び回る。
小さくて黒い生き物達は自分が操っている訳だけど、視界が僕と共有しているのか、僕の脳裏に一匹一匹から見た映像が映し出され、まるで小さな自分が沢山居るみたいだ。
わー、一気に賑やかになった気分。今なら一人おままごととか、一人 人形劇とか出来そう。

普通なら頭がごちゃごちゃしてしまいそうな事をやっている筈なのに、何故か普通に出来てしまうのが自分でも不思議に思う。はっきり分かるのは人間と感覚が全く違う事だ。人間の10本の手の指を動かすより、黒神術で使った方が手足を操るより簡単に思えるし。
おかしな生物になって、僕の脳の構造も変わってしまったのかもしれない。
あ、そういえば黒神術で食べ物を物質化させた事はなかったな、とリンゴをイメージしてみた。
黒い霧が凝縮し、艶々のリンゴが現れたかと思うとひゅっと落下したので慌てて小さいドラゴンの背中でキャッチした。…しかし、林檎は黒い。

うわ、重い!と言うように、林檎を乗せた小さなドラゴンがキューっと鳴いた。(実際に重いと僕が感じたから鳴いてしまった)

【黒林檎】
【異世界の林檎と呼ばれる果物を限りなく再現したもの】

うーん、限りなく再現したもの…?鑑定しても…よく分からないなぁ。

ちっとも美味しそうじゃなさそうだけど、味や食感はもしかしたら本物のリンゴに近いかもしれないと思い、黒い林檎をドラゴンの前足で掴み…、ぎゅっと目を瞑って黒リンゴを一口で食べてみた。

シャクッシャクシャク…。


……うん?…んんんん?うんん!?

食感は林檎そのもので、初めは味がしないと思っていたのに、噛めば噛むほど林檎っぽいジューシーな味がしてきた。

もしかして僕が林檎だと思い込めば思い込むほど、味や食感がリンゴに近づいてる?

何となくそんな気がしたので、これをチョコレートだと思い込んで食べることにしたら…

パリッポリッバキ

食感がチョコレートのような固形物を食べる食感に変わった。そして、徐々にチョコレートのような香りと共に口の中が甘くなっていく。

わぁ…やっぱり想像した通りのチョコレートの味がする…。

黒神術口の中に入っている黒林檎だったもの(今はチョコレートっぽい物に変質してしまったが)を、物質化解除をして黒魔力にし、身体の内側に吸い込む。

それから成る程…と考え込んだ。色は黒くなるけど、食べ物は黒神術で想像した通りに出せなくもないと言うことが分かった。

しかし、本物の食べ物を食べたようなあの満足感がしない。まるで、知り合いからの年賀状が届いて欲しい時に、自分宛に年賀状を書いて送ったものが届いたような感覚…なんか虚しい感じがする。

決して美味しくないとかそういう訳ではないのだけれども…久々に食べて、本物は想像した以上に美味しかった!というようなあの感動はきっと黒神術では再現出来ないだろう。

きっと僕以外の人が食べたら普通に美味しく感じるかもしれない。問題はこの真っ黒な色だな…。
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