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第一章
18 黒魔法と暗黒魔法①
しおりを挟む『《影裂界》』
そう心の中で念じると同時に、身体の中の奥底から、ブワッと湧き出るものを感じた。
それらは目紛しく身体の中で渦巻き、直ぐにでも何処かに放出されるのを待ち侘びているように感じられた。
どこに出せば良いの!?と思って羽ばたきながらなんとなく視界前方を見ていたら、遠くの前方空中に何か黒い粒のような物が現れ、身体の中に渦巻くものの量が少し減った気がした。
あぁ、あそこに放出出来るんだ。
何となくそんな気がしたので、黒い粒を視界の中央に捉えながら身体の内側のエネルギーを一気に送り出すようにすると、黒い粒のあった場所から黒い稲妻のような一本の亀裂が迸った。驚きつつ、エネルギーを送り込むのを止めないでいたら急に送り出しにくくなった。
《影裂界》って空中にあの変な黒い亀裂が出来ただけでまさか終わり?あの黒い亀裂で敵を攻撃するスキルなのかな…。
うーんまだ何か起きるかな、と更に念じる力を込めてエネルギーを送り込むと…周りの背景が大きく歪んでぐわっと亀裂が開く。
力を込めれば込めるほど、亀裂の開き具合は大きくなり、
光が一切遮断された真っ黒な亀裂の内側が見える。
黒い亀裂が開く現象…。
ふと思い出した。
確か邪竜が出る時、邪神の周りに黒い亀裂が現れて、その中から出てきていた。もしやあの亀裂ってワープ空間みたいな役割をするのかも?
僕が亀裂に到達するまであと十数秒。
一か八か…あの亀裂の中入ってみちゃおっかな!?
やっぱり危険だし辞めとこうかな。
んー、どうしようどうしよう入っちゃうか…いや駄目怖い怖い、あーでももしワープスキルだったら魅力的だし入ってみなきゃ分からない訳だし分からないままにするのもアレだしでも怖い何が起こるか分からないし。
僕は直前までうだうだ迷いながらも、気が付いたら黒く縦に裂けた空間に身体をスッと滑り込ませていた。
入り込んだ瞬間、周りが真っ暗になり、風を切る音も川の音も一切聞こえず静寂になった。
暗闇の中で、通ってきた亀裂の裂け目だけが後ろで煌々と明るく光っていたが、僕の尻尾の先が亀裂の中に入った途端閉じてしまった。
真っ黒の空間の中、明るくはっきり認識できるのは発光している僕の身体だけ。僕の身体は深海生物のように暗闇の中を悠々と泳ぎ、脈打つ発光の光が鮮やかに黒竜の姿を浮かび上がらせる。
亀裂の中は亜空間になっているのか、重力を感じず、水の中に入っているように空気が重く感じた。先が全く見えない暗闇の中をゆったり泳ぐように進んで行く。
真っ暗で、どこまで空間が広がっているのかも見えないのに、不思議と不安に思うことはなかった。
寧ろ、とっても居心地良くて落ち着き、『ここが僕の居場所』のように感じてしまう程だった。
あぁ…感じたこともないような安心感がする…。このままずっと暗闇に揺蕩っていたいなぁ。
はっ!と思い、首を思い切り左右に振る
この居心地良さが中毒になってここから出られなくなってはいけない。
えっと、出るには…
来た時の同じようにすれば良いのかな、と前方に力を送り込むように念じてみると…
ん?うわぁぁぁぁ!?!?
深海のように重かった空気がゴオォォと前に向かって物凄い勢いで流れて行き、僕もその流れに押し流されて行った。身体にかかる圧力が高くなり、身体が嫌な音を立てて軋む感覚がする。
重い重い、早い早い早い目が回る!ストップ!
咄嗟に流れが止まるのをイメージすると、次の瞬間急に流れが強制的に急停止した。
っおぶぇ!?
100で動いていたのがいきなり0になるような止まり方で、身体に思いっきり衝撃が走る。僕の身体が魔竜で丈夫だったから良いものの、人間の身体だったら内臓と脳が叩きつけられてシェイクされていたよ…。
はぁ…怖かった。まさか『空間全体』が動くと思わなかった。
けど、この感覚は知っている。
僕が黒神術で黒魔力を操る時と同じだ。
試しにゆっくりと流れるようなイメージをすれば、ゆっくりと身体が進んだ。成る程、要は僕が黒神術を操る時と同じように意識して動かせば大丈夫そう。
今度は徐々に止まるようにイメージすれば、僕の思考に直結しているような動きで、思った通りに緩やかに止まった。本当に黒神術で黒い霧を操っている感覚とほぼ同じだ。
と言うことは、この亀裂の中、いや、『影裂界』の中に広がっている空間の全てが、僕の身体を構成しているあの黒い霧…黒魔力と同じなんだろう。
僕が普段使っていた黒魔力と違うのは、黒魔力の密度?だろうか。
もうここにある黒魔力の濃さは霧というレベルじゃない。どれくらいかというと…液体?凄く重い空気?…なんて言えば良いか分からないや。
でも、道理で居心地が良かった訳だ。僕の身体は黒魔力で出来ているし、黒魔力の中に居るのは落ち着くのだろう。
もう黒魔力がどんどん少なくなって消えそうになっても、ここに飛び込めば消えることがなさそうだから一先ず安心だ。
**
さて、この空間から出るにはどうすれば良いのかというと…外に出られるように空間を切り開くイメージをすれば良いのかな。
さっきは黒魔力を送り込んで空間を裂いたけど、次は外の景色を思い出しながら黒魔力で満たされた空間をこじ開けるようにイメージをする。
すると、僕の目の前に輝くー線が現れた。
もうひと押し、と黒魔力をこじ開けるような気持ちで力を込めると、その線が大きく開いて外からの眩い光が漏れ出す。
移動は黒魔力を操作した方が早い。
周りの黒魔力を亀裂へ向かって流れさせ、僕は波に押されるような感覚で外の世界に抜け出た。
それから何回か『影裂界』を練習したところ、コツさえ掴めば割とスムーズに影裂界を発動できるようになった。
このスキルはやはりワープのような機能があるみたいだで、影裂界の中を通ると100メートルくらい先の距離を一瞬で辿り着くことが出来た。
また、亀裂を同時に3つくらい発生させたり、大きさを変えたり、自由に場所を指定して出す事も出来た。
これから邪竜のような敵が現れた時、影裂界を使って逃げる事にしよう!
あ、影裂界の中に物とか入れてゲームのアイテムボックスみたいな使い方出来ないかな?岸に着いたら試してみよう。
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