『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

17 霧の向こう

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カラスと比べ物にならないほどの飛行速度で、僕は飛行する。
ただ羽を一振りしただけなのに、こんなに飛ぶとは思わなかった。

後ろ上を見てホッとする。あのラーグァベギノダウスという邪竜達とはさらに距離を置いていた。
しかし、未だに邪神の巨大な目と目が合う。

怖い怖い怖い…!

邪神の目の届かないとこに早く行かなければ、と 更に力強く羽ばたいて加速した。

******

それからどれだけ飛んだのだろうか。

飛び続けているうちに、気が付いたら 下の川の勢いもなだらかになっていた。

見渡す限り眼下に広がる大河。川ではなく海を渡っているような気分になる。

本当に僕は川を横切るように飛べているのかと不安になり、下の水流が左から右へ流れている事を定期的に確認しながら飛んだ。

邪神は途轍もなく巨大なため、どれだけ離れても 暫くの間は あの巨大な目の視線から離れられず焦っていたけど、いつの間にか白く霞んで姿が見えなくなっていた。

…本当に良かった。もう二度とあんな怖い思いはしたくない…。

視界は霧の濃度が徐々に増して白くなっていく中、両翼から白い航跡を真っ直ぐ描きながら霧を裂くように飛んでいく黒いドラゴン。

眼下を見ると、川から白い湯気が立ち昇っているように見えた。川も頭上も視界が白くて、自分が何処にいるか分からなくなりそうだった。

霧に包まれた行き先見えない世界…何処か違う世界に迷い込んでしまったような不思議な気分になる。

……あ、例えじゃなくて実際にこの世界に迷い込んでるんだ。

霧の中をずっと飛び続けているのも不安だから、確かこんな時もあったなぁ、と僕は小さい頃の記憶を思い出していた。

家族で紅葉を観にドライブしてた時、霧で視界が真っ白になっちゃって…前が見えなくてハラハラしたけど、僕以外のみんなは冷静で…。

『大丈夫、今明け方だからこんなに見えないけど、もう少ししたら綺麗な紅葉が見えるよ』

姉が言ってくれた言葉通り、あの日の濃霧はすっかり晴れて、鮮やかな紅葉を観る事が出来た。

大丈夫、霧は晴れる。

見えないのは、今だけ。
まぁ、飛び続けてればいつか霧を抜け出すだろうし。
僕はあの時を思い出し、なんとか自分を元気づけた。

****

そして、暫く。

晴れることを諦めようかと思っていた霧は、徐々に薄くなって、今はもうすっかり青空が見えるようになった。反対に川の勢いが増す。

霧の中を暫く飛んできたからか、ドラゴンの黒い体はツヤツヤに光沢を放っていた。

あ、そういえばドラゴンになった姿を鑑定するの忘れてたな。

鑑定!

***********************

【オルシヴィオン】

種族 : 黒曜竜
闇属性

体力:8600
魔力 : 5000

スキル : 《疾風》 《竜の咆哮》
特殊スキル : 《呪術魔法》◀︎ 《暗黒魔法 》◀︎    《種族変化》 《黒神術 》 ◀
黒神術 :  《状態変化》 《創造化》《生体感知》
暗黒魔法: 《影裂界》《幻影》《絶波断》


***********************

あーー……なんかもうステータス見ても良く分かんないや。

取り敢えず確実に分かることは、ラーグァベギノダウスという邪竜ではなく、オルシヴィオンという黒曜竜に変化したこと。

というか邪神とか邪竜とか訳分かんない。邪竜ってなんなのさ。

しかも邪竜に変化しようと思ったのに、なんでオルシヴィオンって言う黒曜竜になったんだろう…?

邪竜は見た目が毒々しくて不気味なのに対し、なんというか…このオルシヴィオンという黒曜竜はかっこいいというより綺麗で…なんか可愛い。

猫のようにくりっとして大きな蒼銀の龍眼、頭から尻尾の先までしなやかな曲線を描く黒曜の身体、そして猫の耳のように生えたコブのようなツノと、その下から生える水色の透き通った長いツノ。
よく見れば顔のエラに当たるところに黒い身体に水色のキラキラした鱗が散らばっている。

あ、凄い、鱗が光ってる!

他によく見れば、ツノと体の黒い鱗の溝の部分が青色に光っていた。どうやら、この黒曜竜の体はあちこち発光しているようだった。
真っ黒なドラゴンの体に、脈打つような青緑色の光が巡り、黒と光の基調が少し近未来チックで幻想的だ。
皮膜の部分とかも呼吸に合わせて緩やかにネオンブルー…若しくはネオングリーンに発光している。

大きさは……うーん…駄目だ、比べるものが何もないから分からない。

…まぁ、結果的に邪竜に変化しなくて良かった、と思う。

邪竜とは体格も見た目も真反対だった。…邪竜の目なんか赤くてギラギラしてたな。

でもステータスは、邪竜ラーグァベギノダウスのステータスと似通っているんだよね。スキルは全く同じだし。

特殊スキル に関しては、僕が元から持っている 《種族変化》と《黒神術 》に邪竜と同じ《呪術魔法》と《暗黒魔法 》が加わった感じだ。

…スキルに関してはなんとなく想像がつく。

レッドウルフの時、使い方を知らなかったのに《火炎達磨》を使えた。あの時、何というか…今思えば、「自分が使った時にどんな能力を発揮するか」というのは本能的に理解していた気がする。

このオルシヴィオンのスキル…例えば《竜の咆哮》だとかは、「咆哮を上げて相手を一時的に怯ませ行動不能にさせる」効果があるんじゃないかなぁ…?なんて想像がついている。

分からないのは特殊スキルだ。
《呪術魔法》と《暗黒魔法 》って何?

ということでカーソル(◀︎)を開いてみた。


【呪術魔法】【呪術系の魔法。遅延性の効果が殆ど。

歪んだ精神の持ち主や闇を信仰する者、強い負の思念(怨念)を持つ者が獲得する傾向にある特殊な魔法。魔法と言われているが、魔力が持たない者も使うことができる。

その他、不死系の魔物が持っている。対象の生物、武器などの物、場所(空間)に強く念じることで、〈呪い〉をかけることが出来る】


【暗黒魔法】【闇属性の邪神、邪神の使徒、魔王、そして非常に高位な魔物が使う特殊スキル。

周囲の負の魔力(別名:黒魔力)をエネルギーとしてスキルを行使する非常に特殊かつ高度な魔法。魔法学において、理論上説明不可能となっている】

せ、説明が長い…。しかもなんか物騒で怪しげなこと書いてあるよおお(厨二病感プンプンだし)。

…まぁ、まずはよく見てみよう、

えーと、【呪術魔法】は…歪んだ精神、闇を信仰、強い怨念を持つ者が呪術魔法を獲得しやすいとな。

うん、これ持ってちゃ確実に駄目なスキルだよね!?
ヤバイスキルじゃん、このスキル持ってるの知られたら精神病行きだよ!…精神病が果たしてこの世界にあるのか分からないけど。

それに僕、精神 歪んでないよ!?

あ、でも本当に精神歪んでいる人は歪んでいる自覚が無いって聞くし……いやいやそんなまさか…そんなはずないよね!?

邪神はさっき見たけど、あんなもん信仰する程 僕は正気を失ってないし、強い怨念を抱く事なんて身に覚えが無さすぎるよ。

うーん、このスキルを獲得した理由は、このオルシヴィオンが不死系の魔物だからかな。消去法で行くとこれしかない。

そういえばアルラモルモの村長さん、僕が素性を言えなかった事を呪いのせいだと思ってくれてたなぁ。

呪いで素性を言えなくする、そんな事もこの呪術魔法では出来てしまうのか。人を呪わば穴2つって言うし、出来れば呪いなんて使いたくないな。

でも強く念じる事で〈呪い〉を掛ける事が出来るって…イマイチ使い方が良く分かんないだよね。

どのくらい強く念じれば良いんだろう?何かあった時に、うっかり〈呪い〉を掛けちゃったら大変だし…一度試しに使ってみたいけど、今は飛んでいる最中だ。

それに、呪術を何もないところでかけたって、効果の程が分かりにくそう。

今すぐ呪術がどんなものか試してみたいけど、まずは大河を渡りきってから考えてちることにしよう。


次に【暗黒魔法】についてだけど…

邪神、邪神の使徒、魔王、そして非常に高位な魔物が使えるらしい。

ちょっと待って、え?魔王!?この世界魔王なんているの!?
確かに地下世界で村を作ってる動物とか、魔法とか、モンスターとか、ステータス見れちゃったりとか、ファンタジー感というより、ゲーム感ヤバイなとは思ってたけど…まさか魔王!?そこまでファンタジーゲームのテンプレ通り!?
じゃあ、勇者とか神官とかもいるのか。わわ、物語の中の世界に来たみたいでなんかワクワクしてきた!…本当に物語の世界に入り込んでたりして。

しかしうーん、もしこの世界が物語だとして、邪神はどういう立ち位置なんだろう。絶対敵キャラで間違いなさそうなんだけど、ラスボスである魔王がいるし…裏ボスになるのかな。勇者あんなものと戦うのか、ひぇー大変だなぁ。

あれ?よく考えたら僕もどの立ち位置になるんだろう…?僕って闇属性が持てる黒神術を初めから持ってて…闇属性だから魔物…つまり勇者達一行に倒される側!?

嫌だぁぁぁ!!うっかり勇者に会ったら殺されてしまう!あ、勇者じゃなくても人間に討伐対象として殺される危険があるし、魔物じゃないアルラモルモ達も人間に狩られてたから、結局人間に変化しなければ殺される危険性がある訳だ!!

うん、人間になろう。それか、人間に敵と思われない生物…あぁ、黒猫になれば良いじゃん。この世界に猫がペットとして飼われてたら良いな。

…あ、話が逸れた逸れた、今は暗黒魔法について考えなきゃだった。

暗黒魔法は邪神の使徒が使える。つまり邪神の使徒であるラーグァベギノダウスが持っていた特殊スキル。僕はラーグァベギノダウスに変化しようとしたから…暗黒魔法を手に入れたのかな?
いや、違う。ラーグァベギノダウスに結局変化出来なかったから、この暗黒魔法を獲得したのは偶然変化してしまった魔竜オルシヴィオンに理由があるはず。

オルシヴィオンは邪神の使徒ではない…それなのにどうして暗黒魔法が使えるのかというと、オルシヴィオンが『非常に高位な魔物』だからかな…。

それにしても、変化出来なかったラーグァベギノダウスとステータスの能力値がほぼ同じオルシヴィオンに変化したって、偶然な訳ないよね。

うーん。

確かに僕は、敵であるラーグァベギノダウスに対抗するため、いつもの要領で変化しようと思った。

人間に変化しようと思った時は、変化のレベルが足りなくて変化出来なかったけど、ラーグァベギノダウスの場合はそれ以外の『何らかの事情』により変化出来なくて、それを修正するような形で ラーグァベギノダウスに対抗できる同等の強さのオルシヴィオンに変化したってことかな。

その何らかの事情というのは、恐らく僕が空耳だと思った『変化対象の存在が測定不可能』なんだろうと思う。

それにしても、この『種族変化』という黒神術のスキルで、そんな勝手に自動で変化対象を修正してくれる機能があるなんて知らなかった。
だけどターディーベアの時にこの機能は発動しなかったのを考えると、発動にも条件があるのかな。
例えば、『スキル、特殊スキル含め全く同じ能力の異種族が居た場合』だとか。

うーん、そうなると結局今回は運が良かったから変化出来た事になるなぁ…。


新しい特殊スキルが使えるようになったっていうのに、今度は良く使っている種族変化の謎が深まってしまった。

あ、そうそう、新しい特殊スキルの暗黒魔法は《影裂界》《幻影》《絶波断》というのが使えるみたい。

黒神術の《状態変化》 《創造化》《生体感知》と同じで、またそれぞれ使い方があるらしい…。

呪術と違って、見える形の魔法な気がするし…この青空と大河だけがひたすらに続いている だだっ広いところで試しに使ってみたほうがいいかもしれない。

《幻影》とか、ある程度使い方が想像出来るので後回し。

先ずはものの試しに、黒魔法の《影裂界》から使ってみよう。
うーん、影が裂ける世界?字面からはこんな風に読み取ったけど、果たしてどんなスキルなのかよく分からない。

よーし、やるぞ、と意気込んでゴクリと喉を鳴らす。

「グルルル」

自然と唸り声が出てしまった。

今から起こることをしっかり見るために、僕は目を大きく開く。

そしてスキルを発動した。


『《影裂界》』
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