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第一章
30話 不安の兆し
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何かの魔法が発動する兆候に、猛烈に嫌な予感がした。それが良いが悪いかの判断も考える間もなく、咄嗟に影裂界を『二つ』切り開いて一瞬で二人を僕のいる位置と入れ替える。
「一体何が…?」「え、あれ?」
次の瞬間、魔力が渦巻く中心から大きな黒い鎌が現れ、僕の体が魔力で出来た鎖に囚われ宙に浮かぶ。
「エヴィーー!!!」
魔力の暴風が止むと、そこに現れたのは紫の炎に包まれた死神だった。
「ッあれはグローファントムッ、何故!?ナーシア様、お下がりください!」
至る所が綻んだローブ、刃こぼれしたような見た目の鋭く大きな黒い鎌。頭がフードに隠れていてよく見えない。
【グローファントム】◀︎
種族 : アンデット(死霊)
闇属性 : 火
体力 : 2802/2802
魔力 : 3870/4021
スキル : 《封縛の鎖》《死の刃》
特殊スキル : 《呪術魔法》《精神干渉》
精神干渉: 《マインドブレイク》《マインドドレイン》《幻影の悪夢》
【グローファントム】【幾多の死霊が魔物化したアンデット系モンスター。人気のない洞窟や森林、荒廃した土地など日の当たらない場所に現れる。特殊スキル《精神干渉》による精神攻撃に特化し、感情に支配された者の魂を刈り取る。また、自身を倒した者に憎悪増長の呪いを掛けて狂わせる】
グローファントムによるスキル、《封縛の鎖》のせいで身体が固まったように動かせなくなる。
グローファントムって人気のない暗がりに現れるって鑑定で説明されてるけど、全然違うじゃん!
日光に当たって大釜がギラリと黒光りする。
十中八九ナーシアの呪いで引き寄せられた魔物で間違いないだろう。
目的は明らかにナーシアだったけど、先ず初めに弱っちそうな黒猫から鎖で捻り潰す気でもいるのだろうか。鎖がゆっくりと食い込み始めるけど、この体は黒魔力で出来ているから痛くも痒くもない。
鎖が食い込む場所から徐々に黒霧化させている間に、ナーシアの部屋にある生物図鑑~魔物編~に書いてあったグルーファントムの記述を思い出す。今の鑑定にも載っていなかった事が書いてあったはずだ。
『グローファントム: 火属性と物理攻撃に耐性あり。黒鎌かローブを破壊する事によって倒すことが出来る。グローファントムは《封縛の鎖》によって対象の動きを封じ、《精神干渉》によって対象の心を破壊する。(尚、《精神干渉》スキル発動の状態では、物理攻撃を完全無効化させる)
《精神干渉》によって冷静な判断を失った者から《死の刃》で命を刈り取る習性がある。
《マインドブレイク》自身の生者に対する憎悪を対象と同調させ感情を暴走させ狂人化させる。(対象:激しい憎悪により、判断能力低下)
《マインドドレイン》負の感情を激化した者の気力を吸い、魔力に変換する。
《幻影の悪夢》対象の過去のトラウマを呼び起こし、悪夢を見せ続ける』
精神攻撃系の魔物か。しかも精神攻撃をしている最中は物理攻撃が無効なんて…今までの魔物と大きく違う。
《封縛の鎖》は身体拘束だけみたいだけど、黒猫の身体を黒霧化させる事によって拘束は解けそうだ。
だけど、今 拘束を抜けてしまえばナーシア達を狙う可能性が高い。
…それならこのまま囚われた状態で反撃した方が良いかな。
グローファントムが黒猫に対象を限定して鎖締めをしている間に、黒霧を鎖に纏わせる。鎖を伝った黒霧は僕の意思に添うように力を帯び、グローファントムのローブの内部から威力を調節したスキル《絶破断》が放たれる。
グローファントムのローブが切れて、ぱっくりと穴が開いていく。切れた穴の中からはズモモと黒い煙りが出て行ってかなり不気味だけど、あれは僕の黒霧なんだよね…。
取り敢えず、この調子で切り刻んで行けばナーシア達に気付かれずに倒す事ができそう。
そう思った時、ヒュンと僕の横を氷の矢が飛んでいく。ナーシアとファニラ先生もグローファントムに攻撃を与え始めたようだ。
ナーシアは呪いの一つである〈魔法スキル制限〉によって攻撃が撃てなくなる時もあるけど、今回のナーシアは大丈夫そうだ。もしかして、ナーシア自身が狙われていなければ制限を受けない仕組みの可能性有り?
頭の片隅で考えながら淡々と攻撃していると、ファニラ先生の焦った声が耳に入る。
「グローファントムが精神攻撃に移る前に早く倒してしまわなければ…」
ファニラ先生の土魔法《アースハンド》によって、生成された土が大きな手のような形になってグローファントムを握り込む。手の形の土がどんどん圧縮して、土塊になった。それでも鎖はガッチリと離れない。倒せていないみたいだ。
「ファニラ先生、今お父様とビュラに助けをお願いしました!」
ナーシアはクローゼル家に受け継がれる特殊魔法《コネクトレイク》によって、ゼフィルスさんとビュラさんとコンタクトを取ったようだ。二人が来れば、迂闊に行動出来なくなるな…そうなるとかなり状況が悪くなる。出来れば二人が来る前に倒してしまいたい。捕まってる時点で今でも十分悪いけど。
グローファントムが土塊を透けて僕にゆっくりと近づいてくる。うわ、物理が効かなくなるってこう言うことか。僕の《絶破断》も透けてしまって攻撃が当たった感覚がしない。攻撃対象を突然見失ったように宙を裂いていくだけだ。
グローファントムの赤みがかった暗い紫の魔力が炎のように燃え盛り、ボロボロのローブが大きく広がるようにはためく。
あ、これダメなやつだ。ここに来て、ゾワゾワとこみ上げてくる胸騒ぎを感じても、二人が見ている手前どうする事もできない。
黒魔力で身体が出来ているからと言っても、精神の方ではわからない。僕の精神はきっと脆いだろうから尚更だ。
もし自分を見失って暴れたら。
ナーシア達を少しでも傷付ける可能性があるなら、今すぐこの場からワープで逃げるべきだ。一番の危険は僕自身の身体だ。
グローファントムのフードの奥が見えた。底無しの暗闇が広がっていた。
それなのに、僕は逃げることができない。
魔物だってバレたくないから?
バレたらナーシアやビュラさんに会えなくなるから?
それは彼らを失う危険がある事より大切な感情なのか?
僕を飲み込むかのように暗闇が迫ってきて、目の前が暗くなる。
どれも違う筈なのに、僕は…
逃げない。
【黒猫】
種族名 : 黒猫
種族 : 魔獣
闇属性
体力:253
魔力 : 320/320
スキル : 《猫パンチ 》 《引っ掻く 》《暗視》
特殊スキル : 《暗黒魔法 》◀︎ 《種族変化》 《黒神術 》 ◀
黒神術 : 《状態変化》 《創造化》《生体感知》《暗黒魔法◀︎》
暗黒魔法:《影裂界》《幻影》《絶波断》
「一体何が…?」「え、あれ?」
次の瞬間、魔力が渦巻く中心から大きな黒い鎌が現れ、僕の体が魔力で出来た鎖に囚われ宙に浮かぶ。
「エヴィーー!!!」
魔力の暴風が止むと、そこに現れたのは紫の炎に包まれた死神だった。
「ッあれはグローファントムッ、何故!?ナーシア様、お下がりください!」
至る所が綻んだローブ、刃こぼれしたような見た目の鋭く大きな黒い鎌。頭がフードに隠れていてよく見えない。
【グローファントム】◀︎
種族 : アンデット(死霊)
闇属性 : 火
体力 : 2802/2802
魔力 : 3870/4021
スキル : 《封縛の鎖》《死の刃》
特殊スキル : 《呪術魔法》《精神干渉》
精神干渉: 《マインドブレイク》《マインドドレイン》《幻影の悪夢》
【グローファントム】【幾多の死霊が魔物化したアンデット系モンスター。人気のない洞窟や森林、荒廃した土地など日の当たらない場所に現れる。特殊スキル《精神干渉》による精神攻撃に特化し、感情に支配された者の魂を刈り取る。また、自身を倒した者に憎悪増長の呪いを掛けて狂わせる】
グローファントムによるスキル、《封縛の鎖》のせいで身体が固まったように動かせなくなる。
グローファントムって人気のない暗がりに現れるって鑑定で説明されてるけど、全然違うじゃん!
日光に当たって大釜がギラリと黒光りする。
十中八九ナーシアの呪いで引き寄せられた魔物で間違いないだろう。
目的は明らかにナーシアだったけど、先ず初めに弱っちそうな黒猫から鎖で捻り潰す気でもいるのだろうか。鎖がゆっくりと食い込み始めるけど、この体は黒魔力で出来ているから痛くも痒くもない。
鎖が食い込む場所から徐々に黒霧化させている間に、ナーシアの部屋にある生物図鑑~魔物編~に書いてあったグルーファントムの記述を思い出す。今の鑑定にも載っていなかった事が書いてあったはずだ。
『グローファントム: 火属性と物理攻撃に耐性あり。黒鎌かローブを破壊する事によって倒すことが出来る。グローファントムは《封縛の鎖》によって対象の動きを封じ、《精神干渉》によって対象の心を破壊する。(尚、《精神干渉》スキル発動の状態では、物理攻撃を完全無効化させる)
《精神干渉》によって冷静な判断を失った者から《死の刃》で命を刈り取る習性がある。
《マインドブレイク》自身の生者に対する憎悪を対象と同調させ感情を暴走させ狂人化させる。(対象:激しい憎悪により、判断能力低下)
《マインドドレイン》負の感情を激化した者の気力を吸い、魔力に変換する。
《幻影の悪夢》対象の過去のトラウマを呼び起こし、悪夢を見せ続ける』
精神攻撃系の魔物か。しかも精神攻撃をしている最中は物理攻撃が無効なんて…今までの魔物と大きく違う。
《封縛の鎖》は身体拘束だけみたいだけど、黒猫の身体を黒霧化させる事によって拘束は解けそうだ。
だけど、今 拘束を抜けてしまえばナーシア達を狙う可能性が高い。
…それならこのまま囚われた状態で反撃した方が良いかな。
グローファントムが黒猫に対象を限定して鎖締めをしている間に、黒霧を鎖に纏わせる。鎖を伝った黒霧は僕の意思に添うように力を帯び、グローファントムのローブの内部から威力を調節したスキル《絶破断》が放たれる。
グローファントムのローブが切れて、ぱっくりと穴が開いていく。切れた穴の中からはズモモと黒い煙りが出て行ってかなり不気味だけど、あれは僕の黒霧なんだよね…。
取り敢えず、この調子で切り刻んで行けばナーシア達に気付かれずに倒す事ができそう。
そう思った時、ヒュンと僕の横を氷の矢が飛んでいく。ナーシアとファニラ先生もグローファントムに攻撃を与え始めたようだ。
ナーシアは呪いの一つである〈魔法スキル制限〉によって攻撃が撃てなくなる時もあるけど、今回のナーシアは大丈夫そうだ。もしかして、ナーシア自身が狙われていなければ制限を受けない仕組みの可能性有り?
頭の片隅で考えながら淡々と攻撃していると、ファニラ先生の焦った声が耳に入る。
「グローファントムが精神攻撃に移る前に早く倒してしまわなければ…」
ファニラ先生の土魔法《アースハンド》によって、生成された土が大きな手のような形になってグローファントムを握り込む。手の形の土がどんどん圧縮して、土塊になった。それでも鎖はガッチリと離れない。倒せていないみたいだ。
「ファニラ先生、今お父様とビュラに助けをお願いしました!」
ナーシアはクローゼル家に受け継がれる特殊魔法《コネクトレイク》によって、ゼフィルスさんとビュラさんとコンタクトを取ったようだ。二人が来れば、迂闊に行動出来なくなるな…そうなるとかなり状況が悪くなる。出来れば二人が来る前に倒してしまいたい。捕まってる時点で今でも十分悪いけど。
グローファントムが土塊を透けて僕にゆっくりと近づいてくる。うわ、物理が効かなくなるってこう言うことか。僕の《絶破断》も透けてしまって攻撃が当たった感覚がしない。攻撃対象を突然見失ったように宙を裂いていくだけだ。
グローファントムの赤みがかった暗い紫の魔力が炎のように燃え盛り、ボロボロのローブが大きく広がるようにはためく。
あ、これダメなやつだ。ここに来て、ゾワゾワとこみ上げてくる胸騒ぎを感じても、二人が見ている手前どうする事もできない。
黒魔力で身体が出来ているからと言っても、精神の方ではわからない。僕の精神はきっと脆いだろうから尚更だ。
もし自分を見失って暴れたら。
ナーシア達を少しでも傷付ける可能性があるなら、今すぐこの場からワープで逃げるべきだ。一番の危険は僕自身の身体だ。
グローファントムのフードの奥が見えた。底無しの暗闇が広がっていた。
それなのに、僕は逃げることができない。
魔物だってバレたくないから?
バレたらナーシアやビュラさんに会えなくなるから?
それは彼らを失う危険がある事より大切な感情なのか?
僕を飲み込むかのように暗闇が迫ってきて、目の前が暗くなる。
どれも違う筈なのに、僕は…
逃げない。
【黒猫】
種族名 : 黒猫
種族 : 魔獣
闇属性
体力:253
魔力 : 320/320
スキル : 《猫パンチ 》 《引っ掻く 》《暗視》
特殊スキル : 《暗黒魔法 》◀︎ 《種族変化》 《黒神術 》 ◀
黒神術 : 《状態変化》 《創造化》《生体感知》《暗黒魔法◀︎》
暗黒魔法:《影裂界》《幻影》《絶波断》
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