『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

過去の話③ side廼華 ⚠︎胸糞注意報

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『何があったのか、全てお話しします。土曜日の3時。北校舎の多目的教室で』

その手紙を希望の一筋として、今日まで待ってきた。
土曜の半日授業が終わり時計は12時半に差し掛かる。

お弁当を食べ終えた私は、3時まで早いが指定された多目的教室に向かう事にした。北校舎には初めて立ち入る。見た目からして、酷く老畜していると思っていたが、幸い中はそれ程汚くはなかった。
階段を上がり、北校舎の4階に差し掛かった時、話し声に気付く。多目的教室に生徒が複数居るようだ。
使われていない教室と言っても、生徒達の集い場になっているらしい。
仕方なく、自分の教室で時間を潰そうと思ったが、ふとその考えを辞めた。

多目的教室にいる生徒6人が、よく見れば全員5組の生徒だったからだ。5組の生徒は全員顔と名前を覚えている。
男女6人の中には、後田幸次郎と今野美咲が居た。

壁の柱に身を隠し、話の内容を聞く。

「てかさ超キショかったわ。事情聴取とか警察のママゴトかよw」
「それなw 」
「ダルかったわ、有名カップルの尋問。ドラマの世界かと思ったわ」
「ドラマてw」
「確かに芸能人並オーラあるよな」

彼らは私達に対してそんな事を思っていたらしい。察しの良い見好なら、こんな事を考えられていたと気付いていたのだろうか。
…それにしても、初めて知ったが、男女の2組であればコンビと言わずにカップルと表現するのが普通のようだ。

「まじで姉弟ってあん時初めて知ったわ。苗字だけ偶然一緒思ってた」
「それなー」
「クソ似てねーから血は繋がってない、絶対」
「多分アイツ家族からもぼっち説あるわ」
「だよな。事情聴取も義務感丸出しだったよな」
「ワタシタチ、一応家族なので心配してます~って感じでさ」

思わず壁に爪を立てる。
全てが間違っている。そんな訳がない。どれだけ紡を想っているか、何一つ知らない癖して勝手な事ばかり…。

「‥にしても、お前ら全員あの聴取、何も言わなかったんだよな?」

私が来てから初めて後田が言葉を発した。騒がしい5組の生徒が一瞬口を閉ざし、短い沈黙が訪れる。怒りで染まりかけた思考が瞬時に冷め、後田達の話に耳を傾ける。

「俺ら当然言う訳ねーよ」
「ウチらの方全員喋ってないの確認したわー」
「男子の方は私ら知らね。なんせ男子の事情なんて知らないし?w」
「おいおいその設定持ち込むなよw」
「竹谷とかさ、あそこら辺の陰キャ当たりなら喋ってそう」
「自分大好きなアイツらが?無理無理」
「だよな、てか自分の首締める事になるよな」
「マジそれw」
「喋る奴、正義ぶりたいチクリ馬鹿だな」
「それなーw」
「チッ」
「…」
「…どうした、コージ」
「チクる奴一人くらいろよ、つまんねーな。代わりが出来ねーじゃん」
「ハハ、マジそれなw」
「いや、まじで、アイツは重要だった。アイツが居なくなってさ、ショックだわー俺。ま、パシリとしてだけど!w」
「ホントそれ、カタツムリ並に弄り甲斐のあるヤツねぇよな」
「てかさ、…何気にクラス全員から見捨てられてるよな!担任含めてよ」
「あ、それなw」
「おいおい、ちげーだろ?」
「あ?違くないだろ」
「学校中から、の間違いだろ!」
「wwww」
「やっべー可哀想w」
「つーか、ツムツムまじでどこ消えたん?w」
「なんか学校の怪談に巻き込まれて死んだ説あるw」
「小学生かよw」
「確か変態教師誘拐説もあるぞwなんか教師に成り済ました変態が拐うって言う」
「うわーーヤバッwwあり得ねぇってw」
「なんか靴も鞄もスマホもみんな教室にあったんだってさ。神隠しっつーか、学校で殺されたんじゃね?」
「もう確実に死んだパターンだよな」
「完全犯罪出来る人が学校ん中に居るって事だよな、まじ怖くて笑えねぇww」
「笑ってるだろww」
「お前らマジでうるせーな」
「ごめんって、怒るなよコウジ」
「てかコウジ、ツムリン居なくなってからめっちゃ不機嫌だよね」
「それなw(いつだって不機嫌だろ)」
「まさかあん時のアレで」
ガタッ
「ナめてんのか?殺すぞ?」
「冗談だって、離せよw」
「チッ、あん時の話は二度とするな」
「ま、それはねーよな。ストレス発散のしどころがなくて溜まってるだけだろー」
「俺も溜まってるわー」
「完全にアッチの方だなww」
「は?お前こそ–––のくせに」
「俺は–––ッじゃねーよ!」
「お前らやめろってww」
「てかさ、オムツ帰ってきたらどうする?w」
「文字列変えて汚くすんなwwてかアイツの呼び名誰か統一しろよw」
「分かるから良くね?w」
「帰ってきたら、今度は逃げる気失せるくらい躾ねーとな」
「…」
「w」
「んじゃ、首輪付けてやんなよww」
「はははそれいーじゃんw」
「次は飼い殺しかーウケる」
「コウジなら本当に殺しそうだわー」
ピロンッ
「あ、俺彼女とデートだから先帰るわ」
「そういえば凛高の彼女出来たっつってたわな」
「クソかよ死ね」
「腹立つわー」
「んじゃ、私も帰るわ」
「ウチも」
「帰りゲーセン寄ってかね?」
「おう、行こうぜ」


5組の生徒6人が、多目的教室から出る様子を、私はじっと見ていた。いつの間にか爪が割れていた。でも、今はそんな事どうだっていい。

紡が、パシリで、後田のストレス発散のしどころで、クラス全員と担任に見捨てられてるって?挙句、紡が帰ってきたら逃げられないように躾ける…?


は?


なんなんだ、コイツらは。紡は間違いなくコイツらに…精神的苦痛を受けていたのだろう。私の大切な唯一の家族が、こんな奴らに。変なあだ名付けられて、馬鹿にされて。こんなに低俗で、下らない人間に。

…許さない、絶対に、許さない。紡に直接手を出した人間、見て見ぬ振りをした人間、全員紡の何倍も苦痛を味わって、絶望して死ねば良い。それまで、私が絶対に許さない。

腹の底から真っ黒な激情が渦巻くが、それが理性を上回る事はなかった。頭の芯は冷静に今後の事を考えていた。
今、飛び出して感情のままに殴り倒すなんて馬鹿なことはしない。怒りに任せて短絡的に動いても、紡が受けた苦痛以上に苦しめる事が出来ない。スマホの録音画面を開いて、録音を止める。
証拠としては薄いが、会話の内容は録音として手に入れた。
叩きのめすのは、匿名で連絡をくれた子に会って話を聞いてから、見好と考えることにしよう。落ち着いて、計画的に行動しなければ。
殺してしまっては駄目。
紡が帰ってきた時に、真っ先に会う為に。これからもずっと、紡と見好、3人で生きていく為に。それに、紡の片割れとして、私は『完璧』であるべきなのだから。

多目的教室に入り、席に座る。視線は自然と後田がつい先程まで腰掛けていた席に向かう。昔から表情を変えるのが苦手だ。だから、きっと今の私でも、普通の人から見たら普段通りの冷めた表情に見えるのだろう。

***

双子の片割れを失った行き場の無い巨大な空虚が、底のない暗く淀んだ憎悪として心中を締める。
彼女の瞳は、光の当たり加減で緑にも青にも見える特殊な虹彩をしている。幼なじみと片割れを除いて、誰もその瞳の奥の本当の色である『感情』を視る事は出来ない。



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