君たちの時代にいたい

たかゆき宗也

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プロローグ

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 私の住む東国ルミエールは隣国の西国ヘルツカイナと領地や資源を巡って現在もなお争っています。
 
 それでも私が住む田舎町は前線からかなり離れていて戦争の影響は殆どない安全な地域でした。





 一生忘れはしない。
 当時私はまだ6歳にも満たない子供だった。





[1912年6月]
 
 
「ちょっと待ってよー!」
「アンジェ早く早く! 鳥に食べられちゃうよー!」

 青空の下を私は親友の背中を追いかけて走っていた。
 丘の上へザクロ狩りに行こうと誘われたのだ。

 丘に着くと早速シユは両手に溢れるほどザクロを摘んできて、一気に頬張った。

いっはいいっぱいひゃくろザクロあっふぁねあったね!」
「シユってばリスみたいだよ!」
「へへ、ザクロってルビーみたいでシユ好きなんだー! 味はちょっと酸っぱ過ぎるけどね!」


 
――それから、私達はザクロを食べたあと、花摘みやかけっこをした。
 そんなかけっこの最中さいちゅう

「わぁっ!」
「シユ! 大丈夫?!」

 前を走っていたシユが石につまづいて転んでしまった。

「いっだぁー、……派手にコケたなぁ、」
「待って! 今絆創膏ばんそうこう貼るから! ……えっと、水、は水筒のでいっか」

 シユは足を怪我したようだったけど、血は殆ど出ていなかったし重症ではないみたいだった。
 
 まず水筒の水で泥を落とす。
 それから絆創膏をバックから取り出し、シユの足に丁寧に貼った。

「うー、ありがとうアンジェ~」
「シユってば毎日走り回って傷作るから、絆創膏何時いつも持ち歩くようになっちゃった」
 
「アンジェはきっといいお医者さんになるね!」
「えぇーお医者さんになんてなれないよ! ……あ、でも、そういうお仕事はしたいなぁ」

 シユは?と聞くとシユは満面の笑みでこう言った。

「勿論! 正義の味方!」

 度肝を抜かれたというか。
 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う。

「正義の、味方? ……軍人さんとかって事?」
「んー、そう! ものすごーく修行した最強の私が戦場に立って、沢山の仲間を助けるの!」

「で、でも危ないよ、シユにそんな危険な目にあって欲しくない」
「大丈夫! 私にはアンジェっていうつよーい回復屋さんが居るんだから! ……なんだっけ、えっと確かそういう人の事を、衛生兵っていうんだよ!」

 衛生兵えいせいへい、聞いた事無い仕事、などと考えているとシユがキラキラした目で続けた。

「衛生兵ってね! 『ひせんとうよういん』って言って、敵から攻撃されないんだって! 怪我した人を治療して助ける! すっごいお仕事だよね! 攻撃されないならアンジェが傷つく事もないし!」
 
「そうなんだ……うん分かった私衛生兵になる!! それでシユちゃんが怪我してもすぐに治してあげる!」
 
「やったー! その為にはまずは修行だね!」
「修行?」
「そう! 私の家まで競争! よーいどん!!」
「ちょっと、待ってよ! シユ!」

 シユは荷物も忘れて走り出してしまった。
 私は慌ててシユの分の荷物も持って追いかける。

 シユは元々足が速いのもあってかなり前を走っている。
 競争は私の負けだろう。

 
 その時。

 黒い影がシユを掴んだ。
 
 それは、見知らぬ男達だった。

 

「シユ……?」

 

 余りにも突然で。
 早すぎて。
 何が起こったのか分からなくて。

 シユが誘拐された。
 という事実を理解した時には。
 
 空が赤く、肌寒い風が吹き始めた頃だった。


 伝えなくちゃ。


 私は無我夢中でシユの家まで走った。
 私とシユの家は隣同士で、家にはシユのママが居ると思ったから。

 
「シユちゃんママ!」

 シユの家の前で叫ぶ。
 家の中からシユのお母さんが出てきてくれた。
 
「あら、アンジェちゃんどうしたの? そんなに慌てて……シユは一緒じゃないの?」
「……シユが、シユがね、誰か、知らない大人に連れていかれちゃったの、それで、それで……」
 

 シユのママに話してる途中なのに涙が溢れてくる。
 
 シユが連れ去られた不安と怖さと。
 
 自分が何もできなかった罪悪感。

 今ここに自分が居る事への安心感でぐちゃぐちゃになった。



 
 それから、シユのママとパパ、私とママとお姉ちゃんの5人で、ルミエール国軍に遭難届を出しに行った。

 軍のお姉さんがお菓子とホットミルクを出してくれて、今日の出来事を話してほしいって優しく聞いてくれた。
 凄く暖かくて、シユの事を話す時何回泣いたか覚えていない。

 
 全部話終わった後は、泣き疲れてだんだん眠くなった。

 意識が飛ぶか飛ばないか格闘していた時、軍のお姉さんやシユのママ達、大人の会話が少しだけ耳に残った。


「残念ですが、……ちゃんは、ヘルツ……ナ…………連れ去さ…………可能性が……」

 
「……そんな、……はシユは!…………!」

 
 お姉さんの言葉とシユちゃんママの泣く声を聞きながら、私は眠気の限界がきて意識を手放した。
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