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第1章 出会い
第1話:記念式典
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それから13年の時が経ち私は18歳になりました。
今日はルミエール国軍の記念式典。
そうです、今年の3月に念願の衛生兵になる事ができました。
シユとの約束を果たす為に、シユの行方を探す為に。
あの事件の後シユのご両親はすっかり衰弱してしまい。
娘の事を思い出すのが辛いと、地元であるラントヴィルからでていきました。
心機一転、心を入れ替えお仕事を頑張ろうと思っていましたが。
現在、私アンジェは首都、プロスにあるルミエール国軍。
その敷地内の廊下を全力疾走しています。
完全にやらかした、遅刻です。
それも、人を助けたとかそんな理由では無く、ただ純粋に楽しみ過ぎて眠れず、ラッパの音を聴き逃してしまいました。
「ごめんなさい! アンジェ二等衛生兵、只今到着しました!!」
勢いよく会場の扉を開けると、表彰授与の最中。
突然見知らぬ二等兵が大声を出して乱入してきた形になってしまいました。
「……アンジェ二等衛生兵、何か申告があるようなら、こちらまで来るように」
台の上に立っていた中年くらいの男性にマイクでそう声をかけられました。
確かこの方はルミエール国軍の総司令官。
僅かに呆れた顔をされています。
「い、いえそういう訳では、」
もごもごと唸っていると、私の横に雪色髪の小さな女の子が歩いてきていました。
私自身同年代の平均身長を満たしていませんが、この少女は私より10センチ程小さいように見えます。
「君、『式典中は静かにしなさい。』って意味だ。寛大な総司令官で良かったな。それと、式典後ここに残るように」
な、なんかこの子苦手かもしれないー!!
直感でそう感じた。
高圧的な態度もそうだし、なんというかこう、非情なタイプの人間がとにかく苦手なのだ。
私にそう指示した少女は返事も聞かずさっさと自分の席に戻って行った。
私も慌てて空いている席に着く。
総司令官がこほんと場の空気を整え話を続けた。
「最後にルミエール国女王からの祝辞を頂いております。お忙しい女王に代わり、代理として読み上げさせていただきます」
『ルミエール国軍第72回記念式典の開催、誠におめでとうございます。祖国の為に尽力しているルミエール国軍の皆様、まずは心より感謝の意を表します。そして今日表彰された皆さんおめでとう。これからも貴女方のご健闘をお祈りします。』
「女王のお言葉を胸に刻み、これからも任務に勤しむように。これにて第72回記念式典を終了とする。解散!」
式典後、大勢の隊員が会場から去っていく中、私はあの少女に言われるまま会場に残る。
「怒られるよねぇ……うん、そうだよ今から怒られるんだぁ~」
「君、さっきから何をぶつぶつ呟いているんだ?」
「あー! さっきの女の子! ……だって今からあの総司令官さんにゴゴゴゴってオーラ出されながら叱られるんだよ~怖いんだよ~!」
「……気をもんでいる所悪いが、総司令官は多忙だ。君を叱るのは直属の部下である私の仕事になった」
「えぇええ!!!?」
「挨拶がまだだったな、ルミエール国軍司令部所属少佐アメッサだ。頼むから仕事中くらい上官には敬語を使ってくれ、私の指導不足と思われる」
「上官!? 私より小さな女の子が!?」
「階級は着隊式の時にも説明があっただろう。分不相応ではあるが、とはいえ階級は階級。しっかりと理解するように」
「それと、君にはきっちり始末書を書いてもらう」
「そ、そんなぁ~、」
「あれ、アメッサ少佐何してるんですか?」
「リラ!」
私がアメッサさんに泣きついていると、リラと呼ばれた女性が声をかけてきました。
綺麗なピンク髪を黒い大きなリボンでポニーテールにまとめた、背の高い頼れそうな人……。
「初めましてアンジェ。私はリラ、第13小隊所属の伍長だよ」
「初めましてリラさん……!」
「うん、よろしく。それよりアメッサ少佐、珍しい同年代の同性隊員ですし、顔見知りになっておいても良いのでは?」
「……明日生きているかも分からない相手と親睦を深めた所でだな、」
この人しれっと私がすぐ死にそうな奴って言いましたね。
それより、リラさんが来てから先程までのアメッサさんの勢いが落ちついているような気がします。
階級はアメッサさんの方が上でも年齢はリラさんの方が年上なのでしょうか。
「そう言わずに、久しぶりに集まってお茶会でもどうです?レイチェルも呼んでさ」
「レイチェル、さん?」
レイチェル、まだ会ったことのない女性隊員でしょうか。
「国から雇われている傭兵で、私達と年の近い19歳の女性だ。優秀だと聞くが、アンジェ。君がこれから勤務する野戦病院に治療を貰いに来ることがあるかもしれないな」
「えっあ、はい!」
アメッサさんにそう言われ、気を引き締めた。
そうだ、私はこれから前線に出ている人達を治療するんだ。
「アンジェは衛生兵か、気をつけてね。負傷兵を回収しに行く事もあると思うけど、新人の衛生兵が前線へ行くのはある程度慣れてからだろうし。……あっそうだ、」
リラさんは手をぽんと叩きアメッサさんに向き直った。
「4月7日13時よりアメッサ少佐へ伝達です。総司令官から14時より司令室で会議をするそうなので、用事が済み次第、集まって欲しいとのこと」
「承知した、伝達ご苦労」
そう話すリラさんはさっきまでの穏やかな雰囲気ではなく、伍長の空気を纏っていました。
「なら私は司令室に向かうよ。あぁ、そうだ。アンジェ二等衛生兵、始末書は今月末までに提出するように」
「はい、分かりました!」
「それと二人共、休日が分かり次第知らせてくれ、私が茶会の日程を見繕おう」
そういうとアメッサさんはスタスタと去って行きました。
「それじゃあ私も仕事に向かうよ。アンジェと次に会うのは体力検定の時かな!」
「はい!」
リラさんも軽く手を振りながら去っていきました。
「……私も出発しないと」
寮の自室に戻り、必要な荷物をまとめた。
出勤の日程を確認すると4月下旬の体力検定まで休みは無さそうです。
「4月7日アンジェ二等衛生兵。只今よりヴァッサ地区中央野戦病院へ出発し任務を開始します!」
今日はルミエール国軍の記念式典。
そうです、今年の3月に念願の衛生兵になる事ができました。
シユとの約束を果たす為に、シユの行方を探す為に。
あの事件の後シユのご両親はすっかり衰弱してしまい。
娘の事を思い出すのが辛いと、地元であるラントヴィルからでていきました。
心機一転、心を入れ替えお仕事を頑張ろうと思っていましたが。
現在、私アンジェは首都、プロスにあるルミエール国軍。
その敷地内の廊下を全力疾走しています。
完全にやらかした、遅刻です。
それも、人を助けたとかそんな理由では無く、ただ純粋に楽しみ過ぎて眠れず、ラッパの音を聴き逃してしまいました。
「ごめんなさい! アンジェ二等衛生兵、只今到着しました!!」
勢いよく会場の扉を開けると、表彰授与の最中。
突然見知らぬ二等兵が大声を出して乱入してきた形になってしまいました。
「……アンジェ二等衛生兵、何か申告があるようなら、こちらまで来るように」
台の上に立っていた中年くらいの男性にマイクでそう声をかけられました。
確かこの方はルミエール国軍の総司令官。
僅かに呆れた顔をされています。
「い、いえそういう訳では、」
もごもごと唸っていると、私の横に雪色髪の小さな女の子が歩いてきていました。
私自身同年代の平均身長を満たしていませんが、この少女は私より10センチ程小さいように見えます。
「君、『式典中は静かにしなさい。』って意味だ。寛大な総司令官で良かったな。それと、式典後ここに残るように」
な、なんかこの子苦手かもしれないー!!
直感でそう感じた。
高圧的な態度もそうだし、なんというかこう、非情なタイプの人間がとにかく苦手なのだ。
私にそう指示した少女は返事も聞かずさっさと自分の席に戻って行った。
私も慌てて空いている席に着く。
総司令官がこほんと場の空気を整え話を続けた。
「最後にルミエール国女王からの祝辞を頂いております。お忙しい女王に代わり、代理として読み上げさせていただきます」
『ルミエール国軍第72回記念式典の開催、誠におめでとうございます。祖国の為に尽力しているルミエール国軍の皆様、まずは心より感謝の意を表します。そして今日表彰された皆さんおめでとう。これからも貴女方のご健闘をお祈りします。』
「女王のお言葉を胸に刻み、これからも任務に勤しむように。これにて第72回記念式典を終了とする。解散!」
式典後、大勢の隊員が会場から去っていく中、私はあの少女に言われるまま会場に残る。
「怒られるよねぇ……うん、そうだよ今から怒られるんだぁ~」
「君、さっきから何をぶつぶつ呟いているんだ?」
「あー! さっきの女の子! ……だって今からあの総司令官さんにゴゴゴゴってオーラ出されながら叱られるんだよ~怖いんだよ~!」
「……気をもんでいる所悪いが、総司令官は多忙だ。君を叱るのは直属の部下である私の仕事になった」
「えぇええ!!!?」
「挨拶がまだだったな、ルミエール国軍司令部所属少佐アメッサだ。頼むから仕事中くらい上官には敬語を使ってくれ、私の指導不足と思われる」
「上官!? 私より小さな女の子が!?」
「階級は着隊式の時にも説明があっただろう。分不相応ではあるが、とはいえ階級は階級。しっかりと理解するように」
「それと、君にはきっちり始末書を書いてもらう」
「そ、そんなぁ~、」
「あれ、アメッサ少佐何してるんですか?」
「リラ!」
私がアメッサさんに泣きついていると、リラと呼ばれた女性が声をかけてきました。
綺麗なピンク髪を黒い大きなリボンでポニーテールにまとめた、背の高い頼れそうな人……。
「初めましてアンジェ。私はリラ、第13小隊所属の伍長だよ」
「初めましてリラさん……!」
「うん、よろしく。それよりアメッサ少佐、珍しい同年代の同性隊員ですし、顔見知りになっておいても良いのでは?」
「……明日生きているかも分からない相手と親睦を深めた所でだな、」
この人しれっと私がすぐ死にそうな奴って言いましたね。
それより、リラさんが来てから先程までのアメッサさんの勢いが落ちついているような気がします。
階級はアメッサさんの方が上でも年齢はリラさんの方が年上なのでしょうか。
「そう言わずに、久しぶりに集まってお茶会でもどうです?レイチェルも呼んでさ」
「レイチェル、さん?」
レイチェル、まだ会ったことのない女性隊員でしょうか。
「国から雇われている傭兵で、私達と年の近い19歳の女性だ。優秀だと聞くが、アンジェ。君がこれから勤務する野戦病院に治療を貰いに来ることがあるかもしれないな」
「えっあ、はい!」
アメッサさんにそう言われ、気を引き締めた。
そうだ、私はこれから前線に出ている人達を治療するんだ。
「アンジェは衛生兵か、気をつけてね。負傷兵を回収しに行く事もあると思うけど、新人の衛生兵が前線へ行くのはある程度慣れてからだろうし。……あっそうだ、」
リラさんは手をぽんと叩きアメッサさんに向き直った。
「4月7日13時よりアメッサ少佐へ伝達です。総司令官から14時より司令室で会議をするそうなので、用事が済み次第、集まって欲しいとのこと」
「承知した、伝達ご苦労」
そう話すリラさんはさっきまでの穏やかな雰囲気ではなく、伍長の空気を纏っていました。
「なら私は司令室に向かうよ。あぁ、そうだ。アンジェ二等衛生兵、始末書は今月末までに提出するように」
「はい、分かりました!」
「それと二人共、休日が分かり次第知らせてくれ、私が茶会の日程を見繕おう」
そういうとアメッサさんはスタスタと去って行きました。
「それじゃあ私も仕事に向かうよ。アンジェと次に会うのは体力検定の時かな!」
「はい!」
リラさんも軽く手を振りながら去っていきました。
「……私も出発しないと」
寮の自室に戻り、必要な荷物をまとめた。
出勤の日程を確認すると4月下旬の体力検定まで休みは無さそうです。
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