320 / 492
凍雪国編第3章
第96話 無詠唱の金雷1
しおりを挟む
フレイは、ふと思い出す。
「そういえば……」
「どうしたのですか?」
オンジは、結界の隅っこに追いやった煙が薄れてきたのを見て、風魔法を解除する。
フレイが発生させた煙は、これで全て空気に溶け込んでしまった。
「うん……。この前、モールさんに魔法を習ったとき、手を通して魔力波長を教えてもらったんだよね」
「魔力波長をですか?」
「うん。だから、もしかして、今回もそれで上手くいくのかなと思ったの」
「私が手をかざせば、いいのですか?」
オンジも、己の金雷属性を手に宿すことができる。
もし、それで上手くいくようなら、フレイに直接魔力波長を伝授することができる。
「うん。モールさんが魔力波長を手に乗せてくれたの」
「そうですか……。では、フレイ殿。お手を拝借してもよろしいですか?」
「うん」
フレイは、差し出されたオンジの右手の上に、自身の右手を重ねる。
オンジの手からは、トウジンに似た雰囲気の魔力波が感じられる。
「金雷属性は、風属性の最上級属性になります。そのため、風属性の魔力波長が基本となり、これに放電のような荒々しさが加わります」
オンジは、そう言って、己の手のひらに金雷属性の魔力波長を宿す。
「うわっ!」
フレイは、手のひらに針が突き刺されるような激しい刺激を感じ、驚いてオンジの手を離そうとする。
それをオンジは、ぎゅっとフレイの手を握り締めることで防ぐ。
「まだ離してはいけません」
「痛たたた……!」
実際に、フレイの手が痛い訳ではない。
だが、フレイは、手のひらに加えられる魔力波長を痛みとして捉え、針が次々と突き刺さる感覚に歯を食いしばる。
「これが、金雷属性の魔力波長です。覚えられますか?」
「い、痛い~! これ、違う! 僕がイメージしたものと全然違う!」
フレイは、手をぶんぶんと大きく振り、オンジの手から逃れようとする。
しかし、オンジは、フレイの手を強く握り締め、逃がさない。
「金雷の魔力波長を覚えるためです。我慢してください」
「痛たたた……! もっと弱くしてよ!」
「無理です。私は、そこまで器用ではありません」
オンジは、フレイの訴えにも関わらず、金雷属性の魔力波長を宿し続ける。
「う~!」
フレイは、涙目になりながらも、歯を食いしばって、必死に耐える。
フレイの手のひらには、とめどなく針が突き刺さる感覚が生じ続けている。
(これって……!肘を机の角にぶつけたときの感覚に似ている!)
フレイの目からは、ついに涙がほろりと滴り落ち、右手の感覚は徐々に麻痺していく。
それを見たオンジは、すっとフレイの手を離し、流れ落ちたフレイの涙を拭ってやる。
「少し無理強いをさせたみたいですね」
オンジは、へったと地面に腰を下ろしてしまったフレイを見つめ、反省する。
「もう……。感覚がないよ……」
フレイは、恐る恐る右手を見つめ、焼け焦げていないことにほっとする。
そして、少しでも痛みを和らげようと、右手をぶるぶると振り回す。
「金雷属性は、覚えられましたか?」
「……どうだろう? 痛みしか、覚えてないと思うけど?」
フレイは、モールから教わったやり方を実践してみたものの、魔法の種類によっては、大変なことになるということを今更ながらに学ぶ。
そして、今なら、よく分かる。
エルフ族が使うエナジェティックウォーターという魔法が、どれほど優しさに溢れていたのかを……。
あの魔法は、万物を慈しみ、生命を育む魔法である。
その魔力波長も穏やかで、森の木漏れ日のような暖かさに体全体が包み込まれる感覚があった。
「そうですか……」
オンジは、これも失敗だったかと考え、ほかに良い方法はないものだろうかと考えを巡らせる。
「そういえば……」
「どうしたのですか?」
オンジは、結界の隅っこに追いやった煙が薄れてきたのを見て、風魔法を解除する。
フレイが発生させた煙は、これで全て空気に溶け込んでしまった。
「うん……。この前、モールさんに魔法を習ったとき、手を通して魔力波長を教えてもらったんだよね」
「魔力波長をですか?」
「うん。だから、もしかして、今回もそれで上手くいくのかなと思ったの」
「私が手をかざせば、いいのですか?」
オンジも、己の金雷属性を手に宿すことができる。
もし、それで上手くいくようなら、フレイに直接魔力波長を伝授することができる。
「うん。モールさんが魔力波長を手に乗せてくれたの」
「そうですか……。では、フレイ殿。お手を拝借してもよろしいですか?」
「うん」
フレイは、差し出されたオンジの右手の上に、自身の右手を重ねる。
オンジの手からは、トウジンに似た雰囲気の魔力波が感じられる。
「金雷属性は、風属性の最上級属性になります。そのため、風属性の魔力波長が基本となり、これに放電のような荒々しさが加わります」
オンジは、そう言って、己の手のひらに金雷属性の魔力波長を宿す。
「うわっ!」
フレイは、手のひらに針が突き刺されるような激しい刺激を感じ、驚いてオンジの手を離そうとする。
それをオンジは、ぎゅっとフレイの手を握り締めることで防ぐ。
「まだ離してはいけません」
「痛たたた……!」
実際に、フレイの手が痛い訳ではない。
だが、フレイは、手のひらに加えられる魔力波長を痛みとして捉え、針が次々と突き刺さる感覚に歯を食いしばる。
「これが、金雷属性の魔力波長です。覚えられますか?」
「い、痛い~! これ、違う! 僕がイメージしたものと全然違う!」
フレイは、手をぶんぶんと大きく振り、オンジの手から逃れようとする。
しかし、オンジは、フレイの手を強く握り締め、逃がさない。
「金雷の魔力波長を覚えるためです。我慢してください」
「痛たたた……! もっと弱くしてよ!」
「無理です。私は、そこまで器用ではありません」
オンジは、フレイの訴えにも関わらず、金雷属性の魔力波長を宿し続ける。
「う~!」
フレイは、涙目になりながらも、歯を食いしばって、必死に耐える。
フレイの手のひらには、とめどなく針が突き刺さる感覚が生じ続けている。
(これって……!肘を机の角にぶつけたときの感覚に似ている!)
フレイの目からは、ついに涙がほろりと滴り落ち、右手の感覚は徐々に麻痺していく。
それを見たオンジは、すっとフレイの手を離し、流れ落ちたフレイの涙を拭ってやる。
「少し無理強いをさせたみたいですね」
オンジは、へったと地面に腰を下ろしてしまったフレイを見つめ、反省する。
「もう……。感覚がないよ……」
フレイは、恐る恐る右手を見つめ、焼け焦げていないことにほっとする。
そして、少しでも痛みを和らげようと、右手をぶるぶると振り回す。
「金雷属性は、覚えられましたか?」
「……どうだろう? 痛みしか、覚えてないと思うけど?」
フレイは、モールから教わったやり方を実践してみたものの、魔法の種類によっては、大変なことになるということを今更ながらに学ぶ。
そして、今なら、よく分かる。
エルフ族が使うエナジェティックウォーターという魔法が、どれほど優しさに溢れていたのかを……。
あの魔法は、万物を慈しみ、生命を育む魔法である。
その魔力波長も穏やかで、森の木漏れ日のような暖かさに体全体が包み込まれる感覚があった。
「そうですか……」
オンジは、これも失敗だったかと考え、ほかに良い方法はないものだろうかと考えを巡らせる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
54
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる