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ぼんの宇宙日記(52日目)
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52日目。今日は、ジンの工具箱の匂いの日。
朝、ぼくは居住区の窓辺で目を覚ました。船内は静かで、星の光がまだ淡く残っていた。今日はどんな一日になるのかなと、しっぽを小さくふりふりしながら伸びをした。
そのとき、奥の作業台でジンが何かを探している気配がした。工具が小さくぶつかる音、ジンの短い息づかい。それは毎日のように聞こえる音だけれど、今日はなんとなく違って感じた。
ジンが古い工具箱を静かに開けた。その瞬間、ぼくの鼻に“地球の匂い”がふっと届いた。金属の冷たさとグリースの甘い香り、それに混ざるように、どこかで嗅いだことのある土の匂い。ぼくは思わず耳を立て、鼻をひくつかせた。
ジンは誰にも気づかれないように、慎重に道具を選んでいる。けれど、ぼくの鼻にははっきりわかる。その箱の奥には、地球の“外”が詰まっている。遠い森の中の湿った空気や、倉庫の片隅に残る陽だまりの匂い。グリースの匂いさえ、今日はなんだかやさしかった。
ぼくはそっと作業台のそばに近づいた。ジンは少しだけ目線をくれたけど、すぐに作業に戻った。ぼくは足元でくんくんと空気を嗅いでみる。金属の冷たさと土の温かさが、ふしぎなバランスで混ざっている。その混ざり方が、ぼくには懐かしい。
ジンがひとつのドライバーを取り出した。そのグリップ部分からも、地球の匂いが漂ってくる。もしかして、昔どこかの工場で使われていたものかもしれない。ぼくはその匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「ぼん、匂いが気になるのか?」ジンがぼくにそう声をかけた。ぼくはしっぽを一度ふって、足元で丸くなった。「うん、いい匂いがするよ」と心の中で答えた。工具箱の匂いは、星の匂いとはまた違う。だけど、どちらもぼくの居場所につながっている気がした。
夕方、ジンが工具を片付けるとき、もう一度箱の中から土の匂いが漂った。ぼくはそれを忘れないように、しっぽの先にそっと絡めてみた。
夜、ぼくは居住区の窓辺で丸くなった。ジンの工具箱の匂いは、まだぼくの鼻の奥に残っていた。
おやすみ、地球の匂い。おやすみ、ジンの工具箱。また、匂いで旅をする日を。
朝、ぼくは居住区の窓辺で目を覚ました。船内は静かで、星の光がまだ淡く残っていた。今日はどんな一日になるのかなと、しっぽを小さくふりふりしながら伸びをした。
そのとき、奥の作業台でジンが何かを探している気配がした。工具が小さくぶつかる音、ジンの短い息づかい。それは毎日のように聞こえる音だけれど、今日はなんとなく違って感じた。
ジンが古い工具箱を静かに開けた。その瞬間、ぼくの鼻に“地球の匂い”がふっと届いた。金属の冷たさとグリースの甘い香り、それに混ざるように、どこかで嗅いだことのある土の匂い。ぼくは思わず耳を立て、鼻をひくつかせた。
ジンは誰にも気づかれないように、慎重に道具を選んでいる。けれど、ぼくの鼻にははっきりわかる。その箱の奥には、地球の“外”が詰まっている。遠い森の中の湿った空気や、倉庫の片隅に残る陽だまりの匂い。グリースの匂いさえ、今日はなんだかやさしかった。
ぼくはそっと作業台のそばに近づいた。ジンは少しだけ目線をくれたけど、すぐに作業に戻った。ぼくは足元でくんくんと空気を嗅いでみる。金属の冷たさと土の温かさが、ふしぎなバランスで混ざっている。その混ざり方が、ぼくには懐かしい。
ジンがひとつのドライバーを取り出した。そのグリップ部分からも、地球の匂いが漂ってくる。もしかして、昔どこかの工場で使われていたものかもしれない。ぼくはその匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「ぼん、匂いが気になるのか?」ジンがぼくにそう声をかけた。ぼくはしっぽを一度ふって、足元で丸くなった。「うん、いい匂いがするよ」と心の中で答えた。工具箱の匂いは、星の匂いとはまた違う。だけど、どちらもぼくの居場所につながっている気がした。
夕方、ジンが工具を片付けるとき、もう一度箱の中から土の匂いが漂った。ぼくはそれを忘れないように、しっぽの先にそっと絡めてみた。
夜、ぼくは居住区の窓辺で丸くなった。ジンの工具箱の匂いは、まだぼくの鼻の奥に残っていた。
おやすみ、地球の匂い。おやすみ、ジンの工具箱。また、匂いで旅をする日を。
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