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神話時代:竜の都アルセリア・王と涙
【竜の都アルセリア・王と涙】 プロローグ:「はじまりの会議」
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星々がまだ夜の底にとどまり、世界の輪郭がかすかに揺れていた。
静けさの奥で、私はひとつの気配を感じ取る。
――これは、見逃してはいけない。
胸の奥で微かな振動が走った。
世界の根のどこかで、ひずみとも兆しともつかない『揺らぎ』が生まれている。
私は観察者アノン。
創造を衝動で編み、名を授け、手放し、そしてただ見つめてきた者。
だからこそ、この『兆し』を確かめるため――
私は創造主の使いと、六体の大精霊をこの場に呼び集めた。
夜明け前の宇宙を見渡す場所。
ここは世界と世界の狭間にある、静謐な会議の間。
エリウス、オルド、ラクシア、ヴァルガ、イスト――私が最初に創り出した創造主の使いたち。
そして、オリジア世界を巡る六大精霊――光、闇、火、水、風、土の象徴たち。
彼らは静かに並び、私の言葉を待っていた。
「……アノン様がお集めになった理由は、その『兆し』なのでしょうか?」
均衡を司るエリウスが静かに問いかける。
湖底のように深い声だ。
「そうだ。まだ形はないが、未来の『影』が動き始めている」
私はゆっくりと答える。
星の向こうに揺れている気配を確かめながら。
「その揺らぎは、オルザナ大陸の中心――竜の都アルセリアに関わるものだ」
王、人々、二匹のドラゴン。
永遠に続くと思われた調和の中に、微かなひずみが入りつつある。
「世界の転機が来る……ということですね」
秩序と法則を司るオルドが、まっすぐに私を見据えた。
「世界は常に巡り、変わり続けるものです。命も、祈りも」
ラクシアが柔らかな微笑みで続ける。
彼女の声は草木の芽吹きのように穏やかだった。
「祈りは時に世界を変える。だが、それには痛みも伴う」
ヴァルガが静かに告げた。
終焉を見守る者らしい、深い響きがあった。
イストが空を指でなぞる。
「時は止まりません。悲しみも願いも、流れながら先へ向かう……アノン様は、今回の揺らぎを『面白い』と思われましたか?」
私は小さく笑う。
「面白い、というより……知りたいのだ。世界がどこへ向かうのかを」
これは私の本質に近い願いだ。
創造主でありながら、すべてを決めようとは思わない。
むしろ『選ぶ自由』を世界に託したい。
会議の円の外で、大精霊たちが静かに佇んでいる。
光の大精霊ルミナが、柔らかな光をまとって問う。
「アノン様……この集いが意味するのは『始まり』なのでしょうか?」
「答えを求めているわけではない。ただ――問いを投げかけたいのだ」
私はそう返す。
なぜ命は祈るのか、なぜ涙は流れるのか、その意味を知りたかった。
「今回、観察のために私は一人の人間の内側へ降りる。アルセリアの王だ」
闇の大精霊ノクスが影のように揺れ、静かに囁く。
「光と影が交わる場所では、必ず何かが生まれる……恐れも、赦しも、祈りも」
私はうなずく。
「だからこそ、見届けたい。あの都で誰が何を選ぶのかを」
風が静かに会議の輪を撫でた。
光の残響が静かに揺れる中、私は自らの意志をはっきり示す。
「……私は、アルセリア王の内側から、彼という『選択者』を通して、世界の揺らぎを見届けたい」
その言葉に、会議の空気がわずかに動いた。
エリウスが、静かに問いを重ねる。
「もし、その揺らぎが世界へ大きな危機をもたらした場合……我らは、どのように動けばよいのでしょうか?」
私は少しだけ目を伏せ、答えを紡ぐ。
「君たち自身の意志で決めてほしい。私は『見守る者』として干渉を控える。ただ――世界の祈りや絶望が私を呼ぶのであれば、その時は応えるかもしれない」
その答えは静かだったが、場にしっかりと響いた。
オルドが淡々と補う。
「秩序も混沌も、いずれ均衡へ収束する。しかし、均衡点がどこに落ち着くかは……時代の意思に委ねるべき、というわけですね」
ラクシアが柔らかく微笑む。
「アノン様……もし王が痛みに飲まれ、涙を流したなら、あなたはその悲しみを受け止めてくださるのでしょうか?」
私は一瞬考え、しかし迷いなく答えた。
「彼の涙も祈りも、見届けるよ。その痛みが未来へ向かう道になるのなら、私はただ傍にいるだけでいい」
ヴァルガの声が深く響く。
「終わりの後に、始まりがある。その循環の中で……アノン様、あなたの観察は新たな息吹を呼ぶはずです」
イストが軽やかに笑いながら言葉を継ぐ。
「どんな結末でも、いずれは“物語”になる。アノン様の観察が、未来のどこかで光るんですよ」
私は皆の言葉を受け止め、静かに宣言した。
「……この瞬間をもって、私はアルセリア王の内へ降りる。人とドラゴンが交わす“約束”の意味を見届ける。どんな未来でも、最後まで目を逸らさない」
会議の場に、淡い沈黙が流れる。
だが、その沈黙の奥には――
確かに『始まりの気配』が脈打っていた。
光の大精霊ルミナが、小さく息をつく。
「名もなき祈りが、いつか希望となるでしょう……アノン様」
闇の大精霊ノクスが影を揺らす。
「光が強まれば影も深まる。赦しも分断も……避けられぬのかもしれません」
風の大精霊アウラがそっと囁く。
「選ばれたのは――人間族、なのですね。アノン様。その理由を、いつか私たちにも」
「その時が来れば話そう。だが今は……世界に委ねたいんだ。知性と祈りを持つ彼らが、どんな未来を選ぶのか」
土の大精霊グランが低くうなずく。
「大地の根は静かに見えて……深く軋むものよ」
火の大精霊ラギアが手の中の炎を揺らす。
「力が集まる場所には、試練が来る。それが滅びか再生かは、選んだ者次第……」
水の大精霊セルシアは波紋のような眼差しで言う。
「祈りも涙も、流れながら形を変えていく…… アルセリアでは、どんな『流れ』が生まれるのでしょうね」
それらすべてを聞きながら、私は心の底に静かに誓う。
――観察者として、見届ける。
決して手を伸ばしすぎず。
しかし、祈りが届いた時には応える。
エリウスが最後に、深く頭を下げた。
「アノン様。この会議の意味……私たちは確かに受け取りました。それぞれの意志で選び、見守りましょう」
「頼むよ。君たちの判断を私は信じている」
やがて、会議の場に風が吹き抜ける。
星の光が淡く揺れ、六大精霊と使いたちは静かにその場を離れていく。
誰もが理解していた。
ここから始まる『時代』は、もう止まらない。
私は最後にひとつ、深い呼吸をした。
「――さあ、物語を始めよう。誰の祈りが未来を変えるのか。誰の涙が命を救うのか」
その問いを、静かにアルセリアの大地へと投じた。
こうして、光と影が交錯する時代――
観察者アノンの新たな観察録は、静かに幕を開けた。
静けさの奥で、私はひとつの気配を感じ取る。
――これは、見逃してはいけない。
胸の奥で微かな振動が走った。
世界の根のどこかで、ひずみとも兆しともつかない『揺らぎ』が生まれている。
私は観察者アノン。
創造を衝動で編み、名を授け、手放し、そしてただ見つめてきた者。
だからこそ、この『兆し』を確かめるため――
私は創造主の使いと、六体の大精霊をこの場に呼び集めた。
夜明け前の宇宙を見渡す場所。
ここは世界と世界の狭間にある、静謐な会議の間。
エリウス、オルド、ラクシア、ヴァルガ、イスト――私が最初に創り出した創造主の使いたち。
そして、オリジア世界を巡る六大精霊――光、闇、火、水、風、土の象徴たち。
彼らは静かに並び、私の言葉を待っていた。
「……アノン様がお集めになった理由は、その『兆し』なのでしょうか?」
均衡を司るエリウスが静かに問いかける。
湖底のように深い声だ。
「そうだ。まだ形はないが、未来の『影』が動き始めている」
私はゆっくりと答える。
星の向こうに揺れている気配を確かめながら。
「その揺らぎは、オルザナ大陸の中心――竜の都アルセリアに関わるものだ」
王、人々、二匹のドラゴン。
永遠に続くと思われた調和の中に、微かなひずみが入りつつある。
「世界の転機が来る……ということですね」
秩序と法則を司るオルドが、まっすぐに私を見据えた。
「世界は常に巡り、変わり続けるものです。命も、祈りも」
ラクシアが柔らかな微笑みで続ける。
彼女の声は草木の芽吹きのように穏やかだった。
「祈りは時に世界を変える。だが、それには痛みも伴う」
ヴァルガが静かに告げた。
終焉を見守る者らしい、深い響きがあった。
イストが空を指でなぞる。
「時は止まりません。悲しみも願いも、流れながら先へ向かう……アノン様は、今回の揺らぎを『面白い』と思われましたか?」
私は小さく笑う。
「面白い、というより……知りたいのだ。世界がどこへ向かうのかを」
これは私の本質に近い願いだ。
創造主でありながら、すべてを決めようとは思わない。
むしろ『選ぶ自由』を世界に託したい。
会議の円の外で、大精霊たちが静かに佇んでいる。
光の大精霊ルミナが、柔らかな光をまとって問う。
「アノン様……この集いが意味するのは『始まり』なのでしょうか?」
「答えを求めているわけではない。ただ――問いを投げかけたいのだ」
私はそう返す。
なぜ命は祈るのか、なぜ涙は流れるのか、その意味を知りたかった。
「今回、観察のために私は一人の人間の内側へ降りる。アルセリアの王だ」
闇の大精霊ノクスが影のように揺れ、静かに囁く。
「光と影が交わる場所では、必ず何かが生まれる……恐れも、赦しも、祈りも」
私はうなずく。
「だからこそ、見届けたい。あの都で誰が何を選ぶのかを」
風が静かに会議の輪を撫でた。
光の残響が静かに揺れる中、私は自らの意志をはっきり示す。
「……私は、アルセリア王の内側から、彼という『選択者』を通して、世界の揺らぎを見届けたい」
その言葉に、会議の空気がわずかに動いた。
エリウスが、静かに問いを重ねる。
「もし、その揺らぎが世界へ大きな危機をもたらした場合……我らは、どのように動けばよいのでしょうか?」
私は少しだけ目を伏せ、答えを紡ぐ。
「君たち自身の意志で決めてほしい。私は『見守る者』として干渉を控える。ただ――世界の祈りや絶望が私を呼ぶのであれば、その時は応えるかもしれない」
その答えは静かだったが、場にしっかりと響いた。
オルドが淡々と補う。
「秩序も混沌も、いずれ均衡へ収束する。しかし、均衡点がどこに落ち着くかは……時代の意思に委ねるべき、というわけですね」
ラクシアが柔らかく微笑む。
「アノン様……もし王が痛みに飲まれ、涙を流したなら、あなたはその悲しみを受け止めてくださるのでしょうか?」
私は一瞬考え、しかし迷いなく答えた。
「彼の涙も祈りも、見届けるよ。その痛みが未来へ向かう道になるのなら、私はただ傍にいるだけでいい」
ヴァルガの声が深く響く。
「終わりの後に、始まりがある。その循環の中で……アノン様、あなたの観察は新たな息吹を呼ぶはずです」
イストが軽やかに笑いながら言葉を継ぐ。
「どんな結末でも、いずれは“物語”になる。アノン様の観察が、未来のどこかで光るんですよ」
私は皆の言葉を受け止め、静かに宣言した。
「……この瞬間をもって、私はアルセリア王の内へ降りる。人とドラゴンが交わす“約束”の意味を見届ける。どんな未来でも、最後まで目を逸らさない」
会議の場に、淡い沈黙が流れる。
だが、その沈黙の奥には――
確かに『始まりの気配』が脈打っていた。
光の大精霊ルミナが、小さく息をつく。
「名もなき祈りが、いつか希望となるでしょう……アノン様」
闇の大精霊ノクスが影を揺らす。
「光が強まれば影も深まる。赦しも分断も……避けられぬのかもしれません」
風の大精霊アウラがそっと囁く。
「選ばれたのは――人間族、なのですね。アノン様。その理由を、いつか私たちにも」
「その時が来れば話そう。だが今は……世界に委ねたいんだ。知性と祈りを持つ彼らが、どんな未来を選ぶのか」
土の大精霊グランが低くうなずく。
「大地の根は静かに見えて……深く軋むものよ」
火の大精霊ラギアが手の中の炎を揺らす。
「力が集まる場所には、試練が来る。それが滅びか再生かは、選んだ者次第……」
水の大精霊セルシアは波紋のような眼差しで言う。
「祈りも涙も、流れながら形を変えていく…… アルセリアでは、どんな『流れ』が生まれるのでしょうね」
それらすべてを聞きながら、私は心の底に静かに誓う。
――観察者として、見届ける。
決して手を伸ばしすぎず。
しかし、祈りが届いた時には応える。
エリウスが最後に、深く頭を下げた。
「アノン様。この会議の意味……私たちは確かに受け取りました。それぞれの意志で選び、見守りましょう」
「頼むよ。君たちの判断を私は信じている」
やがて、会議の場に風が吹き抜ける。
星の光が淡く揺れ、六大精霊と使いたちは静かにその場を離れていく。
誰もが理解していた。
ここから始まる『時代』は、もう止まらない。
私は最後にひとつ、深い呼吸をした。
「――さあ、物語を始めよう。誰の祈りが未来を変えるのか。誰の涙が命を救うのか」
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