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第四部:根の奥へ
第19章:芽吹きと呼ぶにはまだ早い 第5話:ニコ── “芽吹き”はまだ遠くとも
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僕の前には、静かな光の玉が浮かんでいた。
けれど、幻影や過去が映し出されることはなかった。
目を凝らしても、光の玉の中にはただ“今の僕”が静かに映っているだけだった。
不安とも、寂しさともつかない感情が、心の奥でじくじくと広がっていく。
気づけば、僕はまた「置いていかれる」怖さに、胸を締めつけられていた。
周囲を満たすのは、根の奥深くの静けさ。土と苔の匂いが、どこか遠い記憶を呼び起こす。
でも、その記憶さえ曖昧で、頼れるものは何もなかった。
光の玉に、そっと手を伸ばす。自分の手が、小さく震えているのが分かる。
(僕は、なぜここにいるんだろう)
誰かに選ばれたわけじゃない。
強い力があるわけでもない。
仲間たちのように、過去に何かを背負ってきたわけでもない――
そんな気がして、胸の奥がひやりと冷たくなった。
けれど、
光の玉の中の自分は、ただじっとこちらを見返している。
泣きそうな顔でも、強がった顔でもなく、
“ここにいる”というだけの、静かな目だった。
(選ばれる理由が、わからない)
思えば、これまでの旅路も、僕はずっと誰かの後ろを追いかけていた。
初めて精霊の気配に触れたときも、仲間と冒険を始めたときも。
誰かの力になりたくて、でも何ができるのか分からなくて――
それでも、皆と一緒に歩きたかった。それだけは、何より強く願ってきたことだった。
「……僕は、どうすればいいの」
声に出しても、返事はない。けれど、不思議と寂しくはなかった。
光の玉が、淡く明滅する。
その揺らぎが、僕の鼓動とほんの少しだけ重なる。
思い返すのは、仲間たちのことだ。
クレアさんの静かな強さ。
ガルドさんの黙った背中。
カイさんの無鉄砲な情熱。
リリィの、言葉にならない優しさ。
みんなが、それぞれの孤独や怒りや迷いを抱えてここにたどり着いた。それでも、僕たちは今、こうして同じ場所に立っている。
「僕は……」
言葉が、自然と口をついて出る。
「僕は、君たちと一緒に歩きたい」
光の玉が、その声に応えるように小さく揺れた。
その明滅は、まるで“分かったよ”と微笑んでいるようにも見えた。
光の玉にそっと手を重ねる。
温度も質感もないはずなのに、そこから微かな温かさが伝わってくるような気がした。
──芽吹きはまだ遠い。
でも、土の奥で小さな種が震えている。
今はそれでいい。
今は“共にいること”を選び続けたい。
「……ありがとう」
胸の奥から、ごく自然に言葉が漏れた。
その瞬間、光の玉がふっと明るさを増し、ゆっくりと僕の前から天井へと舞い上がった。
視界の端で、別の光が動いた。
仲間たちの光の玉も、それぞれの想いを胸に、静かに天井へ集まっていく。
淡い光がひとつ、またひとつと重なり合い、やがて輪を描いた。
不思議な静けさの中、僕は一歩を踏み出す。胸元の器に宿る光の玉が、静かに脈動している。
そのリズムが、仲間たちと重なる気がした。
やがて五つの光の玉が、天井で重なり、静かな輝きを放った。その光は、根の奥深くまで届き、まるで祝福のように僕たちを包み込んだ。
「みんな……」
どこからともなく、仲間の気配が戻ってくる。それぞれに自分と向き合い、それでもまた“ここに帰ってくる”ことを選んだ仲間たち。
誰も言葉を交わさなかった。でも、沈黙の中に確かな共鳴があった。
芽吹きはまだ遠い。
それでも、いずれ来るその時まで僕たちは一緒に歩き続ける。
小さな光が土の奥で震え、やがて静かに輪になった。
五人の心も、そっとひとつに重なっていく。
けれど、幻影や過去が映し出されることはなかった。
目を凝らしても、光の玉の中にはただ“今の僕”が静かに映っているだけだった。
不安とも、寂しさともつかない感情が、心の奥でじくじくと広がっていく。
気づけば、僕はまた「置いていかれる」怖さに、胸を締めつけられていた。
周囲を満たすのは、根の奥深くの静けさ。土と苔の匂いが、どこか遠い記憶を呼び起こす。
でも、その記憶さえ曖昧で、頼れるものは何もなかった。
光の玉に、そっと手を伸ばす。自分の手が、小さく震えているのが分かる。
(僕は、なぜここにいるんだろう)
誰かに選ばれたわけじゃない。
強い力があるわけでもない。
仲間たちのように、過去に何かを背負ってきたわけでもない――
そんな気がして、胸の奥がひやりと冷たくなった。
けれど、
光の玉の中の自分は、ただじっとこちらを見返している。
泣きそうな顔でも、強がった顔でもなく、
“ここにいる”というだけの、静かな目だった。
(選ばれる理由が、わからない)
思えば、これまでの旅路も、僕はずっと誰かの後ろを追いかけていた。
初めて精霊の気配に触れたときも、仲間と冒険を始めたときも。
誰かの力になりたくて、でも何ができるのか分からなくて――
それでも、皆と一緒に歩きたかった。それだけは、何より強く願ってきたことだった。
「……僕は、どうすればいいの」
声に出しても、返事はない。けれど、不思議と寂しくはなかった。
光の玉が、淡く明滅する。
その揺らぎが、僕の鼓動とほんの少しだけ重なる。
思い返すのは、仲間たちのことだ。
クレアさんの静かな強さ。
ガルドさんの黙った背中。
カイさんの無鉄砲な情熱。
リリィの、言葉にならない優しさ。
みんなが、それぞれの孤独や怒りや迷いを抱えてここにたどり着いた。それでも、僕たちは今、こうして同じ場所に立っている。
「僕は……」
言葉が、自然と口をついて出る。
「僕は、君たちと一緒に歩きたい」
光の玉が、その声に応えるように小さく揺れた。
その明滅は、まるで“分かったよ”と微笑んでいるようにも見えた。
光の玉にそっと手を重ねる。
温度も質感もないはずなのに、そこから微かな温かさが伝わってくるような気がした。
──芽吹きはまだ遠い。
でも、土の奥で小さな種が震えている。
今はそれでいい。
今は“共にいること”を選び続けたい。
「……ありがとう」
胸の奥から、ごく自然に言葉が漏れた。
その瞬間、光の玉がふっと明るさを増し、ゆっくりと僕の前から天井へと舞い上がった。
視界の端で、別の光が動いた。
仲間たちの光の玉も、それぞれの想いを胸に、静かに天井へ集まっていく。
淡い光がひとつ、またひとつと重なり合い、やがて輪を描いた。
不思議な静けさの中、僕は一歩を踏み出す。胸元の器に宿る光の玉が、静かに脈動している。
そのリズムが、仲間たちと重なる気がした。
やがて五つの光の玉が、天井で重なり、静かな輝きを放った。その光は、根の奥深くまで届き、まるで祝福のように僕たちを包み込んだ。
「みんな……」
どこからともなく、仲間の気配が戻ってくる。それぞれに自分と向き合い、それでもまた“ここに帰ってくる”ことを選んだ仲間たち。
誰も言葉を交わさなかった。でも、沈黙の中に確かな共鳴があった。
芽吹きはまだ遠い。
それでも、いずれ来るその時まで僕たちは一緒に歩き続ける。
小さな光が土の奥で震え、やがて静かに輪になった。
五人の心も、そっとひとつに重なっていく。
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